産学官連携推進委員会(第15回) 議事録

1.日時

平成15年1月15日(水曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省 別館 大会議室

3.出席者

委員

 末松(主査)、市川、小野田、川崎、北村、清水、白川、田中、田村、堀場、安井、吉田

文部科学省

 丸山審議官、坂田大臣官房審議官、田中研究環境・産業連携課長、小山技術移転推進室長、佐々木技術移転推進室長補佐 ほか

4.議事録

(1)今後の審議の進め方について

  • 資料1について事務局から説明した後、その内容に関して自由討議が行われた。

 その内容は以下のとおり。
 (◎・・・主査 ○・・・委員 △・・・事務局)

委員 前回の最後に、私は官のことについても触れるべきではと申し上げた。官を入れると、産官と学官の二つの二項関係が入ってくることとなるが、少なくとも今回の検討課題には産官及び官学は入っていないのではないか。今後の審議予定を見ると、産官や官学について議論する時間はとてもなさそうに見えるので、やらないということであれば、どこか別に産官・官学連携についての検討の場を作っていただきたい。その上で、当委員会から出る報告書は「官」を省いた「産学連携」の報告書にしていただきたい。

主査 今回の資料1も産学官連携推進委員会の資料となっているので、その辺については是非了解していただきたい。

委員 産学官と了解するのであれば、官の議論も是非お願いしたい。

主査 官の議論は当然しておかなければいけないと思うので、その辺は是非検討していただきたい。

委員 数年前、産学官連携、特に産学連携が話題になったとき、その対象とは、人材の問題から教育まで幅が広かった。産学官連携がかなり経済活動、技術移転当に焦点がどんどん絞られていった結果、人材・教育の問題は置いていかれてしまったのではないか。逆に、そうしたところをきちんと議論していただける場所があればいいのであるが、ちょっとこうした場が走りますと、他の問題が置いていかれてしまうことがある。要するに産学連携を幅広くとらえると、実にたくさんの大きな問題があって、このまま置いておいたら非常に困ってしまうような問題が山ほどあるのではないかということである。簡単に言えば、就職の問題がある。産業界の就職活動をなくさない限り、大学がよくなるとはとても思えない。あれだけ大学の教育や研究を阻害しているものはないはずであるが、なかなか対応策が打てていない。相当な荒技を使わないと、日本の悪しき風習は改善できないという思いがある。そのような議論が、多分文科省の方でも今のところ欠落しているのではないか。

主査 議論がある一点に集中し過ぎているのではないかという指摘である。

委員 大学側から産学連携を進めていると、このレポートの対象は大体大企業を中心にして考えられているように印象を受ける。実は大学によっては、周辺に非常に貴重な中小企業を控えており、それら中小企業との連携というのは、ほとんどの場合、特許を通して云々というよりは人間の交流を通して行われることが非常に多くて、例えば大学の施設をどうやって自由に使ってもらうかとか、人間の流動性を法人化になったらどういうふうにやるかといった問題がたくさん出てくる。実は大学のほうにもその点は非常に重要であり、特に物づくりのポテンシャルは日本の大学からはほとんど抜け落ちている。そのポテンシャルは大企業にもなく、中小企業に属人的に蓄積されているため、どんどんなくなってきている。中小企業と大学の間については今まで人の接点がなかったが、間に人が入ると非常にスムーズにつながる可能性があり、成果も出やすいということが現実にある。地域の活性化というと、特殊な領域の話になるが、大学をどういうふうに一般に開放するかという大学のマネジメントにも非常に関わる問題であるので、その辺の議論もしていただきたい。

委員 これまでの施策の中で私自身が経験した限りで申し上げると、地域共同研究センターというのが雨後のタケノコのようにあちこちの国立大学にできているが、キャンパスの中にあるため、本当に地域共同研究になっているかという点で疑問を持っている。ただ、現在の国立大学の施設が非常に老朽化しており、研究室が狭隘であるため、施設を改善するための名目として、共同研究という名前で新しいラボを作ってきたというふうにはっきりと割り切ってとらえたほうがいいのではないか。それではどうすればいいのかという点についてであるが、自分の田の中へ全部持ち込んで、共同研究をやりましょうという発想ではなく、例えばA大学はどこかのしかるべき企業Bの中のサイトにオープンのラボを開設していくというふうに、研究する場所に限っては外にサテライトみたいな形で作っていくということが人の移動を含めて有効に働くのではないかと思う。このようにして在野にあるアイデアを生かしながら、そこからまた新しい研究の芽を見出していくという共同研究もあっていいのではないか。そうして、産学連携に関心がある方は、A大学からそのオープンラボに移るといった場の造成が、これからTLOの活動がどんどん広がる中では極めて有効になると思われる。ここに挙げられている課題はいずれも大事だと思うが、外に開く、外に開かれたラボを持つという考え方をどこかへ少しにじませていただきたい。

委員 この資料1の4番目ぐらいに、知的財産の帰属と人材の流動化があるが、どうもこの文章の中には、世の中に役立つから大学で発想したものを一緒に共同で開発しようといった考えが多いような気がする。我々がいろいろな企業と実際に産学連携、共同研究をやってきた経験から申し上げると、企業のほうから問題が出されて、その問題を我々の知力で開発することもありえるので、この知的財産の中には大学の開発能力というものも見えないソフトとして入れていただきたい。今からの共同研究は、必ず大学に今まであるものを利用するということではなく、ある力を利用するという形にしていただきたい。そのためには、産学連携の在り方も何か新しい体制になっていくべきだと思うので、ぜひその辺を考えていただきたい。

