産学官連携推進委員会(第10回) 議事録

1.日時

平成13年10月31日(水曜日) 10時~12時

2.場所

文部科学省 別館 大会議室

3.議題

  1. 「国立大学法人」(仮称)における産学官連携の在り方について

4.出席者

委員

 末松(主査)、市川、伊藤、小野田、川合、川崎、岸、北村、清水、白川、田村、丹野、平井、堀場、安井

文部科学省

 加藤研究環境・産業連携課長、磯谷技術移転推進室長、杉野大学改革推進室長、柴田技術移転推進室長補佐 ほか

5.議事録

「国立大学法人」(仮称)における産学官連携の在り方について

  •  資料2に基づき事務局から説明した後、その内容に関する質疑が行われた。

 その内容は以下のとおり。

 (◎・・・主査、○・・・委員、△・・・事務局)

○ 「基本的考え方」のところで一つ重要だと思うのは、1ページにある「教育・研究を目指した個性豊かな大学の発展」というところである。これは大学法人になって各大学が自己責任を持つときに非常に重要なことである。この点をもう少し産学連携においても強調しなければ、おそらくどこの大学でも同じように見えて、個性がなくなってしまうのではないか。きちんとしたステータス、実力、個性としてのブランドを各大学で持たなければ、企業の側からあまり魅力を感じないのではないかと思われる。そのようなことを「個性豊かな大学」という文言で表現しているのではないかとは思うが、各大学が積極的に産学連携を進めていくというところをもう少し出したほうがいいのではないか。
 また、4ページの5のところで「日常の教学活動に大きな影響を与える可能性があるときは、教学との密接な連携を図ることに留意する必要がある」という文章がある。表現が形而上学的なのでよくわからないが、産学連携によって新しい学問が創出されることや、実際の世の中に加わることは教育上良いことだといったことが、前提としてあると思われる。もう少しわかりやすい言葉で、産学連携は、教学としての新しい方向若しくは新しい学問を創ることに役立つということまで書いていいのではないか。なお、大学は知の源泉であり、発信の元であるので、本来企業でやるべき下請のようなことはすべきでないという点をうまく表現してほしい。
 最後に6ページの、「4)知的所有権等研究成果等の取扱い」であるが、これは昨年の協力者会議で少し議論した点である。その会議において、単に国立大学の法人が特許を有し、何か1個だけの特許実施契約を結ぶことよりも、包括的な契約を結んで行うような仕組みのほうが実質的であるという意見が、企業の方から出ていたと記憶している。その点についても少し書いて、この報告が実質的な面で役立てればいいのではないかと思う。

○ 「基本的考え方」のところにある1ページの三つ目の丸の表現については論旨が逆転しているのではないか。むしろ国立大学というのは、世界水準の教育・研究を目指した個性豊かな大学の発展云々が基本であり、その視点で産学官連携活動を行っていくという論旨で書いたほうがいい。それから「基本的考え方」の「個人の能力を最大限に発揮できる環境整備」のところに、基本的な姿勢として「情報公開」という文言を是非入れてほしい。情報公開をきちんと行っていくことによって様々な問題について歯止めがかかる、逆に言えば相当思い切ったことができる。
 3ページの2「技術移転事業の位置付け」の三つ目のポツにある、リエゾン機能等への大学の主体的な取組が十分にスタートできない間は外部のTLO組織等に委託するという方式は暫定的な手段として適切だと思われる。ただし、外部に委託したからもう大学のほうでは整備する必要はないということになり、学内の努力が一向に進まなくなることが大変心配である。委託する場合、これをきちんと学内でもバックアップしていく体制を考える必要があることを付け加えてほしい。
 特許権の扱い云々については、発明者への対価の十分な還元を前提と書いてあるが、一番肝心なことは、こうしたことのルールをきちんとしておくことではないか。このルールについて、国がある程度統一的なガイドラインを設けたほうがいいのか、それとも大学個々で特徴あるルールを作成したほうがいいのかははっきりとわからない。ただ、あそこの学校のルールは発明者に有利であるからということで先生が移動するということがあり得るのではないか。私立大学ではこうした例はいくらでもある。それを新しい国立大学法人の場合も考えるかどうか、あるいは国として一つのガイドラインを設けるかについては検討の余地があるが、一番大事なのはルール化である。

○ 1ページの三つ目の丸に関連して述べたい。ここに集まっているメンバーは理工系の方が多いが、産学官連携というか社会との連携は人文科学や社会科学にとってもも大事であると思う。人文社会系の人たちが産学連携を敵視するというようなムードが、今までの日本の大学の風潮だった。日本の社会学が進歩しないのは社会との連携がないからだと私は思う。人文社会系の方は現実の問題に直面することにどう応えるかという姿勢が必要である。そうした意味で、大学は知の殿堂であることを是非強調し、尊敬を受けるような社会的存在だということを言ってほしい。ただし、こび、へつらいはやめてほしい。それから全体のトーンについて、個性豊かな創造性ある大学をと言いながらも、国でガイドラインを作るという文言が随所に見える。その辺を少しフレキシブルにしてほしい。極端な話であるが、うちは産学協力は絶対しない大学というのもあっていいし、アメリカとは付き合うが日本の社会は相手にしないという大学があってもいいと私は思う。
 4ページの出資のところで、新しい金融商品的なエクイティを管理するといったことが書いてあるが、かつて通産省が一生懸命になって作った基盤技術研究促進センターがどうなったかということを考えてほしい。それから、科学技術振興事業団(JST)の過去40年にわたる歴史から見ても、出資した資金を返してもらう限りにおいては見合った支出を行うが、出資した資金が返ってこない前提である場合は、収支相整うような仕事にならなかった。こうした金融工学的なお遊びを、大学のような公的機関でやるのはいかがかと思う。むしろ純粋に卒業生、同窓生からの寄附を中心にしたベンチャーファンドを創ったほうがいいのではないか。準備経費として使うのは仕方がないとしても、博打のお金に公的資金を入れるのはいかがかと思う。

