産学官連携推進委員会(第7回) 議事録

1.日時

平成13年9月25日(火曜日) 13時30分~15時30分

2.場所

文部科学省別館 大会議室

3.出席者

委員

 末松(主査)、市川、伊藤、小野田、川崎、岸、北村、清水、田中、丹野、平井、堀場、吉田

文部科学省

 坂田審議官、加藤研究環境・産業連携課長、磯谷技術移転推進室長、秋葉高等教育政策室企画官、柴田技術移転推進室長補佐 ほか

オブザーバー

意見発表者
 後藤 隆志 氏(独立行政法人産業技術総合研究所 産学官連携部門長)

4.議事録

独立行政法人の事例について

  • 後藤部門長から独立行政法人産業技術総合研究所(以下「産総研」という。)における産学官連携の推進について意見発表をした後、その内容に関する質疑が行われた。
    その内容は以下のとおり。

【委員】
 いつから研究者のモチベーションやモラル等の雰囲気が変わったのか。それから、外部へのオープン化が行われたことによって、従来の研究の流れと随分違うところが出てくると思われる。それについては、調整する組織があるという話であるが、どういう概念で調整しているのか、その考え方、方針を伺いたい。

【意見発表者】
 モチベーションについては、2,500人の研究者がいるので、隅々まで行き渡っているかはわからないが、かなり意識の高い人たちが出てきていることは事実である。まだ網羅的に調べてないので、本当はどれぐらいあるのかわからないが、ベンチャーをやってみたいという相談はかなりある。
 例えば、従来であれば、秘密条項について、しっかりとした取扱いが決められていなかったので、訪れた企業の方にどんどん自分の研究をしゃべってしまうということがあった。現在は、「産総研イノベーションズ」(認定TLO)ともタイアップして、秘密情報は秘密情報として守り、必要な情報については提出するが、場合によっては有償で提出するということを行っている。秘密情報についてどういう契約書を作成すればよいかという問い合わせなどが増えているので、意識は高まってきていると思われる。
 2番目の質問の趣旨がよくわからなかったので、もう一度お願いしたい。

【委員】
 国研時代は予算で決められたプロジェクトの流れがあった。現在は、受託して仕事をするということになると、仮に同類型の部門があっても、それぞれの研究方針自身が随分変わってくるのではないか。そうしたことを調整する機関があるという話をされたが、スムーズに調整できるのか。研究を現場で行っている人たちの間でコンフリクトが生じたりしないのか。

【意見発表者】
 各研究ユニットにおいてユニット長が自律的に運営しており、ユニット長が自分の組織をどう運営するかという方針を表明することがまず出発点となっている。その中には、例えば受託研究を増やしたいというユニット長もいれば、自分は受託研究ということではなくて、もっと地道なことをやりたいというユニット長もいるというのが、1つの流れである。その方針はそれぞれ自由である。ただ、我々の立場から言うと、例えば受託研究をとってきたユニットに対しては評価を行う。ここでいう評価を行うとは、例えば研究費の上乗せをすることができないかということなどを企画本部などに要求していくということである。ただ、ユニットの中には、そうした受託研究に向かないユニットもあるので、そうしたところは別の評価の仕方をしていくことになると思われる。

【委員】
 法人化を控えて、国立大学のTLOを預かっている身として一番興味があるのは、日本産業技術振興協会(既存の財団法人。以下「JITA」という。)と産総研イノベーションズの関係である。参考資料11ページの図を見ると、いわゆる特許のファイリングはJITAのほうで主として行い、ライセンシングを産総研イノベーションズで行うということではないか。特許のファイリング、ライセンシングということまで考えると、実際に携わってきた我々としては、シーズの発掘とライセンシングというのは、かなり連携して行わなければならず、別々にはできないというイメージがあるが、その辺はどのように切り分けているのか。

【意見発表者】
 特許の出願等については、すべて産総研で行い、出願等が終わったものについて産総研イノベーションズが取り扱うという役割分担になっている。産総研の研究者が産総研イノベーションズと一緒になって行動すると先ほど説明したが、実は、産総研内において発掘部隊が研究者4名で構成されており、産総研イノベーションズの知恵を借りながら発掘を行っている。産総研イノベーションズは外部組織であるが、内部組織と同じような扱いで、一緒になって発掘から出願まで行うというような感じになっている。
 JITAの役割は、従来のNEDO、旧工業技術院本院が持っている特許のライセンシングを行うことである。そういう意味では業務は完全に分かれていると思われる。