委員 現在の閉塞状態を考えると、産学の非常に重要な役割は、将来のニーズを産学が共同で発掘することではないかと思う。産のほうだけにお願いして、何かニーズがあったら大学へ持ってきてくださいと言っても何も出てこない場合がある。学のほうだけで考えていてもわかるわけでもないので、共同で発掘する場を、半導体、環境、ライフサイエンスといったいろいろな分野ごとに作るべきではないか。今の人的交流を考えると、私の大学でもそうであるが、産業界等からはかなりの方がお見えになっているが、逆に大学から出ていくことが制度上難しい。例えば、その先生が外に行っている間だれが講義してくれるのかといった、具体的な点から始まって、身分はどうなるのかという問題まで行き着く。そこを解決できれば、かなり交流しやすくなるのではないか。次に大学トップの問題意識の点であるが、大学と教員、教官が産学連携をやるには、大義名分だけでは続かないということがある。その点を踏まえ、産学連携を続ける上でこうしたメリットがあるといったことを学内の先生方にアピールする必要がある。最後に、企業に対しては、大企業と中小、中堅企業は全然違うということを踏まえて、それぞれを峻別して議論すべきではないか。

主査 産官学共同で新課題を作るということ、産学官連携を進める上で一体何が大学や官にメリットが来るのかということ、それから大企業と中堅企業は違うという指摘であった。

委員 ベンチャーを育てようという話と産学共同研究をやるという話は、また別の問題だと思われる。まず産学共同のしっかりした枠組みを作っておいて、その中で生まれてきた派生技術なり個別技術を持ち出してベンチャーにするといった仕組みが必要ではないか。基本的に大学の仕組みは金食い虫であり、消費するしかない。それを金生み虫にするという仕組みがまずベースにあって、その上から金生み虫がぞろぞろ出てくる、卵からかえってくるというふうなイメージで設計していったほうがいいのではないか。大学の研究がそのままベンチャーになるというふうなイメージで設計すると、間違ってくるのではないかと思われる。特に、大学の研究室というのは規模は小さいが、相当コンプリヘンシブ(包括的)にやっているところが多く、そうしたコンプリヘンシブなものをそのままベンチャーに持っていって成功することはまずない。ベンチャーの場合には、特定の技術で商品化できるものに集中してまず研究して、そこから基盤を作っていくということが普通のスタイルであるので、そうしたイメージを持ってやっていただくのがいいのではないか。それから、大学と産業の両方に、それぞれ問題があるが、大学には研究効率を上げるための資源というものが少な過ぎるように思われる。研究の支援はあるが、研究効率を上げるための資源がない。簡単に言えば、昔は技官がたくさんいたわけであるが、技官の定員が定削要員みたいな形でどんどん減っていってしまった。知的財産権の組織管理における、組織管理のための経営資源が要るというように、そうした研究効率を上げるための資源について議論する必要があるのではないか。

委員 いただいた資料の今後の検討課題の第1番目に、大学の使命と産学官連携についてさらに論議が必要ではないかと書いてあるが、私はやはり大学の使命というものについて、もう少し国民的コンセンサスを得るべきではないかと思う。よく産学連携の討議などを行うと、必ず出てくるのは、大学の社会貢献のためには産学は当然であるという意見と、そんなことばかりしていたら基礎的な研究ができなくなり、本当に大事な教育がおろそかになるという意見の、全く二極分化した話である。いまだにそうした二極化の論議が必ず最後に出てきて、実りなき結論が依然として出ている。今現在、我々が個々に先生方といろいろ一緒に仕事をやろうとしても、産学連携に対して極端に御理解いただき過ぎではないかと思われる先生から、全く何を君は考えているのかと言われるような先生まで、あまりにも先生方のレパートリーが広く、どうしたらいいか迷ってしまう。先ほどの委員からも話があったが、教育ということが産学連携で重きをなしている。我々の望む製品(人材)を大学が作ってくれることが産学連携の最たるものである。就職問題が出ているが、一番の問題は、我々の望む製品を大学が生産してないから、わけのわからない資材をどうやって利用しようかと産業界が苦労することである。悪い材料を売り込もうとして学生が苦労している。ほんとうにいい製品であれば、無検査でどんどん企業は購入するはずである。そうした基本的な問題を論議せずに、ただ、既製品のマッチングを産学連携の仕掛けというふうに走っていっているのではないか。ちょうどこうした機会を利用して、大学はいかなる人材を作り、国はいかなる基礎研究にどれだけの投資をするのかなど、産のほうもたくさん問題があるが、そうした産官学それぞれの使命をはっきりとさせ、それぞれに責任を持たせ、そのボーダーには両方がマッチングできるような仕掛けを設けるといったフィロソフィーを論じた上で、各々が役割を果たすようにすべきではないか。