○ 各論についてであるが、5ページ目の2)人事の2については、8大学工学部長会議においても文部科学省に要望している点であり、文部科学省のほうでもなるべく人事交流をするために外部から人を呼ぶようにと言っている。しかし、外部から大学へ来た人に対する処遇は決まっており、例えば、一般の会社の方が大学に来られると、給料が大体4割5分、ひどいのはほとんど半分に減ってしまうという事実がある。それからもう一つは、我々が大学に新しい研究科を創るときに、外部から来た人が非常に優秀であるにもかかわらず、設置審にかかると、外部から来て1年目か2年目の方については教育に対する経験が少ないということで不可になる。これは特殊な例であるが現実にある。業績に応じた給与体系、あるいは任期付教員の処遇というものに対してインセンティブを設けようと、いつも提言されるが、それについてのガイドラインを示して、本当に自由にできるかどうかということがはっきりとわかる透明なシステムを作ってもらいたい。
 6ページの4)の一番最後のポツの件について、特に強調したいことがある。例えば、東京大学を中心に9大学がセンターとなった、ブイデックという集積回路を造る機能があるが、これは大学だけしか使えず、中小企業など学外の方が使えないということである。それからもう一つ、私は大型コンピューターセンター長をした経験から危機感を持っているのが、スーパーコンピューターというビジネスはもう日本で唯一残っているビジネスであり、日本の7大学がこれを支えているという現実についてである。約10年ぐらい前までは、たくさんの企業がスーパーコンピューターを持っていたが、最近のラディカルな性能アップや値段の上昇によって、現在は各企業で持てなくなっている。そのため大学のスーパーコンピューターを使って共同研究をやりたいという要望が非常に多い。本当は使いたい方がたくさんいるのにもかかわらず、高い利用費と、大学しか使用できないという規約があるために、ユーザーが限られている。一般の方々にも開放して、あるいは共同研究でそれを開放して使えるようにすれば、日本の科学技術が急速に進むと思われる。「文部科学省で検討」と書いてあるが、研究設備使用については、法人化後ではなく、すぐにでも必要なルールを確立していただければ、産業のためにもなると思われる。是非この点をもっと踏み込んだ形で書いてもらうようお願いしたい。

