産学官連携推進委員会(第20回) 議事録

1.日時

平成15年3月27日(木曜日) 14時~16時

2.場所

虎ノ門パストラル アジュール

3.出席者

委員

 末松(主査)、市川、伊藤、小野田、北村、清水、田中、田村、平井、堀場、吉田

文部科学省

 丸山審議官、坂田大臣官房審議官、田中研究環境・産業連携課長、小山技術移転推進室長、中川地域科学技術推進室長、佐々木技術移転推進室長補佐   ほか

4.議事録

○ 「産学官連携推進委員会報告書骨子案」について

  • 資料2に基づき事務局から説明した後、その内容に関する質疑が行われた。
    その内容は以下のとおり。
    (◎・・・主査 ○・・・委員 △・・・事務局)

主査 それでは、全部で6章ございますので、全部で3分の1ぐらいということで、最初の1と2、産学官連携の意義、それから我が国の産学官連携の歩みというようなところでご意見がいただけますでしょうか。ちょっと私が皆様方のご意見を伺いたいのですが、3ページの最初の○(丸)の中で、「知識社会」では、大学の活性化と我が国社会の発展のために産学官連携の強化が必要だと書いてあるんですが、これはほんとうだろうかということです。社会の発展のためには産学連携が必要だと思いますけれども。それから、産学連携を強化するためには大学の活性化も必要なんですけれども、産学連携が果たして大学の活性化につながるのかというのは私はよくわからないんですが。

委員 今指摘があったところなんですけれども、この文章で、最後は必要であると書いてあるんです。ということは、必要条件というのは、必要条件の右側を否定しますと、前は壊れる。要するに、論理式をお考えいただいて、それでやりますと、後ろ側を否定しますと、前が否定されるわけです。ですから、このまま読むと、強化をしなければ大学等の活性化はできないというふうに読めるわけです。それを心配なさったんだと思うんです。ですから、これは必要であるという表現が非常にどぎつい話になっているんだろうと思います。

主査 「強化しなければならない」ぐらいですか。

委員 あるいは、「それにつながるものである」とか、いろんな言い方があるだろうと思います。

主査 そうですね。今おっしゃるような「一層強化につながるものである」というようなところで、よろしいですか。

委員 今の問題はすごく大事なことと思いますけれども、私たち産業界から見たときに、産学連携というのは、産業のためにはぜひ必要であって、大学のためにはどうでもいいと言うと極端かもしれませんが、そんなに言うならやったろかというのか、今後の大学のあり方として、やはり産と学とがイコール・パートナーとしてやっていくことが、やはり学を刺激し、学の活性化につながるというふうに私なんかは強くそれを信じてやっていますが、それはもちろん学のほうから見たら、それはおまえの思い過ぎであって、私は別におまえらと一緒にやらなくても、いくらでも活性化できるんだという意見を否定するわけではございませんが、我々産側としては、これは何も産のための産学連携でなしに、日本全体の活性化、ひいては大学も産業界も産学連携によって活性化するんだという、私自体はそういう信念で今までもやってきましたし、これからもやっていきたいという人間もいるということをひとつはっきりと言っておきたいと思います。

委員 私もそのつもりだと思うんですが、ちょっとこういう発言をさせていただきましたのは、大学の中にいろんな型紙があるわけでございます。例えば、きのうも小柴先生の講演会を伺ったんですが、100年たってもこれは実用化になりませんよ、産業界との連携はつきませんよと、そういう意識の人たちが何人かいるわけです。それは具体的な名前を言うと非常に差し障りがあるかもしれませんけれども、そういう固まりがいらっしゃいますので、全部これがないと活性化しないと言うとちょっと誤解を生じるのではなかろうか、そういう意味なんです。ただ、例えば工学部ですとか、あるいはそういう特化された研究所、それはもうおっしゃることをやらないとうまくいかないんじゃないかと思うんですけれども。

委員 人文系だからだめとか、哲学だからだめという時代は過ぎ去ったんじゃないですか。社会科学であろうが、人文系であろうが。何らかの格好で、「産」という言葉が金もうけというふうに直結するんだったら問題ですけれども、もう少し広い何かの価値を生み出すということから言えばどうなんでしょう。

主査 おっしゃるのは、社会連携とか、社会を意識する大学とかという意味では、全くおっしゃるとおりではないかと思うんですけれども、ここで言っている産学連携というのはちょっとまだどっちかというと限定されているような。先生がおっしゃっているようなことだと、おっしゃるとおりじゃないかと思います。つまり、社会から孤立した単位なんてあり得ないわけですから、そういうことをどこかにリマインドする必要はあるかもしれないという気がいたします。4ページ目、「産」「官」「学」の意義と役割、これはここに書いていただいて大変今までの議論が反映されていると思うんですけれども、大体これをごらんになりましてよろしいでしょうか。ここは一種の、いろんな人が読んだときに、このレポートがどういうスタイルで、どういうスタンスで書いてあるかということを認識するために非常に大事だと思うんです。
 「学」というところに、教育と学術研究を基本使命として社会貢献をも使命とすると言うのか、教育と学術研究と社会貢献を基本使命するというのと、大分違うように思うんですが、この辺はどうなんでしょう。確かに教育と研究は基本使命で、それをもって社会貢献をすると、こういうことだとは思うんですが。今までの議論ですと、教育と学術研究に加えて、それらを基本とする社会貢献が基本的使命なんだというような印象だと思うんですが。これもまた、ちょっと文章に書いていただいてから、考えさせていただく必要があるかもしれません。

委員 今おっしゃったことを書き分ける上で、意図と結果を区別するとすっきりするのかなという気がします。それは私のささいな経験なんですけれども、何年か前にカリフォルニア工科大学へ行ったときに副学長と議論しましたが、カリフォルニア工科大学というのはほかでやってない研究をやることがすべての目的であって、産学連携は目的ではない。すなわち、意図としては産学連携は考えてないんです。結果はどうかというと、あそこにはいろいろな企業からお金が入って校舎が建っていますし、現実に行われているんです。ですから、ここの雰囲気は、何となく結果を目指して意図を持てという雰囲気ですが、それを切り離すとかなりすっきりするんではないかという気がします。

主査 わかりました。つまり、研究というのは何のための研究かということをちゃんと突き詰めれば、そういうのは当然入っている。教育についても同じなんだというおっしゃり方で、それは非常に明快ですね。MITなんかも、研究というのはあくまで自分たちが研究するのであって、結果を社会に出すんだという言い方を非常に強くしている。結果はそうではないんですが、実際やっていることは、産業界と一緒になってやっているんですけれども、産業界に言われてやるんではないかということを非常に強くアメリカの大学は言っております。ちょっとその辺は、事務局の方でちょっと書き加えていただけませんでしょうか。「産」とか「官」というのは、「産」という意味は、ここが非常に広い……。