主査 今の指摘はこれからの一番重要な課題の一つであり、大学はいろいろなフェーズを持っており、どのようなフェーズの人に接触するかによって違った意見が出てくる。本来は大学というのは、これこれというようなものがあって、自分はこれをやっているということを認識していて発言が起これば、指摘されたような問題は起こらない。大学の一番の特徴は多様性であり、多様性の中の自分はどこに位置しているのかということを大学自身が意識して発言をしなければいけない。その意味では、確かに大学の使命とか何かということを言っておく必要がある。中間まとめのときにもそうした議論があって、大学は非常に多様な研究をしており、その中の一つに産学官連携が位置づけられている。官の議論についても、官は何なんだという似たようなことがあるのではないかと思う。どのように産学官の連携あるいは産官学の連携を官から産へ、あるいは学から産へ持っていくのかということについても、多様性はあるが、大分焦点は絞られてくると思われる。

委員 ベンチャーを1,000社作るという話であるが、これから若干スランプになると思う。ブームがあれば必ずスランプがあるというのは当然の話であり、ブームのときにあまりいいところでないのに投資した場合、破綻するのには何年かかかり、スランプになる。役所でいろいろな制度を作った場合、できたころに大体要らなくなったり、それがかえって災いするということが多いので、その次のブームを早く引き上げることと、スランプになったときにしっかり支える装置を中に入れておくということを考えておいていただきたい。今の瞬間だけの動きにディペンド(依存)しないように考えていただきたい。

主査 今の指摘の、あることをやった後にスランプに陥ったとき、その前のことをきちっと評価して、それは無駄でなかったということを評価するというところである。これの先例としては、戦後やってきた産学官連携が評価されていないため、それが今みたいなことになっている。我々はここでもう一回戦後の産官学の連携をきちっと総括しておかないと、大変おかしなことになる。

委員 現状の産学連携というのは、今の閉塞状態をとにかく破るという至上命令があって、そのために大学は全力をもってぶつかれということになっているわけであり、確かにそれでいけている部分もあるが、疲弊する部分も結構あって、おそらくそんなに長続きはしないだろうと思われる。短期的な成果を求めることへの対応はもちろんしなければいけないが、少なくともある種の自己再生産的なシステムを大学の中に作るということを考えなくてはいけない。大学の中の一つの重要な価値は私も多様性であろうと思っているが、単にある人があるスペクトル(範囲)のある端数の位置をずっと占めているだけでは多分対応できない社会になってしまっている。多様性のスペクトルの中で大学人が位置を変えていく、色を変えるといったことを行いつつ自己再生産をやっていくような意識改革をしていくことが本当の意味での大学の社会的な存在意義なのではないかと思う。そうした考え方を持ってくると、難しい問題がたくさんある。例えば、学会賞というものも同じことを20年ぐらいやってないととれないという仕組みが結構あったりしており、いわゆる大学人の評価に対してもなかなか難しい。それを踏まえて、例えば産学連携をやったらもう一遍基礎に戻るというような価値観みたいなものを少しどこかに書き込んでいただいたほうがいいのではないか。

委員 この委員会も最初は産学連携ということをもう少し大学の中に定着したいということが基になって、最初にそうした議論が始まったと思うが、だんだんそれがいろいろ進展をしてくると、それぞれの特性に応じたことをもう一回再認識しなければいけないというフェーズに入ってきている。円熟とはいかないが、多少冷静になってきているように思われる。そうした中で、今の委員が指摘された、大学が自己再生産能力の機能を持たなければいけないということが大変重要になってきており、それがあって、おそらく大学が社会から信頼されているのではないかと思う。しかし、大学人はそうしたことをきちんと意識してやっているのかと言われると、その辺の意識改革はまだ必要である。また、若いころに考えていたことが、ずっと研究が進展していくにつれて、フェーズがだんだん基礎的なものから応用的なものに移って、社会にずっと入っていくというような変化もあると思われる。この点についても、どこかに書いておかないと、一般社会の人が大学あるいは研究所、産業界の特質というようなものを見たときに、混同してしまって、かえってまずい結果に陥る可能性がある。こうした議論というのは、単にレジスト(抵抗)するためにしているわけではなく、アキュムレート(蓄積)するためにしているわけであるが、結果的にレジストするように見えるフェーズを大いに持っている。それが全部含まれていないと強いプッシュにならないという認識がどこかに出てくれば大変いいと思われる。

委員 産学連携の議論をやると、大体最後に人材の部分が出てくる。大学側と企業の両方を向いて、お互いの橋をかける人材というのは、口で言うほど楽ではなく、そんなに人材がたくさんいるわけではない。今のはやりの言葉で言えば、知識はともかく、お互いに信頼できるというような人間力のある人がいない限り、そのファンクションは果たせないというのが実感である。特にジェネレーション・ギャップというものも結構大きく、大体21時以降大学に残っているジェネレーションというのは30以下の研究者であり、その人たちがほんとうに口を開いてくれるためには、私のような60過ぎのコーディネーターでは無理があり、やはり同世代の人間が、こうした仕事に自分もかけてみようかというような、ある種の魅力が出てこない限り、人数だけそろえても全く無意味である。ここの「5.人材の育成・確保」については、ぜひいろいろ皆さんの英知を絞って、もう少し考えないと、おざなりにこれが大事だと言っても、実際は確保できなかったりすることもある。特に、際立って実務的な人を育成するということで、文部科学省、経済産業省、それぞれいろいろな施策を打ち出してくれているが、横に関連性がなく、同じようなものが2個も3個もできて、そのテキストを見ると、全くただ写しただけのものもある。せめてオールジャパンで、各施策をとるときに、目的は産学連携と決まっているわけであるので、その辺だけでも一歩進めるというような提言を何とか入れていただきたいことと、人材を確保するということがこの仕事のまず成否の鍵を握るので、最後の項ではなくて、もう少し時間をかけて、具体的にどういうふうにしたらいいのかということも検討していただきたい。

