産学官連携推進委員会(第23回) 議事録

1.日時

平成16年1月30日(金曜日) 15時~17時

2.場所

文部科学省 10F 1会議室

3.出席者

委員

 末松(主査)、川崎、市川、川合、岸、小林、清水、田中、田村、安井

文部科学省

 結城文部科学審議官、石川研究振興局長、丸山研究振興局審議官、小山技術移転推進室長、佐々木技術移転推進室長補佐、金子研究環境・産業連携課長補佐 ほか

オブザーバー

説明者
 下田東京工業大学教授

4.議事録

○ 「国立大学法人からの出資の制度」について

  • 資料1~3に基づき、国立大学法人からの出資の制度ついて事務局から説明があった後、委員による自由討論が行われた。
    その内容は以下のとおり。

 (◎・・・主査 ○・・・委員 △・・・事務局 □・・・説明者)

主査 それでは、ただいまのようなことで、承認TLOのみには大学から出資ができる。それからベンチャーへの出資は今じかにはできないけれども、承認TLOを通して間接的にできますというような話です。しかしベンチャーへの出資もできるように、16年度中には結論を出すということでございましたが、どうぞご意見を賜りたいと思います。

委員 事務局への質問ですけれども、業務の自己増殖的な膨張の防止というのがいけないというところがちょっと理解しにくいのです。自己増殖してもいいんじゃないかなと思います。ただ、むしろ利益相反というか、一般社会から見て本来の業務でないところに力を注ぎ過ぎるようなことがいけないという意味なのかなと思うのです。ちょっとそこのところがわかりにくいのですが、いかがなのでしょうか。

事務局 よく行政改革という流れで業務の自己増殖と言われますと、組織が自然のうち肥大化して、本来、予定された業務かどうかわからない境界部分でもどんどん新組織が立ち上がってしまって、ふと気がつくとポストがたくさんできる、あるいは組織がたくさんできてしまう。それで、業務改善の中身が大きく変わるとか、大きく改善するということはさほどでもないといった状態が、行政改革の観点から常に問題視されるわけです。ですから、そういった問題意識で、いわば国立大学法人がある意味での子会社的なものをどんどんつくって、本来の国立大学法人の業務かどうかわからないものをどんどん事実上アウトソースするといった形で、そこの役職員はだれが就任するのかとかいう問題点が国民から疑惑の目といいましょうか、適切ではないのではないかという疑いを差し挟まれないようにという考慮は、よく行革の場で議論が出るようでございます。そういった問題意識ではないかと思っておりますが、先ほどの委員ご指摘のような利益相反に対する配慮は当然必要ということも、昨年この委員会のもとの利益相反ワーキンググループの報告書にもまとめていただいておりますが、そういったことも並行して注意すべきだと思います。

委員 一面では大学の個性をあらわすためには、ほんとうに必要な大学の個性であれば、自己増殖的な形でむしろ進められるべきものでもあるわけですね。だから、そこら辺は何となくはわかるのですが、そういう解釈で大体いいわけですね。

事務局 その程度のご説明になりますので。強いて申し上げれば、細かいのですが、業務の増殖そのものが悪いということではなくて、自己増殖というところにもしかしたら用語上の力点はあるのかもしれないと思いますが、適正な範囲で業務を改善し、新規分野に挑戦していただきたいという思いは、政府部内でもどこも異論はないというふうに思っております。

委員 これは頭の体操のための質問なんですが、大学法人になったときの会計の問題で、お金のソースからいうと国から来る公的なお金と個人的な競争資金で得たお金、それから入る間接経費、それにプラスロイヤリティ収入というのが何らかの形である。今回の出資の規定は、公費が入るという立場からはすべて文部科学省の承認を得て云々ということになるのですが、ロイヤリティというのは大学の自己努力によって増えたお金なんです。それについても大学法人会計としての一律の枠がかかっているから、そこから出るお金の範囲であっても出資の場合には認可をとれということになるんでしょうか。

事務局 制度的にはそうでございます。今ほどの委員のご指摘のように、出資するときに財源として何を用いたらいいのかという議論は別途あるわけでございますが、ある意味、金銭に出もとの区別はなかなか現実的についておりませんで、そういう意味で出資を行うという行為そのものについて文部科学大臣の認可がかかっている。これはすべからくでございます。その場合に具体に出資するとして、財源に何を、どの範囲の金額なら充てられるのかというのは別論でして、これも今、事務的にできるだけ明確にしたほうがいいだろうということで、政府部内でも調整中でございます。しかし、認可はすべてにかかると。

