産学官連携推進委員会(第22回) 議事録

1.日時

平成15年11月26日(水曜日) 9時30分~11時30分

2.場所

虎ノ門パストラル アジュール

3.出席者

委員

 末松(主査)、川崎、伊藤、北村、清水、田中、田村、平井、堀場、安井

文部科学省

 石川研究振興局長、田中研究環境・産業連携課長、小山技術移転推進室長、佐々木技術移転推進室長補佐、金子研究環境・産業連携課長補佐   ほか

4.議事録

○ 「最近の産学官連携の動向」について

  • 配布資料に基づき、本年4月以降の産学官連携の動向ついて事務局から説明があった後、委員による自由討論が行われた。
    その内容は以下のとおり。
    (◎・・・主査 ○・・・委員 △・・・事務局)

主査 法人化になりますとまた大きな問題が出てきますし、特に国立大学は全て国家公務員ではなくなりますので、どれぐらい自由になるのかまだ見えてこないのですけれども、その辺の問題があるかと思います。それから、知的所有権の大学帰属が本格的に今度始まるということになりますと、かなり大幅に考え方の上で変わっていくことになるんじゃないかと思われます。どうぞご意見をお願いいたします。
 事務局にお聞きしたいんですけれども、非公務員になったときに、その非公務員の度合いというのはどのくらいでしょうか。かなり自由にやれるのか。依然として国から給料をいただいているわけですね。そうすると、それなりの制限が同じようにかかってくるということなのか、その辺の区分けが皆さん気に掛かるかと思うんですけれども。

事務局 それは、制度的な縛りがないという世界に入りますので、実際どのぐらいまでという目安が逆に非常に難しくなっております。この4月のまとめにも入れていただきましたし、先ほどの資料6にも入れておりますように、例えば週30時間勤務や、年間9カ月勤務で3カ月は無給だけれどもフリーになるということも、大学の決断次第で十分できるようになる。人件費との絡みでは、運営費交付金が一括して交付されますけれども、それと人事制度とは1回切り離されますので、人事管理のあり方そのものについては非公務員型ということで、大学ごとの就業規則等々の決め方次第で思い切ったことができるようになるということではございます。だから逆に、こんなのはいいのかというご懸念や問い合わせも時々いただいたりするんですけれども、その辺もおそらくは来年4月以降、あるいはそれに先駆けて、こんな構想であるとか、いろいろな大学が発表して参考にし合うという中で、随時見極めていただくという姿がいいのではないかと思います。

主査 逆に、一、二年というのは相当いろいろなことが起こるでしょうね。問題も起こるし、多分行き過ぎと思われるようなことも起こってくるかもしれないし、また元へ戻ったりしなければいけないと思います。その辺が皆さん疑心暗鬼の点なのではないかと思うのです。

事務局 法人化とか非公務員型のよろしいところと申し上げていたのでございますけれども、今ほどの委員からご指摘があったように、制度として決定版を来年3月までに用意しておかなきゃということではなくて、おそらく随時試行錯誤でやっていただきながら、工夫を重ねていただくというのが、一番よろしいのではないかなと思っております。

委員 今ほどの委員のお話に関連して。私も直接ではありませんけれども、大学の共同利用研究機関と特殊法人と独立法人の3つを統合したときのいろいろな議論を聞いていますと、むしろ制度運用よりも、何をやる機関にするかという、いわゆる大学法人でいうと6年、今度のJAXAという新しい宇宙航空機構は5年でございますけれども、6年の中期計画の中で人件費の配分からあらゆることが全部盛り込まれていくわけですね。そして何をやるという目標を立てるという。そういうことでいえば、むしろ中期目標をどのように我が大学がつくるかという、中期計画をどうするかという、そこのところで一番大きい議論が起こるし、いろいろな潜在的な問題も顕在化してくるんだろうと思います。というのは、お金が1本でどんと来るわけで、メリハリというのは何らかの形でついていくと思いますが、予算上は1本なのです。しかしながら、地方の学長なり理事長なりの総括権限の中での配分ということになりますと、計画次第ということになるかと思います。

主査 中期目標、中期計画のつくり方によるのではないかというご指摘でございますが、これもまた具体化になるといろいろ難しいことが起こるだろうと思います。

委員 特に数値目標を入れろと言われると、非常に困ります。

主査 これは大変ですね。

委員 非常に精緻にいろいろな政策を努力されているんですけれども、たまたま私も地方の関係とかでいろいろ会う機会がございますけれども、こういう産学官の連携支援としておやりになっている施策と、例えば別のところでやられている大学の21世紀COEの施策、JSTなり経済産業省がやっておられるプラットフォーム、あるいは地域結集型、そういうような施策を統括して、とびきり優等生をつくるというか、施策の総合化をするようなことというのを望みたい。産学官連携を標榜にして、あるいはこの産学官連携推進委員会等を舞台にしながら関係する省庁なり局なりと連携をとってやられるというようなことは、今後可能なのでしょうか。ばらばらに、こっちはCOEをやっているんですけれども、こっちはTLOまでやっております、こっちは知財本部ができていますという、何か力の分散になっているような感じがする。またそれで、各々やろうとしている地域の自治体のほうでも若干、どう違うんだろうかという制度の違いの面で疑問が出たりする。そういう問題があるので、何かその辺はいいガイダンスを皆さん、実務面で与えていただけるような仕組みを考えていただいたらいいかなと思います。次に、これは独立行政法人になりますと、みんな運営費交付金になるわけです。人件費も皆込みなんですが、知財本部にしろ、いろいろな制度はある意味で言うと人食い虫なんですね。単純に1人1,000万かかるとしますと、10人雇えば1億であるということで、そういう人については人件費として別計上の中に入っていれば良いのですが、中身を詰めていく作業に必要な事業経費と人件費とのバランスをどうとるかというのは、非常に悩ましい問題のような気がします。その辺を文科省として何らかの方針を出すとか、指針を出すとかということを検討していったらいかがかなと少し思います。間接経費倒れになってしまいませんかというのが、私の基本的な心配なんです。