主査 実情に合った人材の育成と確保が必要だということである。

委員 産学連携や知的財産については、いろいろな施策が打たれたり、仕組みが作られており、その相互関連や全体像、有機的な関係というものがおそらくあるはずであるが、極めて見えにくいということがある。大学の先生でも極めて特異的によくわかっている方はごく少ない。おそらく現場であることをどうすればいいのかということを大学当局に聞いたときに、それを幅広く答えられて、これはこういうところで、こういう制度があってというように説明できる、その全体像を知っている人材もおそらく極めて希有な例ではないかと思われる。大学の中でいかに構築しているのかということについて、縦の制度を作って流れで行うことが簡単であるが、横を何とかしないと、ほとんどの人がよくわからないというようなことになるのではないかと思うので、報告書をどうするかということもあるが、そうしたことを考慮していただきたい。

主査 なかなか全体像が見えにくいという指摘は誠にそのとおりである。本当は大学の窓口でしっかりした人材がいて、大学の先生方にそうした問題はこの窓口を通してくれというふうに周知徹底しておくということが大事であり、全員が知るということは非常に難しいことだと思う。ただ、全員が、窓口があるということを知っているかいないかで、随分変わってくるような気もする。それから、研究者なり産業、活動する人たちの評価というものが旧態依然としていて全然変わっていないという指摘が先ほどあった。みんな評価を受けたいということが暗にあって活躍しているわけであるので、やはりそうした望ましい評価をしていくということが非常に大事だという指摘であるが、私もこれは非常に大事だと思う。産学連携に携わった人たちをきちんと評価する、ほめておくということが非常に大事である。

委員 大学の使命ということをはっきりしないことには難しい。使命に基づいて評価されるので、使命の価値観がそれぞれ違うと評価は難しい。その価値観が多種多様であれば、例えば産学共同をものすごくやった人に対して、学者としては下々のやることだとか言われてしまえば、これは評価にならない。そこに問題があると思う。

主査 ただ、ユニカラーでは絶対掌握できないので、いろいろな面から評価していくことになるのではないか。

委員 大学の中で評価をするといった場合、あいつはけしからんやつだと言うのと、あいつはすばらしいと言うのと、全く正反対のグループがある。

主査 おっしゃるとおりであるが、それは現在まだそうした混乱があり、おそらくそうしたことをこれから議論していただきながら、使命について整理して、ほめ方も変えていくということになるのではないか。

委員 先ほど出ていた人材の問題についてであるが、職員や事務員の方たちの意識改革が先生方と同じぐらいに本当に必要であるので、そこにも焦点をもう少し当てていただきたい。新たな職種の設定として専門性がある人の処遇といったものを考えたいと書いてあるが、この辺についてもイメージ的にでも書いていただきたい。人材を育成する、育成すると言われてきているが、いつも育成するという言葉だけで終わってしまっていることが多い。そうした人材が実際にいるのであれば、その方たちを専門の集団か何かにしてしまうといったこと等についても、もっと議論していただきたい。あと、評価に関しては、だれが、どこを評価するかによって変わるので、これはかなり難しいのではないか。

委員 先ほど大学に両極端があるという話があったが、これは時系列的に言えば、今から30年ぐらい前、我々が産学共同をやっている頃は、おまえらは企業の手先になっていると壁に書かれたりしており、産学共同研究をやっているところは白い目で見られていたと思うが、それから30年経つと、産学連携をやれやれという時代になったと思われる。大学が多様化して、これだけ変わってきたときに、教育の面でも産学連携をやることによって、研究も一つの教育の一環として、かなり大学の学生たちが新たな研究のシーズを得て、それに対して向かっていくので、人材教育を含めて新たなフェーズに入ったという認識をして、大学の多様化を前面に出していけば、両極端の問題は解消できるのではないか。30年前には、産学連携をやっているとはけしからんと言われていたが、やっと今ここまでフェーズが変わってきたので、新たな価値観をうたっていけば、何とかできるのではないかと思う。

委員 相対的には確かに変わったと思うが、まだマイナリティー(少数派)である。ただ、我々「産」の側から見ると、そんなに、甘いものではないと実感する。

委員 まさにそのとおりの部分もあると思うが、評価の問題と意識の問題というのはやはりある程度関係があり、例えば先ほどの学会賞みたいなものを大学の教官になった瞬間に目指すというのはわりあいと多いわけである。そのため、そうした形の研究者をやってきた人間にいきなり応用をやれと言っても、なかなか難しいというところがある。評価の問題で主査がおっしゃったのは、非常に産学連携に貢献をした人には文部科学大臣賞というものが出るみたいな仕組みがあると、おそらく内部の意識も変わるということではないかと思う。外部でそのような仕組みを作るということがあってもいいのではないか。