委員 行為そのものが。

事務局 はい、行為にかかると。

委員 確認なんですが、今の出資の件なんですが、例えば現在、TLOがある意味で実際には直接出資はできないんです。特許などとしてベンチャーにやる場合、これもある意味での出資なんですが、お金として出すわけではなくて、その見返りとしてエクイティをとるのがよろしいというような。

事務局 もちろん全く悪くはないのですが、それも出資行為として見られるということです。

委員 そうですよね。それはTLOをバイパスすれば認められるというふうに考えてよろしいんですか。

事務局 そうですね。TLOが株式を保有して、TLOが大学にバックするときには現金化していただかなければいけないのですけれども、そういう便法はあるということです。国立大学法人が株式を保有して、株主の地位を得るということは出資行為であって、根拠規定が必要となっております。今回、その根拠規定はつくれなかったということです。

委員 そのときは例えばこれから4月以降は大学で機関帰属にして、大学が特許を保有する。それをTLOが何らかの形で譲渡してもらって、そして今のような出資行為に入る。こういうふうに考えればよろしいんですか。

事務局 そうです。

主査 この議題は非常にかなめの1つでございます。ただいまのようなご意見をぜひ今後の施策に十分反映させていただきますようにお願いを申し上げて、一応この議題はこれで終わりにいたしたいと思います。どうもありがとうございました。

委員 「 競争的資金の間接経費の使途の弾力的取扱い」について
・ 資料4~6に基づき、競争的資金の間接経費の使途の弾力的取扱いついて事務局から説明があった後、委員による自由討論が行われた。
その内容は以下のとおり。

主査 間接経費の弾力使用が関心の深いもう1つの問題でございます。どうぞご意見をお願いしたいと思います。確認ですが、これは当然、これからは特許を出すときの弁理士の費用等には使えるわけですね。

事務局 はい、使えるようにすべきだろうと思ってございます。特許庁に支払う手数料であろうが、弁理士さんに払う費用であろうが、特許の権利化のためには付随する必然的必要なものですね。区別はしたくないと。

主査 これはちょっと言い過ぎかもしれませんが、啓蒙費というのはむしろ個々の研究よりもっと広い意味での人材育成に関係するようなことかと思いますが、そういうところにも使えると考えてよろしいのですか。

事務局 はい。その啓蒙の中身、具体的な内容にもよるのかもしれませんが、いろんなものの印刷代ですとか、連絡のための旅費ですとか、通信費とか入ってございますので、そういった形で活用することによって、研究成果を広く社会一般に知らしめて実現するということは、妨げないのではないかと思われます。

委員 ちょっと教えていただきたいんですが、申請時に項目でこれだけ使いますよということをいつも書いて申請をして、それでスタートするんですが、使っているうちに申請項目にはないけれども、こういう方面にも使いたいというのがしばしば出てまいります。それで事務局とやり合いをすることがよく起こるんですが、弾力的というのは、ある範囲内であれば長が判断すればいいということなんでしょうか。最初、報告書にはできるだけ明記しますけれども、例えばさっきおっしゃいましたように、特許費用は申請時に挙げていなかったけれども、やっぱり考えてみたら、特許を申請すべきだとなったときは、最初に申請してなければ無理ということなんでしょうか。

事務局 あくまで現行の書き方に即すれば、その機関の長が関連して間接的に必要と判断した場合、執行することは可能ということになっているわけです。そもそも特許のための権利化がどこまで必要かというのは、一定の時点では見込みが立ちがたいということがございます。ただ、それを最初の申請時とどこまで違えて大丈夫かと。違った場合にどう報告し直して訂正が必要かという手続は、また個々のプロジェクトごとにあるのではないかと思われます。

事務局 補足で説明させていただきますと、先ほどの委員からご質問いただいたのは、直接経費をどういうふうに使途変更しようかというご質問だと思います。そこは個別の事業に落ちて、変更の承認をいただければできるということなんですが、間接経費については別にどの使途に使えということは決まっておりませんので、そこは大学の中で自由にできます。