◎ ただいまの大学の重要な施設を日本全体で活用するという方向は是非どこかに書かかないと、産学連携の本当の意味が表面に出ないと思われる。

○ 三点ほど確認したい。第1番目は、大学の基盤的活動としての産学官連携という発想はやめていただきたいということである。基盤的活動という限りにおいて、大学の他の活動はその基盤的活動の上に、それを基礎として成り立っているという意味になる。1ページ目の二つ目の丸を見ると、「産学官連携活動は、それに取り組む大学の基盤的活動として位置付けられることが望ましい。」とある。つまり、「産学官連携に取り組む」と大学がいったら、その大学はまず基盤として産学官連携を行い、その上に他の活動を付け加えていき、成立させていくという理解しかできない。ここの基盤的活動という言葉は、当委員会が産学官連携推進の委員会であるため、産学官連携を推進させたくて言葉が滑ったと思われるが、あくまでも重要な活動の一つという意味しかないと思う。さらに論理的につなげると、ここから3ページの冒頭へ飛ぶことになる。そこでは、「特にリエゾン的活動の一環として」とあり、産学官連携のリエゾン的活動の一環として、情報の発信やコミュニケーションをやることとなり、産学官連携がまた大学の基本的活動の一つとなっている。ここのロジックは、産学官連携があって、その一環としてリエゾン活動があって、リエゾン活動の一環として、社会とのコミュニケーションがあって、それは大学の基本的活動という論理である。私は社会との連携をとることは大事であると思うが、それはこうした文脈の下ではないと考えている。先ほど委員から産学連携をしない大学もあれば、産学連携を積極的にする大学があってもいいという発言があったが、その例として、アメリカのカリフォルニア工科大学は、こうしたことは一切やっていないが、非常に高く位置付けられている。そうしたことは十分考えるべきである。
 2番目は、またパターナリズムがあるということである。こういうことをしなさいというトーンが3ページからずっと連なっており、時々、国がガイドラインを決めなければいけないという、介入・画一化のトーンがある。一言でいうと大きなお世話である。大切なことは、大学が何かやりたいと言ったときに、邪魔になっていることを取り除くことである。取り除いた上で、あなた方は自由に自分の裁量で走りなさい、それでうまくいかなければ、それはあなた方の能力が低いからですよ、そうしたところは次第に面倒見なくなりますよとすればいい。そうしたことをしない限り、あれをやりなさい、これをやりなさい、というふうに親切に示唆しているように見えるが、大学の現場までいくと、これがマスト(「ねばならない」)になってしまう。それはまた非常に怖い。責務相反、利益相反等についての規制を自分で作れなくて、ガイドラインが欲しい大学もあるかもしれない。そうした場合、例えば、文部科学省の科研費か何かで、その分野の専門家の方に集まってもらい、研究会などを開いて、その研究会での報告を国立大学に提示してもらえばいいのである。先進国ではそうした方法を採っている。国の活動として作るのではなく、国はお金を出して、関連する人が集まって、自分たちで最もいいと思うものを複数提示して、それを活用してもらうという形になる。国が介入して何かすることは、できるだけ避けてもらわないと、せっかく法人化したことの意味がなくなるのではないか。
 3番目であるが、5ページにある身分に関する文章1、2、3においてもパターナリズムがあると思われる。4で非常に面白いのは、「非公務員型への移行の可能性も視野に入れつつ云々」というところである。どうしてこれだけもって回った書き方をしなければいけないのか。もし当委員会の委員の意見がそういう方向であったとすれば、非公務員型の身分の在り方を積極的に検討すべきという書き方でいいはずである。このもって回った表現は、どこかに何らかの力があることへの配慮かと思われるが、そうしたことはしなくてもいいのではないか。
 更に言えば、私は、公務員型の場合はむやみに緩和すべきでないと思う。なぜならば、公務員型である限りにおいて、国家公務員法の下にあるわけであり、そんな職業を選んだ人が不自由であるのは当然である。もしこうした不自由さが嫌だったら、自分たちが判断して非公務員型になればいいわけである。国あるいは大学を管理する立場でいうならば、皆さん公務員型であろうが、非公務員型であろうが、御自由にお選びください、という緩和が大事であり、公務員型で、なおかつ兼業が週何回以上できるようにするといった形の緩和をすべきではない。それは緩和という形で、ばんそうこうをどんどん張って固くしていることになる。
 先ほど委員から御指摘のあった、民間から来た人の給料が低いという話についてであるが、以前、人事院のほうでそれに対応するために給料を高くする方策を三つばかり考えたが、その方策をアプライ(申込み)してくる大学がなかった。三つの方策について細かく言えば、日本の公務員の給料は大学を卒業した時点が原点になっているので、まず第一の方策は、それまでの経歴にかかわらず、その大学にいる同年次の人、大学を出て同じ年数の人の中の給料の最高額までは大学の判断で支給しても結構であるというものである。2番目は、第一の方策でもまだ低いという可能性があれば、年次を越えて別の号に上げても結構であるが、その代わりに届け出なければならないという方策である。そして3番目の方策として民間から来られた方に対して特別の初任給手当的なものをつけて、その額は次第に減らしていくというものである。少なくともその三つのシステムができてから私は人事院に1年有余いたが、アプライしてくる大学がなかった。このことは、そうしたことに対して自主規制しているのではないか。
 したがって、何か枠組みがあれば、その枠組みに従って人々はいろいろ判断をするので、枠組みの中にどうしても入っていたい人はどうぞお入りください、その代わりあなた方は不自由でも仕方がないですよという姿勢をとらなければ、競争にならないし、発展につながらないと思う。

◎ 今の委員が幾つか述べられたことの基本的な考え方は、他の委員の皆さんがずっと言ってきたことであるが、大学には非常に幅広い活動があり、産学連携もその一つであるという視点を明白にした上で、産学連携を進める際にこうしたことは障害になるので取り除くべきであるということだと思われる。
 公務員型か非公務員型かという点については、産学連携だけでなく、一般に給与の問題やインセンティブの問題や兼業などいろいろなことが絡んでくる。それを公務員型でやろうとするには無理があり、本当にやろうとするならば、やはり非公務員型でなければ大変難しいのではないかという表現を冒頭の基本的考え方に入れることが必要ではないかという指摘だと思われるので、その点については事務局のほうで少し工夫してほしい。

○ TLO事業を進めている立場から細かい点を言わせていただく。4ページの4「出資の可能性」というところの一番目の丸ポツの始めの部分で出資や人材の派遣を可能とすべきとあるが、これは大学から外部機関へ出資や人材の派遣を行うという意味か。

△ はい。

○ 大学は事業範囲が限定されており、教育・研究が主体であり、いわゆるホテル経営や土地売却を行う主体ではないので、出資というのは非常に違和感がある。今までの経験で積み上がった大学のファンクションの中に、出資という機能はどう考えてもあまりないのではないか。これはベンチャー企業の立ち上げまでの出資を目的としているが、ベンチャーを立ち上げる場合、外部の出資者がその技術に対して魅力を感じて出資したいということがない限り、そのベンチャーは成功しないということが現実である。そのベンチャーを立ち上げるために、特に大学がお金を持ちたいという希望はあまり出てこないと思われる。ただし、ベンチャーキャピタリストなどの有能な人たちのネットワークを作ったり、あるいはもとからあるベンチャーを創ろうという意欲をかき立てるための一つの手段として、エクイティーなどの確保は必要である。大学が多額のお金を持って、出資を自分勝手に決めて、これでベンチャーが成り立つだろうというような話となると、商売というのはそんなに甘いものじゃないという批判を受けるのは間違いない。基本的にはもともとベンチャーを立ち上げるということ自体は、そのマーケットのベンチャーキャピタリストで触手を動かすような主体が中心であるべきであり、大学が出資の主体である必要はないのではないか。
 また、ここの方向性が外から内へ向かうものであればわかるが、出資や人材の派遣という外へ向けてのものになっていることについてはわかりにくい。
 最後の6ページにある「知的所有権等研究成果等の取扱い」が実は一番大きな話である。大学でも承認TLOでもいいが、企業の方と本気で共同研究その他をやるには、大学が知的所有権を一元管理できる形でなければならない。各大学で勝手に管理方法を決めなさいと言われても、かなりの拘束力や政治的な決断がなければ、原則個人有で、しかもTLO所有、JST所有がそれぞれ入りまじっている現状を管理することは、少なくともユーザーである企業の方は一切認めないと思われる。この文章の中に、将来の方向でもいいので、とにかく一元管理が可能な形に持っていくという精神を植え込んでほしい。

