産学官連携推進委員会(第12回) 議事録

1.日時

平成14年3月27日(水曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省 別館 大会議室

3.出席者

委員

 末松(主査)、伊藤、川合、岸、北村、白川、田村、丹野、安井、吉田

文部科学省

 坂田審議官、加藤研究環境・産業連携課長、磯谷技術移転推進室長、柴田技術移転推進室長補佐 ほか

4.議事録

(1)今後の審議の進め方について

  • 資料1、2に基づき事務局から説明した後、その内容に関する質疑が行われた。

 その内容は以下のとおり。
  (◎・・・主査 ○・・・委員 △・・・事務局)

主査 二つのワーキング・グループ(以下、WGという。)をスタートさせるということに関連して、今までの背景を説明してもらったが、WGとその背景、報告等について、どうぞ自由に御意見をいただきたい。先ほどの検討会の報告書はいつ頃出る予定なのか。

事務局 「研究開発成果の取扱いに関する検討会」の報告については、早くて5月に出る予定であるが、6月にずれ込むかもしれない。

主査 それも骨格にしてやっていこうということか。

事務局 知的財産の取扱いについてはそうである。よって、知的財産のWGについては5月ごろからスタートさせたい。

委員 この利益相反についてであるが、人によって違う場合があると思われる。「利益相乗」の場合もある。例えば、ベンチャーキャピタルでコンサルティング業務に従事してきた人がおり、その実績を評価されて某公立系の大学に行くかもしれない話があるが、コンサルティングができないと情報源がなくなってしまって商売ができなくなると悩んでいる。大学で教えることがコンサルティングの実務からしか得られないということがあり、むしろコンサルティングをやるということ自身が教育上の相乗効果となる。

主査 例えば、工場に行ったり企業に行ってコンサルティングをすると、大変多くの事が学べ、本人は随分利益を得ている。これはあらゆる面でありえると思われるが、その点はいかがか。

事務局 コンサルティング自体が問題であるとか利益相反だということではなくて、コンサルティングという行為に対して、国民の皆さんや市民の皆さんといった第三者から見てグレーというか、本当に大丈夫かなという疑念を持たれることが、利益相反の問題であると考えている。そうした疑惑なり疑問点に対してどういうふうに答えていくかというシステムを用意しなければいけないと思われる。

主査 意義を明らかにすればいいということか。

委員 人によっては、サービス提供で金もうけだけの人もいるし、むしろインプット材料がないと研究ができないという人もいる。その辺をよく検討していただきたい。

委員 WGを作って、ほかに専門家も入れて検討してもらうことは大変結構なことかと思う。ただ、責務相反の関連で、ひとつ具体的な問題点を指摘しておきたい。国立大学の先生が民間企業との間で共同研究とか受託研究を行う中で、先方の民間企業と秘密保持契約を結ぶケースがかなり増えてきている。まず秘密保持契約を結ばないと企業のほうもうっかり情報開示できないということは当然である一方、そういう大学の先生が秘密保持契約に過剰に反応して、ほかの企業の方がその分野についてその先生の意見を求めたいというニーズがある場合にも、その先生がある企業との秘密保持契約を結んでいることを理由に、類似の業界の方とは一切接触できないといったことが現に起こっている。国立大学が産学連携業務をやればやるほど、そういう局面が起きうる。

主査 ただいまの問題点は、今まで国立大学の産学連携を妨げていた大きな原因であり、きちんと説明をしておかなければならない。そうした問題が起こったとしても、結果的にはこういうふうにしなければいけないといった説明を、外部の人間、一般の人にわかりやすくしておく必要がある。これは非常に大事なポイントであり、それに対する一種の拒否反応みたいなものがあったが、だんだん薄れてきてしまった。恐らく最終的にこうしたことが必ず問題にされるので、きちんとした説明をしておく必要がある。

委員 利益相反に関する問題で2点ほど質問したい。一つは、既に独立行政法人化された研究機関など国の予算で運営されているようなところでは、利益相反的なことについては何かルールがあり、うまく処理されているのか。そのあたりが見えてくれば、大学においても参考になるのではないか。
 二つ目は、当該利益相反のWGでは基本的な考え方等の整理まで行い、末端の各大学が実際に利用できるような、より詳細なものはまた別途何らかの形で作るという受け止め方でよろしいか。

事務局 後半の質問については、そのように考えている。そのまま使えるようなところまで作るのは難しいところもあり、そこまで国が全部示していいのかという問題もあるので、先ほど指摘された問題も含めて基本的な整理をさせていただきたい。前半の質問については、独法国研の例はまだ聞いていないが、産学連携に関する方針というものが徐々に整備されているということは認識している。もちろん独法国研の例も踏まえて、この検討はしていきたい。