委員 技術移転をやっている現場から言って、こういう経費の内数化というのは非常にありがたいことです。しかし、1つだけ問題が出てくるのは、個別のそれぞれの研究にこういう経費の内数化ができてしまうと、研究者は「内数化されているんだから、おれの発明は特許にするのが当然だ、当然の権利がある」と考えがちになる。それに対し、特許の管理、活用等の面からいうと、もともと特許というのはそんな公平にやるものではなくて、活用できるものに対してとる、という大原則があるのです。その辺が内数化するときの難しさなんですが、これはあくまでも間接経費ということで、大学が一律にすべての競争資金に特許費用を内数化しているという解釈ではなくて、間接経費を弾力的に使えるんだということと理解してよろしいですか。

事務局 はい。

委員 今の2委員の発言に関連してなんですが、ちょっと確認しておきたいのは、直接経費を使って特許の申請というのはできるのですか、できないのですか。直接経費の一応の定義としては、研究を実施するために研究に直接的に必要なものに対して使用するということですが、一応確認をしておきたいと思います。

事務局 そこは補助事業の計画によって、事業ごとに実は直接経費の中で特許をとってもいいものある、と。その経費も支弁するという事業もございますし、そうではないというところもあります。ただ、出てきたものについては、間接経費はすべて特許化経費に使えますよ、ということであります。

委員 まず、2つに分けて、間接経費がある程度自由に使えるというのは理解しました。その次の質問は、直接経費を最初から特許をとるという形で申請できるということですね、事業によっては。それで、先ほどの委員のご質問は、その中でいろいろ事態が変わったときにどれくらい変更可能かということですが、間接経費は自由度がある程度ありますが、直接経費の場合は少し違いますよね。そういうときの変化に対しての質問も含んでいると思うんですが。

委員 直接経費については届け出なさい、ということになるのでしょうか。

事務局 使途の変更ということになりますので、届け出ることになります。

委員 だから、例えば文科省の科研費だったら30%ぐらいはいいとか、そういう考え方でよろしいんですね。今度は、そこで間接経費が直接経費に使えるというのは非常にいいんですが、資料6の1の問題、「機関帰属への転換」ということと関連して、今、大学のほうでかなり混乱しているところがあります。それは必ずしも費用が十分でないということを考えると、全部機関帰属にした場合に払い切れないであろうと。その場合、発明委員会で個人に戻すということを決めるんですが、それのために延々と時間がかかるというのは大変であることを考えると、最初からオプションを設けて、機関帰属でない道、個人帰属の道もつくっておいたほうがいいというのは各大学で現実に案として出されています。この前も日経新聞でそれをやったほうがいいという記事まで出たと思います。その動きが進むと、昔からこの委員会でやってきた機関帰属とか、利益相反という問題が根本から崩れる面もあるし、当人たちによっては現実的だという意見もあるんです。それがよく議論になるのは、今言ったお金の使い方とも関係しています。その辺りのご意見をお伺いできるとありがたいんですが。

事務局 まず、その考え方の整理といいますか、現行でも発明の届け出は53年通知で発明委員会を置いて、発明が出たら届けるということですので、職務発明、自由発明の別を問わず届け出は出るはず、という仕組みでございます。あと、職務発明であるときに機関側が法人格において承継するか否かということが出てまいります。それは機関の判断ですので、今、委員の先生ご指摘のように、費用が工面できないから拾わない、承継しないという結論は大いに想定されるところです。むしろ職務発明である以上、承継しなければならない、だけど、お金が足りないという悩み方をしていただく必要はなくて、費用も用意できる範囲で承継するものをセレクトするという手続を踏めばよろしいという、理論上の整理になるかと思います。したがって性質上、職務発明に属するんだけれども、大学が費用が持てないから承継しない。承継しないということは、個人帰属のまま、ということは大いにあり得ると思います。ただ、委員の先生ご指摘の話は、おそらくは教官、あるいは部局ぐらいの判断ではじめから届け出をしないということをもって、届け出をしないから承継がどだいされないという道を最初から認めるかどうか、ということにつながりかねないと思います。その辺は、それも含めて大学の判断だということはあり得るかもしれませんが、ご議論いただいた機関帰属化の議論の趣旨からすると、発明の捕捉、届け出はすべからくしていただいて、その意思決定は機動的にどんどんやっていただく。その振り分けは財政面も含めて、可能な範囲で承継する範囲を決めるというスピードアップを図っていただく。したがって、届け出もしなくて、おのずと機関に承継されないものがたくさん生じるというのは、ご議論いただいてきた趣旨からはちょっと外れているのかなという思いがいたします。