○ 実際に産学協働をしている産業界の立場から発言させていただく。最初に、先ほど産学連携は大学の基盤的活動ではないと言われたが、我々産業界からすれば、これだけの人材とシーズと税金をたくさん使った大学が、現在の状態にある日本で、経済的な活動に利用されないというのはおかしいのではないかという考えがあると思う。基盤的活動という単語が悪ければ変えていただいてもいいので、大学の活動において産学連携というのは非常に大きなポイントであることを強調してほしい。好きなやつは勝手にせえ、嫌なやつはせんでもええ、ということが極端になれば、一体大学の存在というのは今後21世紀においてはどうなるのかという懸念がある。我々産業界から見ると随分これは勝手なもんだなというふうに思える。是非その点についてはしっかりとこの場で議論してほしい。
 各論のところの産学官連携組織の在り方、2ページの二つ目のポツのところで「産学官連携の相談窓口の一本化」と出ている。大学の窓口というのは絶対に一本化されてワンストップサービスでなければ、我々産業人が大学の受付へ行って、何かこんなもんありまへんか、と言っても、受付の人に追い返されるだけである。最低限ワンストップサービスは是非設置することを強調して書いてほしい。
 3ページの上のほうに「大学と社会のコミュニケーションを促進し」とあるが、こうした抽象的なことではなく具体的なことを書くべきである。産学協働というのはまさにめぐり合いである。各研究者の今までの業績、どういうことであれば支援してくれるのか、あるいはその先生がどういうことに興味を持っているのか、というデータベースをディスクローズ(公開)してもらわなければ、我々は個人的なつながりでしか先生にめぐり合えない。具体策として、大学の持っている特許等、あるいは研究者の実績というものをデータベース化してほしい。京都の場合は今までそうしたものがなかったが、今9,000人の研究者のうち5,000人までをデータベース化することができた。あと4,000人ほどすれば、京都のほとんどの研究者の研究実績が一本化されることになる。そのようなデータベース化を日本中でやってもらい、それを完全にネットワーク化して、こういう仕事をしたいんだと検索すれば、どこどこ大学のどういう先生がこういうことをやっている、あるいはこういうことに興味を持っているということが伝わるようにしなければならないと思う。ここは文部科学省であるが、経済産業省のほうでワンストップサービスとしてJANBO(日本新事業支援機関協議会)というのをやっており、これは全国の47都道府県と11の政令都市に、全部ワンストップサービスを持っている。今は経済産業省を主体としたいろいろなベンチャー支援や中小企業支援のための施策が全部そこへ行くと、地方公共団体を含めてわかるようになっている。そこに我々のほうの京都は、大学のデータベースも入れているわけである。文部科学省と経済産業省のほうとで連携をとってもらい、このようなワンストップサービスを一つ是非お願いしたい。
 4ページにインキュベーションのオンキャンパスがあるが、実際、初期段階におけるインキュベーションのオンキャンパスというのはものすごく有効である。最近はどうかわからないが、かつては私企業が大学の設備を使用することについて、我々のほうも遠慮があり、先生方も使用しているガスや電気の料金は国の経費で賄っているので、私企業が使っていいのかと心配しながらやっていた。実施要綱などでこの点をもう少しはっきりとし、オンキャンパスで先生方と連携できるようになれば、これが一番有効であると思う。
 また、4ページの終わりの部分にコーディネーターと書いてあるが、これは事実上インキュベーション・マネジャーに通じると思われる。これがなければ、大学発1,000社というのは絶対できないと思うので、1,000社を創るのであれば2,000人ぐらいのインキュベーション・マネジャーが張りついて目利きをし、技術的な評価もしながら、その経営をやっていくということができるように、量質伴う人材を絶対つくらなければならない。民間もそうした人材をつくるべきであるし、政府もこれを支援してほしい。
 最後に、国のほうでは兼業の規制緩和が進んでおり、先生方にいろいろな企業に対するサービスをしてもらっているが、地方公共団体の公立大学などでは全然駄目である。国が進めているのにどうして地方公共団体は駄目なのかと知事にも言ったが、はい、そうですねと言うだけで鈍感である。国がやっているのに、地方公共団体は従来どおりであるのは、日本全体としておかしいと思う。地方公共団体に指令をしたら、地方の主権の問題にかかわるかとは思うが、良いことはやるように言ってもらわないと、我々としては困るので、是非地方公共団体にも兼業の緩和について何か取扱いをやってもらうようお願いしたい。