【委員】
 並列して行っているということか。

【意見発表者】
 そうである。

【委員】
 出願を産総研で行う場合、ライセンシングと無関係に出願するというのは少し形式的すぎるのではないか。我々が出願する場合、技術評価、マーケティング評価などと一体となった評価を行った上で、いけそうであれば出願に持っていき、それと同時にライセンスを始めるということをしている。その辺で、産総研のやり方がうまくいくのだろうかと思われるが、どう考えているのか。

【意見発表者】
 指摘のとおりだと思う。実はこの産総研イノベーションズの大部隊は、我々産学官連携部門と同じ建物内におり、完全に一体化して動くというやり方を行っている。例えば、外国出願を行う場合、するかしないかという決断をするときには、産総研イノベーションズも入って議論をして決めるというやり方をしている。

【委員】
 もう一つ重要なのは、兼業の問題であるが、兼業は今どのくらい進んでいるのか。

【意見発表者】
 申請中を含めて、たしか17、8名ほどいたと思う。

【委員】
 有給で兼業するのか

【意見発表者】
 そうである。

【委員】
 兼業がなかなか進まないという実感があるが、実際はどうか。なんとはなしに本人が自制するとか、周りからブレーキがかかっているということが非常に多いと思われる。

【意見発表者】
 それについては、これから大いにベンチャーになりそうなものを発掘して、どこに壁があるのかを確かめようとしているところである。具体的に17、8件しかいないのはなぜかと言われると答えるのは難しい。

【主査】
 兼業の給料が、本業よりも給料が高くてもよいのか。

【意見発表者】
 兼業で本業よりも給料が高くなるような案件については、基本的に好ましくないということで指導している。

【委員】
 コーディネーターが、研究者とTLOを結ぶ重要な役割を果たしていると思う。この組織図を見ると、本部と連携センターのほうにコーディネーター部があるが、その間の関係について教えてほしい。それから、先ほど4名の発掘部隊の話などがあったが、どういうアビリティ(能力)のある方がそうした業務に携わっているのか。また、今は過渡期であるので、今後、どういうふうに考えているのか。

【意見発表者】
 まず、人数は筑波に7名おり、それから地域に19名いる。それから、研究コーディネーターはすべて産学官連携部門に属しており、月1回研究コーディネーター会議というものを行っている。基本的には筑波も地域も同じ役割を負う。ただし、それぞれの研究コーディネーター毎に強い分野があるので、そういう強い分野を持った人たちが、自分はここが強いということで手伝えるものは手伝っていくというやり方をしている。特に、それぞれの地域センターにいるコーディネーターの数は多くないので、各地域からいろんな相談があったときには、例えばバイオに強いコーディネーターがいなければ、筑波のバイオに強いコーディネーターにつないで話をしてもらうといったやり方をしている。
 それから、どのような人材が携わっているかというと、昔の研究所でいうところの研究部長クラスにいた人たちが担当している。少なくともその人が属していた研究所、例えば電総研に属していたコーディネーターは、電総研の中にどんな研究者がいて、どんな研究を行っているか大体把握をしているので、外部からの問い合わせに対して適した研究者をすぐ紹介することができる。その他、生命関係のコーディネーターもいるので、例えば生命系と電子情報系が一緒になったような相談があった場合には、すぐに二人で相談をして対処できるといったやり方をしている。

【委員】
 法人化される大学との関係で、支援部門というのが非常に重要だと思うが、先ほど説明のあった支援部門の陣容については、そもそもの旧工技院時代の人材の再編成で賄うことにより完結しているのか。それとも、独法化に当たって、新たに外部から人材を集めたのか、その辺のところを教えてほしい。

【意見発表者】
 支援部門に関しては、外部とは言えないが、経済産業省からの人間がかなり行っている。従来、国研の中には、そうした人材はいなかったので、その点が以前とかなり違っている。再編をするときに、工業技術院の中の研究業務課や計画課などの企画部署自体が産総研に移ったということもあり、企画部門も含めた支援部隊が存在している。それ以外の完全に外部の人がいるかというと、ほんの数える程度である。基本的には、これまでいた行政系の人間が携わっている。ただ、従来、研究系の職員が企画等を行っていたところに、新たに百数十名の支援部隊が入ってきていると言う点が大きな違いではないか。