委員 「産」のところで幅広くということで、NPO等を入れるというのはまさにいいことかと思うんですが、その取りまとめをビジネスセクターという形でくくると、NPO等に属している方々は、我々はビジネスでやっているんではないというような、表現ぶりだけなんですけれども、ここはわざわざビジネスというのを入れなくても、民間企業、NPO等、幅広いセクターということで、ビジネスを入れると、ビジネスはいろいろ定義はあると思うんですが、ビジネス=もうけととらえられる方がNPOの方々の中には多いような気がいたしました。

主査 わかりました。それは、前回そういうような発言がありまして、必ずしもビジネスでないところを含んでいるというように言われたと。

委員 こういう文章が出てきたときには、読んでもらう人にどういうイメージを与えるかというのは、今議論されて、非常に重要だと思うんです。例えば、医学部が産学共同といったら製薬会社ですよね。治療機関と連携するのは、あまり産学共同とはいかないわけです。なぜなら、治療機関はNPOだからということですよね。それで、営利法人が特区で入れるべきだとかなんか議論しているわけです。だけど、何遍もここで議論されてきたように、主体者がどうかということよりも、それを通じて社会に広がっていくこと自身が問題なわけですから、どう書けばいいのかまではよくわからないですけれども、産学連携のイメージが、明確に書いて絞ってほうがはっきりするけれども、結局、メリット、デメリット両方あると思うんですが、この委員会で意図したところがクリアに出るように、ワーディングなんかはしていただければと思います。

主査 ということは、何か適当なサジェスチョンはございませんか。

委員 先ほどの委員がおっしゃったように、大学の役割として社会の中にあるんだということはもう既にいろいろなところにあるわけですが、社会が「産」と結びつくという形の産学というパイプの書き方では、4ページあたりに書いてあることで十分かなという気もするんですけれども、4ページのところで「『産』とは民間企業、NPO等広い意味でのビジネスセクターであり」と書いてあるからいいようにも思うんですけれども、イメージとして何かあまりサジェスティブでない。申しわけないですが。

委員 言葉として「プライベートセクター」という言葉がありますけれども、そういうのはいかがでしょうか。ビジネスセクターではなくプライベートセクター、民間サイドという。

主査 どうもありがとうございます。これは事務局に研究をしていただきまして。

委員 ちょっとよろしいでしょうか。言葉として、「産業」というのは「工業」と同じ意味なんです。「インダストリー」の翻訳ですから、どうしてもそこに引っ張られてしまうんです。ですけれども、ここで使っている「産」というのは、たまたま今までそういうところにフォーカスが当たって議論してきたことを、大学全体に適用するんだからという意味で、プライベートセクターと言うのもいいと思うんですが、そうすると今まで議論されてきたこととの連関が薄くなるし、そういう意味で、くくりの「産」を定義することによってやる方法も一つだと思いますが。

主査 今のご発言は、「民間企業」という言葉を消すわけではなくて、それとかプライベートセクターとか、そういう意味だと思うのです。

委員 そうです。民間企業とNPOを含めてプライベートセクターという形で持ってくる。

委員 もともと産学と言ったときの「産」は産業ですから、これは「インダストリー」の翻訳語ですね。ですから、言葉としてもう確立されてしまったものを今さらひっくり返すわけにいかないので、再定義の形で書くことしか方法はないと思うんですが、できるだけイメージが膨らむ言葉を選んでいただいたらと思うんです。

主査 そうですね。確かに、ちょっと膨らめて考えようやというようなことをちょっと書いておいていただければいいわけですね。「官」はよろしいでしょうか。

委員 「官」の中のいわゆる国に対する自治体の寄与というのが、産学連携では個々にたくさんあって、それぞれが個性ある自治体──自治体というのは市もありますし、あるいは地域という、多分これから広域圏、州制みたいになってくるかもしれませんけれども、国の寄与と自治体の大学への寄与というのは、多分かなり違うセンスで入ってきます。そことうまくきちんと機能できれば、その地域の産学連携もうまくいく要素が非常に強いのではないかと私自身は思っていますので、ちょっとその辺の言葉がうまく入ればいいなと私は思っております。

主査 私も今、そういう意味で、ローカルガバメントという意味で申し上げたところです。では、これはその辺を入れていただければよろしいでしょうか。

委員 ここの「官」も随分議論されてこういう形になっているんですが、地方分権が進んでいく中で、産業政策というもの自身が下に現実に移行しているわけです。ここに書かれているのは研究開発基盤とか、あるいは技術指導かという役割がありますが、そこはどう書けばいいんでしょうか、現実にクラスターなんかはそうですけれども、地域産業政策との結びつきという意味での「官」が、今までも議論されていると思うんですが、デフィニションのところにもう一言入っていたほうがいいのかなという気もするんですが。ローカルガバメントに関連して。

主査 それは先ほどの委員の発言と非常に近いので、ちょっとその辺は事務局のほうでお考えいただけますか。

事務局 一応、意味合いとしては入れているつもりではありますけれども、もう少し検討してみます。

主査 そうですね、そんな感じですね。わかりました。13ページまでは大体そんなことでよろしいでしょうか。今までのいきさつの中で、やはり大変大事なことだったのは、国の研究費を使って個人が特許を取れなかった。それは禁止されていたわけです。それが日本版バイドールで、1999年ですか、撤廃されて、かなり自由に企業でも個人でも取れるようになった。そこは非常に大きなステップかなと思うんですが、皆さんどういう認識でしょうか。制約があったものですから、みんななかなか特許ということに対して関心がなかったんですね。大学の先生が、ただ、やたらと関心がないわけではなくて、きちっとした法律で縛られていたから対応できなかったのであって、それがなくなったことがこれからのいろいろなことに、これからというか変わっていくもとになっているんではないかという記述が、どこかに要るのかなという気がしたんですが。これはまた事務局の方で、そういうようなところをちょっと考えてみていただけますか。

事務局 そうですね。少し関わりがあるかなと思いますのは、9ページの一番下の○(丸)あたりかなと思っております。

主査 はい、ここにありますね。ただ、それは我が国のことが書いてないわけで、我が国は1999年なんだと。日本版バイドール法ができたわけです。それによってやはり考え方が随分変わってきましたと。だから、ごく最近の話なんですね。たった4年前。

委員 今私、ご指摘の点がちょっと理解できていなくて、私の勘違いかもしれないんですけれども、日本版バイドールですね。再生法のほうでしたか。どちらかな、活力再生法のほうかな。30条か33条ですね。あの話と教官サイド、あるいは大学サイドの特許に対する物事の考え方、姿勢、認識といったものは、直接のリンクがあまりないような気がするんです。というか、それはもう少し前のいろいろな部分で、例えば文部科学省の例の通知がございますよね、教官にするという通知。あれに対する物事の考え方とか、当初、発明委員会もかなり未整備であった点とか、その辺ずっといろいろなことがあって、日本版バイドールというのはそういう流れの中の一つの成果にすぎないという気がするんです。日本版バイドールの持っている意味は、要するに企業サイドに独占的な権利、ないしは知財そのものを持たせることによって、さらに産業の発展を育成する効果があるというところにむしろ重みがあるんではないか。こっちも誤解かもしれないかもしれないですけれども、その辺、もう一度ご意見をいただければと。