◎ ただ今の話の中で、大学が社会とちゃんと連携していかなければ21世紀においては存在価値のないものになるという話があったが、産学連携は大学の基盤的活動でないという意見の中には、それで消えていくところはそれでいいんだという話が若干入っているのではないかと思う。それから、指摘のあった窓口の一本化、データベース開示による大学の透明化、オンキャンパスでのインキュベーション活動は大変大事なことである。また、インキュベーション・マネジャーを大量につくらなければいけないという指摘も重要である。人事制度について、地方公共団体についてまで、この場で言えるかどうかは難しいかもしれないので、地方公共団体とも連携すべきだということではいかがか。

△ 事実関係だけ述べると、平成12年度に人事院の努力で兼業が緩和され、そのときに自治省と相談し、国のほうでこういうふうに変わったということを地方公共団体に通知してほしいということをお願いした。結局、通知という形ではできず事務連絡で、これこれの通達が人事院からなされたということを各地方公共団体に送ってもらっている。その後の兼業の状況については把握していないので、その辺の実態把握を含めてこちらのほうで検討したい。

○ 先ほど指摘された公立大学の兼業についてであるが、地方公共団体のほうが厳しいということが実感としてある。多分事務連絡をされたのかもしれないが、現場レベルでは全然変わっていないと思われる。そこはなるべく早急に改善してほしい。
 まず3ページにJSTの役割というところがある。2の4番目の黒ポツで、「JSTとTLOとの連携の促進」、「JSTによるTLOのバックアップにより、技術移転の強化を図る必要がある」と書かれている。これと6ページの「知的所有権等研究成果等の取扱い」の中の3番目のポツにある「日本版バイ・ドール条項を適用させるべきである」とを合わせて読むと、このペーパーにおいて、国立大学に知的所有権を一本化させようということを多分意図されているのではないかと思う。ここは極めて重要なところであり、今までの産学連携の一番の弊害が共有特許であった。共有特許があることによって、技術移転が難しくなっており、その共有の一部に国有が入る場合、あるいはJSTが入る場合になると、更に難しくなる。この共有特許を今後はなるべくなくしていくことが極めて重要だと思う。今までJSTは、お金を出す以上は必ずその一部の権利を取得するというポリシーで技術移転に関与していったと思われるが、バイ・ドール条項適用ということもあれば、この辺で一つ大きく政策を転換し、TLOや技術移転のバックアップはするけれども、権利には手を出さない、共有者にはならないというような方向性に転換してほしい。もしJSTに権利を取得する意向があれば、自らすべての権利を取得して、自ら主体的に技術移転をしてほしい。100%かゼロかという選択をしてほしいと思う。もし100%の選択をするのであれば、例えば、その機能は分割して民間に移行するといった大きな政策判断もあっていいのではないか。これは今まで行ってきたJSTの役割や機能を別に否定するものではない。JSTはこれまでに本当にすばらしい役割を果たしてきたと思うが、現在大きな転換点を迎えるに当たって、やはり次世代の技術移転をどう考えるのかということは非常に重要であるので、共有特許を減らすという方向で是非新しい役割を担ってもらいたい。
 2番目であるが、これも既に何人かの委員の先生方から指摘があったが、4ページの「4出資の可能性」についてである。私は以前、ある別の委員会で次のような事実を聞いて非常にびっくりした。あなたの大学では出資をされたいと思いますか、という調査をしたところ、約50数%の大学が、出資をする気は全くない、興味がないという回答だったそうである。この回答の中には制度的にできなかったということももちろんあるし、可能になったとしても出資には興味がないという部分があると思う。そこにはいろいろな誤解や考えがあると思われるが、多分根底には、自らの大事なお金をリスクマネーとして提供して、すってしまうというようなことがあってはいけない、これは教学の精神をモットーとする大学がすることではない、という気持ちがあるのではないか。この考え方は基本的に間違ってはいないが、私がイメージする出資の趣旨というのはそれには反するものではないと思う。例えば、シリコンバレーにある法律事務所などが昔よくやったことであるが、自分がベンチャー企業を手がける案件をやる場合、そのベンチャーからエクイティーをもらうということがある。これを日本の話で引き直すと、例えば、10株2万5,000円分を弁護士報酬の一部としてもらったとする。その10株が、市場で1株200万円に化ければ10株が2,000万円になる。そうすると2万5,000円の投資で2,000万円のお金が入ってくることになる。それは別に大きなリスクを払ったわけではなく、100件の案件をやって、各案件毎に2万5,000円ずつエクイティーをちょっとずつ持っておけば、もしかしたら2,000万円万入ってくるかもしれないという感じでやっている。こうした一種のポートフォリオ管理はシリコンバレーの法律事務所の常套手段であった。これと同じように一種のポートフォリオの管理として、自分の大学の関連する会社についてわずかなエクイティー、あるいはストックオプションを持っていれば、もしかしたらお金になるかもしれない。そのようなポートフォリオの発想でいけばそんなにおかしくなく、別にリスクマネーを投じて、賭場で切った張ったをすることとは全く異なると考えることができると思う。現在、皆さんが言及している50数%の意識を、なるべくそうした方向に変えてもらい、少しずつなじんでもらうことが大事ではないかと思う。今すぐヨーイドンで全員やりなさいということではなく、今後5年、10年の内に徐々にそうした気風が浸透していくというような流れが大事ではないか。
 それから3番目であるが、5ページ目の人事のところの1にある「人文社会系の経営相談を可能とする」ということについてである。これも私が以前別の委員会で聞いた話であるが、ある大学が、理工学部が移転するというので、経営学部が一緒にそこにくっついて移転したそうである。今まで別々のところにあった理工系と経営学部が一緒の場所にあれば、経営学部としては理工系から出るベンチャーにマネジメントの人材を供給できるのではないかという意気込みがあったそうである。ところがそうした要望は一切来なかったということであった。この話はどこに原因があるかといえば、多分理工系の学部にもきっと原因があるかもしれないが、そもそも人文社会系、経営学部のほうにもかなり責任があると思われる。今までは、自分から1回経営に飛び込んで、自らの学問を生かして、またフィードバックするんだというような発想が極めて低かったのではないかと思う。私は門外漢であるので、あまり勝手なことを言って、誤ったことを言ったら申し訳ないが、その可能性はあると思う。したがって、ここの経営相談を可能とする等ということにとどまらず、もう少し踏み込んで書いてもらい、経営学部のカリキュラムの中を若干改革することによって関連する学部のベンチャーにインターンができる、あるいはどんどんそこに人材を出していけるような道が開けるようにしてもらえればと思う。