【委員】
 予算総額900億円のうち、直接研究経費としては13年度はどれぐらいになるのか。また、地域の研究拠点にそれぞれ研究支援部隊がいるということであるが、資料にある内訳でいうと、約700名がそれに当たると思われる。これはあくまで事務作業の支援部隊であって、研究開発そのものを助ける支援部隊は、依然として2,500名の研究者数の中に入っているということなのか。

【意見発表者】
 後者の質問についてはそのとおりである。いわゆる研究支援者は2,500名の中に入っている。
 それから、運営費交付金が690億円ぐらいあるが、その内の純粋研究費は160億円ぐらいである。それ以外の委託研究の部分については大体140億ぐらいである。この二つを合わせた300億円ぐらいが研究経費に当たると思われる。

【委員】
 人事制度について伺いたい。産総研は公務員型をとっている。事務的な支援職員については、公務員型の方が他の政府機関や組織との人事のローテーションに上で都合がよいが、研究職については、兼業・兼職の問題等があり、むしろ非公務員型のほうがやりやすい面があるのではないか。まだ経験の期間は短いかと思われるが、二つの視点で教えていただきたい。一点目は、この研究組織をマネージする側から見たときに、もう一度選択のチャンスがあったとすれば、公務員型と非公務員型のどちら側を選択するか。それから二点目は、ここで働いている職員の労組的視点で見たときに、今後どうしていくのか。

【意見発表者】
 後者は全く答えようがないので答えられないが、個人的な感想として、前者の質問については、どちらを選択するかと言われれば、当然非公務員型のほうが、活動の自由度が高いと思われる。
 公務員型のほうが行政のローテーションがやりやすいという話はたしかにあるが、そうしたローテーションよりも、研究やその技術移転がどうやりやすいかといった視点を中心に考えると、やはり非公務員型のほうが個人的にはふさわしいと思う。その兼業一つにしても、人事院の承認をいちいち受けるというのは大変手間がかかる。人事院からは2カ月は少なくとも見てくれというようなことを言われており、ベンチャーのように足の早いものに2カ月も待てと言わざるを得ないのはかなり苦しい。その辺が改善されれば、もしかすると、特に公務員型、非公務員型は関係ないのかもしれない。現在は少なくとも、そうした時間的ロスが発生しているのは事実であるので、そういう意味では、非公務員型のほうが自由度は高く、やりやすいのではないか。

【委員】
 資料の22ページ、23ページで、産総研のベンチャーということで、具体的に数社について、産総研の参加者の位置付けを含めて書いてある。産総研からの参加者のほとんどがアドバイザーや研究所長などの立場で入っているが、この企業の経営者については、どういうケースが一番多いのか教えてほしい。

【意見発表者】
 大体共同研究をしていた相手の企業の方などである。

【委員】
 新組織になってから、一見、より中央集権型になったような気もするが、現実問題として各ローカルの研究拠点の自主性というのは従来に比べてどうなったのか。自主性が弱まったのか、そのままなのか、あるいは強まったのか。

【意見発表者】
 非常に難しい質問である。例えば、北海道センターという中に、ある研究部門があるとしても、その研究部門は、場合によっては筑波にある研究部門の一部である場合があり、または、研究部門として、その地域の研究センターだけにある場合もある。いずれにせよ、研究センターとか研究部門というものが前面に出たような形で地域センターの運営がされており、研究ユニットの自立性が相当強く、地域のセンター全体として何か行動する場合、各研究ユニットの協力を得ながら行う必要がある。従来であれば研究所長の命令一下動くという形であったが、今回は命令一下ではなく、各ユニット長が相当の権限を持っており、センター長自体は権限で何かを行うというよりは、先ほどの支援部隊と一緒で、支援をしながら何かを行うというやり方になっている。そういう意味では、従来とかなり違ってきている。
 ただ、逆にユニットが自立性を持っているので、中央集権というのともまた違うと思われる。従来のような形で研究所長が権限を持って全体をまとめるというやり方ではなく、研究ユニットという組織にかなり自立性を持たせており、自立性を持つ場所が各研究所から各研究ユニットへ変わったということであり、必ずしも中央集権になって地域と中央との関係ができ上がっているわけではない。