主査 ただいまの最初の、いろいろな産学官連携に関する施策の総合化という問題、これは確かに大変重要かもしれませんね。というのは、それぞれの大学でいろいろなクラスターとか、そういうご支援いただいているところは、性格を過剰に意識しておられるところもないではない、という印象を受けます。その辺も非常に柔軟にとらえていけるようなことが必要じゃないかと思います。もちろん、間接経費の問題も大変重要かと思いますが、もし何かお考えがございましたら。

事務局 十分なお答えをする力があるわけでもございませんが、先ほどの委員からのご指摘のような視点を受けて、机上配布しております「一日知財本部」の開催が、そういうきっかけの1つにできないかなというイメージがございます。 知的クラスターと産業クラスターの連携などは文科省・経産省が担当として常日ごろやらせていただいていますが、そのほかにも各種の事業、それから私ども産業連携化の関係の事業とか、高等教育局のCOEの関係とか、いわば受け手の大学のほうでは区別なく、あるいは自分のところはこれでという意識面の色分けでなされているときに、文科省側でお互いの部署が情報交換に齟齬があってもいけない。あるいは情報提供がばらばらであっても、各大学あるいは産業界の人も不便だということで、今回1つ、せめてワンストップというほどでもないのですが、産学連携からクラスターの関係、それは知的クラスターも産業クラスターも双方含めて、あるいは関係団体にお集まりいただいて、あるいは自治体の動きも伺いながらといったような、説明会として1本でできないかという試みを今年度してみたいと考えております。あと、事務的な情報交換とかご説明の場も含めて、今後さらに膨らませていけるかどうか、さらに勉強を重ねたいと思ってございます。それから間接経費のご指摘やガイドラインのお話も出てくるかもしれませんけれども、そういった取扱いそのものがまさにこの委員会の場でのご議論の方向次第で、私どもも作成を十分考えてまいりたいというつもりではおります。

主査 技術系プロフェッショナル人材のキャリアパスという問題がありまして。以前から、特に博士課程等ですぐれた人にちゃんとした教育をやってもらうためには、産業界で博士を出た人をある程度給料面で優遇してとっていただく。これは、大学等では2号俸ぐらいアップして博士卒業生はとっているわけですが、産業界でそれを意識的に給料に反映しているという会社は、全体の4割ぐらいしかないという統計があるようなのです。それでは、いい人材が博士課程へ行きにくいという課題がございますので、そういうキャリアパスの議論は非常に重要かと思います。もう一つ、最近いろいろ考えますと、修士・博士という区分よりは、一貫して博士5年というふうにして、基礎的な勉強をやらせながら博士をとるという、こういうやり方がアメリカ等で今どんどん進んでおります。そうしますと、日本のように修士・博士というやり方でやると、基礎的なところで差が非常に出てくるのです。将来大変な問題になるのではないかという気がいたしますので、最初から博士は良いものだ、というインセンティブを与える必要があるのではないか。私的には、そういう考えを最近非常に強く持つようになっておりまして。

委員 現在、たまたま総合技術会議で人材育成の、特に大学院を中心とした調査会が進んでおりまして。ちょうど先ほどの委員のおっしゃったマスター、ドクター、ポスドク、その辺が産業界ではっきりとした資格として受け入れていないんじゃないかという議論が非常に強いわけです。産業界の立場から言いますと、まず1つは、これまでの学部卒業のスキルが現在、マスターぐらいになっていると思います。要するに今まで4年でやっていたものを6年かかって、ようやく4年の昔の学部レベルだということです。具体的に当社でも、1990年の初めごろは逆にマスター・ドクターと4大卒は1対3ぐらいで4大が多かったのが最近は逆転して、3対1か4対1でマスター・ドクターと4年制になっているのです。これは会社が非常に進んだのではなく、学生が遅れたんだと我々は解釈しています。そこで一番難しいのはドクターの取り扱いで、ドクターという資格は現在、正直言いまして企業は何もありがたがらない。ただ、親しい先生のところにドクターコースの学生がいて、その方が産学連携等で研究テーマをやっており、たまたまドクターを卒業されるというので、そのテーマを持って企業へ来ていただくということはございます。しかし、一般的には我々のレベルの企業であれば、ドクターとして特に募集をするということでなしに、希望を持ってこられた方について、よければ入っていただくという形が多い。やはり現在、少々ミスマッチがあるんじゃないかと思います。なぜかといいますと、例えばその方の卒論を見て、「このテーマはあなたがどういうことで選んで、あなたは将来こういうテーマをやりたいのか」と聞くと、「いえ、これは先生から与えられたテーマである」と答えられてしまう。それにしても、「これは一体、もし成果がはっきり出た場合はどういう位置づけのものですか」と聞いても、「いや、これは先生が…」と答える。「これは実際、産業には役に立つ可能性はあると思ってやっているんですか」と聞くと、「いや、とにかく先生から与えられたテーマを忠実にやったんだ」と答える。これは極論かもしれませんが、非常にそういう傾向が強うございまして、学生自らこういうテーマをやりたい、それにはこういう先生のおられるところへ行って、こういう研究をしたいという自主性が、ゼロとは言いませんが、極めて少ない。そういうことから、どうも今のマスター・ドクターというのは、研究者として生きて行かれるのならいいのですが、産業界に来ていただくとなったら、もう少し根本的に考えないとまずいのではないかと私は考えて、ご報告申し上げました。そういうことで、まだ非常にミスマッチしている。ですから、先生と企業との間で、そういう学生さんが存在していて、その学生自体を我々がとるとか、その学生が我が社へぜひ就職してこういう仕事をしたいという間柄になかなかなっていないのではないか。そこに問題があるのではないかと思います。

主査 先頃、地方財政再建特別措置法がやっと解消されたという朗報があります。地方から国立大学に寄附できるようになったわけですが、個人が寄附しようとすると、今でも無税では全収入の4分の1までしかできないんです。それ以上やりますと税金がかかりますから、みんな嫌がりまして、それ以上は出さない。ですからなかなか個人が行動できない状況、これは企業についても多分同じだと思います。日本の剰余金、企業の収益の4分の1という形だったと思います。ですから、この辺の考慮はないのか、あるいは何か試みられているのか。私はあることで寄附しようとして、そんな莫大な収入はないので結局できなかったというフロー所得がありまして。あれはたしか戦時立法でできたと聞いておるんですが。