委員 その点はないと思います。届け出はするんだけれども、国が承継するかどうかを発明委員会で延々とやっていると非常に時間がかかるだろうというのが1つの議論。もう1つは今言った間接経費は自分たちの研究費なのに、考えてみたら大学に属するのかどうなのか、個人のものがどれくらい自由度があるのかという、そういう問題とカップルされていると思います。ですから、届け出するということ自身は絶対守られるべきだと思う。ただ、その後のスピードとお金と、あと大学でなくて、もう少し個人的な自由度をどこまで許すかというのが、3つとも絡み合っているのです。この点はほんとうにここ1カ月以内にどこの大学も決まると思うんですが、非常に深刻な大騒動になっているので、ちょっと伺ったのですが。

委員 私が以前の委員会で申し上げていた話というのは、今の事務局のお話とほとんど同じです。結局、特許というのは一応法人、大学なら大学がつくった玄関は入れようと。玄関を入ってきたら、とにかく速やかに出口に出そうと。その出口はいろいろあるということでいいと。先ほどの話ですけれども、とにかく法人がそのつくった特許を戦略的に使えるということの保証だけしておこう、ということだったような気がするんです。ですから、とにかく今のお話では問題がありますから、例えば個人のある研究費にくっついてきた間接経費はその個人に属するというのが、もし法人がそれは戦略的だと思えればそういう方針をとられればいいのですけれども、私は逆にそれはとらないほうが戦略的だと、思わないわけでもないということです。あと、発明委員会もほんとうに頻繁に開いて、すぐさま結論が出るほうが私は戦略的だと思います。

委員 そこのところは大学にとにかく届け出さえすれば、あとはむしろ許されるということで、今までの流れは特に阻害されてないと。ですから、例えば1つの例として、届け出をする。しかし、発明委員会で議論していただくか、そうでなくて、30%の間接経費は大学に払うけれども、特許は個人とか会社帰属にしちゃうというオプションも並列して最初から選択できる、というのが今出ている案なんです。それを大学に届けるということがあれば、その後は自由度としてあると。

委員 それは大学が決めてよいと思います。

主査 これは非常に重要な課題で、実は以前も、幾つかの例をまた書いたほうがいいんじゃないかという議論までありました。しかし、ここは大学の判断に任せようということで、何もはっきり書かなかったわけです。ただいまのように大方の考え方としては、とにかく大学で行った以上はその発明は全部大学に届けようと。それに対してそれをどういうふうに使うかということ、大学が持つか、または何かを含めてそれは法人の意思決定で迅速に行う。こういうことでよろしいんですね。ですから、基本的には大学がこれを持ちたいと思ったら、つまり基本的には大学帰属だと。しかし、それはいろいろオプションというか、大学の意思によってはそうでない、持ち切れない場合もあるだろうしということを含めた大学の意思判断に任せるということですね。もう1回繰り返しますけれども、基本的には大学が持ち得るという。

委員 ですから、オプションとして最初に届け出はするけれども、大学が持つということを判断する。そのときに、もう1つその道筋を抜けて個人が持つというオプションを最初から、届け出だけで持ち得るかという。

主査 それはないわけですね。

委員 必ず発明委員会には何か判断をしてもらうと。けれど、申し上げたような現状が、秘密的に今いろんな大学で進んでいるようです。

事務局 大学の機関としての意思決定のスピードアップというご議論に関連して申し上げれば、もはや今後は委員会組織での合議による決定でなければいけないということもありません。まして大学知的財産本部のご提言をいただいて、外部から人材を連れてきて、その人の専決でスピーディに判断するという方法も大学の意思でできるということでございます。大学という機関の意思決定はどういう形でするかということは、大学の工夫次第というところがありますので、大学の意思を素通りするというのではなくて、簡便に、簡略に大学の意思が出るようにする。その辺の工夫は各大学ごとの、よい意味での競争という流れになるのではないかと受けとめております。

主査 今の議論は非常に大事なものです。事務局、委員とも、皆さんお考えはすべて大学が掌握すると。個々の大学有あるいは個人有を含めて、大学が掌握して戦略的に使う。ということで、それははっきりしておいたほうがよろしいと思います。事務局のほうで何かしかるべき連絡というものが必要ならとっていただくことがあり得ると思います。どうぞその点よろしくお願いいたします。あるいは何かありましたら、事務局に聞くというふうにしておけばよろしいんじゃないかと思いますが。それでは、この件はそういうことで非常に大事なことでありますので、事務局から政府全体での共通意思の検討等の場合にぜひ反映していただくと同時に、個々の大学にも今のようなことの問い合わせがありましたら、非常に緊迫した状況の中ですけれども、ご対応をお願いしたいと思います。