委員 大学人の評価の、他の組織との決定的な違いは、みんな学会が基本的な評価のベースになるということである。そのように組織の外に評価機構があるため、組織内で何かうまく評価して、人材を誘導していこうという仕組みがものすごく希薄である。組織目的というものは必ずあって、組織目的と個人のインセンティブがうまくマッチしたときに、大体力が発揮できるというのが社会の仕組みであるので、そこまでラジカルに議論すると、何していいのかもよくわからなくなるが、そうしたものがあるという前提のもとで、評価制度をこれからも設計して、積み上げていったらいいのではないか。

委員 大学の方が産学連携に喜びを持って参加していただける数をとにかく増やしたいという思いが私にはある。適切な評価を受けないとうれしくないわけであり、社会的にはかなり評価を受けるような雰囲気になってきている。大学という組織体がルールを作れば、学内の評価はできる。一番できないのが、実はアカデミックソサエティーでの評価である。日本の場合は純粋なアカデミックソサエティーというものはほとんどなく、エンジニアリングソサエティーとの合いの子のソサエティーが多いが、たまたまリーダーシップをあまりにアカデミックサイドにとっているケースが多いので、その辺は今のタイミングで相当改革ができるのではないかと個人的には思う。これは技術の種類あるいはサイエンスのディシプリン(分野)によって相当性格は違うが、大半は変え得るのではないかなという気がする。その辺も何らかの形で、いろんな調査会等々でも何となく問題提起をしていただけると、ブースターがかかるのではないか。

主査 アカデミックソサエティーあるいは産業界、エンジニアリングソサエティーにおいて、ある特定の評価だけを高く評価するということではなく、いろいろな見方の評価というものをちゃんと社会が評価するということが非常に大事になってきていて、そうしないと、かけ声をかけてもみんなやらない。最後はこうなるということがわかっていると、どうも二の足を踏んでしまうということになりかねない。この辺のところは非常に大事なところであり、今までの議論の中で、行け行けという議論があったわけであるが、もう少し本当にじっくり行かせようとすると、ここが非常に大きな課題になってくると考えられる。

委員 現在の議論は、検討課題で加えるものがあるかどうかという議論か、それとも大学の評価に関する議論か。

主査 検討すべきことに加える、あるいは重点化すべきことに関する議論である。

委員 産学連携の評価についてという項目を書けば、とりあえず今の議論は済みではないか。もし、この内容について議論をするということであれば、大学における産学連携に貢献した人をいかに評価すべきかという問題についてということか。

主査 それ以外の、これから産官学連携に関して、これはぜひ加えておきたいということがあれば、それは是非おっしゃっていただきたい。研究者の評価、国全体の評価というものが、どのようなトレンドを研究者に持たせるかという意味での議論について先生の意見をお願いしたいが、それに加えて、こうした事項をもっときちんと検討すべきということを示していただければ大変ありがたい。

委員 現在、大学及び当然その大学の中の大学人についての評価というのは極めてかしましく、いろいろされているので、当委員会からは、そちらに向けて、産学連携に貢献した人を評価するようなシステムを大学評価のシステムの中に作り込んでほしいという要望を出せば、そこで、評価の専門家がきちんと整理をするのではないか。私が先ほど来の議論にどうもついていけないのは、こうしたかけ声で物事が動くのはどうかという問題があるからである。先ほど、参考資料3において、日本の企業から大学へ行っている研究費の3分の2が外国へ行ってしまっているのは日本のいろいろな制度、仕組みが悪いからだという解釈があったが、あるいはそうかもしれないが、もっと本質的な幾つかの解釈があると思われる。参考資料3の右上のグラフを見ていただくと、95年ぐらいから急速に隔絶しつつある。これは一体何を意味するかといえば、科学技術基本計画の下で大学に急速に金が入り出した時期である。したがって、大学の先生方はもはや企業から金をいただかなくてもよくなり、国からお金が入るようになったため、それに組み込まれた先生方は、お金は十分に来るし、何とかそこで格好をつけないと次が危ないとそちらの方へ追い込まれており、何も産学連携というようなものにエネルギーを振り向ける必要はない状況を作り出しているわけである。企業のほうは次第に研究開発のほうに資源を振り向けられなくなってきたので、この際、大学を少し研究開発の下請にしたいとい気持ちがあるのかもしれないが、下請にするには、大学の力というのは弱いというよりは、方向が大分違ってしまっているという状況がある。したがって、ここで私があえて申し上げるとすれば、大学が産学連携をしなければ生き延びられないような環境をどう作ればよろしいかという議論がここで必要ではないかという気がする。そう言ってしまうと非常にきついが、先ほど主査が繰り返しおっしゃっていられたように、大学は多様性がある。MITのリタ・ネルソンがおっしゃったように、大学側というのはロング・レンジ・ディスカバリー・リサーチ(長期的研究)しかやらないのである。いわゆる直接的な産業におけるニーズに応えるような研究をやるのは二流、三流の大学であると彼らは割り切っており、そうした多様性を産学連携の中で作り込んでいる。日本も全く同様であり、ある水準の大学は企業におけるR&Dの下請になるといったポリシーを取ったとしても私は構わないだろうと思うし、そうでない大学で、少なくとも大学のほうでしっかりした研究をした上で、そこに産業界が食いついてくるものもあればいいし、日本が食いついてこなければ、外国が食いついてくるということでもいいだろうと思う。問題は、その多様性をしっかりと維持できるようなシステムを作ることである。具体的に言えば、評価の話に戻るが、大学の評価において産学連携をどれだけやっているかなどを評価項目に入れて、それをよくやっていれば点数が高くなるといった評価はやめてほしいということであり、それぞれの大学がターゲットを立てて、そのターゲットに沿ってどれだけやっているかということが評価されるようなシステムにしていくべきだと思う。日本の大学には今までマネジメントがなかったわけであり、少なくともマネジメントは一切国立大学の場合には文部科学省に投げておけばよかったわけである。それから私学の場合にも、少なくとも経営というのは理事会のほうへ投げておけばよかったわけであり、先生方の側にマネジメントの意識というのは全然なかったわけである。これを一体どうやって作り込むかということが本当は問題である。マネジメントのシステムが作り込めれば、そこの一部分に産学連携についてのマネジメントをどうしておくかということを作り込んでおけばいいという話ではないかと思う。