事務局 はい。税制の問題はまだいろいろ課題が残っているわけですけれども、今ほどの委員からお話があったように、個人の場合は25%までしか控除の対象額に入らないと。この辺もいろいろ税務当局に税制改正等々要求したり、相談を行ってきた経緯はございます。ただ、個人の場合にはなかなか現実的に25%を超えて寄附されようとする方が、そんなたくさんいるのかという話があります。むしろ1万円の足切りというのがあるのです。個人の場合には、控除する場合にマイナス1万円というのを計算上入れるんですね。つまり、1万円未満のものは控除しないと。それが、むしろそういう小口の寄附をたくさん集めるという観点からは、ちゃんと対象にしてもらったらどうかという声のほうが、今まではどちらかというと多かったのです。25%を超えるような場合というのは、よほどの方でないとなかなかそういうことは起こらない。ですから、現実問題としてそんなに人数はなかろうということで、あまり今まで対象になってきていない。それから、企業からの方については、いわゆる損金算入限度額という通常計算されるものがあって、寄附を行う際に私大への場合は寄附金の2倍、国公立大学の場合には、その全額まで控除が受けられるわけです。しかし、実際にそれを使い切っている企業というのがそんなにないのじゃないかと。私の記憶では5%とか10%とか、そのぐらいしかないということで、なかなかその辺が進展しないということがあって、私どももまずは制度を目いっぱい活用するというところまで実態を上げていただく必要かあるのかな、というような意識を持っているところでございます。

主査 どうもありがとうございました。幾つかそういう問題が気になっておりました。どうぞ皆様、ご意見をいただきたいと思います。

委員 直接関連のないことからかもしれませんが、実は昨日、機械学会の技術開発支援センターの委員会がありまして、そこで唐突にこの学会は特許とどう関連すべきかというのが議題になって出てまいりました。幾つかの案が出てきているのですが、正直言いまして、出席の委員の方は、現在知財本部等がどこまで進んで、どうなっているかという認識はあまり深くないように見受けました。そういうことで、基本的な問題は、学会が特許を積極的に持つべきなのか、あるいはそれはやめるのかということです。しかし、研究機関として研究分科会等ありますから、そこで出てきた特許をちゃんと保護すべきではないか、とすると、その保護の内容は何だと大分議論になったのです。それで、私はこの委員会でも前に申し上げたことがあると思うのですが、産学官連携における学会の役割はやっぱり大事だなと今でも思っております。最近は機械学会として産学官連携を進める立場から、企業の相談等を受けて、きちんと積極的にこたえるべしということで、かなり成果も上がりつつあるようです。もう1つの問題は、先ほどの委員のご意見がありましたが、修士やドクターの学生は学会に行ったらかなり積極的に発言し、発表して、活躍しています。さらに、国際会議にもどんどん出ていって、発言しているわけですから、立派なものだと思います。けれど、そこでは学理が追求されているだけで、これが産業界に役に立つのかというような質問はほとんど出てこない。だから、大学院の学生はそういうことはあまり頭になしに一生懸命研究をやっているわけです。先生からのテーマであれ何であれ。ですから、学会のほうに、文部科学省からアンケートを出される等して、そういう点でドクターの学生の就職も含めて、産学連携を積極的にどう取り組んでいくつもりなのかを把握しても良いのではないでしょうか。何かここの部分が非常に大きく、ある意味では抜け落ちていると思います。学会というのは大学の先生と企業の技術者が集まっているところですから、かなりこの種の話ができやすい筈です。にも関わらず、今のようなことがあまり話題にならないのではと思います。

主査 学会で産学連携に結びつくような質問あるいは議論があまりないということですね。

委員 あまりないですね。どうですか。

主査 そう言われればそうかもしれません。ちょっときれいごとすぎて、あるいは皆、さわるのを嫌がっているのかもしれませんね。

委員 確かにおっしゃるように、学会では産学連携というのはほとんど出ませんね。

主査 ただ単にロビー活動で正面切ってはやらないけれども、いざコーヒータイムになりますと、話す内容はむしろそこだということになっている。アメリカなんかでもそうですね。一番大事なのはメーンの会場じゃなくて、夜の食事か昼のコーヒータイムに行われる話。

委員 学会ですから、研究者とか学問の府であって、そんな下々の産業のことなんかを論じるレベルではないという。

主査 いや、そうではないと思います。これは学会の性格にもよりますけれども、そうではなくてその議論をやると、角が立つのでそれを避けて、むしろコーヒー時間にゆっくりやっているというんのではないでしょうか。これは学会の性格にもよると思いますが。

委員 日本ベンチャー学会でも、大変な思いをしております。設立当初は産学官を実現しようということで従来の学会の設立とは違って、産の方をかなり入れて中心的に理事会を開こうとしたんですが、いろいろな事情がありまして。最終的に最初に始まったのは、ほとんどが学校の先生方を中心にしながらも、従来ある学会らしくなければいけないんじゃないかということになりました。だんだん今、産学官がこれだけ言われているのだからということで、産の方にももっと入っていただいて、産学官を入れるようになりました。ベンチャー学会ですらそういうことを今やっておりますけれども、実はそこで、もうちょっと産学官が集まりやすい土壌をつくっていこうということで、現在学会を行っております。確かに委員の方々がおっしゃったように、理科系の先生、文系の先生もなかなか一同に集まる学会はないので、そういうものをつくっていこうと今行っておりますが、ご指摘の通りかなり温度差が先生方にある。特に理科系の学会のところではこういうような学会はないとか、そういうふうにやっていると現実問題として論文を書く際においても、学会誌の意味がかなり程度が下がるんじゃないかとかいう話がいろいろ出ております。そういうことはないのではないかということで、その辺の垣根をどうやって摺り合わせていこうかということで、日々努力をしているというのが今の学会の実態です。

