産学官連携推進委員会(第19回) 議事録

1.日時

平成15年3月19日(水曜日) 10時~12時

2.場所

虎ノ門パストラル ミモザ

3.出席者

委員

 末松(主査)、市川、伊藤、川合、川崎、北村、清水、白川、田村、平井、堀場、安井、吉田

文部科学省

 丸山審議官、坂田大臣官房審議官、田中研究環境・産業連携課長、小山技術移転推進室長、佐々木技術移転推進室長補佐 ほか

4.議事録

○ 「産学官連携推進委員会報告書骨子案」について

  • 資料1、2に基づき事務局から説明した後、その内容に関する質疑が行われた。
    その内容は以下のとおり。
    (◎・・・主査 ○・・・委員 △・・・事務局)

主査 今までの議論をよく取り込んでいただいて、また「中間まとめ」も活用していただいて骨子案をつくっていただきましたので、本日はこれにつきまして、全般的なご議論、足らないところ、あるいは書き過ぎたというようなところをご指摘いただきたいと存じます。事務局から説明ございましたように、4月ぐらいにまとめるというのも1つの案であるということでありますので、その辺を視野に入れてご発言をいただければありがたいわけでございます。行ったり来たりしますと大変かと思いますし、7章に区切られておりますので、2章ぐらいずつ一緒にやっていってはどうかと思います。そうしますと最初の8ページぐらいまで、産学官連携の意義と、これまでの歩みというようなところでご意見をいただきたいと存じます。

委員 今さらこんなことを言うのも申しわけないんですが、けさたまたまテレビを見ていましたら、「卓越」という意味がわからない大学生がいるとかというので驚きました。そういうことを考えると、我々も「社会貢献」という言葉は要注意ではないかと思うんです。要するに社会側から見て貢献があったかないかという判定ですから。そういう意味で言うと、むしろ私は大学と社会との関係とか、社会的存在とかという、そういうとらえ方のほうがいいのではないかと。貢献というよりも、社会との間のコミュニケーションが従来は欠けていたという視点でとらえるほうはいかがかなという、言葉の問題として。もう一つは、利益相反の議論をやったときに割合シャープになったことなんですが、5ページの「個人的連携から組織的連携への転換」という言葉です。組織的連携の意味によっては、かなり広い意味で、それなら初めから大学は民間の組織としてあればいいということになるのではないかと。今までの体制は個人的にやろうとすることに対して、大学という組織はどちらかというとディスターボ(妨害)をしていたとか、制度がしがらみをつくっていたという、そういう意味で利益相反問題も起こったりしていたので、個人が中心となってやるべき、そういう産学連携のいろいろな動きを、大学という組織がどう支えるかという、組織はむしろ個人の活動を支援するという方向で考えるほうが、より合理的なのではないかという気がいたしました。そうでないと後の9ページになるんですが、利益相反の問題というのは、シャープに大学が利益相反を起こすということではないわけだと思いました。以上2点、とりあえず気がつきました。

主査 非常に重要な2点でございます。これは見方によっては、いやそうでないというご意見があるかもしれませんが、大変重要なご指摘をいただきました。

委員 私ども産学官連携で実際にベンチャーをやってみて、どういう変化が起こったかと申しますと、例えばシステム設計の上流の設計においては、技術革新によりまして、大学のほうが絶対に企業よりも、質的にもスピードの上でも、非常に上でありますので、何か世の中の背景が変わったということが、産学の連携を進める非常に大きな契機になっていると思います。ですからそういう立場から、何か技術革新によって背景が変わったということ、しかも基礎研究とか応用研究とか、実用化研究というのはコンカレント(同時並行的)にやっていかないといけないという時代になったときに、大学が果たすべき役割というのは非常に大きくなったということをどこかで。どういう言い方がいいかわかりませんけれども。特に3ページの1で、「独創的コンセプトが生まれる」というのではなくて、もっと積極的に企業と一緒に研究をやりますと、考えられないような研究シーズが入ってまいります。企業の人たちはわかっていないんですけれども、一緒に大学とやりますと、こんな研究が必要なのかという、独創的コンセプトには間違いないんですけれども、ほんとうに考えられないような研究シーズを我々のほうで意識するというようなこともあります。何かそういう積極的なところから、どういう文章にするかはわかりませんけれども、もっと積極的な表現があってもいいのではないかと思います。

主査 産学連携の背景をもうちょっと明確にするということと、産学連携で、むしろ大学人が新しいことを発見するチャンスというのをもっと強調したほうがいいんじゃないかということですね。

委員 先ほどの委員がご指摘になった、特に後半のほうはかなり大切な問題だと私は思うんです。要するに産学連携というものを考えたときに、個人がやりたい、やりましょうということを、大学としてサポートする体制という認識を持つのと、大学が組織的主体として産学連携をやりましょうというのとでは、これは大分話が違うと思うんです。あるいは理念の相違かもしれません。現在、大学の法人化等に関連して進められている議論は、少なくとも教育と研究については、大学はマネジメントがしっかりした組織体にならにゃいけませんよという方向だとしか読めないわけです。3番目の社会貢献というものも、そういうコンテクスト(文脈)、その枠組みの中で、大学として──社会貢献という言葉は、先ほどの委員がさっきおっしゃっていましたが、ここでは仮に使わせていただくとして──社会貢献するんですよと、マネジメントレベルで考えていくのか。そうではなくて、先生めいめいがやりたいというのを支えるのか。これは一遍議論をしておかないと、私は怖い。どっちに転んでも後ろが寒いような気がいたしますので、各委員のご意見を徴収していただければよろしいかと。
私はどちらかといえば、もうここまで法人化ということでマネジメントを打ち出しているとすれば、結局大学というのは世の中から3本の柱を期待されているのではないか、と思います。教育、研究、社会貢献と。とすれば、大学側が主体的にこの活動を推進していくという立場で考えてもいいのではないかというふうに解します。

主査 ただいまのご議論ですが、実は中間報告では、社会貢献といいますか、産学連携ができるように大学が組織化されるべきであるという言葉がどこかに入っていたと思います。つまり教育、研究、産学連携についてもっと組織的に対応しなければいけない。ただ先ほど別の委員がおっしゃったのは、つまりそういう形を通して個人を支援するというのは、外から大学に対応があったときに、個人個人の先生が、立場の相違によって全く違ったことを言われて、どういうことなのか全くわからないというのと、特許取得あるいは研究費の導入等に対しては、やはりしっかりした組織をつくらなきゃいけないというふうなことをどこかに、たしかかなり重要に、5本柱の1つにそれを書いたと思います。

委員 利益相反のワーキンググループのところで、確かにいろいろこうした議論をさせていただいて、要するに先ほどの委員のおっしゃったお話、まさにそのとおりなんです。ただ、基本的に産学連携のエンジンになり得るのは個人かなというところでやはりベーシックな理解があって、ここにも書いてございますけれども、個人が、1人1人が担う役割が非常に重要で、それが総体として大学というものになると思います。いわば大学が平均値というんですか、あるいは上限値、下限値かもしれないんですけれども、そういったある統計的なディストリビューション(分布)をどのぐらいに持っていくかということについて、まずポリシーを持つべきであって、それに合うように活動を支援すべきであり、場合によっては支援しなくてもいいというような形。なおかつ、例えば今度独法化いたしますと、大学が予算の配分であるとか、あるいはヒューマンリソース(人材)の配分とか、そういうところがかなり自由になりますから、そういう意味で我々はこういうふうに支援をするんだと。しかしあくまでも動くのは各個人がエンジンとなって動いていくんだろうというような理解だった気がいたします。