◎ 今の意見を伺うと、社会から国立大学を見たときに、相当産学連携とはかけ離れた存在だという印象を受ける。国立大学は出資とはおよそかけ離れた存在であるので、指摘のあったようなことになるが、もうあと一、二年たてば少しは変わってくると思うので、その点は了承していただきたい。

○ 先ほどの共有だと大変だという指摘は二つの面からの指摘だと思われる。JSTは大学の先生の個人の特許を共有しているケースが多いが、そのときに大学の先生は特許を最初、出願するときに企業と組んで出すので、三者が共有する格好になり、その後の維持経費は全部JSTが持つという約束になる。それがややこしいという指摘があるのは、大抵の場合、企業側に専用実施権を全部付与しろという話が出てくるからである。ところが、専用実施権を付与するとどうなるかといえば、実は死蔵されるケースが非常に多い。JSTで委託開発を438件ぐらいやっているが、実際にロイヤリティ収入に寄与しているのはそのうちの25件ぐらいである。あとはみんな企業の中で眠っている。それを時々リマークするような仕掛けをJSTではやっている。要するに防衛的に持っているケースがあるので、そこをどのように割り切るかというのが一つあると思われる。
 それからもう一つは公的な大学との間の共有特許となった場合、共有関係とは無関係に、特許の取り方が実用に向かない特許になっているということが一番大きい問題になっていると思われる。どこかではっきり戦略的な特許になるように引き受けてもらえるのであれば、JSTでもTLOでもかまわない。

○ まず一点は出資の件で、先ほど来、何人かの委員の先生方から意見をいただいているが、前回私のほうで出資は何らかの形で弾力的にできるようにしたほうがいいということを申し上げたが、大学自らがその事業の主役、先導役になってやるのはやはりどうかと思う。ただし、成果の還元ということで考えれば、ロイヤリティだけでは全く不十分である。知的所有権の管理を一元化するという話があったが、大学の特許が企業に譲渡されてしまうケースも考えられ、そうなればなるほど、成果の還元というのはその知的所有権を持っていることによる収入ではなく、事業に対して持つ株からのリターンを考えなければ、大学の成果が大学に還元されないことになると思う。むしろ成果の還元のために株を持つという意味であり、事業を自らどんどん推進するということで株を持つという意味とはちょっとニュアンスが違うのではないか。そうした意味で金額とか出資比率とかいう形で経営の関与にならないようなごく少額の出資ということであれば問題ないのではないかと思う。
 あと2点目は最初の「基本的考え方」に絡むが、大学は教育・研究が第一義であり、産学連携はあくまでもその重要なファクターの一つであるという話は、それでいいと思う。しかし、大学の先生の技術シーズが京都の事例のように調査されディスクローズされている場合、これは一つのケースであるが、ある大学の先生が持っているシーズがある民間の企業からみて大変おもしろいシーズだと思い、その民間の人が大学の先生に相談に行ったとしても、それを事業化するにはやはり大学の先生もその気になって協力していただかないと話が進まない。障害を取り除いて、大学の先生で自らやりたい方はやればいいのではないかという考え方もわかるが、民間からのそうしたニーズに対して、やはり国立大学の先生は国の機関の職員として研究成果を提供する必要があるのではないかと思う。そうした意味で産学官連携というのは、やりたい人がやればいいということではなく、民間からのニーズに対して積極的に応える責務があるのではないかということを申し上げたい。

◎ 最後の民間からのニーズに対応する責務は非常に大事だと思われる。ただ、今議論されていることは、大学の中にはいろいろな教学をしている方がおり、やりたいというのは例えば工学部や経営学部というようなところがやりたいという意味であり、ニーズについてはそこだけで対応すべきであり、全大学の全教員が応えなければならないとなると、非常に誤解を受けやすいので、そこの仕切りについて議論していることを理解してほしい。

○ 私が素朴に思ったことと、強調してほしいと思ったことが二点だけあったので述べたい。4ページ目にあるインキュベーションのオンキャンパスでの実施についてである。ベンチャー学会などで、先生方やベンチャーの方によく指摘されるのが、ある程度の規模になったり、技術が開発されればベンチャーキャピタルなどが投資してくれるが、それまでの特にアーリーステージのときに一番、お金だけでなく、ノウハウや人の問題などが出てくるということである。これについて大学が中心になって行うということが、私にとっては今回のペーパーの中で一番大きいことではないかと思う。このようなオープンキャンパスで実施されることも考えられるみたいな書き方ではなく、もう少し強調していただかなければ、こうした一つの方法から出たみたいな形で示されると、私などの立場からは、今回の法律はまた少し変わったなというような感じしかしないというのが率直な意見である。
 もう一つは、大学のほうで特許等の管理を一本化するという話の中で、特許等の発明者への対価の十分な還元を前提にとあるが、十分な還元というのがどういうものなのかよくわからないので、この辺をもう少し明確にしたほうがいいのではないかということである。シーズの社会還元にアグレッシブな個性のある人を育てるという反面、その辺の個人が見えにくくなる部分も出てくるのではないかと思い、この文章の表現が適当かどうか疑問に思われたので以上のことを述べた次第である。