主査 そうかもしれませんね。なかなか正面切ってやると、非常に難しい。ただ根本的な関心は、発表している人たちは、本当にこの方向は産業にちゃんと良いと思っていますか、大学の人は皆そう思っているんですね。産業界の人も、それは何か可能性がありますかという議論が実はやられていて、それはおそらく発表会の席上ではなかなか言いにくい。それは企業も自分の希望というか、何を自分がねらっているかということをそこで言いたくない点もある。

委員 手の内を明らかにしたくないという。

主査 そうなんです。ですから、それは言いたくないと。しかし本当のことはやっぱり意見を交わしたいので、ちょっとお茶の時間とかにやると。ですからそれがある程度わかっている学会ですと、今後は、学会の場よりはむしろ、例えば別の場所で議論しよう、一晩議論しようというようなことをやると、すごくいいわけですね。だから、むしろ真正面を避けて、ちょっと場所を変えてこの議論をしようというようなことをやったほうが上手くいく。我々もそういうことをやったことが何回もあります。確かにこれから工夫が必要かもしれませんね。本音を議論する場というのをつくっていくと。しかし、今の学会の表面でそれがないからといって、決して行われていないわけではなくて、本当は非常によく行われていると思うんです。ですから、その行われている輪の中に入っていく必要がむしろあるのではないか。ただ、コーヒーも1杯出すと、大変なんですね。国際会議で500人集まったところでコーヒー1杯出すと、ホテルは350円ぐらい。これを朝、昼、夜出しますと、1日それで1,000円かかりますから。だから、なかなかそういう支援が集会に必要かもしれませんね。事務局には、ひとつお考えいただきたい。

事務局 学会というような場ですと、まずアカデミックな話を中心にという意識が皆さん方に働いてしまうんだろうと思います。ただ、それぞれの先生方はそういう産学連携の本音のご関心、それからいろいろな話、情報を知りたいというのはあるのだろうと思うんです。おそらく学会も日程がタイトでしょうから、産学官連携のようなものに正式に割く時間はたっぷりとることがなかなかできないという、まだそんな段階なのかなと個人的に想像しております。そういった意味では、先ほどの委員がおっしゃるように、コーヒーブレークとか、あるいは食事の場みたいなところで出てきやすい話題なのかもしれません。しかし私が承知している限りでも、例えば野依先生なんかが会長をお務めになっていた化学界なんかは、今は産業界の方が会長になっていらっしゃると思いますけれども、かなり産学官連携のマインドを強くお持ちのように伺っています、そういった話題も取り上げられているというお話もありますから、場合によれば、それはやっぱり学会の性格、どういう分野、産業界との結びつきがどのくらいあるのか、それによってもまた変わってくるかもしれないなという気がしております。

主査 事務局おっしゃるとおりで、確かに学会によっては、ベンチャー研究専門委員会というような委員会を持っているところがありまして、例えば映像情報メディア学会というのがございますけれども、これはテレビジョンを中心に論じていますがものすごく盛況です。これが会合をやりますと本当に300人ぐらい集まるんです。ですから、正面切ってむしろそういうのをやって、今までそういうのをつくっていないんですけれども、つくりますと、大変成功する。「特集号」なんかでも非常にいいのがあるんですね。ですから、おっしゃるような工夫が必要かもしれませんね。重要なポイントだと思います。

委員 たまたま私、先週、北京の精華大学で産学連携関連の会議に出たものですから、ちょっとご報告なのですけれども。1つは、要点は、日本の企業と大学のこれから知財管理をやろうということのフェーズがやはり相当ずれているということ。これは国際会議の場でそれが明確にわかるということと、中国ですら、あるいは包括的に産学連携の仕事をやっていますと、いわゆるアメリカとかヨーロッパで、特に産学連携でイノベーションにある程度成功しているところというのは世界単位で物事が動いている。そういう努力をしているということに対して、私たちはどうも中へ中へと、中に問題が多すぎるからかもしれませんけれども、なかなか企業がグローバルに動いているのとインフェーズじゃなくて、アウトフェーズだという感覚がしたものですから。実はその会議は、アメリカのP&Gというところが精華大学の法学部の中にあるセンターを丸抱えで寄附して、運営しているわけです。これは企業戦略の上から必要と思って、よくアメリカとかヨーロッパはやる話なのですが、その法学部のセンターが主催して、インターナショナルにヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアから産学連携関連の人を呼んで、日本からはライセンス協会の人たちが何人か出ておられました。日本の産学連携の現状というのを、日本でいえば代表的な企業の方が、とにかく大学が何をやっているかさっぱりわからない。こういうプレゼンテーションをするわけです。これは私としてもあまり聞き心地のよい話ではなくて、現在、私たちが現状でやるときも、やはり企業が特に知財関連の方々との接触点が非常に低いので、これは何とかしなきゃいけないということで、接触点をつくるように始めたんですが、この辺がまず非常に大事だと思います。また中国もアメリカも代表が産学連携の話をしているんですが、それぞれやはり困った点がかなり多くて、そう簡単に成功・不成功というのはなっていないと。時系列で進んだところは進んだ形でまたトラブルが出ている。こういう話で、企業が産学連携と言っている以上、企業がグローバルにやっている話は、ああいう状況というのはやはり把握する必要があるのではないか。唯一、特許庁がやっている知財のセミナーが毎年1回ずつ大きくあるんですけれども、そこだけですとかなりプロフェッショナルな人だけで、大学の人があまり出てきていない。こういう場を文科省その他が設定していただいて、広くものを見ることがかなり重要なのではないかという気がしました。感想で申しわけないのですけれども。