委員 独法ができて、今一番力を入れていることの一つが産学官連携をどう推進するかということである。我々のほうでも、TLOに相当する技術展開室を作って推進しており、利益相反の話も随分出てきている。ただ現状は、利益相反に至るほど産学官連携が活発でないということが利益相反以前の問題である。例えば、コンサルタントなんかもどんどんやってくれと言っているが、なかなか出てこないので、イライラしている状況である。一方で、これが出てきたら問題だと思われる例については議論をしている。国立研究所の意識から独立行政法人への意識の切りかえが、1年ぐらいだとそう簡単にはいかない。今一番の悩みは、結果責任が非常に重大だという指摘が強いので、全体に産学その他に恐れを抱いていることである。これは、国家公務員型でも非国家公務員型でも、多分同じだと思われる。国のお金を使うということがまずある。非国家公務員型の裁量権が増すと、それに伴って評価その他の責任が非常に強くなるという意識が大事な点だと思われる。非国家公務員型になったから産学連携がぐんぐん進むという話よりも、おそれのほうがたくさん出てくるので、そこが非国家公務員型になったときに大きな問題になると思われる。

主査 ただ今指摘があったように、やり過ぎて叩かれることを非常に恐れている。この範囲なら大丈夫であるということを明快に示して、その範囲でなら何をやってもいいというぐらいのところまでここできちっとしていおかないと、なかなかおそれをなす人がなくならない。

委員 今の指摘とほぼ似ているかもしれないが、この利益相反をきちんと検討しようとすると、当然のことながら、大学における我々の職業上の義務とは何かということがしっかりと定義されてないと、何が利益相反なのかわからない。その辺りについて、どこまでここの利益相反のWGが議論をできるかどうかで、このWGがうまくいくかいかないかは決まってしまうのではないか。これは質問であるが、独立行政法人化したときに、一体大学人の義務とは、どこまで自由でどこまで自由でないのかといったことについて、この利益相反のWGで議論できるのか。

事務局 議論は大いにしていただきたいと思っている。ただ、きちんと定義まで議論するかどうかは別である。例えば、ある程度、ここからここまでの範囲ぐらいだという定義なり範囲の中で、仮にこういうことが起こった場合に、どういうふうに利益相反問題を処理していったらいいかとか、こういう点に気をつけて利益相反に取り組むべきだというような形での集約というか、一つの方向性というものがあり得るのではないか。いずれにしろ、定義の問題についても議論していただきたい。

主査 きちんと義務が定義できるかということは非常に大きな問題である。多分、私は定義できないと思う。もともとグレーゾーンがあり、研究というものが閉じられた小さな大学の中の空間で行われていた間は何も問題は起こらないが、社会と連携を始めた途端に、目的なり成果なりについて問題がいろいろと起こり、常にチェックしなければならなくなる。それが恐らく、アカデミックな研究と社会の研究との連携における宿命だと思われる。よって、一種の義務の範囲とか、そこから生ずるアクティビティーの評価などを明快にしていただければ大変にありがたい。

委員 事務的なことであるが、先ほどの資料2の9ページに載っていた、平成11年から行われている利益相反に関する調査研究は今年度も行うのか。もしそうであれば、こちらのWGとどういう関連が出てくるのか。

事務局 今のところ、考えていない。むしろWGのほうでやっていただきたい。あるいは、もしWGで、どうしてもこの部分だけは専門的にやらなければいけないというものがあれば、並行して行うことも考えるが、そのときは仕分けをきちんとして行いたい。

委員 利益相反に関するWGの目的は何なのか。ガイドラインを作ることなのか。調査検討するだけなのか。

事務局 ガイドラインという形できちんと国で作るかどうかも含めて、利益相反問題に今後どう対応していったらいいかということについて議論していただきたい。もしも、結論が極端な場合は、それは国としてここまで定めたいということを言うかもしれないし、そうでない場合は、一応、考え方だけ整理して、あるいは留意点はこういうことである、仕組みとしてはこういうことが考えられるということにして、例えば、国・公・私立大学の関係団体のほうに検討を示唆するという選択肢もあり得る。さらに、各国立大学のほうに照会し、もっと考えてもらうことになるかもしれない。今ここでどうするかというのは私の一存では決められないが、目的ということであれば、少なくとも、利益相反に今後どういうふうに対応していったらいいかということについて考え方を整理していただくことが、このWGの目的である。

委員 重要なことは、結果として利益相反になっているところが問題であることである。コンサルティングばかりやって、学生はちっとも教えないでいると問題になる。しかし、ベンチャーを教える先生がベンチャービジネスのコンサルティングをして情報を得て、そこでいい教育をしたとすれば、結果は利益相反ではなく利益相乗になり、両方にとってプラスになる。リソース(財源)の相反なのか、リソースの配分の相反なのか、リザルト(結果)の相反なのかというところもぜひ検討していただきたい。あまりリソースだけで縛ってしまうと、結局は、相乗のところはもったいなくても捨てられるということにもなりかねないという気もする。