主査 これは非常に重要であり、これからの大学の対応に対しては非常に必要なことです。要するに個人のポテンシャルが高くなければ、これはお話にならないことで、幾ら大学が社会的にやってもだめだと考えられる面があります。同時に個人が幾らやってもだめな、つまりそうでない先生に接触した場合には全く動かないというようなことがあって、そういう場合には、こういう人にどうでしょうかと紹介ができるような組織が必要だと。多分これは、両方一体化しないと動かないことだと思います。

委員 今のご議論、私も基本的にはそうだと思うんですけれども、そこで一番の分かれは、組織体が、ある組織目標を持って、それに適した人材を集めてくるかどうかの問題です。今、スタティック(固定的)に存在している人が産学連携をやりたいと。それでそれをサポートするという発想なのか。そうではなくて、今いる人が研究しやすいように、大学がマネジメントをしっかり持っている組織体として、例えば本学はこういう方向でひとつ打ち出そうといったときに、その研究者を高給をもって集めてくるということが不可能なのです。外国では可能になっているわけでございます。それが今日本では必ずしもそうではない。同じことが社会貢献にもあり得るとすれば、人を集めてくる段階まで飛びますと、実はマネジメントが先にあるという話になるのではないかという気がします。

主査 ここのところは大変大事なところでございまして、MITなんかを見ていましても、これは産学連携への研究費と限定はされていませんけれども、要するに研究費を集めてくる人を集めるという観点に立つと、当然産学連携でもできる人でないといけないということが言われるわけですが。

委員 この報告書も結局、今の委員がおっしゃったように、大学という組織はイメージされているんですけれども、研究組織のイメージはあんまりないように思うんです。現実はどうなっているかというと、科学研究費補助金のプログラムで講座単位を軸に研究をするとか、あるいはCOEの形で組織化すると。だけどそれはほんとうに縁の切れ目が金の切れ目という程度の、金目の組織でしかないんです。例えば、お国の金ですから使いにくいのは当然ですけれども、恒久的に人を雇う、まあ、COEプログラムなんかでは雇えることになっていますが、例えば事務員なんかを恒久的に雇うというのは非常に難しいわけです。社会保険料の関係があるから長期雇用ができないとか。どういうふうな研究組織体、大学によっては違うと思いますけれども、特に京都大学みたいに、あんな巨大な組織になってしまいますと、研究マネジメントを大学本部でやるというのは無理ですから、やっぱりCOEとか、そういった研究プログラムの中でのコントロールしか多分ずっとできないと思うんです。そうすると今、文部科学省も一生懸命お金をかけてやろうとしているんですけれども、今のところは金目のプログラムだけしかなっていないように思って、だから私が申し上げたいのは、大学の中に研究プログラムとしての組織化をどうつくるか、ここの報告書の中の話じゃないかもしれないですけれども、それがうまく外とマッチングしないと、研究マネージというのを大学の組織に任せるといったって、それはなかなかできないんじゃないかと。むしろマネージができる仕組みを、また大学の中にどうつくるかということが同時にないと難しいかなと思うんです。

委員 ちょっと紛糾したんですが、私の理解は非常に素直でして、実は4ページの一番下の「・」が1つあるんです。「各大学の中でも、教員一人一人の担う役割は」、これは中間報告とはみ出た部分の議論として、「多様でありうる」。「その組織としての総体が大学としての個性・特色となる」と、先ほどご指摘があったことがここに書いてあるんです。これと、実は中間報告では5ページ、枠の中の一番最後に「こうした点を顧みれば、これからの我が国の産学官連携に求められるのは、個人的連携から組織的連携への転換であるといえよう」と。これが余りにも飛躍し過ぎているので、ここのところに、要するに、こういう個人的な連携をより積極的に、組織的として支える、そういう考え方や、あるいは制度なりが十分でなかったというような記述にしていただけると、より意味があるんじゃないかと思います。

主査 この辺、事務局にておまとめの際に、ひとつごらんいただきたいと思いますが。

委員 今のご議論、非常に重要な点だと思います。産学官連携は非常に多様です。個人もありますし研究グループもありますし、大学全体もあるという、いろいろな面を含んでいるわけで、その中で共通な点を求めていくということではないかと思います。特に知財ワーキンググループの議論では、これまではどうしても大学の個人の先生と企業という関係で、その結果としては、場合によっては個人の先生、企業の利益でありますけれども、大学全体としては、個人のものということで一切関係がなくなっていますから、その後の知財がどうなっているかは一切、どこの大学でもフォローができていないし、文部科学省でもフォローができていないと思います。これをきちんとフォローできるような形、あるいは個人と企業ではなくて、個人の研究成果ではありますけれども、それを大学が契約という形できちんとやっていこうというのが基本的な考えです。その結果、大学として得るものは、やはり教育の充実とか、場合によっては研究の充実とか、そういうところにフィードバックがかかるということが一番重要ではないかと思っております。つい10日ほど前にスタンフォード大学に行く機会がありまして、改めて聞いてみますと、スタンフォード大学もMITも、ミッションに一切研究というのは入っていないんです。教育だけなんです。知の創造、継承だけしか入っていない、あるいはそのための教育等しか入っていない。一切、産学連携とか、スタンフォードの学長も言いませんし、教育だけです。教育、教育ということを言っておられる。産学連携あるいは社会貢献というのは、大学としてはやはり教育という面を非常に重要視しながらできるんだということを、この骨子案にも形にしていかなければならないのではないかというのを、私は改めて感じました。

主査 先ほどの委員が教育とおっしゃったことが非常に重要であると。

委員 実は先ほどの委員がおっしゃったことと全く同じだろうと思うんですけれども、実際に産学連携を推進していくという立場から言うと、1つの個々の研究者の多様性というのは、大学がなくしてしまえば、これは全く牛を殺す話になると。これは議論するまでもない話だと。ただ、今ある目的にとって、大学というマス(集団)がディレクション、ベクトル(方向性)を向けようといったときに、やっぱり組織としての対応がないと、これは方向性を、せっかくあるポテンシャルを束ねることができない。これはまた先ほどの発言をサポートする形なんですけれども、私もその辺のアメリカで成功しているところと失敗しているところと、これを見てみますと、産学連携という形で産業再生に何とか貢献しようと、こういう目的があるときに、個々のベクトルを強引に組織としてそろえるのではなくて、個々の人たちがベクトルをそろえられるような支援体制をつくると。MITで一番力を入れているところを見てみますと、TLOじゃなくてリエゾン組織、要するに企業と大学がそのまま自然的に結びつくならいいんですけれども、それぞれのファンクション(機能)が違うから、自然に結びつく部分もあるけれども、だれかが支援してやらなきゃいけないと。これは個人ではできないので、大学が組織として運営しない限り持続的にはできないと。こういう立場に立つので、先ほどのこの表現、日本の大学に欠けているのは、組織としての動きが欠けているということは、この時点では強調していただかないと、私たちやっている人間が2階に上がったままはしごがなくなっちゃうということになりかねないですので、ご考慮いただければと。

主査 わかりました。それでは1、2だけに議論を集中できませんので、3、4にそろそろ移りたいと思いますけれども。

委員 その前に1点だけよろしいですか。産学官の定義とかいうところが2ページあたりにありますね。過去にも議論があったと思うんですけれども、地域とか自治体とか、そういうのが後のほうになると地域での取り組みの強化というのが出てくるんです。これを読んでいると、例えば「官」という、一番最後のほうに「官」とは「公的資金で運営される研究」主体としての「官」と、サポートする側、制度を整える側としての「国」というようなくくりが一番下に書いてあるんですけれども、そうすると、いわゆる公とか自治体とかいうものを、一番最後の「官」に部類分けするべきなのか。もしそれなら、そういうのをこのあたりで少し触れておいたほうが、後の議論にもいいのかなという気がするのですけれども。