委員 これはせっかくやられている事務局さんに水をかけるようで恐縮なんですが、大学発ベンチャー創出育成事業というので、5億円を40億円に増やされるということになっております。先日たまたま機会があって、前クリントン政権時代にOSTPの部長をやっていましたジェラルド・ハネ氏のお話を政策研のシンポジウムで聞かせていただいたのですが、これは日本のベンチャーの政策予算ですので評価の対象になるわけです。そうすると、千に三つのところでお金を出すと、これは成功と言ってくれるのか、不成功と言ってくれるのかということを気兼ねしなきゃいけない。アメリカの場合にはっきりしているのは、ベンチャーキャピタルというのはローリスク・ハイリターンなんです。それで、ハイリスク・ハイリターンはエンジェルなんです。要するにひもつきでも何でもない。つまりばくちのお金なんです。丁半とばくは2分の1ですけれども、ベンチャーの場合のばくちの当たる率は千に三つとか、そんなオーダーなんです。そういう意味で言うと、ここに上がってくるまでに死の谷に落ちてしまわないようにどうするかという、何かそういうことを工夫できないのかなという気がしているんですが。数年前に実は、韓国にコリアンテクノロジーバンクという昔の日本の開発銀行に相当するようなものができたんですが、当初は一般財源から投資する、いわゆるエンジェルの役割をするお金をもらっていたんですけれども、後半からは宝くじのお金を当てるようになっていくわけです。要するにそれは戻ってこなくてもいい。いわゆる通常の融資ではない。ですから、株式を持つ、株式を売るという、ある意味で言えば、ばくちの一種としてやっているような形でKTBというのが機能していまして、マレーシアに支店をつくるとか、いろいろやっていました。何かこの辺で少し、日本に投資、これは全体の税制の問題もあるんだと思いますけれども、そういう富裕層をつくることが国策に反するみたいなことを考えていた人たちがいっぱいいたからそうだったのかもしれませんけれども、エンジェルに相当する部分をどうやって支えるかということを少し考えていただくようにしないと、大体2~3年のところでみんな潰れていって、新しい架け橋プランに乗っかってくるというのが結局少なくなっちゃうような気が現実にしているんです。その辺、できればベンチャー学会さんなりに、あるいは調査をしていただいて。ちょっと施策になじまないんですね。政策評価の対象になるような施策にはなじまない。何かうまい方法はないかなと思っております。

主査 これも非常に重要なご指摘だと思いますので。

委員 最近の動向ということで、私が最近感じていることをお話しできればと思います。産学官連携は非常に進んできたんですが、それは知財本部とかあるいは大学の法人化の問題があって、非常にドラスティックに変わりつつあるとは思うんですが、正直申して現場的には非常に危機感を感じています。とりあえずこの危機感をお伝えすることが1つ私の仕事かと思うんですが、2つのタイプの危機感があります。1つは、先頭を走っておられるフロントランナー型の大学の中における危機感です。もう一つは、そこに落ちた大学、後塵を拝していると言うと失礼かもしれないけれども、一生懸命後から追いかけようとしている大学の危機感です。最初の危機感というのは、これは非常に難しい問題なんですが、知財本部の構築の作業とか、新しい産学官連携の仕組みをつくるという作業は極めて難しいです。これはものすごく難しいです。やればやるほど難しさがわかってくるんですが、例えば以前この委員会の下にあった知的財産ワーキンググループの議論でも出たんですが、機関帰属という意味が非常に難しいと。どのようにこれをハンドリングすべきか、どのように理解すべきか、非常に難しい。ここが難しいがゆえに、この上に構築されるべき職務発明、あるいは知財の管理とかハンドリングの問題、この辺が極めて難しくて、多分、ここに今答えを出している大学というのは日本全国で1つもないと思います。答えを出そうとしている大学が多分幾つかあると思うんですが、それにしても来年の3月、4月を迎えて間に合うかというと、非常に難しいかなという気はしています。そういう状況ですので、全国の大学機関がこの問題を理解して、同一に平成16年度4月1日に体制をスタートできるかというと、これはほとんど不可能に近いと思います。そういう意味で、フロントランナーとしての危機感というのはまずあります。利益相反なんかもそうです。これも非常に大変です。2つ目のフロントランナーではない大学なんですが、例えばモデル事業に漏れた大学がたくさんございます。88でしたか、申請があったうちの34、プラス9ですから、半分近く落ちているわけです。その大学の現状というのはかなり厳しいものがあります。現場にいて思うのは、その選に漏れた大学では、多分しばらく知財本部はできないだろうということです。あるいは形ができたとしても実態を伴わないだろうと。つまり動かないというのが現実だと思うんです。その現実の上に何が起きるかというと、私の予想では、多分これは間違いないと思うんですが…。事務局の方、平成16年4月1日に例の昭和53年当時の文部省の特許帰属に関する通達は廃止になるんでしょうか。少なくとも効力は失われると思うのですが。

事務局 そうです。ほかの通知と同じで、わざわざ廃止行為はしなくても、通知したという事実が歴史的に残るだけで、効力の適用はなくなります、形式的には。

委員 そうですね。規範としての通知がとにかくなくなるわけです。あれがなくなるということは、発明委員会も教官帰属にする仕組みも全部なくなるわけですね。その上で、しかも知財本部ができない。あるいはできたとしても動かないという場面で何が起きるかというと、その大学で生まれた知財は全く動かないということです。少なくともリスクが大きくて、民間企業はだれも手を出さない。私は今、現場でその問題に直面しています。それをどうクリアするかというのを一生懸命、実務家としては回答を出そうとしているんですが、答えを出せる大学もあるとは思いますけれども、答えを出せない大学はたくさんあると思うんですね。そうすると、半分の大学の知財は実際、平成16年4月1日以降止まります。それが半年か1年かはわかりませんけど。このように、モデル事業に漏れた大学ではその大学なりの危機感が非常にあるわけです、苦しみというか。これは政策的にどうこう言う問題じゃないと思うんですが、そういう危機感を認識して対処しないと、1年か2年たった後に、あれは一体何だったんだということになります。発明者あるいは周りにいた民間企業が非常に苦しんだという事実だけが残ってしまうということになると、非常によろしくないと思うんです。ですから、そこは私は何らかの手当てをすべきだと思いますし、個人的には非常に危機感を持って一生懸命動いてはいるんですが、文科省として、あるいは、ある程度の公な立場として、危機感をもって何かをすることが必要なのかもしれません。そういう気がしております。