事務局 先ほどのWGの目的についての質問に関連して、事務局から答えたわけであるが、今、産学連携はイケイケドンドンで行っている。例えばライフサイエンス分野もある意味でイケイケドンドンのところがある。そこでは生命倫理問題という非常に深刻な問題があり、国全体の政策方針として、生命倫理に対応するためにブレーキをかける指針を次から次と出している現状がある。産学連携も多少似たようなところがあり、大学の社会的なミッションの重要な一側面として社会からの要請があり、推進すべきである。バイオテクノロジーにおける生命倫理ではないが、今日話題になっている利益相反とか責務相反といった視点をきっちり押さえてやっていかなければ、いずれ社会からしっぺ返しを受けて、また駄目になってしまう可能性がある。我が省としては、産学官連携推進委員会が唯一の正式な政策立案ボディーであるので、是非ここで利益相反の問題を取り上げていただきたい。
 次に、どの程度のものを作るかということになるが、大学が直接このとおりやりなさいというガイドラインを作るのは、現時点では非常に難しい。なぜならば、こういう問題もやはり試行錯誤を重ね、経験を積みながら作っていくことではないかと思われるからである。今回は、出発点であるので、できればここで整理をしていただいた考え方がベースとなり、今度法人化される各大学が、それぞれの大学の特徴を踏まえてそれをより具体的なものにするという流れになるのが、ごく自然ではないかと思われる。利益相反WGでは、そうした考え方をベースにひとつ議論をしていただきたい。ただ、議論の過程でいろいろ新たな課題が出てくれば、それは避けることなく議論していただいたらよろしいのではないか。
 先ほど指摘があった、大学の役割というか大学人の役割は何かというところは原点であり、非常に大事である。こうした新たな産学連携の要請が社会からあって、新しい活動をどんどん広げていくときに、常に大学の基本的な最も重要な役目は何かというところに立ち戻りながら行っていただくということは非常に大事である。主査が言われたとおり、そういう定義付けは難しいであろうが、議論を避けることなくどんどん検討していただきたい。いろいろなところで議論していくことが、今は非常に大事であるので、WGでも遠慮なく、大学人の役割は何かということに立ち戻りつつ、この問題を議論していただきたい。

主査 当委員会は、他の大学人に比べて先行して産学官連携の経験を積んでいる方々のグループであるので、そういう観点から指摘してもらうことが非常に重要である。しかし、この委員会そのものでもガイドラインを作るべきかそうすべきではないかといった議論が以前もあり、その際に、やはり作っておいたほうが現場の先生方にはよいというような指摘があったと思われる。

委員 今、大学の現場で一番恐れているのは、積極的にやっている先生が法律などを知らなかったために問題が起こってしまった場合、それが産学連携のすべての足を引っ張るのではないかということである。利益相反、責務相反だけでは、大学全体の方針にはいいが、産学連携をやろうという個人に対するガイドラインにはなりにくいと思われる。文部科学省や大学のほうで、産学連携をやる教官相手のガイドラインを作成し、ホームページに掲載し時々刻々バージョンアップしていくような形で考えてほしい。今日の議題とは少し違うのかもしれないが、それを少し考えておかないと、非常に単純なミスのためにどこかの大学のある突出した先生の例みたいな形で、産学連携に対する逆風が起こることを恐れている。

事務局 観点として非常に重要なことなので検討したいと思うが、基本的には、現行の公務員倫理法など法令に基づいてどこまでできるかというマニュアルは、行政、事務レベルでちゃんと作れる問題である。例えば、人事関係については今月中に詳細なマニュアルを公表する予定である。それをホームページにも載せ、時々刻々変えていきたい。また、先生が個人的に例えば何かベンチャーを起こしたいなど経済的な活動に参加される場合のマニュアルということであれば、別途、モデル事業なり、あるいは別の専門的な調査研究なり経済産業省とのディスカッションの中で検討し、先生方が迷わないようにすることを考えたい。利益相反については、法律違反などでないグレーなところについての取扱いをどうするかという点に絞って、このWGはやらせていただきたい。