主査 この前の議論では、はたしか「官」は「公」も含んでいるということになっておったかと思います。「産」は、いわゆる産業だけじゃなくて、もっとNPOだとか、そういう民間的な広がりを含んでいると。

委員 そうすると「国」の役割というところに、「自治体」の役割もというふう読めばということですね。

主査 はい、それは当然入っていると。それでは一応議論を3、4に移らせていただきますけれども、1つだけ、5ページの今までのところに、「「あうんの呼吸」型」とありますけれども、従来の日本の産学連携の非常に大きなところの1つは、研究室の中で企業と行われていたものに加えて、学会が毎月開かれていると。学会も非常に細分化された研究会が、例えば通信学会ですと、今60か70あると思いますが、数十人の集団になって、あらゆる分野で毎月、ほとんどまだ未発表の議論をしているというあたりも大変密な産学連携ではなかったかと。それから博士課程の卒業生が卒業していくということが、これは最大の知識移転だと思うんです。ですから「あうんの呼吸」だけじゃなくて、それはちゃんとした学会の中で議論しているわけですから、やっぱり契約をしない形の産学連携という感じがすごくするんです。非契約型だということで。ちょっとその辺、事務局にもご留意をお願いしたいと思います。あまり学会の今までの大変な貢献は言われていないんですけれども、私はこれも非常に大きく、今でも続いている貢献だと思います。しかも学会の議論は概念としては一種の非公開に近いんです、率直なところ。最近、いや、それは外に出るからというような議論をしているぐらいの話であって。それから日本の春秋の年次大会というのも、場合によっては公開なんですけれども、意識としては非公開。国際会議でしゃべるときは完全に意識するという、そういう使い分けをしてきましたので、その辺ひとつ、今までの貢献というところに入れていただければありがたい。それから大学院生ですね。それでは次の「3.今後の産学官連携の在り方」、実は既に踏み込んで議論しているわけでございますけれども、それと4番目の「今後取り組むべき施策の方向性」ということで、21ページまでについてご議論をいただきたいと思います。もちろん1、2に返っていただいても結構でございます。

委員 先ほどの議論と3、4を結ぶというところで、ちょっと先ほどの委員のおっしゃったところで誤解があるといけないと思って、コメントしたいと思います。スタンフォード大学の例をおっしゃいましたが、教育というのが前面に出ていて、産学連携というのはあまり出ていないということなんですが、僕は教育の中に、そういうふうな社会が含まれているんだということは忘れちゃいけないと思っているんです。ちょっと今の議論だと、産学連携と教育が対立するような印象を持たれたようなところもあるので。これは実は後のほうにつながってくるので、まずそこを明らかにしておきたいと。それで教育に結びつくということですと、産学連携と関係するような教育で、後ろの18ページぐらいにありますけれども、ほんとうにそういうのをやる人を育てるというのはすごく大事ですね。アントレプレナー教育というふうな言葉を使うことがあるんですけれども、特に博士課程の学生が、日本だと学生なんですけれども、ヨーロッパだと博士課程の学生は社会人の意識があって、そこがすごく違うとよく言われている。ここの教育のところに、やはりさっき言った産学連携のようなもの、そういったものも教育としてすごく大事であるような視点を強く入れるというのは大事かなと思うと。それは学生の意識が非常に、今ドクターコースに行っても研究者だけというふうな意識があって、逆に研究者の意識が強過ぎるような気がします。ほかには、社会貢献にはあまり興味ないというような。そこはいろいろな意見はあるかもしれませんけれども、少し改善すべき点かなと感じます。だからいろいろな教育がありますけれども、例えば僕らはCOEに選ばれて、アントレプレナー教育を1つカリキュラムとしようという試みをしています。アントレプレナーとは起業家、業を起こすというあれですけれども、みんな起業しろということを言っているのではなくて、そういうのがやりたいという学生が出てきたときに応援するようなシステムがあってもいいんじゃないかということでやっているんですが、18ページあたりのところで、そういう教育に人材の育成もあったらいいかなということでコメントします。

主査 アントレプレナー教育が大事ではないかというんですが、ほんとうにおっしゃるとおりで、こういうのは大学の先生なんかが講議するよりは、産業界でやってきた人が1人どかんと入ってきて講議をすれば、全く周りは変わっていくと思われますので。

委員 2のところへ戻って申しわけないんですけれども、文章の中にあるように、契約によるような形をするといったとき、大学が契約するというと、やっぱり本部に何か委員会をつくって、そこが契約するというふうな発想になると思うんです。けれども、契約というのは知らない人がやってはいかんと思うんです。だからプロジェクトをつくって、プロジェクトリーダーが契約できるような仕組みにして、大学本部の契約を管理する部門は、それを支援するという仕組みにしないと。大学でよくあるように、何とか委員会をつくって、そこへみんなが丸投げして、だれもわからない人が議論するというふうなことになってしまう恐れがあるんじゃないかと思うのです。何かそういうふうな、契約の主体者ですね、それが実際にやる人のリーダーにできるということを明確にしてもらいたいと思うんです。それから、今おっしゃったアントレプレナー教育というのは、経営者の方に来ていただいて教育するというのも大事なんですけれども、日本は、ちゃんとした方に来てもらったら大丈夫なんですけれども、ほかの経営者はほとんど役に立たないと僕は思うんです。やっぱり専門に長年勉強して。アメリカでは大学に来て教える経営者の方が多いわけですね。あれはむしろ大学で教えられる人が経営者になっているんじゃないかと私は思うんです。だからその辺の、日本の場合はビジネスという研究領域が非常に小さかったですから、その蓄積が小さいということの問題点ではないかと思います。

主査 今のご指摘で、大学はむしろプロジェクトリーダーが契約するのを支援すべきだと。そのための組織をつくろうとしているわけです。今おっしゃっている皆さんの組織というのはそういう意味であって、大学本部ですべてを決めるというものではないと。それからもう一つ、あるいは追加しなきゃいけないんじゃないかと思いますのは、現在、まあ、先ほど教育ということを言い出されまして、大学は教育をというのは、そのとおりなんですね。大学の本部というのは本来は教育をものすごく熱心にやって、MITなんかでいうと、今度は産学連携のリエゾンをやるところは別途あって、大体リタイアした教授あるいはリタイアした産業人が中心になって、今度は産学連携をやるという本部があるわけです。そういうふうに分けて、それぞれが1つの大学を支援しているという、そういう形では大したことないかと思うんです。ですから恐らく産学連携というのは、大学の中の1つの特殊なやり方、すべてではないわけです。大きな大学で見るとほんの一部。そういう意識があって、ほんの一部なんだけれども、それは非常に大事な、しかしある大学では、それはほんの一部じゃなくて全体をカバーしているというようなことになりますし、文科系の非常に多いところですと、ほんとうにほんの一部になる。そういう意識をある程度この中に持たせないといけないのかなと。それが事務局が大変苦労して書いておられる「個人」だとか「組織」だとか、そういう発想だと思います。あるいは「大学の個性」、「個人の個性」ということだと思いますので、どうぞその辺は皆さんの了解のもとだとご理解いただきたい。先ほどの委員がご心配になっておられる、ほんとうに契約するのはプロジェクトリーダーなんだけれども、しかしそのルールは大学が持っているということだと思うんです。そしてそれを支援していると。大学なのか、あるいは大学のリエゾンが非常に強力に進めていると。