主査 例の知財本部の件で、これを受けたほうは受けたほうで、では帰属の問題がちゃんといくのかどうかということが問題だし、そうでないところは意欲が落ちてどうしようもないから、何かひとつ追加支援が必要じゃないかという話だと思うんです。ただ、機関帰属は、私の感じでは結構進んでいる。現にちゃんと誓約書まで書かせてやっている大学もありますから、それはそれで時代の流れとして成り立っていくんじゃないかと思いますが、いかがですか。

委員 機関帰属の問題で専門家の方からいろいろご援助いただきながら、どういう形で進めるかというのを今検討しています。具体的には、個々に契約書を交わすという形がやはり新しい形の知財の委譲には必要だろうということになっております。そうすると、その契約書を本当に個々に一々交渉していたら大変ですから、ある基本的なパターンをつくって、そのパターンに対して特別な要求がある方に対しては個別に交渉するという形になるかなと考えます。今、機関帰属がどの程度できるかというのは、基本的にはお金の問題にかかわってまいります。実務の費用、明細書作成、特許の申請費用その他、実際の知財の手続費用を各大学の自助努力で拠出することが必要でありまして、今の知財本部の事業のお金はそれを助ける、主にシステム構築と人件費のサポートになっております。したがって、その実際の実務のお金を大学がどれだけ特許申請に準備できるかで、大学が本当に出せる特許が決まってきます。また産業界になるべく早く活用できる特許に関しては、大学機関帰属でありながら産業界に占有実施権等でお渡しするということで、費用及びロイヤリティを保証していただくような契約を結ぶかということで、大きくは2本立てになると思います。さらに今後は公的な大学保有の特許ですから、研究費用を特許出願に使えるというこれまでにない道ができると思います。研究費を使った分は個々の研究者の判断で特許を用意するという形ですから、研究者の意思と、大学法人の意思の和が、全体の知財運用に当てられることになります。基本的には、いわゆる競争的資金などの外部資金の額というのが大体各大学の知財活動の1つのスケーリングになるかと思われます。我々の試算では、5年後以降、つまりモデル事業後に何とか知財の運用が自立できるためには、外部資金の総額の2%ぐらいを知財の維持管理費に回せてはじめて、かろうじて動けるかなと思っています。それが1%だと、かなり赤字になるというのが現在の試算です。これは大ホームランの特許が出れば、もちろんそれはそれで潤うわけですが、これまでのTLOの実績の延長線上で計算しています。外部資等からの間接経費などは法人化の大学にとっては非常に重要な財源であり、特に総合大学においては、知財とは関係ないと思っておられる学部がたくさんありますので、その学部全体のコンセンサスを得て動かすというのが一番難しい。ですから、これは単科大学のほうがあるいは動きやすいかもしれません。今ほかの大学ともお話ししていてもこれは、共通の悩みであります。ですから、知財の実務費を100%とは絶対申しませんけれども、何らかの形でやはりある程度国として、少しお考えいただかないといけないと思います。3年後、5年後にかなりのところの知財が本当に動かなくなってしまうんじゃないかなというような懸念も、自分たちのところも含めて今持っておりまして、それをどうやってクリアしようかというので、今いろいろ頭を痛めているというのが現状でございます。

主査 ただいまのお話は大変興味のあるところでございまして、私もそう思います。今の知財本部、あるいは知財の管理、申請、維持等について先ほどの委員がが非常にはっきり、外部資金の2%ぐらい使いたいということを言っておられて、それがだんだん可能になってきているわけでございますね。それも決定次第で、これは実は研究費、投稿したときに論文代というのが出せるわけです。あれだって結構なパーセントを占めていて、1つ論文を書けば、大体今20万とか30万かかりますから、特許1件分ぐらいかかるわけです。そういうことがだんだん使える、しかもみんなの常識になって共通プールができるようになっていけば、これは解決をする。それから、大学全体がどうするかということについては、大学全体ってあり得ないように思うんです。部局とか研究所という単位で動かないと、よほどの大学でないと、大学全部が同じ1つの考えでいけるということはあり得ない。その辺はいかがですか、皆さん。やっぱり非常に知財に近い部局、あるいは研究所が中心になってそういうことをやっていくよりほか手はないんじゃないかと私は思うんですね。

委員 現在と将来とちょっと異なるかも知れません。大学の研究分野はすごく広範ですので、その内容をチェックできるのは本当は部局だと思うんです。ですから将来は部局が経費の責任も含めて、ぜひこれを特許にしていただきたいという意思を決めていただきたいと思っています。

主査 いえ特許ではなくて、特許に関する考え方を示すことなのです。この特許はこういうふうに、例えば2%出そうというのを全学的にやるんじゃなくて、例えば工学部だけやるとか、そういうことでいかないとまずい。そういう意味なんです。あるいは研究者が行ったり。

委員 今は、研究者の特許であって、部局の知財になってはいません。部局で知財等の管理ができるリエゾンができれば、大学の知財部は本当に強くなると思っています。各部局の予算で、動かしていくとなると、今年度自分たちの研究所は100件の予算しかないから、100件を選んでいくという作業をそれぞれにやっていただくというのが基本になると思います。海外のTLO等でもそういう形でやっているところは多くあります。ですが今は、大学の知財部に対する学内外からの評価もまだ得られていませんから、まず最初は、全体で動きながらしっかりやって行くことが必要です。先ほどの委員のおっしゃるのは本当にそうありたいところなんですが。

主査 そうですね。多分トランジェントの問題と終わってからの問題が2つありますけれども、これはぜひ文科省のほうもお考えいただきたいんですが。大学全体がそういうふうに一様に動くというよりは、濃淡をつけてやれるようにぜひご支援をお願いしたいと思いますが、いかがですか。