主査 いや、私のほうで皆さんのご意見をむしろ伺いたいと思うんですが、少なくとも国立大学の教官というのはみんな特許に対しては、要するにプライベートに扱うものではないんだという感覚がすごく強かったと思います。これは国が持つんだと。それから、特定の企業と一緒になってやるということは、国が持つということがもとになって、非常に強い縛りがあった。少なくとも私自身は非常にそういう印象を受けていたんです。個人で取っていいじゃないと。個人で取っていいのは、大型の研究費を使わない場合は取っていいと。

委員 知財のワーキンググループでの考え方は、多分、全く違うように理解しております。というのは、今の大学の教官がやる研究というのは、委託研究にしろ何にしろ、1回、国に入って公金としてやっておりますから、すべての研究はやはり国のお金でやっている形に国立大学ではなると思います。そのうちで、何千万円以上という発明委員会が決めたルールに基づいて、大型の研究費については先生のおっしゃるとおり国の特許になりますけれども、ほとんど、平均で90%……。

事務局 85%となっております。

委員 85%以上は個人に渡すという形で全部処理しているわけで、ほとんどの国立教官は今回の機関帰属にするということに関して、今まで個人のものだったのを何で取り上げるのかという思いを持つと思います。どれだけこれから各大学がこのことを説明をして説得していくとともに、文部科学省にもこれからいろいろなプロパガンダもしていただきながら、やらなければいけないと私は思っているんですが。

主査 そうですね。そこは私も非常に大事なところだと思うんです。例えば私なんかの経験ですと、昔は600万円以上の公金を使ったものは特許に出せというようなことを大学が決めた時代があって、そうすると、それ以下というのは微々たるものですから個人でやってもいい。しかし、個人ではどう出せないから企業が出すということに対して免疫があったわけです。しかし、ある一定の額以上の国の研究費でやったものは国が出さなきゃいけないというのは、決めていた大学も幾つかあって、私なんかそこに属していたわけですけれども、それは非常に明快に国がやる。ということは、バックグラウンドを言いますと、研究をやっている者は国のためにやっているんだと。大型でやっているのは、特許が国に属するということは。そうすると、プライベートのインダストリーと個々にやるということに対しては、非常な制限を皆、個人的にプレッシャーとして持っていたのではないかと私は思っているんです。それが制度なんだと、今までは。ただ、大型の研究費は使わない個人は自由にやっているわけだから、そこまで大学は、あるいは国は言及しないということだったと私は思っていたんですけれども。もし、それが違っていたら申し訳ないのですが。いずれにしても何を言おうとしているかというと、研究を個人的な研究と考えてはいけませんと。今はもう個人的研究として考えていいということなんです。個人的に特許を取っていい、それから大学が取っていいということになるわけです。TLOが取っていい。何千万円使っても。それはそうですね。

委員 いや、違うと思います。それはこれまでですか、これからですか。

委員 バイドール法は、先ほどの委員がおっしゃったように私の理解も、バイドール法に関してはインダストリーに対する法律であって、教官に対しては何にも変化が起こってないと私は理解していますし、大学の中でもバイドール法では、バイドール法だから大学の教官にこれを上げるよという話は一切なくて、バイドール法によって国に入るべき特許がプライベートな、それこそプライベートセクターに渡せるということが起こっているということです。

主査 そこです。プライベートセクターに渡していいと。そこだと思いますけれども、今までは国の研究費で取った成果は全部国が特許を持たなきゃいけないということですね。バイドール法前は。バイドール法の後は、国の研究費を使ってもプライベートセクターが持っていていいと。今、おっしゃったのは。

委員 例えば、私ども企業がナショナルプロジェクト(国家主導の研究事業)を受けまして、いろいろ研究所を提供して、ただし研究員に関しては国から来ているという形で研究成果を出して、特許を取る。これをバイドール法にのっとって申請をすれば、一定期間、企業はその特許についての実施云々の権利を持ち得るということ。これがやはりバイドール法の一番の、産業へのアクティベーション(活性化)になるという趣旨なのではないかと、私ども理解しているんです。

委員 それ以前との対比ではいかがなんですか。

委員 それ以前は召し上げられていたわけです。せっかく汗水たらしていい発明をしては国の特許になった。それを企業は買うわけです、使うときに。

委員 占有実施権はないわけですね。

委員 おっしゃるとおり教官個人の所有と、それからバイドール法によって民間へ移していいということとは切り分けないといけないと思うんです。それで、大昔はとあえて言います。大昔は、既に全部国家に帰属しておりました。昭和40年代の終わりだったと思うんです、50年代に入ってからかな。局長通達か何かのレベルで、その研究を思考して国から特別な経費が出た場合を除いて、教員、教官個人が取得することが可となって、それを審査するために、先ほどの委員がおっしゃった発明委員会の導入があったわけです。ですから、その時点では、国が特別に仕事をしなさいと言って金を出したもの以外は教官の所有にし得たわけです。そのことと、主査がおっしゃった教官にあまり特許取得の動員がかからなかったといいましょうか、それとは明らかに別の問題だと考えてよろしいかと思います。例えば、教官が個人で特許を取ったときの特許料の支払いの問題とか、いろいろな問題が係ってくるわけです。おっしゃるとおり、バイドール法というのは企業との関係を規定しているだけでございます。ですから、昭和40年代の終わりか50年代の初めの時点、すなわち教官についての特許帰属権利に関して言えば、今度は揺り戻しがかかっているわけです。はっきりと揺り戻しがかかっている。要するに、個人ではなくて機関帰属という形で。そのことと、民間企業が帰属なり、あるいは実施権を持つということとは、ちょっと別のお話ではないかと思います。ちょっと古い歴史で申しわけありません。

委員 もう既に近いところがご説明あったんですけれども、もうちょっとつけ加えますと、バイドール法、これは特にアメリカのバイドール法を念頭に置いて言いますけれども、持っている本質というのは、それまでの考え方というのは、要するに国が費用を出して得た成果物は基本的に国に帰属すべきである。したがって、それを外部に出す場合には必ず対価が必要である。つまりロイヤリティーをもらう必要があるとか、あるいは売買代金をもらう必要がある。それで、なるべく非独占で出す必要があるというルールがあるわけです。それで、バイドールの非常にドラスチックに書いたところは、対価関係がなくていいとしたことだと思うんです。つまり、その成果物は国のものなんだけれども、民間に渡すことによって民間サイドで雇用が生まれる、あるいは産業が発展する、それによって税収が生まれて税収によって国が潤う。そういうふうに違うルートを通って間接的に国がもうかるから、だから対価を得ずして渡しても構わないんだと。そこにものすごい大きい政策的転換があったと思うんです。これがバイドールの本質ですので、ご指摘のあった教官の特許に対する認識は、バイドールというよりは、むしろそれ以前のいろいろな努力、それまで特許を取りたくても自分だとお金がなくて取れないとか、共同研究契約はとっても時間がかかってやりにくくて、それだったら企業に渡してしまったほうがいいとかいろいろな問題があって、そこの努力だと思うんです。そこを変えていく。