【委員】
 具体的に言えば、今まで我々産業界が、いろいろな面で利用させてもらっていたことについて、現場でほとんど即決されていたことが、従来よりも時間がかかるようになったのか、即決ができないのか、ということを教えてほしい。過渡的なためなのかわからないが、何か昔に比べて、大変手間暇がかかりそうに見える。東京へ全部お伺いをたてなければならないのではという危惧を感じる。

【意見発表者】
 基本的には各ユニットがそれぞれ判断できることになっているが、現在は過渡期にあるため、例えば共同研究契約については今まで一つのひな型しかなかったが、これが今は柔軟にできるようになったので、逆にどこまでできるのか、常に問い合わせがきている。その辺がこなれてくれば、各ユニットでかなり自律的にできるようになるのではないかと期待している。

【委員】
 大学のほうもベンチャー育成に踏み込む時期に来ている。既に何件かのベンチャー育成の経験を経ているということで伺いたいが、この組織図の中で、ベンチャー育成に専門的に取り組む部署があるのか。例えばビジネスプランを作成したりキャピタリストのネットワークを構築するという機能がベンチャー育成には必要であるが、それについては、アウトソーシングするのか、それとも内部にもう既にそうしたネットワークができているのか、その辺を参考のために聞かせていただきたい。

【意見発表者】
 残念ながら内部には、まだできていないが、産学官連携部門の中にワンストップサービスのような組織を作ろうとしている。ただ、ビジネスプランを作成したりファイナンスをどうするかについては、内部の人間がすべてするということではなく、そうしたことができる外部組織、または人間とのネットワークを組んで行っていきたいと思う。

【委員】
 経験上、研究者に必ずしもコーディネーターとしての適性があるかということについてはかなり疑わしく思っている。ビジネスの話になると、コーディネーターとしては、もうほとんど無意味であるという実感がある。先ほどの話では、コーディネーターも部長クラスの方ということらしいが、我々教授がコーディネーターになったら最悪であり、まずつぶれるという認識が我々にはある。我々の経験と異なり、もしかするとそちらのほうが使い方によってはいいこともあるのかもしれないが、その辺の内情を教えてほしい。

【意見発表者】
 コーディネーターの業務は、例えば共同研究をしたり受託研究をするときのつなぎがメインである。ビジネスそのものに近くなればなるほど、確かに指摘されるとおり難しくなる。TLOは民間からの人材がかなり入っているので、コーディネートについてはTLOに依頼したりすることを考えている。また、ベンチャーの場合には、ベンチャーを支援するワンストップサービス窓口では無理であるが、例えばベンチャー起業経験者や現にベンチャーを運営している人、それからベンチャーキャピタリストといった人たちとのネットワークを作り、その中のふさわしい人にいろいろとコンサルタントをお願いするという方法を考えている。

【委員】
 人事制度については公務員型でいくということであるが、聞いた話によると、新しく採用する場合には任期制を採るということらしいが本当なのか。また、今後どうするのか教えてほしい

【意見発表者】
 研究者に関しては、基本的に任期制で採用している。任期制でないのは、例えば、全部必ずしもそうだというわけではないが、相当時間のかかる部門の研究者などである。他のところは基本的に若手を採用する場合、任期制で採用する。

【委員】
 今いる人間はそのままか。

【意見発表者】
 今いる人間の任期を限っているわけではない。

【委員】
 再任も可能ということか。

【意見発表者】
 そうである。その際に、もう一度審査をすることになる。

【委員】
 何年ぐらいの任期になるのか。

【意見発表者】
 人によって異なる。3年から5年ぐらいだったと思う。

【主査】
 任期制の徹底というのは、一面では大変よいが、他面では、いい人が逃げてしまう可能性があるのではないか。例えば、もう少し長い期間でオファー(申し出)する機関、あるいはパーマネント(終身制)の機関があれば、そちらへ行ってしまうのではないか。

【意見発表者】
 人事の担当ではないので、そうした事例があったかどうかわからないが、理念的にはあり得る。ただ、研究環境などを考えて、実際に研究される方は入ってくるのではないかと期待している。確かに任期制のところとそうでないところが、他の条件が全部同じであれば、任期制のほうがかなり苦しいのかもしれないが、おそらく研究費、設備、周りの研究者、それから研究所間のネットワークなどを考えて総合的な判断をすると思われるので、必ずしも任期制だから弱くて駄目だということにはならないのではないか。