委員 「 大学知的財産本部整備事業の実施状況」について
・ 資料7に基づき、大学知的財産本部整備事業の実施状況ついて事務局から説明があった後、委員による自由討論が行われた。
その内容は以下のとおり。

委員 先ほどの間接経費ということで大事なんですが、東京理科大の例に出ている後ろから3ページ目ですが、基本的には間接経費に相当する法人管理費として、直接経費の10%を徴収しているとあります。直接経費として例えば科研費なんかで来たものを、大学のほうの判断で間接経費に変えるということが可能だということですね。これは共同研究費の例、受託研究の例ですが、例えば科研費なども含めて直接経費で来たものを大学の判断で。それはできないんでしょうか。

事務局 これは企業との共同研究、企業からの受託研究で、契約ベースで相手と相談が整うときに、交渉で10%乗せてもらっているという意味でございます。

委員 それが直接経費の10%、間接経費になっている。だけど、ほかで、例えば科研費のように決まっているものはもちろん変えられないということですね。

事務局 はい、科研費等とは別でございます。

委員 若干将来にわたることで2点、今、覚悟しておいたほうがいいのではないかということがございます。1つは、これからは法人と被雇用者という緊張関係が出てくるわけでして、当然のことながら被雇用者の発明に対して法人側が承継するかどうかが厳しい判断のほうへ次第に向いてくる。裏返して言いますと、機関帰属の知的所有権の割合が将来は下がってくる可能性がある。米国等においては、それは既に見えているわけです。そのこと自体はここで議論してきた流れの上で構わないのかどうか。何かの手を打って、できるだけ機関帰属の方向へ押しやる努力を今後するのかどうかということが1つ。2つ目は、補償額の問題あるいは補償の率と言ってもいいのかもしれません。これがどういう筋道で、どう決めているかは別といたしまして、何らかの契約条項として決まっていても、告訴をいたしますと、最近のように裁判が維持できないということが出てきます。ここに掲げられているようなものを参考にという形でほかの大学等に配ったときに、その問題が付随しているということは十分徹底しておかなければならないという気がいたします。

主査 その点は非常に重要なことで、ただ一番最初におっしゃった機関帰属に向けて何か特別なことをするのかということについては、何か事務局側でお考えはおありでしょうか。

事務局 いえ、それはまだ将来にわたって考えていく予定です。まずは原則を転換してその体制を、ということですので、将来はまた状況の変化に応じて、この委員会でもご審議いただければと思います。

主査 紛争費用というのはもしあったとしても、やっぱりこれは弁理士費用と同じようなたぐいになりますか。ちょっとスケールは違うのかもしれませんけれども。

委員 これも現場の話なんですが、先ほどの委員のお話の後者の件で、今、企業の知財本部の方々と意見のすり合わせをしているんです。日本の企業に限って言いますと、昨日の裁判の結果も踏まえて、大学がこういう形でパーセンテージで、青天井でやることに対して非常に危惧の念を持っていらっしゃいます。というのは知的所有権、これは日本の産業再生のためにという大きな目的のもと、企業も連携してやろうということなんですが、企業側として、これは私は個人的に賛成しているわけじゃないんですけれども、発明者の権利を過大に守ると事業展開ができなくなるという発想があります。したがって、ある種の現実的な現場と知財を使う側の企業人とのすり合わせを早急にやらないと、大学の知財を使わないとか、そういう亀裂が出る。そういうご心配だと思うんですが、実際に現場でやっていますと、事実企業からかなりそういう意見が入ってきます。

主査 ということは、とりあえずスタートの時点で幾つかあるけれども、柔軟なスタートをしてくださいということですね。そんなことである程度きちっといくことと、ある程度柔軟にいくことを少しすり合わせてやっていただきたい。この辺も大変重要なことですが、フォローアップのほうもまた引き続きお願いしたいと存じます。

(末松主査退席により、川崎委員が議事を引き継ぐ)