委員 お考えに全く同感です。例を申しますと、慶応大学の、例えばSFCと理工学部、これは全くポリシーが違うんです。例えば理工学部ですと、ある程度独占をにらんだ形の知財管理をしますし、ライセンシングも行っていく。SFCの場合はむしろIT系とか、いろいろなシステム系がございますので、むしろ非独占を中心に、わりとインフラ系で幅広く使ってもらう、知財をみんなで使ってもらうためにどうしたらいいかという考え方でつくるわけですね。だから、全く学部によってポリシーが違うわけです。したがって、これを無理やり中央でまとめて1つのポリシーをつくって、これで全部やりなさいと。ロイヤリティは2%で必ず独占でとか決めたら、これはコンフリクトが起きてつらいですよね。ただ、先ほどの委員がおっしゃるのもよくわかるのは、究極的には各学部に人を置いて、ポリシーをつくって、それを中央である程度コントロールするというのは理想なんですが、現状から言うと、各学部に人がいない。それから、そういったポリシーをつくる力も今はございません。大学、中央で1個つくるだけで今は必死なので、それを各学部、部局につくるという余力は全くないんですね。そういう意味で、現状ではそれはまず不可能だと思います。ただ思うのは、各学部とかに必ず人員を配置するような仕組み、リエゾンの人を配置して、そこから必ずフィードバックが知財本部に上がってくるような、そういう仕組みをつくっておけば、何とか今の段階でもなると思うんです。問題は、私は人にあると思うんです。ですから、中央に知財本部に人を配置するのも大事ですけど、各学部にこういったことがよくわかる方、リエゾンとして動け、あるいは知財のことがわかり、できたら利益相反のこともわかり、なかなかそんな人はいないのですけれども、そういう人ができたら各学部、部局、キャンパスに1人ずつ、あるいは数名おられるというのが理想だと思います。故に先ほどの委員はお金の話、2%という話もされましたが、加えて人件費、これが今後の知財本部スキームの大きなポイントになると思うんです。先ほどの2%のお話には多分人件費は入っていないと思います。人件費、例えばまともに知財スキームを動かすには10人からの人間はまず必要だと思うんです。この10人の人件費、給与、フリンジベネフィット、社会保険費、全部含めた場合、これはかなり大きいです。もしかしたら2%に匹敵するかもしれません。そのお金をどうやってひねり出すかというのは大きな課題だし、今後の独法化をにらんで予算が非常にタイトな中で、しかも今後予算が増えるというよりはむしろ減っていくんじゃないかというお話もちらほら耳に入ってきますけれども、そういう厳しい中で、これだけの人を半ゾーンで産学連携を進めていくための人をどうやって配置するか、これは大きな課題です。人、物、金と言いますけど、とりあえず人と金、これを何とかしないと、フロントランナーでさえ厳しい。いわんやというところですね。

主査 そうですね。おっしゃように、いろいろあると思います。それから、部局といっても部局がやるんじゃなくて、部局の関連の強いところが中央本部を形成するとか、いろいろなことがあると思いますので、そういうことをひとつ念頭に置いていただければありがたいと思います。

委員 昨年度まで一応産学連携の現場にいたんですけれども、本年度になりましたら離れてしまいまして、少し焦点がずれるかもしれません。ただ皆さんのお話を聞いていると、自分で研究室を運営されているのはひょっとすると極めて少数派のようですので、少しその話をさせていただこうかと思います。先ほどの委員のお話で、産業界と大学とにミスマッチがあるんじゃないかという話なんですが、産学連携が非常に進んできたこの現在でも実際、ドクターの学生に本当に産学にマッチしたテーマを与えるのは極めて難しいんです。なぜかといいますと、基本的に大学の研究室というのも実は極めて多機能が求められております。むしろ工学系のような場合には本当に多機能を求められていて、1つはやはり教育機関だということでございまして、資料の中の奥田会長の記事にもありますけれども、日本の教育機関の水準はレベルがあまり高くないとか、いろいろ言われています。確かに、いくら講義をやってもだめなような感じがいたしまして、我々ですとオン・ザ・リサーチ・トレーニングみたいな格好で学生のやる気を引き出して、自分で勉強しろというしか最終的に言えないものですから、それに適したような研究テーマというのを研究室に幾つか持たざるを得ないんです。そういうところにドクターを張りつけるというのがどうも一番効率的になってしまうということは、やはりあるようです。それ以外にももちろん、次世代の技術の種みたいなものをやっぱり見出したい。極めて長期的な視点の研究室運営をしたいということと、現在の産業界が興味を持ってくれることというと、これが1つのテーマというわけにいかなくて、複数、幾つかのスペクトルでやっていかなければならないことになってしまうのです。ドクターの学生みたいなものがいない限り、次の種づくりというのはどうもマスタークラスはできないことが多くて、どうしても人材が限られているとドクターにそれを割り振ってしまうということになってしまうんですね。ですから、研究室全体として、あるいは大学全体としてもそうなんですけれども、ある何十年間持続的に経営・運営して、それで産学連携もやり、基礎もやり、次の種もつくりということを1人の研究室内でやるべきなのか。そうではなくて人を割り振るか、いろいろなスペクトルの取り方はあるんですが、非常に大きなスペクトルをいずれにしても実現しなきゃいけないとなると、ドクターが今の産業界のニーズにぴったりマッチしたテーマを持つというのは、まずないかもしれない。特に若手の教官の研究室というのは、そこのドクターが基礎的なことをやるのがどうもやはり工学系においても当たり前みたいですね。それじゃ、ドクターを産業界にとる価値がないのかといいますと、少なくともそうでもないようで、私の同期とか、それからうちの研究室を出ているドクターの学生をずっと見ていると、修士の課程の学生と比べると、博士を出た人間というのは一味スケールが違うんですね。ですから、やっぱり世界の最先端を一度見たという経験があるからじゃないかという気がするんですけれども、そのスケールに対して産業界が少し認めてお金を払ってくださらないかなという気がするんですけれども。