主査 多様性というのは各大学がユニホームに持つ使命というか目標ではなくて、それぞれの大学が個性的に持っている目標をきちんと評価するシステムによって多様性を維持することが必要ではないかという指摘だと思われる。

委員 今の委員が言われた大学のマネジメントというのがエッセンスだということは、もう皆わかった上での話であり、また、いろいろな施策が逆方向で、先に金を投げてしまうからいろいろやりづらいということも現実である。その中から解を出していこうとすることは難しいと思われる。先ほど別の委員が発言されたイデオロギー的な大学における産学連携に対する論議というのは、テクニカル・インスティテュート(技術学校)的で、イデオロギー的にあまり異質なものがない工業大学においても存在している。今の議論は基本的に言えば、今まで個人で対応していた産学連携を、大学という組織で対応しようということであり、本来であれば、そこのマネジメントの構築から入る話であるが、不幸なことに国立大学はそうしたことはできないので非常に小さい核から始まった。そうなると、組織で対応するにしてはあまりにも貧弱である。例えば、我々の場合、700人の教官がいるが、2、3人の人間でこれを対応するということはほとんど不可能である。そこでズレが始まって、ほらできないだろう、そんなのは難しいんだよという話になってしまう。しかし、実際に3年、4年と経ってみると、コーディネーターが20人ぐらいで動いていくと、豊富な研究資金を持っている先生方は興味を示さないが、実は研究に専念したいという先生方はいっぱいいることがわかる。逆に言えば、そうしたところからの資源が次の世代の多分産業の芽になるだろうという淡い期待で、この仕事を今やっているわけである。したがって、私の言いたいことは、これを国の施策でやるということであれば、そのスピードが大事であり、お互いが信頼できるような組織体制にとにかく持っていくということが第一ではないかと思う。その辺の議論をしていてもなかなか先へ進まないが、実際にしてみると、研究者はサポーター、支援体制が欲しいことがわかる。支援体制を整えてくれれば、非常に協力的に、ひどいペナルティーなんかを設けなくても、例えば発明届を出すという話も、それをきちんと管理するとすれば、劇的に増加するので、私は楽観的に、もう少し明るく、将来を信頼して、まずやるべきことをやるということによって一番効果が上がるのではないかと考える。

主査 大学をもうちょっと信頼してほしいということである。

委員 今の話を伺うと、やはり国立大学と私学は違うということを実感する。決して私学のほうは研究予算が豊富に来ているわけではないが、10年ぐらいやってきて、ずっと経過を見ていると、教育、研究、産学連携の三つが相反的に立ったところは続かず、みんなつぶれてしまっている。結果として、産学連携をやることによって外部資金が入り、人が集まり、院生も集まり、それによって研究、教育のほうにもメリットがある。そうしたところが伸びていくわけである。したがって、大学当局にしても、私学は経営があるので、そうしたところが見えてくるわけである。ここ一、二年の間に、私の大学は大学のポリシーとして本当に研究をサポートする体制をとるということに決めており、先生に対して、講義を外れてもよろしいし、学内役職を外しますし、任期制教員をどんどん雇ってもいいです、しかし、できればそのための外部資金は自分で確保してくださいというところまで来つつある。国立大学も法人化したときに、この三つの研究、教育、産学連携が相反しない方式で相互に補完するような形でできるようになれば、これは再生産ができるということと、生き残りという点の施策が可能になるのではないか。先ほどの委員がおっしゃったように、その点では明るく考えたほうがいいのではないか。

委員 産学連携が多少成熟期に入ってくると、嫌なことからも目を背けるわけにはだんだんいかなくなってくると思うが、やはりここが文部科学省の場であるということに、産学連携の一つの限界がある。最も巨大なお金が動いているのは医療関係だということはご存じだと思う。産学連携で産業界からのいろいろお金の流れという、例えばこうした数値でも、この中に医薬品開発のお金が入っているのかどうかといったことがある。参考資料のグラフにおいて伸びているちょうどこの時期というのは、日本の製薬業界が臨床開発を国内から海外にシフトしたときである。医薬品一つの開発を海外でやることによって、巨大なお金が一遍にどんと行くわけである。そうした意味で言えば、産学連携のお金でいろいろな整理をするときには、少し注意深く医療関係のところを見ていただいて、場合によったら外すなどしてとらえていかなければならない。大学における産学連携でも、医療分野は異色だと思われるので、その辺をどううまく対応していくかということを考えないといけないのではないか。ただ、海外の場合、エンジニアリング分野であれ、ファーマシティカルな分野であれ、同じように対応してくれる。これも日本の大学なり産業がまだ成熟していいためなのかという感じを受けている。