委員 「 産学官連携活動の展開に伴う大学における情報及び研究試料等の管理のあり方」について
・ 資料8に基づき、産学官連携活動の展開に伴う大学における情報及び研究試料等の管理のあり方ついて下田教授から説明があった後、委員による自由討論が行われた。
その内容は以下のとおり。

委員 なかなか複雑な問題で、こうなるとこの委員会としては喜ばしいことでないんですが、昔の「あ・うん型」のほうが楽だったなという気がしなくもない。なまじ契約型になると、社会全体がこういう格好になるのかなという気がちょっとしたんですが、これがせっかく進めようとしている産学連携を応援するほうに働くようなことになるのか。逆に言うと、こんなややこしいことをしなければいけないのなら、あんまり生々しいのはやめておこうやというふうに、ネガティブに作用するかもしれないというのがちょっと心配になってきました。皆さんのほうでご意見がございましたらお願いします。なお、今、下田教授のほうでご検討中というふうに承っておりますが。

説明者 これは一律にすべての産学共同研究に適用するということではありません。特に企業がほんとうに実用化に近いところの研究についても大学に任せたい、企業の相当コアな情報も大学に出すんだということで、大学側もそれを受けて、ほんとうにその企業に産業上インパクトのある研究を与えようというときは、相当がっちりしたものをやる必要があるということです。そういったときには相当がっちりした契約を交わす必要があると思いますし、企業側もそれほどのご期待がなくて、一般的な基礎的なところを大学の人と共同してやりたいということであれば、これほど高いレベルを求めなくてもよろしいと思いますので、全般には産学連携を促進するためにやることである。そこの精神はちゃんと留意しながら進めるべきものと考えます。

委員 2つございまして、1つはこういう形で大学と外部との契約に関して何かプロトタイプ、あるいは気をつけるべきものを作ろうとする方向はあるのですが、同時に法人が雇用者になり、教職員が被雇用者になっている、その間の契約もあるわけでして、それとこれとの関係をどうしておくかということが1つですね。もう1つは、この前、MITのリタ・ネルソンさんがおっしゃっていましたけれども、MITが企業と結ぶ契約というのはここが限界です。これが嫌な方とは契約を結びません。これは結局、企業と大学との間の力関係がものをいっていると思うのですけれども、これを超えたシビアな契約は、大学が大学としての本質を失うことになるからです。そういう線を決めるお話と、どうしておくのが全体としてうまく整理できるのかが、プロトタイプをおつくりになる上でポイントになってくるのではないかという気がいたします。

委員 大変大事なことだろうと思います。その辺は先ほどのご説明のプロトタイプとしては、段階別の類型でお話になったと思いますが。

説明者 第1点目につきましては、各大学は就業規則等を決められると思うんですけれども、その中で職務上知り得た秘密については漏らしてはならないとか、あるいは退職後もそういう縛りがかかるんだということになりますので、一応そこで担保されるというふうに理解をしています。ただ、職務上知り得た秘密は何かということの具体的な判断になりますので、それについてはこれで企業と大学が契約を交わして、大学が守るべき秘密情報の定義が明確になる。その情報についてアクセスする大学教員に対しては、企業とこういう契約を交わしているので、あなたもこういう義務がありますよという確認のプロセスを踏む。一応そういう手続を想定させていただいております。2点目につきましては、ここが限界というのはなかなか難しいんですが、正直申し上げて末端の研究室まで行きますと、どれほどお約束したとおりにきっちり守れるかという問題もありますので、今は逆に企業さんもある程度大学の実情、こんな感じの研究室にどういうことを頼むかということで、「あ・うんの呼吸」でその辺がなされているのかなというふうに思いますけれども、大学ごとに非常に独立した研究建屋をつくって、そこのアクセス管理をきっちりやるという例も大学によっては出てきております。そういったところであればかなり踏み込んだところまで関わってもよろしいでしょうし、そうでない、環境がなかなか整えられないというところであれば、逆に入り口のところで、うちの大学の守秘義務をお約束しても実際できるのはこのレベルですというのをある程度暗黙のうちにご納得いただいて、共同研究をやっていただくということで始めざるを得ないのではないかなと思います。