主査 ちょっと私、言い方が悪くて混乱をさせましたので、固執はしませんけれども、要するにTLOなんかができるようになったことは、もとはどうしてかというと、結局それは民間が持てるようになったからということなんです。これから教官の個人発明でも、すべて業務に関係すれば大学から出すということと、全くそれとは無関係に何か趣味で考えた特許を個人が出すかというと、これは多分許されると思うんです。大学に属したこと以外のことで発明をしたら出すということは、大学に所属するということを決めた後でも依然として残る。その考え方は今までずっと長いのと同じだということを私、言おうとしただけであって、確かにおっしゃるようなことがあります。ただ、いずれにしても組織的に特許を取ろうということはできなかったのが、非常に組織的に取れるようになってきたというのが今のバイドール法の特徴だと思うんです。日本版バイドール法も含めて。ですから、ちょっとニュアンスは別としますけれども、その辺のことが非常に大きな転機、幾つかの転機は先ほど委員がおっしゃったようにありましたけれども、法律的な問題がだんだんリリースされてきたことが非常に大きな背景にあるんだということは、書いておいていただいたほうがいいのではないか。つまり、教官の意識が、ただ何となくそういう意識になっていったわけではなくて、やはり法的な一つの縛りがあって、それがこういうふうに結果的にしている。法的な縛り、それは社会の人たちの考え方ではないかと思うんです。何か変なことをやると、すぐにマスコミ等でたたかれるというのは、そういう一種の法的な制限のバイブレーションであるのかないのかということが関係していたのではないかと、私自身はちょっと考えています。あるいは、ちょっと差しさわりのある表現になったかもしれませんが、できましたら、そんなことがあってこういうふうになっているんだということも、ちょっと入れておいていただくと大変ありがたいなと。

事務局 大学の先生に、特許を取得して、さらに活用まで含めた一種のマインドをもっと強く持ってもらおうではないかという動機を与えたのは、私の理解では、一番大きかったのは、第1次の科学技術基本計画で、リターンは半分は個人の先生に上げるという政策を出して、それがかなり特許を取ろうという強いマインドになって、動機になるんではないかという政策を出したわけです。制度論ではありませんが。それは試みましたけれども、結局、活用というところで、やはり個人が持って維持しているというのはなかなか大変なものですから、それはなかなかうまくいかないだろうということで、第2次基本計画のときに、基本的には機関所有のほうに転換をして、その流れの中で、今の産業活力再生法もそうですし、産業技術力強化法もそうですし、TLOとか、いろいろな制度がどんどん、どんどんでき上がってきているというのが流れではないかと、ちょっと思っております。

主査 わかりました。確かにおっしゃるようなことがあって、しかし、この議論をしますとあれですのでもう続けませんけれども、ただ何となく、何となくというのは変ですけれども、幾つかの、特に戦後の問題だと思うんですけれども、戦後のそういう社会的制約のしがらみが随分強くて、それをずっと壊してきたのが、今、おっしゃったような歴史だと思うんです。

事務局 そういうところを少し。

主査 ええ、ちょっと書かれて。つまり、何かがあったからこうなっていたんであって、何となくそういうことに全く無知な集団でやってきたわけではないんだということは非常に大事で、ということは、必要であれば今後も積極的に法律は変えていかなきゃいけないと思うんです。では、次に移らせていただきたいと思いますが、今度は3、4ぐらいでいかがでしょうか。一番中核、コアになるところでございますが、今後のあり方、それから取り組んでいく施策ですね。

主査 22ページの3つ目の○(丸)で、機関帰属と個人帰属についてなんですけれども、いろいろ悩んでいるところは「機関帰属」という言葉で、ここの定義もまさに、大学法人が権利を継承し、その後、その権利を保持するというんですか、法律的なことはわからないですけれども、結局、今、大学法人が権利をまず教官から職務発明として継承して、それに対して大学法人は、自らの意思で企業に渡すなど自由に処分できる権利を大学法人が持つわけです。これまで個人の教官と企業が個人対組織という契約形態でやっていたものを、これから大学という組織と企業という組織との間の契約で、理想的にはすべてを動かしていきたいということを考えたときに、機関帰属というと何かずっと帰属しているととられがちです。全部帰属させてしまうと法人はすぐにつぶれる法人になってしまうと思うんです。ですから、そこのところを何かうまい表現をお願いしたい。ここは定義で非常に重要なところだと思いますので、私たちの機関帰属とはこういう意味だというのを、機関が常に持つものも含むけれども、そうでない、1回機関を通って、それから出て行くものも、ここで言う機関帰属の意味にとらえたいというような形で。

主査 今の委員がおっしゃることは非常に重要なことで、とにかく出願するときに大学が出すという意味ですよね、帰属という意味は。ちょっと整理をしますと、今おっしゃっておられる、ここに書いてある大学機関帰属というのは、大学の対応だと思います。今、アメリカなんかがやっているやり方の多くは、一応ここで研究された成果は大学が出しますという契約をして、それに基づいて、そこで発明されたものはすべて大学が出しますと。しかし、大学が持っている特許を企業に売り渡すなり処分するなりということは、大学が責任を持ってやるんだという意味だと私は解釈していたんです。もちろん、最初の契約で大学と企業が半々でこれをやりますという契約をされていれば、それはそういうふうになるわけです。

委員 でも、アメリカはかなりの州の法律等で、大学での特許は完全に大学が常に持たなくちゃいけないという州も随分あります。ただし企業が占有実施権で、お金も維持費も全部企業が払うというのもあるから、アメリカの場合には大学機関帰属というのはかなり簡単に書けるんです。ところが、日本の場合は状態が随分違うので、機関帰属という言葉の説明を、多分この会に出られている学校関係は十分理解しながらですけれども、そうでない大学の方たちが、あるいはTLOなりの方たちが機関帰属と読んだときに、ガチガチの機関帰属に思われるのは、もともとこの会でもそうではないということは何回も出てきているわけで、そこのところがこの文章で少しわかりやすくしていただければ。

主査 ちょっとそこが不勉強で申しわけないんですが、私も、大学が持つか持たないかは大学が決めることではないかと今まで思っていたんです。これから決めることは。それで、大学が自分は持たなくいいよと、先生方が自分でやれ、あるいはTLOに全部任せる、あるいはもっとほかのチャンスがあるという自由度を持った帰属ができるということを今、言おうとしているのであって、一斉に今、特許は大学に帰属するということを宣言するものではないわけでしょ?