◎ インキュベーション企業のアーリーステージが非常に大事であり、そうしたことに関心があるところは是非やるべきであるという意見である。それから今の文章の問題については事務局にお願いしたい。

△ 発明者への対価の十分な還元について、あえて抽象的に書いたのは、例えば具体的に書こうとすると、どのぐらいが適切なのかという問題になるためである。考え方としては、今年7月に公表した当委員会の中間取りまとめや、昨年の12月に報告書をまとめた協力者会議の考え方を取っている。おそらく具体的には、TLOの今の個人への還元率などを参考にして検討することになると思われる。
 あと、個人が見えにくくなるという指摘は、個人に対するインセンティブみたいなものをもっと他に書いたほうがいいということで理解してよいか。

○ それと大学が連帯してということがもう少し出てきたほうがいいのではないか。

○ JSTの事業が割合喜ばれているのは、取り立てをするからである。それは会計検査院が入って、売上高とロイヤリティのリストを計算して、間違いなく取れているということを確認され、半分であれば半分取ってぴしっと先生にいくようにする。もし先生自らが取り立てに回ることになると、そこのところをどうカバーしてあげるかということが率の還元の問題よりも大きいと思う。

○ 今の話にも絡むが、要するにルールを作ることが肝要である。そのルールは各大学の個性であっていい。例えば、MITのルールとケンブリッジのルールとは明らかに違う。個人の先生の発明については、MITの場合、個人にも還元するし、そこの学部にも還元するし、大学にも還元する。それぞれの大学でやり方がみんな違うわけであり、それを先生方は納得してやっている。また企業もそれを納得した上で契約をしている。よって、これはルールを作れば済むだけのことである。
 それから私が再三、情報の公開と言っているのは、結局そうした活動が全部オープンになることにより、いろいろな意味での歯止めもかかるし、逆に言えばスターも出てくるということではないかと感じているからである。

○ 先ほど指摘のあった共有特許の件でお願いをしたい。先ほどは公的機関の場合であったが、同じような例がやはり企業と大学、あるいは研究所、個人の場合があり、その共有特許がバイ・ドール法の精神にのらずに、企業のエゴで死んでいる例がたくさんある。それをいかに活用するかということが重要である。特許の活用の促進から企業が相当の期間、正当な理由がなくて実施しないような場合には、その特許を、大学が第三者に許諾するような可能性を契約の条項に是非入れるようにすべきである。以前は経団連から大反対を受けたが、つい最近、10月に経団連の産学連携に関する意見書が出て、その中に盛り込んでもらえたので、もう大きい顔をして産業界に言えるようになった。是非今の件を書いてもらい、眠った特許、あるいはTLOが動かしたい特許について、その障害をはずして、TLOが動きやすくなるようにしてほしい。
 私は専門家でないので、全くわからないが、結局大学への寄附金が今、課税対象になるということ自体が、日本の科学技術に対する寄附金の額のレベルを下げており、これが産学連携が活発にならないことの大きな原点ではないかと思う。産学連携のスタートについては、少しその辺の意見を伺いながら良い文章を盛りこんでほしい。
 それから、先ほど指摘があったと思うが、ニーズがある産業が大学へ来たときにうまくいかないという話は、多分現在であれば直接先生のところに行くしかなく、ワンストップウインドウがないからである。リエゾンが間に入って、きちんとした契約の下に先生側と企業側とがおつき合いするということが、多分これからの我々リエゾン組織の役目だと思うので、産業界の方に是非その存在を教えてもらい、直接先生に行かないようにしてもらえれば、うまくいくケースが多くなるのではないか。

◎ 特許の共有について、委員の皆さんが今関心を持っているが、大学が持つことにするほうがいいという議論は、実はその問題を避けるためである。できるだけ大学で組織的に持って、大学の独自の動き方で生かしていくために、大学に持たせたいというのが、今まで出てきた一つの方向性だと思う。

○ ただ現実問題としては、法人化した大学が現在、例えば我々の大学で出している特許を、全部大学が出せるかということになれば、お金の問題ですぐにパンクしてしまう。法人が持つにしてもその方法については、産業界との連携など解決しなければいけない問題が過渡期にはまだたくさん出てくると思われる。法人化になったからすぐにパッと全部が法人有になるということにはならないと思う。

○ 法人有に変えるということは、通達で、個人有が可能なものについては個人名を消して法人有にするだけのことであるので、例えば仮にJSTなり企業なりが特許出願費用を出す代わりにこの特許については共有にさせてくださいと言えば、やはり共有になると思われる。法人化後もそういうふうに生まれてくる特許はかなりあると思う。これはお金がないためであるので、特許出願費用を援助する代わりにロイヤリティが入ったら費用を返してくださいとか、あるいは補助金を一定の範囲で使えるようにするとか、権利に手を出さない形の援助の仕方、バックアップというのがこれからは期待されるのではないか。