委員 先ほどの委員のご指摘についてなんですけれども、関係したところで。ご指摘の点は全くそのとおりかと思うんですが、非常に細かい話で恐縮なんですけれども、プロジェクトリーダーの方が、研究者の方が、もし契約の決済ラインに入ってくることになると、倫理法との関係で利害関係者の問題が出てくるんです。これはそもそも僕は、ほんとうは倫理法のほうに問題があるのではないかというか、今後新しい倫理法を考えていく必要があるかと思うんですが、産学連携を進めていこうとされる研究者、教官の方が、何らかの形で決済ラインに近づくとか入っていく場合には、常に倫理法を意識しなきゃいけないと。そうなると未公開株譲渡の問題が出てきますので、ベンチャーをつくるとか増資するとか、いろいろなところに必ず制限が入ってくるんです。そこはいつも気をつけるべきだと思います。本筋から言うと、そういう倫理法の問題を気にしないで、先ほどの委員がおっしゃるような方向に行くべきだと思いますから、そういう観点からすると、将来的には倫理法の中に1つもう少し、何といっていいか難しいですけれども、こういう産学連携に見合ったような規定、まあイミュニティー(解釈)ですね、何かそういうものを少し考えていく必要があるんではないかと思っています。

主査 倫理法といいますか、そういう組織としての考え方がはっきりしていないといけないということですね。

委員 15ページ6のところに「人文社会分野での産官学連携」という項目がございますが、この委員会といいますか部会というのは、技術・研究基盤部会ということは、自然科学系に絞られておりますのでしょうか。もし絞られているとしたら、ほかに人文社会系の産学官連携部会というのは別にありますのでしょうか。

事務局 そういうものはありません。

委員 ないんですか。ないとなると、単に6で、3行で「産学官連携を」だけしか記述されていないというのは非常にアンバランスではないかと思うんです。ほんとうに産学官連携し、大学発1,000社のベンチャーでもつくろうとしたら、これにまつわるところの、例えば商取法の問題とか金融の問題とか流通の問題とか、いろいろなビジネスモデルの問題とか、あるいはそれ以外の労基法の問題とか、あらゆる障害が立ちはだかって、これらを取り除くということは、今まで論じられたシーズの移転とかいうよりもエネルギーがたくさん要ることです。この「死の谷」というのは大体、技術的な「死の谷」もございますが、それ以外の「死の谷」のほうがはるかに悪質で底が深いんですが、これをどうしたらいいのか。このようなことを今言うのはいけないのかもしれませんが、ずっとご説明聞いていて、看過できないことだなという気がいたしました。それに関連しまして4ページのところに、先ほどもちょっとお話が出たんですが、1人1人の先生の問題が出ていましたですね。先生を、あなたは教育専門だとか、あなたは研究専門だとか、あなたは産学連携中心だとか地域貢献だというふうに、あんまり限定してしまうようなことはないでしょうか。ちょっと心配なんです。私は研究方だから産学連携はやらないとか、私は教育方だから社会貢献はやらないというようなことではないと。先ほども出ていましたが、教育そのものが産官連携に大変大きな役割を果たすということを意識しないと。もう一つは私も経験したんですが、ある国立の研究所でしたが、私は論文を見まして、これはおもしろいと思って先生のところに行ったら、いや、私は研究開発でおまえらと産学連携はしない、と言わんばかりのご発言でした。しかしそれは、我々から見ると非常に実用的になる研究であったので、いろいろ話をして、結果的に先生にもこっちを向いてもらいましたが。自分では、私は研究専門だと思っていても、我々から見たらものすごい産学連携のシーズを持っておられる先生もあるので、私は研究専門だとか教育専門だとか、先生をあまり断定したり、自分自身でそう思い込んだり、あるいは他人から、おまえは研究者方だから、あんまりうろちょろするなと言われたりするということは非常に困るんです。大学の教職員がいろいろな立場において社会貢献するんだぞという、意識改革をしようというのが今回の一番大きな問題だと思いますので、その辺ちょっと、大学の中でも、あまり先生を断定せんようにし頂きたいと思います。

主査 ただいまのご指摘、最初に人文社会分野での産業連携という話が出ましたのは、例えばNPOですとか、むしろ非常に社会が要求している課題を、大学の先生が非常に熱心にやっていることが多いので、いわゆる産学連携というよりは、むしろ人文社会系のそういう連携が非常に大事じゃないかというような文脈から出てきていると思います。ただ、もっと大事なのは、法律の問題等がということは、これは恐らくどこかに書いていただく必要があると思いますので、大変重要なご指摘として承ります。それを言ったわけではないと。それからもう一つは、教員の多様な役割と言っておりますのは、もちろんおっしゃる趣旨で、これから大学組織としてそういうことに対応していただこうというのがこれからの議論で、おっしゃるとおりだと思いますけれども、大学の先生の中には、例えば文学をやっていらっしゃる先生から、ほんとうにベンチャーを起こそうという先生まで、いろいろいらっしゃるわけです。それはやはり、大学における個人はそういうものであるので、ほんとうに外部に対する対応を組織として行いたいという、今おっしゃるようなことに大学はこうですよと対応したいということを言おうとしているわけです。個人がてんで勝手に自分は社会貢献しなくてもいいと思わせる、ということではないんです。ただ非常に濃淡がありますので、個人に聞いてみると、こんな熱心にやっているところに反対のような意見が出てくると。しかしその意欲を取り上げてはいけませんよという意味であります。おっしゃるように、そういう人が産業界から見て大変立派なことをやっておられるとすれば、こういうことはどうでしょうかというようなことを組織としても対応するし、外部からも対応していただけるようにすると。そういう趣旨だと思いますので、今の委員のご提案の趣旨が生きるように、事務局にまたどこかに書いていただきたいと思います。

委員 今おっしゃっていただいたので、特に付け加える必要も無いかもしれませんが、1つもし書き込めるとすると、今のような指摘はあるんですが、要するに大学人個人の意識としても、自分の役割を非常に固定的に見るのではなくて、場合によってはその人のライフサイクルといいますか、ライフスパン全部を考えたときに、どういう形で移動しながらといいますか、価値観を変えながら社会貢献をしていくような人間がもう少し増えてもいいんじゃないかみたいな書き込みはできるかもしれないという気がいたします。

主査 それは非常に大事で、大学人は40年ぐらい1つの大学にいる人もいるわけです。そうすると30代ぐらいは非常に基本的な萌芽的なことをやっていて、それがいつの間にか50近くになってくると、世の中から大変注目を受けてという変化もある。ただそのときに、非常に萌芽的なことをやっている人はそっとしといてやるという。だれも相手にしませんから。幾ら本人が騒いでも世の中が相手にしないわけです。それはそれとして、それが30年もたつと、大変世の中が相手にしてくれるようになるという面もあるということですね。

委員 先ほどの委員がおっしゃった話とも関連すると思うんですけれども、社会科学系で産学連携といった場合、人材交流が非常に重要だと思うんです。経営者が教授になり、教授が経営者になりという。実際、官学では随分進んでいて、経済企画庁に入って、東大に行って、内閣府の局長で戻って、そして今度、日銀の副総裁になる方もいる。何かものすごくシンデレラストーリーみたいですけれども、そういった出し入れが官学の間でできるようなことぐらいを。これはやっぱり公務員だから割合やりやすかったんだと思うんですけれども、産業界とも出し入れが自由にできるような仕組みですね。今までも議論になったと思うんですけれども、単に年金のポータビリティ-(流動性)だけじゃなくて、もっと積極的に出せる。一番のネックはやっぱりポストですから、産学で交流のできるポストをつくるとか、そういうことだと思うんです。

主査 私もほんとうにそう思います。人物交流が一番の1つの大きなファクターであって、それが影響を与えることは非常に大きい。それが今度国立大学でいえば、法人化がされますと、そういうポストがいろいろできますので、非常に対応ができるようになるし、今までどちらかというと教員、事務官という、そういうカテゴリーしかなかったんですが、中間というのは変ですけれども、場合によっては産学連携を専門にやる人とか知的財産を専門にやる人、あるいは広報を専門にやる人とか入学試験を専門にやる人とか、非常にバラエティーのある、しかもそれが非常に重要な位置づけをもって遇される大学に多分なっていくだろうと思います。これが恐らく法人化で行われるんじゃないでしょうか。