【主査】
 研究費というか研究者の数はおおよそ一定だと思われるが、フレキシビリティ(柔軟性)があるのか。例えば、こういう部門に、どうしても何人かどこかから呼びたいというときに、即座に対応ができるかという意味のフレキシビリティである。

【意見発表者】
 研究者の数は大体一定だとしても、毎年定年で辞めていく人が大体見込めるので、その中からきっちり使っていくということが一つ。それから外部資金を受けて、その外部資金の中で採用できる人員については、別に採用してもかまわないということのようなので、その中で対応するということになると思われる。

【委員】
 先ほどのコーディネーターの問題は非常に重要である。コーディネーターはいろいろな方の考え方があり、何をコーディネートするかというかは一様でない。特に、TLOまで一環したコーディネーターについては、当委員会でも何度も議論が出ているが、それをどうやって育てるかということになると、申し訳ないが、部長では駄目ではないか。そうした仕事だけでは、まだコーディネーターとしては不十分であり、もっと多面的なコーディネートをする人、実業界の経験者が多く入って来れるようにならないといけない。今回の問題とは関係ないと思われるが、今、日本で研究職として一生をきちんと送れる場というのが、国研をはじめとしたいろいろな研究所にほとんどないのではないか。全員がそういうポジションにある必要はないが、光っている人、本当に研究に適している人が60、70まで在職できるような組織というのが必要ではないか。我々の大学では、今幾つかそうした試みを始めているが、以前の国立研究所が本来はそれをきちんと行う場所ではなかったのではないかと思う。

【意見発表者】
 実業界から入ってもらうということであるが、基本的には中途採用にも門戸を開いており、実業界の方で良い方がいれば採用をしてもらえるように、我々産学官連携部門のほうから能力開発部門や企画本部に働きかけをしていく。門戸を閉じており、外部の人材を一切入れないという考えではない。むしろ逆に、良い方がいれば、コーディネーターなのか産総研イノベーションズの中なのか、どこなのかはまた別にして、来ていただきたい。それから後者の答えになるのかどうかわからないが、産総研の場合はフェローの制度を設けており、必ずしも管理職になって偉くなるというようなシステムではない。フェローという研究に優れた人が今3名いるが、アサイン(割り当て)をして研究をしっかり監督してもらうというような制度作りをしている。

【主査】
 研究者が採用されるときに、その発明に係る特許は研究所に所属することになるということであるが、それに関して一定の契約書等を全部結ぶのか。その研究に関連して、研究生など大勢の人が外部から研究室に入ってくることになるが、そうした人々にもそれぞれ契約により守秘義務等を守らせるのか。

【意見発表者】
 採用の際にいちいち契約書を結ぶということではなく、産総研の職務発明規程の中で特許等は機関帰属であるとしているので、その規程に従ってもらうということで済ませている。それから、客員研究で来られる等の人たちに対しては、契約書の中で、例えば客員研究の場合には、その研究で生じた特許等は産総研の帰属になるということにしている。

【主査】
 それには罰則規程があるのか。特許を自分で申請した場合、黙ってうやむやで済むのか、すぐに辞めなければならないのか。これは非常に大事なことであり、実際のところ既にもう問題が起こっているわけであるが。

【意見発表者】
 特に、この規程に違反したらクビにするといった罰則はない。多分、ケース・バイ・ケースで判断するのではないか。

【委員】
 産総研以外の話で議論してもよいか。結局、大学の組織で考えていくと、大学の多様性は、産総研よりもはるかに大きく、研究の性質が違う。それをどう調整するかという話を先ほどしたわけである。一つの方法として、大学の中の組織を細分化して意志決定機関を分解するのがいいのか、あるいはTLOみたいに、例えば京大であれば国際融合創造センターにラボを作ってそこに吸い込んでいくという方法を取るのか。そうしたことをうまく設計していかなければ、学部なり研究会だけでも、カルチャーが全然違う人ばかり集まっているので大学全体の調整は難しいのではないか。