主査 医療関係の海外シフトと産業界の海外の投資が進んだのはちょうど対応しているのではないか。したがって、単純に全般で議論するということだけでは不十分であるという指摘であった。医療の研究者というのは日本全体の4割を占めており、医療や生活関係の分野と他のところを一緒にして議論すると、あるいはミスリーディングになるかもしれないということである。

委員 結局、医学部はかつての薬会社との癒着体制をものすごく批判されて、今はものすごくきれいにしてしまったわけである。癒着も問題であるが、きれいにしたら問題だというのも問題である。そして、例えば治験をする場合に、治験の志願者は非常に少ない。海外の場合、大きなファンドを持っており、日本と違って保険制度が充実していないため、治験を受けると無料になる。日本みたいに保険制度が充実していると、そうした志願者が減ってしまうということになってしまうが、治験のことだけでも随分大きな差がある。また、バイオの日本の遅れというのは、ものすごく深刻にもっと考えるべきではないかと私は思う。これは関連しているかもしれないので、その辺を日本のバイオ関係というか、医療関係の科学戦略の中に組み込んでいく必要があると思う。それからもう一つ、法人化したときの大学の経営力を上げてもらわなければならない。私の大学の場合、予算は企画調整官がまとめているが、あれはどう見ても調整企画官である。各学部に企画させて、あるいは各担当者に企画させて、それでずっと上げてきて、それを調整している。そこが私学とのえらい違いだと思う。そこを少し見習って、組織の発想自身を変えていかないと経営力というのは生まれてこない。

主査 本日の議論の中で重要な一つの指摘というのは、科学技術あるいは学術全般で議論をすると、ミスリーディングが起こりやすいのではないかということである。これは前々から、何人かの人から私も、分野をある程度分けて議論しないと、ミスリーディングになるのではないかというようなことは伺ったことがある。では、次に「産業界へ期待する事項」についての意見をお願いしたい。

委員 産業界の方は、例えば社会科学の調査とか評価などをものすごく簡単に考えられる。もちろん技術系の場合には、それぞれ同じようなレベルで研究しておられるので、当然わかっているわけであるが、社会科学の場合、企業の中にそうしたことを研究する組織を持っているところがあり得ないので、ものすごく軽く考えられてしまう。多分企業と、自然科学系でも工学系でも、共同でやるときに、ちょっと外れたところに対する認識というのは、不十分だと思われる。産業界とそうしたことが共有できる仕組みも私は必要ではないかと思う。また、このペーパーを見る限り、基本的に官の位置づけがあまり明快でないように思われる。このペーパーを作った立場から、どのような位置づけになるのか説明していただきたい。

事務局 前回の委員会でも指摘を受けたので、官の位置づけもぜひ考えるべく、この資料を作成したが、まだ具体的に固まっていないので、さらに考えさせていただきたいと思う。今の話を伺って僣越ながら思ったことは、産学官と言ったときに官もあって、いわば三つの極があって、関係も三通りあって、それぞれ考えるべきであり、使命論とか要望等について考えても、それぞれ三つあるべきであるということである。視点としては、産も学も、忘れずに官もあるなと思うべきだが、それを超えて、官と学の連携、それか官と産の連携について議論しておくべき具体的なポイントとしてどのようなことがあるのか。それについて意見があれば、本日の会議でも、あるいは後日でも結構なので、事務局まで寄せていただきたい。今の話は、官を排斥しないで、できるだけ入れていくべきだという議論だと承ったので、ぜひ考えてまいりたい。

委員 この官という言葉が何を意味するのかというのは、多分皆さん、それぞれ違うのではないかなと思う。行政的立場で施策をいろいろ考えることは産学連携をここで議論する大前提としてあるが、ここで触れられている官としての、実質的には独法になるが、研究開発機能は分野によっては非常に巨大な分野があるわけであり、そこをどのように取り込んでいくかということはやはり大事な問題である。産業界から見ると、実は官は学と全く区別しないで同じように扱っているが、実態は相当違うわけである。ミッションも明らかに違っており、仕組みも変わっている。その点で言えば、一度真っ正面から議論していただくことも必要ではないか。

委員 産と官あるいは学と官の間にどういう問題があるかという問題提起を事務局がしたが、その前に、産と官の間の議論というのは、かつては官側に共通する部分については科学技術庁が面倒を見ていたという行政的な仕分けがあった。現在、そこはどうなっているのか。新聞紙上を見ると、それぞれの監督省庁がそれぞれの監督している独法との関係のとり方について議論しており、いろいろとアドバルーンを上げている。今の日本政府の姿勢として、昔の国立試験研究機関と産業界との関係というのは各省庁マターであるという認識なのか、それとも、少なくとも官側で共通している部分については、従来科学技術庁が見ていたのと同様に、現在でも文部科学省が監督しているのか、その辺の仕分けを聞かせていただきたい。