委員 今までの議論とちょっと外れて恐縮なんですけれども、12ページから19ページぐらいまでですか。これ全体を通して、先ほどちょっとおっしゃいましたけれども、知的財産を生み出すこと、あるいは生み出した知的財産をビジネス化すること、あるいはその知的財産を移転することというのに非常に大きな比重がかかっているんです。ところが、これは仮に社会貢献なんですけれども、社会貢献という形で見たときには、殊に人文社会科学と入れましたときに、そういう形だけではなしに、先生が持っている知識、知恵というようなもので企業経営に参画するとか、あるいは地方公共団体や国家のいろいろな審議会……。ここにいらっしゃる皆さんはみんなそういう形で、恐らく特許を持ってここで議論しているんじゃないわけですよね。皆さんの人格、見識、非常に高いものがここで生きているわけです。そういうものも非常に大きな社会貢献だと思うんですが、どうもその雰囲気があまり見えていないんです。ユニバーサル・オブ・カリフォルニア・システムで、あそこに「ファカルティマニュアル」というのがありまして、そこで社会貢献というものが書き出されています。ステートガバメント(州政府)であるとか、フェデラルガバメント(連邦政府)の、そういう活動みたいなものは非常に重要視しているわけです。したがって、ここで言う産学官連携あるいは社会貢献というものの中に、そういうものを入れ込むのか、入れ込まないのか、その辺はちょっと決心する必要があるんじゃないかという気がいたします。

主査 今おっしゃっているのは前提だと思うんですが、社会貢献の非常に有力な一種であって、何で抜けているのかよくわからないんです。いや、大変重要なご指摘で、それが非常に大きな1つだと思います。それから知識を生み出した特許といいますか、契約型の連携もある。多様なものがあるんだと思います。いいご指摘をいただきましたので、ぜひ入れさせていただきます。

委員 全く今まで議論していなかったことなので、急に言い出すのはいかがかと思うんですが、この厚い資料の最後のほうに総合科学技術会議でまとめた資料があるんですが、TLOがいくつできて云々とか、本分では15ページあたりにも、いろいろのベンチャー育成というのがあるんです。どうも私は心配性なんですが、むしろ新しいビジネスとして、こういうベンチャーを起こすときに、例えばTLOが保険に入るという、そういうベンチャーのリスク回避のための保険制度というのを少し政府で考えるというような、制度化をしておくというのはいかがなんでしょうか。要するにそれは金額的なリスクももちろんあるんですが、ある先生がある期間、そっちを一生懸命やっていた結果、結局復帰できないという事態になったとき、そこからをどうするかとか。ニュービジネスをこれから大歓迎だと言っているので、保険は今のところシャビー(未整備)になっちゃって、外資にほとんど征服されているんですけれども、むしろそういう新しいベンチャーでの失敗をフォローすべきではないかと。なぜかといいますと、私の経験ですと、科学技術振興事業団で1961年から委託開発事業をやっていて、3,000億円ぐらい投じているんです。それで現在、年間どれくらいのロイヤリティー収入があるかというと、最高時点で12億というのが一昨年あったんですが、今年は8億ぐらいなんです。ということは、それくらいしか資金の回転量は、リターンとして入ってくるのは少ないわけです。ロイヤリティー収入というのは。ですからそういうのが常に、ある保障がないとなると、何らかの一種のビジネスリスクを避けるための保険というのを考えておいたほうがいいような気がします。むしろバックアップするという話も、積極的にやるという話と同様に意味があるような気がするんです。

委員 事業の保険はベンチャーキャピタルなんですね。だから、おっしゃられるのは多分個人の保障で、中小企業共済事業団か何かが、そういう共済、経営者の保険みたいなのがあるはずですが、おっしゃられるように、もっと強力な研究者タイプの保険を何か公的な仕組みの中でつくれたらいいと思います。

主査 これは非常に大事かもしれませんね。ただ、あんまりこれを保護すると、また大変でしょうけれども。というのは、ものすごく成功したときに、じゃあ半分取り上げるかと、こういうことと結びつくと思いますので。

委員 ちょっと異質なお願いなんですけれども、「4.」の「今後の取り組むべき施策の方向性」というところになるかと思うんですが、立ち上げ時期だけではなくて、持続的にこういう形で国の施策としてやっていただけると。この後押しがないと、多分いろいろなことがうまくいかないということなんですが、ここの中にどうやって書き込めるかどうかわからないんですけれども、私たち実際にやっていますと、省庁間の縦割り的な話を取り除かない限り、混乱以外の何ものでもないということで。どこの省がそういうふうに言ってくださるかわからないんですけれども、ここをどこかすごく強調していただかないと、これから混乱が顕著化するんじゃないかと。

主査 縦割り行政の打破をどこかに入れるべしと。

委員 14ページの一番上、「大学の判断により週一日程度」とか書いていますけれども、もっと踏み込みまして、こんな週1日とか、そういうものではなくて、例えば9カ月が教育専念、3カ月が社会貢献するというふうに、もっと柔軟な書き方をしていただいて、そのかわり給料も9カ月分だけは大学からもらって、あと3カ月分は外部資金でもらうというようなことをもっと積極的に、これは大学独法化後では、大学の判断によることだと思いますけれども、そういうルールも確立するようにしていただければと思います。

主査 ただいまのご発言は非常に重要で、週1日というのは、普通にやられている社会貢献の例、これぐらいはいいでしょうということでやっているんですが、これは大学によっては、例えば週の2日はこのために使うとか、週の3日はこの契約のために使うということも、実はやっているんです。ただそのときには、おっしゃるように給料には大きな変更が加えられる。あるいは場合によっては半年は外へ出てやると。そういうもう少しフレキシブル(柔軟)な連携あるいは時間的な貢献ということも取り入れてはどうかということです。1つ、そういうことはご記入いただきたいと思います。今まで何もなかったものですから、1日でも大変な進歩だということで入っていると思うんですが、もう少し踏み込んではどうかと。

委員 今までの議論と違ってしまうかもしれないんですが、毎回出させていただいて、全体的な骨子案を読ませていただいたときに、どういうふうにその表現をすればいいかというのは私はよくわからないんですが、全体の相で、とにかく今後の発展のために、新しい、今までの技術を従来の市場に移動するにはどうしたらいいかという、具体的ないろいろな議論がされていると思いますが、多くの大学発ベンチャーの経営者あるいは先生方にお会いすると、大学発ベンチャーをやったことによって、従来の教育がより深まったという視点をおっしゃられる方が非常に多いんです。ですからそのトーンをどうか全体に打ち出していただけると。要するに、従来の大学がやる教育というものが、より深まるためにこういうものがあるというような視点をぜひ入れていただきたいというのが、参加していていつも思ったことなので、どこか入れていただけたらと思います。

主査 これはベンチャーをやって教育が非常に充実してきたと。研究所で企業と接触して新しい問題意識を持ったと。要するに先生の見聞を広めてほしいと。こういうことだと思いますので、非常に広い社会との接触によって、より充実した教育に反映してほしいということですね。