委員 いろいろこれからご苦労なさるところが多々あるのかも知れません。

委員 これは私どもはあまりもめた経験はないんですが、守秘義務については常に、先ほどありましたように、私どもは公開の原則というやつを一方で持っておりますので、それとどこで兼ね合いをするかというのは大変な問題です。だから、契約段階では最初に大学はこういうポリシーを持っていますよということを企業に示した上で、公開はどこまでやりましょうということを決めてやるということですので、ケース・バイ・ケースでかなり難しい問題を含んでおりますが、最初の契約をするときに非常に大事になる。ここでもちゃんと書いていらっしゃいますけれども、だれが責任を持ってサインしているんですかということをはっきりしておかないと。当事者だけではいけない。ここに管理責任者とございますが、かなりはっきりした権限のある人が契約をしておかないといけないなということがありますね。もう1つ、私どもが最近、特にこういう守秘義務等秘密関係のことで神経を使っていますのは、レンタルラボとか、インキュベーションの施設がどんどんできてまいりまして、そこへ企業が入るわけです。そこの企業は非常に先端的なことをやっていますから、一切周りの人に見せたくないと言いますと密室みたいになりまして、何をやっているのかわからない。ですから、そこは一定の範囲内でだれか立ち入りますよとか、そういうこともちゃんとしておきませんと大変なことをやっているなという、あるいは公害を出しているとか何かわからないようなことがありますから、公開の原則との兼ね合いを明確にして、こういうケース、こういうケースということをかなり神経質にやっておきませんと危ない。ただ、そういうことをやることによって、企業サイドもかなり納得なさいますので、産学連携は阻害よりも、推進方向にいくんじゃないかと思います。

委員 いろいろな経験を踏まえてのご発言でございましたが、これから下田教授のほうでご調査になるときに、ひとつまた理研さんとか産総研のみならず、大学レベルでもやっておられるところを含めるのも、いいのかもしれませんね。特に最近ではあんまり話題になりませんが、ボーイングとロッキードマーチンが人の移動との関連で、頭の中に入っているものを持っていった、持っていかないで、国防総省の受注を減らされたということで訴訟になった経過もあるので、これは人の移動というのはあまりないような感じで私は今ご説明を聞いたんですけれども、その辺まで入れると大変複雑になります。

委員 我々の経験では、全体で大学なり我々の機構という点で、そこと企業がやるのはどのレベルで契約を結ぶかというのがほんとうに難しいんです。大きくやってみんなに言ってしまうと、会社は嫌がるんです。何かやっているかばれてしまう。そこが1つ。それから、ある部分で守秘義務を負うと、そこからは漏れないんですけれども、全部周りから漏れちゃうんです。この辺は非常に難しいところだなという思いが現実に幾つか出ています。

説明者 具体的な想定事例としては、企業と共同研究をやるときに、かなり特定のプロジェクトについてテーマを設定して共同研究しましょうといったときに、学内の特定の研究者のチームと企業がやりましょうという契約をして、それでチームの方は守秘義務を負う。あるいは契約に係る契約担当官とか、協定書に署名するような方はその一連の守秘義務を負うんですけれども、逆にそれ以外の方はそういった守秘義務とは一切関係ない世界にとどまるということを明確にするということで、ある意味、上のレベルでサインをしても、関係する人はごく少数にとどまるという形の契約なり実務管理という形をとるべきだろうというふうに考えます。

主査 本件もやり出すと1項目1項目でいろいろありますので、ここで議論をこのまま継続するわけにはいかないと思いますが、いずれ適宜、進捗があり次第、また事務局のほうとご相談の上で、この場でご報告いただくなりご説明いただく機会を設けることにしたいと思います。

委員 「 その他」について
・ 資料9~12について、事務局から説明があった。

委員 今までの事務局のご説明について何か確認、ご質問等がありましたらお受けいたします。ありませんか。特に先ほどの特許の問題については、特許を追試するということがどうなるかとかという、非常にボーダーな話として難しい問題があります。また、それからこれはISIの文献のリブリオメトリックスのほうでちょっと最近気がついているんですけれども、昔は特許にどういう論文が参照されているかというのを1つのめどにやっていたんですけれども、実はその解析をやらなくなっているんです。それをやると参照されている論文がその特許との関連でということが関連するからかな、ということもあるので、この問題は微妙なことになりそうな気がします。ぜひ次回あたり、またご説明をいただく機会を設けていただければと思います。場合によってはこの委員会だけではなく、皆さんに知っておいていただかないと思わぬトラブルということになると思います。

5.今後の日程

 次回は平成16年2月26日(木曜日)に開催予定である旨、事務局より連絡があった。

お問合せ先

研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室

(研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室)