事務局 私の理解を申し上げれば、中央省庁再編で総合科学技術会議ができたということが、我が国の科学技術行政に随分大きなインパクトを結果的に与えたと思われる。従前科学技術庁が担っていた役割の、まさに今先生が指摘された総合調整の部分については総合科学技術会議が担っている。ただ、そこは内閣府というところに属することからわかるように、各省とは少し違った立場から、全体を俯瞰する立場から見ており、総合科学技術会議とはそうした役割を担ったところだろうと思う。ただ、文部科学省はそれでは何もなくなったのかというと、決してそうではなく、個別の事柄の調整事務とか個別の事柄の企画については今までどおり、旧科学技術庁から引き続いてきた文部科学省が扱っているということである。ただ、ここからは極めて私見であるが、総合科学技術会議は実施機関ではないため、個別の実施施策をどう考えるのかということになれば、今先生がおっしゃったような個別省が責任を持つということが色濃く出てきていると思われる。その色濃く出てきた部分について、税の問題とか人材の問題といった個別施策については文部科学省としてきちんと面倒を見ていくという大まかな仕分けになっている。したがって、従前科学技術庁がやってきた部分はむしろ二つに分かれて、総合科学技術会議と我々が役割を担っており、そのうちの、個別実施に至らないが共通して考えなければいけないところについては建前上総合科学技術会議が見ていることになる。従前科学技術庁がやってきた部分は全く全部総合科学技術会議に移ったわけではないが、二つに分かれてきたがゆえに、若干理解のしにくさ、あるいは責任の所在の不明確さということも生まれてきてしまったのではないかと思う。

委員 産官連携は個別マターなのか、それとも調整マターになるのか。

事務局 産官連携を進めるべきだという大きな方針は総合マターだと思われる。あるいは産官マターをやるべきではないといった大きな方針を議論するのであれば、それは総合科学技術会議がきちんと議論すべきことだろうと思う。その産官連携をどのようにして進めるべきなのかということは個別事項として我々がきちんと責任を全うするべき事項であると思っている。

委員 他の各省と文部科学省の切り分けはどうなっているのか。

事務局 経済産業省、農林水産省、厚生労働省、それぞれ固有の事柄というのはやはりある。例えば、先ほどの治験の問題は厚生労働省にきちんと考えてもらわないと逆にできないという事柄である。ただ、個別の事項であっても、それぞれの省が同じように問題を抱える事項もある。例えば支援者に対しての支援をどうしようかとかいった総合的なことは共通のものとして考えるべき事項であり、それは我々のところできちんとやろうと考えている。

委員 4点述べたいことがある。まず第一に、産学連携で研究しているところへ重点的に科学研究費を配分しても悪くないのではないか。それは一つの手段になると思われる。第2点はクラスターのような産業政策で、産学を結びつけるための政策として官が機能しているである。3番目に地方政府がある。地域の開発と地方にある大学を結びつけることにはなかなか難しい側面があるため、三者共同で行わなければ無理なので、その辺についても書き込む必要がある。最後に、工業試験所がある。工業試験所の場を使って、産学、特に中小企業の共同研究を行うなど考えてはどうか。

委員 京都などでは、あえて産官学でなしに、産官公という言葉を使っている。とにかく「公」を入れさせられて、それは京都市や京都府との関係であり、国ではないというように明確に分かれているところがる。今の委員の話では、そうした「公」もここの俎上にはっきり乗せておくということである。それから、具体的には経済産業省と文部科学省の連携というのは非常によくわかるが、例えば環境省や厚生労働省、国土交通省あたりになってくると、それは全く別物であると言われることがあるが、それは間違いということか。

事務局 経済産業省と我々は確かに地域の問題など事柄によって連携をしている。治験の問題や実際に治験をすることについては、そこに至るまでのいろいろな制度作りや倫理指針などで厚生労働省と連携をしている。環境省とも、技術開発という面では連携しているところは随分多い。今委員が言われた厚生労働省、国土交通省、環境省等いろいろなところで連携をしているので、むしろそうした印象をお持ちであれば、我々の説明が不十分であったかもしれない。決して他の省庁と区別して、経産省だけと連携しているということではない。

委員 そうであれば、もう少し整理して、そうしたところもしっかり活用して、産官学の連携を作るという柱立てもあり得るのではないか。

委員 日本全体の産学官公連携はすべてここにありというふうにここに書き込んでほしい。これは別、あれはそうだというのはなかなか難しい。

主査 これはなかなか難しいかもしれないが、それだけ広い意味での多省庁にまたがって、個別に処理する、あるいは実施するところにおいて連携するということを整理していただきたいという要望である。官と学との関係について意見はないか。

委員 例えば人材ルールを考えたとき、今後かなり大きな問題がある。

委員 各省庁の附属研究機関とは連携しているのではないか。それから、各省庁で研究費を出している。

委員 例えば、大きなプロジェクトを学と官の共同で持つ場合があるが、環境分野などは非常に広範囲なものであり、研究費の使い勝手等で各機関の相違があり、プロジェクトリーダーが大変苦労するということがある。それから研究をまとめるときにも、大変苦労しているという実態がある。例えば、まとめて一本でこしらえるかということになると、一体それはどこの所有になるのかという話も具体的には出てくる。思い切って全部研究にかかわることを総括するところがどこか一つあると、非常にいいのではないか。

主査 確かに運用上あるいはその成果という点で、産官学にまたがると大変大きな問題がある。特にこれから法人化されれば、一方は公務員で一方は非公務員ということが、また大きな問題になりそうである。

5.今後の日程

 次回は1月下旬に開催する予定とし、各委員との日程調整の上、事務局から改めて連絡することとされた。

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研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室

(研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室)