【主査】
 今の質問と関係するが、大学が今、これから法人化しようとしているわけであるが、独立行政法人の研究所を今まで運営してきた経験から、大学に対して何かアドバイスしていただければ大変ありがたい。意志決定の問題もあるし、あるいは研究員の問題もある。先ほど公務員型か非公務員型かについては答えていただいたと思うが、それ以外にも、コーディネーターなどいろいろなことがあるかと思われるので、よろしくお願いしたい。

【意見発表者】
 大学の中のことはあまりよく知らないので、あれこれ言う資格はないかと思うが、一つは、特許等の帰属がほとんど個人にあるというのはやりにくいのではないかという気がする。外部から見て、例えばある特許を使いたいときに、個人と機関がそれぞれ持つと交渉相手が二つになってしまう。しかもその個人が研究所を辞めてどこかに行ってしまった場合、もう交渉のしようがないという問題がある。個人的な感想であるが、機関帰属というのは非常に重要ではないかと思われる。
 あとは、組織作りというか、大学の場合はやはり先生のところへ行って、先生のところだけで話をせざるを得ないということが現状と思われるので、外部から見てもう少しわかりやすい窓口組織があったほうがいいのではないか。

【主査】
 先ほどの説明の中で、産総研イノベーションズを別組織で作っているが、実際の支援は産総研そのものが人件費等かなりの部分を行っている。そうした上での独立性と考えてよいのか。

【意見発表者】
 少なくとも、我々のところは中期計画ということで、4年の計画でやっているが、この4年の期間中は、産総研イノベーションズに対して、人件費を含んだ委託により業務をしてもらうことにしている。その後どうするかは、その4年間の状況を見ながら考えていくことになるが、少なくとも4年間でそう簡単に自立ができるような組織になるということで支援しているわけではない。

【事務局】
 今の関係で産総研イノベーションズに年間どれぐらいの金額で業務委託しているのか、人件費はどれぐらいなのかということが、もしわかれば、教えていただきたい。
 また、理論的には、独法になれば直接TLOを内部でやることもできるなど、いろいろな選択肢があるが、その中でなぜ今の形態を採ったのか教えていただきたい。

【意見発表者】
 予算のほうは、今資料が手元にないのでわからない。後者については、ものを売るときに、民間として活動するほうが身軽であるからである。確かに産総研は独立行政法人であるが、国家公務員の身分を持っており、そういう意味で制約がかなりあるのではないか。実際はどうだったかわからないが、その当時は、制約があるであろうと考えていた。それから、先ほど、中期計画期間中ということに触れたが、内部にあると、出来が悪くても抱え込むしかないが、外部にあれば、中期計画があるたびに見直しをして、駄目なら違う組織でまたやることができるという利点がある。そういう意味では、内部に作ったほうが確かに資金面、その他やりやすい面があったかもしれないが、やはり産総研イノベーションズはTLOであり、技術を売ることが活動の主体になるため、その活動のしやすさを重視したということになったと思われる。

【委員】
 エクイティについてであるが、産総研自身としては、独立行政法人として、多分エクイティを取得したり、それを活用したりとか、非常にしにくい立場にあるかと思われる。同時に、産総研イノベーションズも、この資料を拝見すると、財団法人の一部門ということなので、多分財団法人の寄附行為によって、かなり制約があるだろうと思われる。ライセンスの対価として、あるいはスピンアウトを創るときの一つの手法として、エクイティの活用というのは重要ではないか。今後、産総研、あるいは産総研イノベーションズとして、どうやってこうしたものを使っていくのか、その辺の将来的な道筋をできれば教えていただきたい。

【意見発表者】
 今指摘があったとおり、活用しにくいのではなくて活用できない状態である。独立行政法人の法律で、エクイティを持ってはいけないということに確かなっている。ライセンスの対価をお金ではなくエクイティでもらうことは非常にいい方法だと個人的には思う。将来的には法律改正を含めて考える方向にはあるのではないかと期待している。