委員 ええ。もちろんここではその理解はできているんですけれども、この文章を読んだときにそれが伝わるかということを申し上げているだけなんです。

主査 そうですね。だから、大学帰属としてもいいよということを言おうとしているわけですね。

事務局 ご議論のとおりでございまして、判断権能が大学にまずある。それで、承継することができる。承継しないことももちろんだし、承継した後、売り払ってもいいというのを機関帰属と表現してしまっているものですから、その意味合いを超えておりまして……。

事務局 表現として、ここは今のようなことが言われているかどうか、ちょっと疑義があるということですね。

主査 そうですね。ですから、そこは誤解がないように、これは非常に大事なところだと思います。どうするかは大学の判断ですから、これからです。

事務局 今のご指摘に絡んで、22ページの下から2つ目の○(丸)、今の機関帰属の定義云々の次の○(丸)の後半部分、5行目で、「一定期間経過後、または一定の検討を経て、活用の可能性を十分に見出せなかった場合等については、維持費用の軽減等の観点から、権利の譲渡、放棄も含んだ適切な措置がとられることとなる」と。一応ご指摘のような問題も頭に残って、これは知財ワーキングの記述をいろいろなところから集めさせていただいたものなんですけれども、これもまだこなれてないかと思いますので、今のご議論を含めて、さらにわかりやすくできないか工夫してみたいと思います。

委員 この知財本部をつくるということに関連して、かなりの議論を私どももしておりますが、結局、先ほどの委員がおっしゃったような線でいくためには、教官に対して課せるのは届出義務を課す。そして、届け出たものについて大学が継承するかどうか判断しますと、そういう形にしないことには動かないと我々は進めております。1つの例といたしまして。

主査 おそらくこれは、各大学がいろいろ自分たちのやり方を工夫していくんだろうと思うんです。それは、うまく成功するところもあれば、失敗したところもあるのではないか。あるいは、すべての研究者に、ある部局は全部大学と契約をしないと入れないとか、多分、大学と契約をしないと入れない、そこに属させないということにしないと、おっしゃることはうまくいかないと思うんです。この辺どうするかは大学の責任ではないかと思います。

委員 ちょっと2点気がついたんですが、ルールとか契約に映るというのはよくわかるんですが、おそらく大学の人には、ルールとか契約というのは何のことだか全然イメージがつかめないと思うんです。現実にないわけですから。だから、ルールとはこういうものだというのを別表みたいなもので、例示みたいなものをつけるんですかね。具体的イメージを、大学にルールをつくれと言ったところで、大学自身が何かルールをつくることはできないと思うんです。真っ白なところで。ノウハウの蓄積がないんですから。何か別表みたいなものでイグザンプル(例)を示すのかなという気も、したほうがいいのか、しないほうがいいのかよくわからないですけれども、そうしないとイメージが出てこないのではないか。

主査 今の点は、前回、中間報告をつくりましたときにいろいろ議論があって、ほんとうはそれは大学に任せることだから一切やらないほうがいいという意見と同時に、やはりサンプルをつけないと実際に動かないんではないか。さらなところにやりますから。だから、こういう例があるよとイグザンプルをつけたほうが、例示をしたほうがいいんではないかという意見がかなり、今、おっしゃったようにありました。

委員 もう1点ですが、前のほうで、「産」のところにはNPOをはじめ他の組織も入っているんですが、定義以外のところはほとんど企業だけになっているんです。企業との人材交流を進めるとか。これは多分、経緯的に言えば、NPOは今まで併任も比較的簡単に認められてきたせいだと思うんですが、よく読んでいただいて、平仄が合っていたほうがいいところは合わせていただいたほうがいいと思うんです。

主査 どうもありがとうございます。ただいまの点はぜひひとつお考えいただきたいんですが、例示の点はどうでしょうか。多分、例示がないとわからないんではないかと私も非常に思うんです。どんな議論をしても、何を見て言っているのか。これはいかがですか、事務局側としては。

事務局 この点は知的財産ワーキングでもかなりご議論ありまして、やはりボリューム的にも、あと各大学の独自性、対応性を尊重するという趣旨からも、ひな形を詳細に出すのは難しいというご議論であったかと思います。ワーキングの報告書の中では、知的財産の管理ポリシーをそれぞれの大学はつくるべきだと。それで大まかな手続と、知的財産ポリシーの構成例として見出しだけ、こんな構成というのをやはりご議論いただき、今ございましたように別表でつけられております。ですので、大学にとっては、これを見てかなり参考になるといいますか、項目だけではまだどんな規定を置いていいかわからないという声もあるのかもしれませんけれども、大体どんなことをつくればいいのか、どんな内容が設けられるのか、手続の流れはどうなるのかという大まかなところは、ワーキングの報告書を読んでいただくことによって、一応、各大学は考えていただいているのではないか。本委員会の報告書にも、そのエッセンスを必要に応じて、後ろの第5章で入れるということでございますので、その中で少しでも考えられればと思います。

主査 若干それがないと、イメージがわかないと、ここで議論していることが伝わらないと思うんです。

事務局 共同研究のときにも、共同研究のモデルみたいなガイドラインをつくってやると、比較的うまく決まり出したということはございます。ただ、この報告書の性格上ここに入れたらいいのかどうかというと、少しみんなで議論いたしますけれども、何らかの、今のワーキンググループの後ろについていたようなものを引用するとか、そういうものがあったほうがいいということがあれば、何らかの手だてを考えようと思います。

主査 そうですね。ちょっとそれをお願いします。

事務局 基本的には、大学が研究者の方々と個別にやるときにやりやすくなる方策を少し考えたいと思います。

主査 どうぞよろしくお願いします。

委員 別件になりますけれども、よろしゅうございますか。今の特許の帰属のお話ではなく、17ページの真ん中、イ)人事のところの最初の・でございますが、ここで、1行目、2行目にかかっている文章と、それ以降の文章を区別した理由、すなわち「週一日程度は定期的に兼業ができるルールを確立する」とこっちはなっていまして、後は「導入を検討する」となっている。この区別の根拠は何でしょうか。私は、上も全部同じように並べてしまっていい話ではないかと思いますが。

事務局 すみません。記述を、後のほうを後から加えたという経過だけでして、文章整理が不十分でございました。ご指摘のと おり内容的には差異があるわけではございませんので、文章化のときに表現を検討いたします。

委員 前に私、お願いしたことがあるかと思うのですが、大体24ページの産業界に期待される事項か、その前の中・長期観点から見た我が国の産学官連携の将来像というところか、どっちかに当たるところにちょっと加えていただきたい件があります。今私どもには産学連携、特にこれは知財立国を目指すという一つの大きな目標があるわけで、それをやっていて、産業界の方、あるいはこういうアクティビティー(活動)の先進国と比較して、我々がかなり劣っていると思うところは、国際的な視野に立ってビジネスは行われているのに対して、ほとんどの議論が国内に集中していることです。企業の方々と接しますと、これに非常な危惧を抱いておられまして、国際的な視野に立たない特許戦略というのは邪魔にはなるけれども益にならない、とこういう指摘を受けております。したがって、どこかに、将来でもいいし、今後、直でもいいんですが、産業との連携という意味で、既に産業においては国際的な視野に立った知財というのは当たり前の話になっておるわけで、その辺を大学に委嘱するアクションが必要だ、あるいはそうすべきか、国策として行うわけですから、そういう記載が1個でもあると企業の方は大分安心すると思います。