委員 「3.」なんですが、9ページに公共性というのが入っています。2のところです。ここの記述はこのとおりでよろしいかと思うんですが、アメリカの産学連携の動きを見ていると、各大学のタックスぺイヤー(納税者)に対する姿勢が非常にいいと僕は思うんです。公共性、それは確かに正しい言葉ですが、加えて、今後はタックスぺイヤーに対して、上だけじゃなくて国民に向けてどういうアピールをしていくかということも1つ、やはり大学の公共性の中には入ってくるかと思うんです。それがひいてはアカウンタビリティー(説明責任)の問題につながると思うんです。この報告書、ざっと斜めに拝見しただけなので、まだ見落としがあるかもしれません。けれども、アカウンタビリティーに対する記述がもしかしたらないんじゃないかと思うんです。例えばアメリカの大学のホームページを見ると、非常に詳細にいろいろ書いています。どのぐらいベンチャーができて、それによって大学がいろいろな社会貢献をして、どれぐらい州内に雇用が生まれて、例えばこういうこともやっている、ああいうこともやっている。利益相反はこういうことがあったけれども、こういうふうに対処しているとか、かなりアカウンタビリティーある広報をしているんです。日本の大学も今後はそういうことをすべきであると思うんです。それはやはりタックスぺイヤーのほうを向いているからできるのであって、公共性の中にそういうものも1つ、今後は、今もやっていると思うんですけれども、さらに加えていっていただければと思うんです。先ほどのお話とちょっとつながるんですけれども、タックスぺイヤーのほうを向いた活動を行うとどうなるかというと、例えば地域の企業とか地域のコミュニティーの方とのコミュニケーションが、非常に活発になると思うんです。私が東北大学のほうで見聞きした例でも、やはりエクステンション(出張)なんかで地域の方々といろいろと交流があると。あれは多分、産学連携の一環としてやっていると思うんですけれども、そうするとコミュニティーとの連絡がある中で、先生側にも非常にベネフィット(利益)があるし、コミュニティーにもベネフィットがあると。ひいてはやはり、大学の存在感として非常に大きなものがあると思うんです。だからタックスぺイヤーの顔を向くということは、最後は教育の充実にもつながることだと思いますので、そういう意味で非常に重要かなという気がします。

主査 どうもありがとうございます。タックスぺイヤーに対する姿勢、それから地域コミュニティーとの交流。盛岡の大学ではあれですね、800人ぐらいの市民の支援団体があって、子供を抱いた方々が大学の集まりに出席するというようなところができ始めていますし、社会貢献ということに対して、今は評価機構等でも随分積極的に調査、評価をしていますので。それで今、評価という点で、14ページの「4産学官連携活動に対する評価」はどうするのかという点も、ひとつご意見をいただければありがたいと思います。まだちょっとここは煮詰まっておりません。

委員 評価とも関係しますが、今の国民へのアカウンタビリティーというところとも関係するんです。少し冷や水をかけるように受けとられるかもしれませんけれども、非常に重要な視点があります。それは今、1,000社で424社もできているという。だけどほとんどがうまくいっていないんです。僕がすごく気にしているのは、こういうのでベンチャーをどんどんつくりなさいと。みんなホイホイ乗ってやるんです。全然、何もうまくいっていない。何の利益も生み出していない。さっき言った社会貢献、ほんとうのタックスということからすると、非常に厳しい言い方をすると、まるでむだ使いをして、しかし社会貢献をしているがごときような例もあるんです。後でもうちょっといいほうに振っていきますけれども。そういう意味からすると、ほんとうに僕らが責任を持ってやるというのは、やっぱり大学のほうもかなり気を引き締めてやらなきゃ、何となくシーズがあるから、それで産業が生まれると思ってすぐ始めて、すぐ失敗すると。でもまあ、それもいいんだという例がものすごく多いんです。調べれば調べるほど、こんなのは絶対ビジネスにならない、だけどやらなきゃいけない。あんまりそういうのが続いて無責任な感じになってしまうというのも僕は非常に問題だと思うので。どうやって文章を入れたらいいかというのはまだ思いつかないんですが、今の時期はなるべくみんなを励ますという意味で、たくさんつくっていろいろやってもらうというのは大事な時期だと思うんです。けれど、さっき国民へのアカウンタビリティーということもあったので、そういう意味ではこういう社会貢献、特にベンチャーに対するようなことというのは、その教員がほんとうに必死に血を吐くような思いでやらない限り、うまく企業の人がほんとうに必死にそれをやるという、そういう例でしかうまくいっていないんです。だからそういうのも、ちょっとどこかにあったほうがいいかなと思う。そうしないと、何か全体的に盛り上げたら自然にうまくいくようなというのは、現実を知れば知るほど、結構厳しいものだという面がありますから。ただ、それを決して抑える方向に言うつもりではないんですが、ちょっとそういうコメントがあります。

主査 これは前にも言われていたことで、そんな簡単には企業は成功しないよということを。それは十分理解した上での議論ではあるけれども、今まで余りにもやらな過ぎたと。普通、「千三つ」だと言っているのは常識でありまして、うまくいくのは1,000やって3つだと、こう言うわけです。そういう中でのベンチャーだと思います。だからベンチャーなんだということで了解をして……。

委員 そうですね、それはわかるんですが。その中に、やっぱりやるほうも必死で……。

主査 もちろんわかります。必死になってやらなきゃいけない、それは当然だと思います。そんないいかげんに横を見てやっちゃいけないと。

委員 ちょっとそれに関連して。アメリカのハイテクベンチャーの多くは、軍がいっぱい物を買ってくれているんです。日本も、政府が一生懸命ベンチャーの製品を優先的に買う仕組みができないかな、と思うんです。むしろ日本は、例えば何かの事業に参加する資格として、何かの事業をやった経験がないといけないとか、要するに新規参入者に対してネガティブな制度になっていますから、ベンチャーはものすごくしんどいわけです。むしろ積極的に、ベンチャーだから買ってやろうというぐらいのものがあってもいいと思うんです。

主査 ただいまのご指摘は、実は、特にアメリカなんかのベンチャーについてほんとうに基本的なところで、シリコンバレーなんて、あれがもともと成り立ったのは、それがもとなわけです。ただそれだけに依存するといけないということで、多分皆さん、そういう発言を控えてこられたと思いますけれども、やはりそこのところが非常に抜けている。私も実は、もう一つ別な言い方をしますと、ある未来システムのテストベッドをつくると。それが周りからいろいろ買ってきてつくる。それはベンチャーが導入する。これはアメリカも同じです。軍がやっているというのは、みんなテストベッドをつくっているわけです。その仕組みが非常に重要な視点のもう一つだと思うんです。その場合には、例えばテストベッドをつくれば、できているものを世界各国から買ってきて集めてつくるという。そうじゃないんだと。それをつくるために、みんなベンチャーが力を合わせるという視点もないと。これは最近いろいろなところで議論されていて、研究費が出るけれども、研究費の材料はどこで買うかというと、国内にはないと。それを測定する機械は国内にはない。お金は一体どこへ消えてしまうんだというようなことも一方ではあるわけで、それだけではやはり国際競争はできないけれども、一方で、その視点がやっぱり非常に必要で、こういうことをやる場合にもう一つの視点は、国が未来のシステムのテストベッドというものを、ある程度つくっていくということも大変重要なファクターで、それは単に経済的な観点からだけではいかないので、将来社会のベネフィットといいますか、未来のベネフィットということをいかにここへ導入するかが非常に大事だと思われますので。

委員 日本は、絶対金額は少ないですけれども、今プリベンチャーとしての科学技術振興事業団のお金というのは非常に有効にきいている。あれはベンチャービジネスをつくるというのを前提にして、相当額の研究費を出していただいていますし、それが企業に成長した場合には、またそれに対してバックアップしていただけると。もちろんアメリカの軍事予算から比べたら、それは10のマイナス4乗か5乗ぐらいなんですが、しかしああいう機能はちゃんと持っていただいているので、これをできるだけ大きくしていただければ、相当なところはいけるのではないかという期待は持っております。