【委員】
 これから、どういう姿を大学の一つの理念型としていくかという問題についてであるが、例えば、公務員がその典型であるように、非常に大きなカテゴリーの中のものを全部一つの規則で括ろうというのは、その多様性に対応できないと思う。今、多様性に対応するために、例えば国家公務員法の運用にいろいろな穴を開けて見ているという段階にある。しかし、これから、大学にしろ、研究所にしろ、その中で行われている活動の多様性を眺めると、そうした一律の規則の下で、ある種の特異例に対応していくというやり方では駄目になると思う。では、他にどういう理念型があるかと言うと、米国の雇用型がある。基本的には一人一人と契約することになる。ジョブディスクリプション(職務条項)を書いた契約書があり、あなたはこのポストで働く限りにおいて、これこれのことはしなければならず、これこれのことはしてはいけないというふうに一人一人と契約していく。これを理念型にした上で、共通する職務、共通する人間集団については、契約書も共通にする。私は将来に向けては、日本の研究所も大学も、そういう方向に行かざるを得ないと思う。
 例えば産総研は将来、もちろん公務員型でなくなったときの話であるが、そうした雇用形態を採る可能性はあるか。研究者全部で2,500人のジョブディスクリプションを管理することは現在では別に難しいことでもない。

【意見発表者】
 現在、個人の評価をする際には、それぞれの個人が自分の目標を書き、自分が何をするかということを明らかにして、それを評価の基準にしようということで、全員が個人目標を書かされている。そういう意味では、それを契約に持っていくかどうかはわからないが、そうしたことの下地はあるのではないか。

【委員】
 民間人の立場からは、今の委員の話は大変理解しやすいが、同じ独立行政法人といっても、産総研の場合は、もともと「産業」が冠に付いており、産業と技術というのは非常に近い関係にあり、技術をなぜいろいろ研究するのかといえば、産業のために行うことが産総研の使命であるので、別に産学協同云々を今さら言うのもおかしいのではないか。それに比べて、大学というのは、何も産業の発展のためだけの存在ではない。ただ、産業の発展に対する無関心があまりきつ過ぎたから問題であるが。非常に産業発展に自分の生きがいを感じている人もあれば、もう純粋の研究に生きがいを感じている人もあるというように、いろいろな人種が混ざっている。みんな自分が偉いと思っている人たちなので、そういう人たちを一まとめにすることは非常に難しいと思う。同じ独立行政法人だからということで産総研の話を聞いてみても、大学の先生にはあまり関係がないのではないか。大学の中のごく一部の産学連携部門に興味のある人が産総研の例をいろいろ聞いて、それを行うということぐらいにしたほうがよいのではないか。また、このルールを全部の大学に押し込もうとすれば、もうとんでもないことになってしまう。しかし、産学協同というものを今までやってきて大変な苦労をしてきた人間として言わせてもらうと、当然なことを、ここで真面目に話してみたり、あまり関係のないことで論議をするというのも何か奇異な感じがする。

【主査】
 前回から大学の法人化について議論を特化しているわけであるが、その前提である産学連携について議論した際に、多様性のある大学の中のごく一部、産業界と接点があるところがもっと有効に連携していくためにはどうすればよいのかということに限定をして議論することになったと思う。中間取りまとめにもたしかその旨が書いてあったと思う。全部を適応しようということは、どだい無理なことであるし、そうであれば逆にここで考えていることが無になるという了解の下で当委員会は動いているのではないか。

【委員】
 これからの多様性があり個性のある大学がそれぞれできてくるとすれば、経営方針を決めるデシジョンメーキングに全教授参加の教授会という発想がある限りは駄目である。そうであれば何も組織を作る必要ないのではないか。松下村塾みたいに一教授一教室というのを、建物だけを借りるという格好で行ったほうがいいのではないか。そういう意味では、経営と研究・学術という、二つの部門の意思決定は別の仕組みで行うことが大事である。この産総研の場合、研究というのは、どうもトップマネジメントと全然別なのではないか。研究のプロジェクトの最終意志決定をするのは、このユニットが行うことになっているので、ある意味で自由でないか。
 ここで議論している問題で重要なのは、産学連携というのは、経営方針なのか、学術研究、あるいは研究推進体制として考えるのかということである。両方だというと、意志決定が非常にややこしくなる。私は大学に限った議論をすれば、各大学は自由であるので、経営方針として産学連携がうたい文句の大学があってもよいし、研究としてしか産学協同をやらないという大学があってもよい。これらは経営方針だろうと思われるので、研究の中身的な産学とゴチャ混ぜの議論を行うと収拾がつかなくなるのではないか。
 それから、先ほどの任期付の問題で主査のほうからちょっと意見があった点について、私が以前いた機関が行っている5年の期間の研究支援事業でも任期雇用をやっているが、任期付雇用で業績を上げる方は2年ぐらいですごい業績を上げて、ぱっとテニアポストに移る。5年なら5年の期間で、研究ポテンシャルを落とさず上げていくために後任を探すということは大変難しい。逆に、ポストにしがみつくような人を選んだら、これは袋小路となり、売りがたまっていき、そのプロジェクトは非常に活性化が落ちる。問題はこうしたパーマネント(終身制)のポストのほうが大きい組織になると、どうしてもキラキラする方は外に出ていくより中にいようかということになり、できる人も残るが、行き場のない人も残るという、パッチルース(玉石混合)がはびこってくる可能性があるということである。ERATOで大体300人ぐらいそういう期間雇用を行っているが、科学技術振興事業団として就職の斡旋をした覚えは1回もない。それはリーダーに全部任せており、リーダーの責任になる。