主査 どうもありがとうございました。ただいまの点は非常に重要なところで、特許戦略というのはもともと国際的なものなんだから、そうしなきゃいけない。それに関連して、先ほど大学でいろいろなルールをつくる、どれぐらいちゃんとしたルールができているかによって産学連携の密度が違ってくるというのが、国際的に非常によく言われていることだと思うんです。ですから、ちょっとその辺、それで私はさっきひな形みたいなことを言ったんですけれども、きちっと大学が組織体として特許に対する考え方が、あるいは契約の仕方に対するルールができていないと、外から大学が相手にされないということがあるんだということを聞いております。

委員 私もちょっと戻るんですけれども。先ほどお話があった22ページの下から2つ目の○(丸)のことなんです。特許とかそういったものが帰属になった後、いろいろな形でマネジメントしていくと書いてあります。これは前にも私がご指摘したことがあると思うんですけれども、下から3行目、「権利の譲渡や放棄も含めた適切な措置が採られることとなる」、これで、実際、現場レベルでの話になりますと、権利の譲渡と放棄をするのはすごく大変なんです。もしかしたらほかに書かれているかもしれませんけれども、譲渡するためにはその特許権が幾らであるかと決めないといけないんです。放棄をするためにはその特許権が不要であると決めなきゃいけないんです。今現在の大学の事務方のある人にこれを決めろと言っても絶対決められないです。仮に無理やり決めた場合に、その後で会計検査みたいな形でチェックが入った場合に耐えられるかといったら、耐えられないか、耐えられないと思って引いてしまうんです。それによって、「適切な措置が採られることとなる」と書いてありながら、多分実際ここまでは動かないと思うんです。ですから対策としては、どうやったらば公的なというか、客観的な評価を与えられるような、お墨つきを与えるような仕組みをつくるのか、あるいは放棄の決断をどうやってしたらばオーソリテーティブ(権威的)に大学、あるいは国サイドから見てOKだと言える仕組みをつくるのか、それをどうやって事務方に教えていくのかというのをきちんとつくる必要があるかなと思います。

主査 ここに書いてあるのはではだめだということですね。ちゃんと具体的なものを伴わない限り動かないと。そういうバックグラウンドがないと、こういうことは起動しないということをちょっと書いていただければ大変ありがたいと思います。

委員 19ページの○(丸)の2つ目のベンチャー支援のところでございます。最初のご説明でも言われていましたとおり、会社法制とか証券取引、商取法とか金融法とか労働法とかいろいろ出ております。これが全部ひっかかっているんですが、まずこの報告書をだれが読まれるのかわかりませんが、もしこういうことに詳しい方でしたら、これだけ書いておいて、これは確かに問題だとご理解いただけますが、あまり法律に関係のない方でしたら、こんなのを見て、えらいことだ、大変だ、いろいろあるんだなあと、書いてあるだけで何もアクションが起こらないと思います。もしなんでしたら先ほどの1点目、例えば商取法でしたら、投資組合をつくらないと不特定多数の人に、ベンチャーに投資ができない、これで一般のお金がベンチャーキャピタルに回らない、だから商取法の何条を改正しないとほんとの意味のキャピタルは集まらないだとか、そういう何か注釈がなかったらほとんど理解していただけないまま終わってしまう。労基法にしましても、このごろサービス残業で労働基準局が喜んで挙げているんですが、ベンチャーなんかで夜仕事をしていたらけしからんとか、あるいはSOHOですから、どれが労働時間やなんてだれもわからんわけです。大正時代の労基法みたいなのものを持ってきて、昔のやみ米を挙げるように喜んで挙げています。こんなことはナンセンスで、既にだれもがわかっているのにやっていると。そういうことを具体的にここで書いていただかないとなかなか進まないのではないかと。それから、これも最初ご説明がありましたが、その一番最後のところ、起業を志す者は、公的支援を得る場合であっても全力で取り組む必要があるというのは、そのとおりなんですが、公的なものが入ったら出力が半分で、私的なものであれば全力を出す。あまりにもこれはあからさま過ぎて、その国のレベルが疑われかねない。私はやっぱり起業を志す者は、あらゆる条件下にあっても頑張れという格好にしていただかないと、ちょっとしんどいというのか、つらいというのか、お考えおき願えたらありがたいと思います。

主査 ただいまのご指摘で、法律に注釈をつけて、これはこういうことにしないとだめだというのは、多分今事務局が一番悩んでおられるのはどういう文章を書こうかということだと思いますが、これはどういうふうにしましょうか。どなたかにお聞きになりますか。

事務局 そうですね。

主査 じゃあ、そこは、先生、お忙しい方に恐縮ですけれども、注をつけていただくということはできますか。

委員 それは商取法とか労働基準法だけでして、あと会社関係の法律とか金融の法律でもいっぱいあるんです。ですから……。

主査 例えばこういうことがあるという形でお願いします。

委員 会社法のことでこれは必ずぶつかる問題で事後設立が結構あるんです。あんまりあれかもしれないですけど。特許権は結構価値があるんです。それで例えば特許権がベンチャーで10個ぐらい必要であると。1個50万円の特許でも500万円、100万円の特許だと1,000万ですよね。資本金が大体1,000万円でつくるじゃないですか。20分の1で事後設立に引っかかってしまうので、裁判所の検査役の選任とか云々かんぬんになったら実際これはアウトなんです。そんなことはやってられないんです。だから、実際のプラクティスの中では事後設立は結構ハードルになっています。こういうのは多分たくさんあると思うんです。

委員 ですから、専門分野によってものすごくひっかかって、極端な場合、ベンチャーというのは法律によってできないようになっていると言っても差し支えない。

事務局 中でもいろいろ勉強したいと思いますし、また委員の先生方にも今のような話を個別に教えていただいて、整理して記述を考えたいと思います。

主査 そうですね、どうぞよろしくお願いします。あるいは、あまり具体的に書くのはここでは適切じゃないかもしれませんので。

事務局 あるいは、後ろの第4章の施策のところに入れるということもあり得ると思います。

主査 ではその辺で。非常に大事なポイントだと思いますので、ひとつお願いします。それでは、まだたくさんご意見があるかと思いますけれども、5と6に移らせていただいてよろしいでしょうか。

事務局 4のところはこれで終わっていると。今、3を中心にお話しして、4のところはまだ箇条書きだけでございますけれども、もう少しこういう点が明らかに抜けていると。これはまだバージョンアップいたしますけれども。

主査 そうですね。どうもありがとうございます。25ページから26ページにかけまして、何かこういうところが抜けてやしませんか、あるいはこれは不要じゃないかというところがございましたら。