委員 まず、利益相反や責務相反でガイドラインをつくるということは非常にいいと思う。今までの産学連携の一番の問題点は、どこが利益相反なのか、ほとんどの人にわからなかったということである。そういう意味では、漠としたものであっても、まず何かガイドラインがあると非常に参考になる。しかし、個々の問題に関しては、ガイドラインでは片づかないことがあると思われるので、もう一つのセットとして、各大学なり法人なりで具体的な問題については個々に対応するようなシステムもしくは委員会を組み合わせていけば、現実的なものになるのではないか。この中で教育との利益相反についてあまり書かかれていないが、学生の参加という記述に教育との関係も含まれていると考えてよいか。今後すごく重要になると思われるのは、一つの例を挙げると、大学院の修士の学生が企業との共同研究に従事した場合、修士の学生の修士論文を、その本人が卒業した後も外に見せられないということが起こるということである。法としては企業の秘密保持契約ということで、学生の修士論文であろうと秘密保持をしてほしいが、学生にしてみると自分の研究成果を発表できないという個々の問題が出てくる。

主査 ただいまの指摘について踏み込んでしまうと、卒業に対する要件等について、そういう公にしていいものとそうでないものを分けて評価するというようなことまで踏み込まないといけなくなる。結局、具体例がないと先へ進めないので、幾つかの具体例を出しておくことは必要である。個々の事例に対応する組織を大学の中に作るという指摘は非常に大事である。

委員 アメリカなどの場合も、利益相反についてはディスクロージャー(公開)を徹底することによって、社会的なコンセンサス(合意)を担保するという考え方が取られていると思われる。企業との関係でいうと、ディスクロージャー自体が実は限界がある。例えば、研究調査の題目を発表することさえ企業は困る場合もある。修士論文さえもオープンにできないということが今後かなりいろいろなところから出てくるのではないかと思われるので、そういう点からもWGでしっかり検討していただきたい。

主査 ディスクロージャーできないことをディスクローズしておく必要があるということになる。なぜそれが有益なのかということの論理的な根拠をはっきりさせておく必要がある。それは永遠にディスクローズされないわけではなく、産業界の発展とともにある時期に必ず明らかにされていくものである。産学連携等によって非常に研究が進んでも一定期間公表期間が遅れるという知識生産の量と、産学連携をしないで細々とやって全部をオープンにする知識生産量とどちらが大きいのかということが一番の問題である。

委員 今の問題に関しては、国立大学においては国のお金を使って行うことなのでディスクローズは大原則だと思う。一方的に禁止するのではなく、そうした契約を結んではいけないという姿勢を相手側によく理解してもらうことが大切である。

主査 国が出したお金に基づく研究については基本的にディスクローズするが、産業界と一緒にやっている場合、ある程度の一定期間は出せない部分が出てくる。その辺の整理が必要であると思われるので、WGに反映していただきたい。

委員 皆さんが今いろいろと御指摘になったが、利益相反にはいろいろな具体例があるので、これらをよく調べるといいと思われる。例えば産総研でスタンフォードの先生をセンター長に呼んでいる。これは管理者についてであるが、公務員型の独立行政法人でも、やり方によってはそこら辺までやれるということである。そのときの交渉で一番問題だったのが、利益相反ではなく、責務相反であった。向こうの私大が教育に対しては断固譲らないということが非常に強かった。そのような例をたくさん並べて考えていく必要があると思われる。

事務局 先ほどの修士論文の公表できないというところで、産学連携を行う際、当然、産業界のインタレスト(利益)と大学における本来のミッション(任務)が両方満たされないといけない。どちらかが妥協するというのは意味がないし、そのような産学連携はうまくいかないと思われる。そうした中で、研究成果について秘密を保持することは当然あるべきであるが、例えば修士論文であるとか博士論文のような、研究者として最初の出発点が公表できないというのはおかしいのではないかと個人的に思う。産学連携の際に産業界との間の条件設定で大学側が譲りすぎないようにする必要があるかもしれないし、あるいは本来そうした研究であれば修士論文を書こうとするような学生を入れてはいけないようにすべきであるのかもしれない。特に、若い研究者を教育で育てるということは大学のミッションの基本中の基本なので、そうした人たちを産学連携に巻き込むときには十分注意することが先生の責任ではないかと思われる。

主査 博士論文は少なくとも完全オープンであるので難しいが、修士論文あたりは公表できる範囲でしか書かないというあたりのけじめが、これからガイドラインでも必要になってくるかと思われる。

事務局 我々のほうでは多くの共同研究を行っているが、論文発表する際は、アブストラクト(観念的)に全然違う問題としてとらえて行っている。ハードの問題でもソフトの問題やアルゴリズムの問題としてやるということによって、かなり逃げることができる。物を作る場合は大変であるが、我々のようなソフトの場合は、かなり技術的に逃げられると思われる。

(2)産学官連携推進委員会運営規則の一部改正について

  • 資料4に基づき事務局から説明した後、原案のとおり了承、決定された。

5.今後の日程

 次回の開催日時については、各委員との日程調整の上、事務局から改めて連絡することとされた。

お問合せ先

研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室

(研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室)