◎ 実はこの特許の出し方については、様々な方法が検討されており、将来、科学研究費補助金から特許申請料を出せるようにするなどのいろいろな踏み込み方があった上での議論だと思われる。現状のままであれば指摘のとおりになってしまうので、これからまた議論を続けさせていただきたい。

○ 違った視点になるが、このペーパーのポジションを考える。現在は、当委員会からの国立大学法人像(中間報告)に対する要望というポジションである。ところが、将来のポジションを考えると、これが大学評価に絡んでくる。中間報告でもはっきり書かれているが、それぞれの国立大学は長期目標を自分で設定する。自分で設定するといっても、今日これだけ産学官連携が叫ばれており、日本国では国家総動員令的なものが動くと、それに反すると非国民扱いになるので、それに沿って動く。したがって長期目標の中に、各大学は産学官連携を取り込まざるを得なくなる。その長期目標の下で主務大臣と協議をして中期目標が立てられる。当然産学官連携に取り組むということが、おそらくほとんどの大学において、中短期計画の中に入ってくる。今後の大学評価の中間報告の中での構造は、現在ある大学評価・学位授与機構がまず評価をした上で、文部科学省の中に新しくできる評価委員会が評価をすることになっている。現在の大学評価・学位授与機構における大学評価は、大学の多様性を確保するためには当然であるが、目標管理になっている。要するに大学が実現すべき目標を宣言して、それをまず提出させる。何年かごとの、しかるべきサイクルで、どれだけその目標に近づいたかを調査して評価をするということになる。そこに、このペーパーの将来のポジションが見えてくる。そこの評価において、産学連携を中短期の目標に据えた大学の評価に、当委員会のこのペーパーが反映されたものがモデルとなって判断されることになる。私がここで問題提起するのは、今のこのペーパーの形が将来評価のためのモデルとして機能してもよろしいのかということである。先ほどから時々、国としてのガイドラインがあるといいという趣旨の発言があったが、それは当面便利ではあるが、それは評価の上である種のターゲットになってくる。ガイドラインにどれだけ近づいているかという判断がされるようになってくるということである。したがって、ここに書かれることについて、その点をよく検討していただきたい。

◎ 大変重要な指摘をいただきありがとうございます。今指摘のあった当ペーパーのポジションについては、あくまで今これから進もうとしている法人化に対して、産学連携という立場から見たときに、一つの視点を提供するということではないかと私は思うが、事務局に何か別の考え方があれば教えていただきたい。

△ 主査の考えのとおりでよろしいかと思う。ただ、これが長期的な評価に対して全く影響がないかといえば、それについて更に議論をすることになるが、直接的に将来を拘束するものではないと私自身は思っている。主目的は今回の制度設計に対してどういうふうにインストラクト(指図)していくかということである。

○ このペーパーが中間報告に反映されれば将来を拘束することになるのではないか。

△ 今の委員の心配というのは多分ごもっともだと思う。これから目標のシステム、それから評価のシステムを本格的に作り上げていかなければならない。おそらくこれにはまだ1年は確実にかかるし、評価のシステムができた後も、おそらく繰り返し見直していかなければいけないシステムであるので、そのときには今の委員が指摘されたようなことが起きないように、慎重にこのシステムについて考えていかなければいけないと思っている。またその観点からも、このペーパーのまとめに当たっては、慎重な表現を考えていかなければいけないと思われる。
 ただ一つだけ、法人化の設計を担当している立場から言わせてもらえば、国立大学法人というのは、民営化するものでもなく、独立採算を求めるものでもなくて、引き続きしかるべき国の投資を受けながら、つまり税金を受けながら動かしていく大学法人像を目指しているということである。そうなると、おそらく好むと好まざるとにかかわらず、産学連携をやるにしても何らかの規制をかぶせるべきだという意見が、いろいろなところから出てくると思われる。最終的にいろいろな規制がかぶる可能性があると思われるが、我々としてもできるだけ、せっかく法人化するのであるから、いろいろなことが各大学の判断で多様に展開できるようなシステムにしたいので、産学官連携でこういうことも可能になるように、ああいうことも各大学の判断で可能になるようにといった、可能性、選択肢という意味でいろいろな提言を盛り込んでいただければと思っている。そうした観点から議論していただき、かつ慎重に文章を組み立てていただきたい。

○ 当大学の産学連携ワーキンググループというところで議論などをしていると、ガイドラインという言葉がいいかどうかわからないが、具体的にここまではできるという例示があったほうがいいという意見がある。したがって、大学の自由度については前回も主査のほうから、できないことを挙げておいてという話もあったが、実際に産学連携を進めていく人間にとっては、ある程度の例示というのがあって、その範囲内で、大学の自由度で、ここはやるやらないを勝手に決めなさいというシステムのほうが、現実的にはやりやすいという状況があるので、それだけは述べさせていただく。

○ この6ページの知的所有権の2ポツのところに、「よりよい特許が出やすい環境を整備するため、関連法令の見直し等が必要である」という記載があるが、本来のこの報告書の目的からするとこのとおりでいいのかもしれないが、やや具体的にこうしたこと、こうあったほうがありがたいといった例示で具体化してほしい。

5.次回の日程

 次回は11月中旬に開催する予定とし、各委員との日程調整の上、事務局から改めて連絡することとされた。

お問合せ先

研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室

(研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室)