委員 ちょっと極論になるかもしれませんが、要はこれからとおっしゃいますが、私は今後取り組むべき施策の中で、いみじくも分科会がおやりになった次の5の知的財産と、その次の利益相反が中心課題になってくるだろうと思うんです。我々は大学でも議論していますけれども、これはかつて大学が経験しなかったことを経験していくことで、特に特許問題というのは産学連携の中心課題だと思います。そういう意味で、4のところはあんまり羅列的にならないで、特に中心になる課題は次の5と6であるという形のつなぎをしていただいて、5、6を中心に入れていただくのも1つの方法かと。といいますのは、先ほど事務局がおっしゃったように、5、6を付録にしてしまって、これは大したことないという印象になったのでは非常に困るのではないか。利益相反もこれからの問題ですけれども、非常に重要だというのは私どもの大学でも実は昨日、どうしてやるのかということで委員会の答申が出ました。そうしますと私も委員だったんですが、前のこちらの利益相反の報告書をいただいて、かなりの議論をしますと、答申の中にあと半年後にアドバイザーの委員会を立ち上げることにしているんですが、おかしなことが起こった場合に、その先生に対して勧告ぐらいはいいんですけれども、やめなさいと命令ということが入ってくる。そういうことは今までの大学の教員にはなかったこと。ゼロではないんですけれども、極めて異例のシステムというか、導入しないといけないということになりまして、これはものすごく大きな問題であって、下手したら、それならやめておこうかという議論にもなりかねない。これは利益相反の委員会の報告にもありますけれども、そうではないんだということで、啓蒙も非常に大事なんです。大学にとってはゆるがせにできない非常に大きな問題を含んでいるという気がします。ですから、5、6は中心課題として据える形をとっていただきたいというのが私の言いたいことです。

主査 どうもありがとうございます。これは確かにこれからの重要な課題でありますし、それを解決されないと大学は動かない。しかし、4は同時に今何かやれそうなことはないだろうかということも含んでいますので、こういうことを少し指摘していただいて、概算要求につなげるということも考えられますので、ちょっとご指摘をいただきたいんです。非常に重要なところは今後取り組むべき課題として5、6章に述べるということはひとつ書いておいていただくことにして、当面やることは山ほどあるかと思うんです。

委員 私も先ほどの委員と同じ意見にくみする側なんです。そこで、実はこの話が大学の中にほんとうにいい形でできるかできないかというのは、多分この辺にかかっていると判断しているものですから、5、6は主要なところだと。そのためにワーキンググループをつくって詳細な議論をしたつもりなんです。その入り口として、先ほどのまだ箇条書きになっているところの4の(4)産学連携を支える組織の強化と人材の育成というところになるんだろうと思うんです。大学側から見た産学連携の組織づくりが現在TLOという一つの言葉に強調され過ぎていて、知財の管理と、そのライセンシングだけが走っちゃっているという印象があるんです。ここだけ切り取ってやってみても、ほとんどワークしないというのが私の印象なのです。そこで、前段として5、6を入れるとすれば、産学連携を支えるというのは、産学連携の推進をするためのいろいろなファンクションがあって、それがそれぞれの大学に合った形で整えられるのが重要です。ただし、本部の知財、あるいは知財ポリシー、各論の中で重要なところが5、6という位置づけにしていただくと誤解が生じない。そうしないと、私たちも経験したんですが、最初にこれを立ち上げようとすると、知財のところだけぎゅっと切り取ってしまう。そうすると大体半年ぐらいで希望が失望に変わる。要するに、結果が出ないということです。手段はいろいろなところをトータルに進めていけば、大学のいろいろなポテンシャルを使えるわけですから、ある意味で長中期の目標に対してチャレンジするというコンセプトを4でしっかり書いていただくとありがたい。私がしつこく言うことなんですが、施策として知財本部というのが出ちゃっているものでのすから、余計知財本部がクリアカットで出てしまう。今まで産学連携のことをシリアスに手をつけていない大学では議論がひとり歩きする可能性が非常に強いという危惧があるものですから、ぜひそこのところを工夫していただきたいと思います。

主査 確かに取り扱いは非常に難しい。しかし、大学でどこまでやるかというのもまた非常に難しいところだと思います。これは企業がしゃかりきになってやってできないことなわけですから。しかし、それは重要なコンセプトというか、ものであると。

委員 先ほどの委員が指摘されたことをセカンドするといいましょうか、国際性の問題でございます。非常におもしろいんですけれども、産業競争力強化法の国会審議で、我が国でこういうものを考えますと、常に我が国社会のとかという形で閉じた発想になるんです。産業競争力強化法もそうだったんです。ところが、議論を詰めていきましすと、あの対象は我が国だけではないと言わざるを得ない。ですから、ここもこの対象は我が国だけではないということを確認したほうがいいと思います。
そうすると、そうなったときに2つのことが問題になります。1つは特許庁のほうで一生懸命特許のハーモナイゼーション(標準化)をやっていますけれども、先ほど来、議論があった帰属関係その他というのを、やはりある種の国際的なハーモナイゼーションをやる必要があるということが1つ。それからもう一つ、これは5のところに既に書かれておりますけれども、不正競争防止法みたいな形を、大学と申しましょうか、要するに機関と個人との間でしっかりした契約として結んでおかないと、ちょうど今アメリカがそれをやって日本へ持ってきたのを騒いでいることの逆ができなくなっちゃうわけです。日本からどんどん流出するという話になってしまう。ですから、今の委員がおっしゃったように、事は特許権の云々の話ではなくて、組織全体として知的財産というものをきちっと押さえていく。そのことをどこかに書いておいていただきたいと思います。

主査 そこは非常に大事なところなんです。結局組織として国際的視野できちんと対応していく。そうすると、どうしてもこれからは契約ということをせざるを得なくなっていくわけです。そこは先ほどの委員も大変難しいと言っておられるんですけれども、そこのところ、国際的視野で特許というか、発明ということに対する考え方だと思うんです。しかも研究者は国際的に取り組んでくるわけですから、どういうふうにそれを大学で、あるいは研究所で開発された研究成果というものをどう取り扱うのかということに対する考え方をはっきりしておかなきゃいけないということだと思います。これらは多分契約をしない限り成り立たないんです。契約をしないと、今度はしないような大学とは企業は一緒になってやらないということにはね返りますから、結局は考え方がきちんとしていないと順調に動かないんじゃないかということを、非常に重要なコンセプトですのでどこかに書いていただいたほうがいいかもしれません。もう5に入っておりますが、4、5、あるいは6あたりで何かありますか。

委員 17ページの人事のところなんです。長期ベンチャー休業制度等と書かれていますが、一般的に今後法人化、独法化後の人事としての休職制度です。アメリカの経済学の先生なんかが国際機関の管理職なんかによく休職制度を利用して行っているんです。具体的にどうするかはまた別ですけれども、そういうものの活用というのもあり得るんじゃないとか思うんです。例えばベンチャーでしたら、ベンチャーの管理職に休職で行くと。あるいは、ベンチャーキャピタルのキャピタリストに休職で行ってもらうとか、それでまた戻れると。あるいは休職にしておくと、ベンチャーをやって失敗したらまた戻れると。退職にすると……。使い方はいろいろあると思うんですが、使い方は別にしてそういう活用はあり得るんじゃないかと思います。