委員 今の議論でございますけれども、これは既にこの中に入っているかもしれませんが、少なくとも2段ぐらいのフィードバックをかけないとだめだと思います。1段目は、知といいましょうか、その知が十分発展するだけのものであるかどうかを見抜くプロの目、これが1段目のフィードバックです。2番目として、やはりエンジェルの話だと思うんです。そういうプロの目で評価したものが、世の中の今度は広い目にさらされて、お金を出していく人がいるかどうか。それぐらいの2段のフィードバックをかけておかないと、何か声を上げると、ある制度のもとで金が来るというふうにしておくと、モラルが崩壊しちゃうということだと思います。これが1つでございます。2つ目としまして、先ほど意見を求められました評価に関する件で、あえて申し上げますと、14ページ4の評価の中の、私は3番目の「・」というのは千金の重みがあると思っておりますので、いろいろ今後またご議論あるかもしれませんが、これだけは消さないでおいていただきたい。3つ目としまして、18ページになりますが、「研究成果の効果的な社会還元の推進」の中に、「大学の特許取得等への支援」ということで、特許取得に要する経費というものを確保すると。先ほど概算要求等の関連のコンテクスト(文脈)でおっしゃったので、実は気になったんですが、これが国のどこかは別として、どこからか使用目的限定的経費として出るのかどうかという問題です。大学の法人化でもって非常に大きな意味を持っているのは、大学の判断でお金が自由に使えることになっているわけですが、その外側に、またこういう使途限定型の経費が入ってくるということになれば、それだけ大学としての自由度が下がるわけでございます。したがってこれを出していただくのは大変結構だと思いますが、運営費交付金の積み上げの根拠としていただいて、自由に使える形にしておかないと、またまた変わらないという感じになると思います。

主査 確かにそうですね。おっしゃるように、もし今のようなことをやりますと、それは必ず腐敗を生み出すもとになるので。しかしまた、それを全く身をきれいにしてやるとできないという、非常にそこは大変なバランスだと思います。大変重要なご指摘をありがとうございました。

委員 教官の産学連携や社会貢献についての評価のことで、特許が幾つ出ているかという調査がときどきあるんです。けれども、特許の数という評価をぜひやめていただきたいというか、絶対にやらないでほしいのです。日本の企業とアメリカの企業の違いは、日本の企業は社員の教育という面からも特許を大変多く出す風土があり、大学でもそのきらいがあります、これからはいわゆる基本的な特許や使ってもらえる特許を中心にもっていかなければ、これから知財本部等は大変難しい状況になるかと思います。新入社員のときに年間何件出しなさいというような、企業が奨励のような形で、教官の評価を特許数を調べるようなことは絶対にやらないでいただきたいということです。調査をされるのでしたら、ロイヤリティーが入ってくる特許の件数と、その額の検査でしたら、これは教官の評価になります。ですからそういう形で、くれぐれもやっていただきたいということです。これをここにどうやって書けるかどうかは、ちょっと私も考えていてわからないんですけれども、実際に文部科学省のほうでそういうことを調査等のときにお気をつけてやっていただければ、知財本部も、スムーズとは言いませんけれども、何とかいろいろなところで動けるんじゃないかと思っています。

主査 特許の数は調査するなと。これは最近企業なんかでも不要特許を今どんどん清算をして、軽くしていく大変な努力が行われているところで、単なる数ではいけない。これは論文についても同じであります。

委員 細かい点ですが、16ページ「産業界に期待される事項」の中の、2番目の「・」でどうも気になるのは、企業側が大学を活用する姿勢というような、そういうのが非常にいつも出ていますが、我々大学のほうは企業を活用して、また研究しておりますので、こういう分業的な話が必要と思います。企業が大学を活用するということはぜひやめていただきたいと思います。我々が企業を活用するのはいいんですけれども、我々は企業に活用されておりませんので、ぜひそのこところを。こういう書き方はぜひやめていただきたいと思うのです。

主査 大学が企業を活用するということはやめなさいと。つまりよく言われているのは、非常に危険なのは、大学が企業の第2研究所になるということは、これは皆さん非常にまずい例として考えておられますから、そういうことには結びつかないようにしたいと。外国の大学も一様にして言っているのは、やっぱり大学で得られたものを外に出すということを第一義にする。もちろんそうではない相互作用があるわけですけれども、第2研究所にはならないということだと思います。

委員 ちょっと言いにくいんですけれども、皆さんが、全体のトーンで言うと、産のやることがすべて正しいみたいな書きっぷりが16ページにずっとあるんです。私は自動車業界の一、二の企業であるとか、特別の企業については大変センスのいい、市場洞察力のある経営判断を持った、評価能力のある方がいっぱいおられると思うんですが、日本の大多数の場合には、いわゆる大学であるとか国の制度であるとか、それから独立法人の研究機関の仕事であるとかといったものを外部経営資源として的確に評価していないんだろうと思うんです。ですからだれとどう組んでいいかがわからないというのが実態じゃないかと思うので、企業みずから、やはり日本の社会の中にあるものの外部経営資源としての視点からの評価というのを企業がそれぞれ努力するということが、まず第1歩としてあるべきではないかと私は思います。もちろんそれを立派にやっているところは非常に成功していて、この不景気の中でも隆々と成長されていることは間違いないわけなので、その辺はぜひお願いしたいと思います。

主査 外形資源とおっしゃいましたか。

委員 外部経営資源。社内だけじゃなくて。

主査 外部経営資源の評価。

委員 外部経営資源の評価として、評価をし直してみてはどうですかということです。

主査 ただいまの点、どうも企業と大学の間の相互評価が必ずしも、ほんとうに実質的に行われていなかったような面がありますね。何となくちょっと横目で見た議論が今まであって、ほんとうにこの日本をちゃんとした国にするために、双方でがっちり組んでやろうという、そういう姿勢が若干、まだ浸透していないのではないかと。ですからやはり、それを進めるということが非常に大事なポイントと思いますが。

委員 15ページ7と16ページ(2)の一番最後の「・」に関係することなんですが、実際に大学で産学連携というのをやってみますと、大学の技術あるいは知識が、ダイレクトに企業にショートターム(短期間)で入るのは、ほとんど中小企業が主なので、ハイテク何とか、ナノテク何とかという、年商8,000億とか、そういうものをねらうホームランというのは、ある意味では10年に1つという形といいますか。ですから大学にとっても、大学の物づくりポテンシャルといいますか、それを支えていた技官の人たちが極めて少なくなっていて、新しい産業創出なんていうことを考えると、そういう基本的なポテンシャルを補充する、今は絶好のチャンスだと考えます。これは企業も、中小企業の中にほとんどの物づくりのノウハウが入っていて、大企業にはほとんどないわけですから、お互いのインセンティブが非常にあって、大学でそれをくっつけようとしますと、だれかがいれば、そこにしっかりした両方の、例えば中小企業の経営状態をよくわかる方が1人おりますと、かなりの実績が上がります。実は産学連携の議論に、その辺のリアルな実効が上がるところが欠落していて、何か夢の話に飛んでいる傾向があるので、今のところをもう少し地べたについた形で、特に日本の産業で一番大事なのは中小企業を掘り起こすということですので、その辺ちょっと書き込んでいただければ。今私どもは、そこにフォーカスを当てて仕事をやっておりますので、ぜひその辺をスティムレイト(奨励)するような形にしておいていただければと思います。

主査 できるだけ企業は小さい規模のところのほうが、直接的な移転が行われる。それは多分そうだろうと思います。この前、たしか基礎研究的なもののほうがベンチャーがつくりやすいとか、いろいろありましたね、議論としては。それからもう一つ博士課程の学生がつくりやすいといいますか、やっぱりそれだけの判断能力あるいは実力がなきゃいけないというような議論もあります。