委員 私はこの分野からやや離れた第三者なものですから、今回の話を大変興味深く聞かせていただきました。よくわからないところや相当わかったところもありますし、いずれにしても、まだ大学の法人化を控えて、混沌とした状況の中にあるのかなということを強く感じました。ここ数年、産学官連携分野の重要性が社会的にも言われており、大変難しい問題を抱えていて、込み入った話なんですけれども、我々はそれを世の中に伝えたりする役割があります。けれども、ものすごく微に入り細に入りという産業新聞的な立場で書くわけにもいかないという立場から見ますと、この分野の現状というのを調査したり、取りまとめたりして、世の中に知らせるための道具立てみたいなのをもう少し工夫していただきたいということを感じました。この委員会のような席でいろいろお話しを聞かせてもらうというのは、まことによくわかることなんですけれども、そうじゃない人たちがこういう問題をどれぐらいわかってくれるかということでいうと、そういう調査等あれば、ありがたいなということを感じました。

主査 どうもありがとうございました。おっしゃいますように、やられていることをもう少し世の中で知っていただくような工夫ですね。これは先ほど事務局からお話がありましたように、いろいろなことが今、国を挙げてやっておられますが、まだ不十分の感がぬぐえないということで、一層そういう努力をお願いしたい。私は一方で、やっぱり企業のほうもそれをキャッチする、先ほどのスケールの大きなドクター人材の雇用ということも含めまして、両方でぜひ努力をして、よりよい関係をつくっていくべきかなという気がするわけでございます。

委員 あまり大きな問題ではないんですが、実はこの知財本部が大学にできるということで、それでTLOとの関係がいろいろ問題になっているんですが、この知財本部の話が出てきて、具体的にどういう現象が起こっているか。その1つは、大学から申し出てこられる出願件数が非常に減ってきているということです。激減とはまでは言いませんけれども、どうなっているのか。これは先生方が出願を見合せしているだと思います。機関に持っていったらいいのか、TLOに持っていったらいいのか、それとも従来どおり企業に渡したらいいのか、どうしたらいいのかわからないので、すべて抑えているような状況じゃないかと思うんです。しかし、この状況が続くはずがないのでして、先生方は遅かれ早かれ学会発表なさいますから、してしまえば公知の事実になります。これはちょっと困った問題だなと思っております。そのため先生方に対する啓蒙とか、そういうことで、かなり積極的に動かないといけない。このような状況があと半年、1年続くと、もういいや、という風潮になって、かえって流れが止まってしまい、機関にも出さないで発表してしまってお終い、ということになりかねないなという心配が少しあるのです。それは先ほどの委員がおっしゃった心配とも通じるんですけれども、一方でそれほど心配しなくてもいいとい側面もあるわけです。関西TLOは、大学内部のTLOと違いまして外にありますから、京都では知財本部ができるのは京都大学と立命館大学ですので、そこで1つのモデルケースをつくりたいと考えています。一言で言いますと、関西TLOにとっては業態を拡大していく上で非常にいいチャンスだと思っているわけです。どういうチャンスかといいますと、出願は大学でやってもらえれば、TLOはライセンシングに徹しますから、その点ではある意味で非常にやりやすくなるわけです。そこへうまく持っていけるかどうかで、今両大学と話し合いをしておりまして、その他の大学へも呼びかけて一緒にやっていきましょうということにしたい、というのが私共のポリシーなのです。もう1点、先ほどの委員がおっしゃった点に私も非常に関心がありまして、全然話は違いますが、死の谷の件です。現在、我々がライセンシングで一番困っているのはまさにここです。基本的に特許だ、発明だというものを企業へ持っていきますと、製品化までの距離がかなりある。そうしますと、大学でそこまで応用研究を伸ばすのは苦しい、企業も苦しいというので、そうして消えていっているものの中には、非常に重要なものが多い。そういうことですので、今我々もかなり議論していますが、資料5の死の谷克服のための予算等を何処が担うのか。私はやっぱりベンチャーだろうなと思います。ですから、ベンチャーがそこを担当して、周りが育成しながらやらないと、死の谷を超えられないんじゃないかと。

委員 そこは要するにギャンブルですから、公共のお金とか銀行なんかがそこへ投資するのは私は反対なんです。昔から私は馬券に例えて言うのですが、完全にギャンブルにしてしまったら、競馬なんて全部もうからないんですよ。でも、おもしろいというのと同じように、十のうち1つでもいいんです。投資して、使い捨てでいいんです。これはすべて財務省の問題でして、要するに不特定多数の人に投資はできない。投資組合をつくらないとできないという、基本的な問題がありまして、これは尾見さんも竹中さんも私が話して、これは面白いと言っていただけるんですが、全部財務省ではねられているんですよ。ですから、これを何とかしたい。不特定多数の人が1万円券とか5,000円券を買って投資新聞をつくってやっても面白い。予想屋もつくって。実際日本の人々というのは、パチンコ、競輪、競艇、競馬で二十何兆円も使っているんです。その中のパチンコの玉を100個を95個にしてくれ、1兆円なんです。このお金がベンチャーへ流れたら一挙に解決する。これは単なる制度だけの問題です。これは絶対成功するんです。私はそう保証したいと思うけど、これは規制というものがありまして、商取法は絶対これを離さないんですね。

委員 私も申し上げたいのはお金の面もあるんですが、やっぱり人なんです。これをどこが育てて、どこがやりなさい、と動機付けるかが問題なのです。

委員 お金があったらやれます。やりたい人はいっぱい居るのですから。お金がないからできないだけの話なんです。ベンチャーを指導するなんていうのはおこがましいと思います。学校の先生では出来ないと思います。

主査 いや、これは非常に重要な、最後のところはやっぱり人でもありましょうし、結局最後にやるのは人ですから。しかし、金をいかに薄く広く集めてくるか、これがポイントの1つ。やっぱりお金がなきゃできないというのは本当にそうだと思いますので、これも1つ。

委員 それと、七転び八起きができるようにしてあげなければ。現状では絶対一転びアウトですから。これはだれもできません。

主査 そうですね。1つは、お金を用意するということ以外に、用意できる環境整備をぜひお願いしたいということが含まれていると思います。それでは、ちょっと時間が参りましたので、まだ皆さん大変熱が入ったところですが、本日の議論はここまでにいたしたいと思います。

5.今後の日程

 次回は平成16年1月に開催予定である旨、事務局より連絡があった。

お問合せ先

研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室

(研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室)