主査 休職の考え方ですね。ほんとはサバティカル(7年目ごとに大学教授が得る1年間の休暇)なんていうことも入っていると非常にいいんですけれども。

委員 前に言ったように、有給、無給はまたそれぞれ立場が違うと思うんですけれども。

委員 4も含めて5と6なんです。先ほどの委員からお話があったところと非常に関係しているんです。要するに、知的財産本部というのがございます。この報告書の4、5、6のところを読んで、知的財産本部は一体何なんだろう。それとTLOとどういう関係になるんだろう、それから利益相反の問題とどういうふうに関係するんだろうというのがわからないと思うんです。中をよく読むと、多分内容的には違う言葉で書かれていると思うんです。こういう機能があるとか、こういうふうに連携しなきゃいけないとか、こういうことをするとか。ただ、今どこの大学でも多分そうだと思うんですけれども、知的財産本部はどうやったらいんだろうときっと皆さんいろいろ考えられていると思います。どういう機能でどういうふうにつくったらいいのだろうというときに、この報告書を見てなお一層わからないと思うんです。知的財産本部とは何なんだろう。それで、29ページの下から2つ目の丸で2行目のところに「(知的財産本部機能等)」と書いてあるんです。これを見ると、知的財産本部機能というのは知的財産の管理をする、育成、活用するということを言っているのかなと。ここにキーが1つだけあるんですけれども、このキーを除いてよくわからないと思うんです。報告書の持つ役割をどうとられるかなんですけれども、それはいいんだ、それは各大学に任せる、勝手にやってくれと、勝手にそういうことは自由に創造的にやってもらいたいという立場に立たつのなら僕はこれで結構だと思うんですが、知的財産本部が立ち上がった以上、それがどういう意味を持って、将来の産学連携施策の中でどういうポジションにあるんだという方向づけを多少見せたほうがいいかなという気がするんです。最後に1点。利益相反の問題は私は個人的には切り離すべきだと思います。知的財産本部の機能から利益相反の機能は切り離して別途でつくったほうがいいと思うんです。ここは先ほどの委員の意見と相対すると思うんです。

主査 ただいまのご指摘は、知的財産本部はもう既に募集を始めているぐらいの状況でしょうから、もうちょっと機能というものを書き加えていただいたほうがいいんじゃないか。これはもっともだと思いますので、ひとつ要点を加えていただきたい。それから、そういうところから利益相反というのは切り離したほうがいいのではないかということです。この辺はいろいろなご意見がおありじゃないかと思うんですが。

委員 先ほどの委員からのご意見にもありましたけれども、利益相反の問題は、これから特に国立大学法人のマネジメントの基本にかかわる問題なので、明らかに知的財産だけの問題ではないと思います。やはり国立大学法人のマネジメントの1つの基本としてきっちり位置づけることがよろしいかなと私は感じています。

主査 先ほどの委員の話は、ただそのときに知的財産本部ですべてを処理していいのかどうかという問題だと思うんです。逆にいうと、知的財産本部というのは大学のどこにどういう形で置かれるかということに非常に強く関係していると思いますけれども、これはまだあまりはっきりしてはいないわけですね。

事務局 大学それぞれで今考えていただいて……。

主査 どういうデザインをするかはこれから二、三カ月で決まるわけですね。

委員 募集の締め切りはいつでしたか。

委員 4月11日です。

事務局 その後、2カ月ぐらいかけて決定をしていく。

主査 ただし、ああいうことは採択されてから少しフレキシブルに動いていっていいわけですね、当然いろいろな世の中の反映を受けて。そういう意味で、ここで何か書いてあればそういうことにプラスになるだろうと思います。

委員 皆さんおっしゃっているので、特につけ加えはないです。私の意見として、一番最初に事務局から言われた5と6を附属的に持っていったほうがいいのではないかという意見に私はわりと反対で、先の委員のおっしゃたように4につながる形で、5と6はかなり重要だと思っておりますので、附属にしてほしくないということが一言言いたかったことです。あと、細かい点はまたメールでもしますが、20ページの7の2番目の丸なんですけれども、地域の中小だけではなくて、中小・ベンチャーという形でもうちょっとベンチャーという存在の意識も持っていただきたいと思いました。2行目のところに中小・ベンチャーとつけ加えていただけたらと思いました。

主査 そうしますと、そろそろまとめる段階に今来ているわけでございますけれども、本日のご意見をいただきまして、また事務局の皆様方には大変なお仕事が残って恐縮ですが、骨子案の修正をお願いしたい。また、きょうお気づきの点でぜひこういうところはもう少しきちんとリマインドしたほうがいいということは、書いたもので事務局までお寄せいただければ大変ありがたい。締切はいつごろまでならよろしいですか。

事務局 また事務局からもいろいろな法制面の具体的な問題点などを個別にお伺いさせていただきたいと思います。できればペーパーでいろいろなご意見をいただければ、次回が4月16日、水曜日でお願いしたいと思っておりますので、できれば4月7日、月曜日までに一旦ペーパーでのご意見をちょうだいできれば、その週のうちに織り込んで、各委員にまたごらんいただいたものを16日にお諮りできるかと思っております。今度は文章化して長くなりますので、会議の場でいきなりごらんいただくのはほぼ不可能かと思いますので、会議の前に少なくも1回は各委員に事前にお送りして見ていただいて直したものを16日にお諮りしたいと思います。

主査 そうしますと、きょう多くのご意見をいただきましたように、4章のところで5、6が大事だというのをはっきり述べていただいて、5、6の具体的な課題をもう少し整理していただくと。特に知的財産本部を含めて。それで、その場合、利益相反と知的財産との扱いをどうするかということには2通りあると思うんです。1カ所で全部まとめてやるのがいいという考えと、そうじゃない、別なところでやったほうがいいんじゃないかという。これはおそらくスタンスで随分違ってくるんじゃないかと思うんです。ですから、そんな形で取りまとめができれば大変いいんじゃないかという気がいたします。6番の利益相反というのは大変広い、大学自身がどう扱わなきゃいけないか、行動しなきゃいけないかということを言うわけですから、確かに知的財産はその中の一部だと考えますと、一体にして扱う場合とそうでない扱いが2つあると思います。そのスタンスをお願いしたいと思います。最後に事務局のほうで何かございますでしょうか。

事務局 きょうは貴重なご意見ありがとうございました。先ほど説明でさらっと言っていたのでお気づきにならなかったかもしれませんが、25ページの今後取り組むべき施策の一番上の丸ですけれども、「今後本委員会において、必要に応じて施策の進捗状況をフォローする」ということで、これは今までもご議論があるように、かなり産学連携の体制整備というのはできてきて、今や何となく実行の段階に来たという感じがしますので、報告書をまとめても先生方にはまた引き続きそのフォローをお願いしたいということと、先ほど堀場先生がおっしゃったように、今まで総論的には指摘されていますけれども、細かい点でまだ制度の改革が必要なものはなるべくこの際きちんと出して、今まで言ってきたことでここまでできました、それからこれはまだ言ってはいるけれどもできていないというもの、それとさらに運用その他で改善しなきゃいけないものを足して、積み残しと今後やらなきゃいけないもの全体をさらにきんとやっていくというのが基本的な考え方かと思っております。またそういう趣旨で報告書を、中でもよく議論したいと思っておりますが、繰り返しになりますが、ぜひお気づきの点をまた文章でお寄せいただければと思います。よろしくお願いいたします

5.今後の日程

 次回は4月16日(水曜日)に開催予定である旨、事務局より連絡があった。

お問合せ先

研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室

(研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室)