委員 大企業の場合は学会の発表とか、各大学の先生方がどういうお仕事をされているか、特に自分の関連する先生がどうかということは、比較的調べる能力があるんですが、中小企業あるいはこれからベンチャーを起こすような人は、それを調べること自体に莫大な費用がかかるわけです。京都は今、40の大学のコンソーシアムをつくりまして、そこで約7,000人ほどの先生方の業績のデータベースをつくり上げました。それによって、例えばこういう仕事をやるのに、どこの大学の何先生が関連深いかということがわかるようになりまして、非常にこれから進んでいくと思うんですが、これが活きています。どんどんその先生も、最初にやってられたお仕事から変わっていかれますんで、これのフォローアップが大変な費用で、だれが出すかというのに大変苦しんでいます。しかし、やっぱり産学連携で、産側、特に中小企業から見ましたら、どこの大学の先生が何をやっておられ、しかも今はどういう興味を持っておられるということが知りたいんですが、これを探すのは大変難しいし、京都の場合も、それに先生方に協力していただくのが大変難しかったです。何で私のそんなこと言わなければならないのか、と言われながら、いちいちお願いして、まあよくつくり上げていますが、でき得れば、そういうデータベースを確立するということは、非常に産学連携のために役立つのではないかと思います。

主査 ただいまの大学の透明性といいますか、大学の先生が今何をやって、何に興味を持っているか。しかも今何に興味を持っているかというデータベースの構築が非常に大事だということですね。恐らくいろいろTLOというのは、その辺を非常に重要な目標にしていると思いますし、今、京都の大分大きな業績を上げておられるグループが、そういうことをやっておられるということで。

委員 たしか筑波か何かで、我々よく書かされているのがあったと思うんですけれども、やっていますよね。全国データベースがあるんです。よう書かん、面倒くさいから。前のと同じといってようやるんですけれども、ああいうのも活用されない、ただつくっただけという感じじゃないですかね、多分。

委員 論文の名前だけ書いてあっても、意味がない。何のことかわからない。だから、どういうことをされているのかを、やっぱり全部翻訳せいなければ。

主査 ですからそれは先ほど来の組織論の問題もあって、大学はできるだけそういう問い合わせに対して答えられるような組織能力を持たなきゃいけないというのも、その1つだと思います。つまりそれを実施する人の目線に立った言葉で透明性を持たせなきゃいけない。大学人の言葉で透明性を持たせようとすると、これは全然……。

委員 今度できます知的本部、あれはやっぱりそういう役割をある程度果たしていかれているんでしょうか。

主査 これからそれを選んでいただこうと。こういうことになっておりますので、ぜひよろしくお願いします。

委員 16ページの「産業界に期待される事項」のことなんです。今まであったご発言とちょっと関係しているんですが、ここには企業サイドの立場の方が少ないんで、本意ではないんですけれども企業サイドからの発言ということで、ちょっとしたいんです。企業はやっぱり利潤を追求するのが基本ですから、今までもいろいろな形で、やはり大学には食い込んでいると思うんです。ここにありますような「戦略的に活用する姿勢が必要不可欠である」と。これははっきり言って、かなりやっていると思うんです。例えば研究員を送り込むとか、そういうことによって、実質的に知的財産というかノウハウを活用するとか、あるいは共同研究契約はないんだけれども、それに似たような活動が行われることによって、極めて活用しているとか、いろいろな意味で非常に活用されていると思うんです。産学官連携が、そもそも最初TLOの問題が始まったときには、要するに、大学は非常に活用されているんだけれども、それが目に見えない形であると。それを目に見えるものにしよう、ルール化しよう、ルール化された、きちんと表に向けたものにしようというのが非常に大きな動機だと思うんです。だからこの「産業界に期待される事項」のところで強調するべきなのは、もっともっと活用してくださいとか、あるいは自前主義を捨てましょうとかいうことではなくて、今までも多分、十分活用しているとは思うんですが、まあさらにもっと活用しても結構なんですけれども、それをやはり大学のこれから築き上げるシステムに乗ったアカウンタビリティーある形によってやっていただきたいと。それによって正当なリターンをやはり大学に返す努力をしてもらいたいというところが大きいと思います。だからそういうことも若干つけ加えていただければいいんじゃないかと思います。

主査 社会への還元ということが非常に大事だということだと思います。

委員 今までの話とちょっと違って、先ほどの評価の話なんです。評価の話といいますと、どうも個人評価ということもあるようなんですが、場合によると、その機関としての評価も考えなきゃいけないかななんて思っています。すると、これが実を言うと極めて難しくて、先ほど伊藤先生がおっしゃったように数じゃなかろうという話になって、それじゃあ、まさにどれだけ稼いだかなのか、そうじゃなくて、例えばこの場合、カスタマー(顧客)というのは何だかよくわからないんですが、カスタマーサティスファクション(顧客満足)なんていうのはよく言われますが、そんな話なのか。その辺も含めて、例えばこれから独法化したときに、東京大学だと産学連携推進室とういのが、こういうのをゴリゴリやっているわけでありますが、当面、一体何をターゲットとしてやるべきか、多分わかっていないような気がするんです。それも場合によると、大学が勝手に決めりゃあいい話なのかもしれないんですけれども、その辺の機関評価みたいなものも、まあ難しいぞみたいな話になっちゃうのかもしれませんけれども、何か一言ぐらい書けないものかと思いました。

主査 確かにその辺が大変重要なことの1つだと思いますので、機関評価につきましてもぜひ入れておいていただきたい。それから産学連携も、すぐに今やられている実利だけではなくて、多分、将来に向けての産学連携というのもあるんだと思うんです。ですから特許の数はどうこうという話が今ありましたけれども、場合によってはまだ使えない、大体特許で出したって20年ぐらいは使えない。そういうことの評価をどうするか。この辺になると、先ほどの委員がおっしゃるように目ききが必要なわけです。ですからやっぱりこれも論文の評価と同じで、かなり幅の広いものだと思うんです。これも評価の仕方をだんだん成熟させていく努力が、これから必要だと思います。ちょっと時間がなくなってしまいまして、あと3分しかないんですけれども、実はまだ5と6と7が残っております。できればこれはごらんになりまして、書いたもので事務局にご連絡をいただければ大変ありがたいんですが。ただ、この場でぜひ、あるいは次回に出られないというような意味で、何かご発言が二、三ございましたら、お願いをしたいんですが。

委員 一言だけ。産学連携の最初のところに掲げているイメージなんですが、産学官の間のブリッジのようなイメージがあるんですね。そうじゃなくて、大学というのはプラットフォーム(基盤)になっていると。社会のいろいろなところから出入りができて、そこで生産された知がトランスファー(移転)されたり、あるいはそこへ入ってきて、それがまた増強されると。人材もどんどん交流すると。そういうイメージのほうがいいんじゃないかと思うんですが。

主査 つまり社会がつくった大学か、大学がつくった社会かという違いですね。日本の大学は、社会がつくったというんじゃなしに、社会をつくるために大学をつくったわけですけれども、そうでない、社会が大学をつくったとなると、おっしゃるようなことで、むしろ視点は、社会が大学をつくっているんだという視点を持って、どこかに書き込むべきだと。

委員 人的交流も、もっと別の……。

主査 そうですね。それから言葉がほとんど今議論されませんでしたけれども、恐らくこれから、知的所有権に関係しますが、大学あるいは学部、あるいは研究所なのかもしれませんが、それが、そこの所員に対して契約をすると。知的所有権に対して、我々はこういうポリシーだと。ここへ来るなら、みんなそれに従えというような、そういうことも非常に重要なファクターになっていくと思いますので、これはまた次回の、もう少し煮詰められた議論になるかと思いますけれども。ほかにございませんでしょうか。もしよろしければ、どうも5、6、7と非常に大事なところが書面でということになってしまって恐縮でございますが、できれば25日ぐらいまでに事務局までお伝えください。どうぞよろしくお願いをいたします。

5.今後の日程

 次回は3月27日(木曜日)に開催予定である旨、事務局より連絡があった。

お問合せ先

研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室

(研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室)