【主査】
 確かに任期制の場合、非常に研究環境がいいところというのは、かなりそれに対する対応性がある。特徴を出せば、確かに任期制というものは使えるであろうと思うが、指摘のあったように、任期制が一度終わった後に、次の誰かを連れて来るということが非常に難しいというのは、大変現実味のある話である。

【委員】
 産総研イノベーションズは、現在、唯一の認定TLOである。今、国立大学についても、認定TLOの問題を文部科学省で検討してもらっているが、早くそれをやるようにとか、認定TLOはどういう良さがあるかとか、その辺で何か気付いている点があったら意見をいただきたい。

【意見発表者】
 認定TLOと承認TLOの違いはあまりよく理解していないかもしれないが、承認TLOのほうは、たしか、補助金をもらえるなどいろいろな助成制度があり、認定のほうは、特許料の免除ぐらいではないかと思う。ただ、認定TLOになることによって、例えば産総研側から、認定TLO以外のところにまでどんどん専用実施権を与えたり譲渡をするということは基本的にしなくなり、窓口が一つになる良さはある。別に認定TLOは1個でなければいけないということではないが、我々のほうから、ある意味では自己規制して、認定TLOに窓口を一本化することを方針として決めた。それで外の人から見ても認定TLOに行けば産総研の技術はどれでも買うことができる。それと、もう一つは、認定TLOで唯一であるがゆえに、我々のほうも委託費という形で、かなり財政的な支援もできるということではないかと思う。

【委員】
 当大学のTLOは、初めから大学のインフラとして法人化の後には、大学内になるべくそれを入れようという形で財団を選んだ。しかし、実際に2年間TLOで行動してみると、大学の文化とTLOが行っていることが大分違うこと、いわゆる教育と研究の管理を主体にしている大学の事務組織と、研究成果をライセンシングしたり、ベンチャーを作ったりするTLO機能とは、人材も違うし、先ほどの多様性や迅速性というタイムレジームも全く違うことがわかった。こういうことで、ある意味で非常にいい勉強になった。そのまま法人化に突入して、TLOを慌てて作ったら、もう全く動かない。これはもうオン・ザ・ジョブトレーニングしかないなと感じた。
 産総研のほうで、共同研究を主体にして、それから出た特許をうまく専用実施権を立ててベンチャーをやるというのは、非常にいい流れだと思うが、実はこの共同研究というのは、なかなかくせ者で、共同研究を実施する企業側から言えば、かなりの契約事項を初めから決めておかないととても入れない。ところが、今大学に、かなり文科省の努力で、共同研究のいろいろな枠組みが取れたが、取れただけでは、それを実施する人材がいない限り、とてもできない。実際やっているTLOから見ると、枠組みが取れたがゆえに、今度はTLOがやらなければいけないという理由がなくなってしまった。むしろ、非常に困っている。正直に言うが、実際に学校の中にそういう人材が育って、学内でマネジメントをしっかりできるという段階になったら、一体化したほうがいいと思う。それまでの過渡期は、TLOにそうした業務委託をするといった施策が大事ではないか。企業のほうは待ったなしでその条件を付けてくるので、先へ延ばすと、それだけ死線をさまよう可能性がある。実際に企業のほうが本当にこれを使って、ベンチャーあるいは共同研究で1億、2億を投じようとしたときには、相当な契約事項がないと先へ進まない。この辺について、もう少しプラグマティックに対応できれば、随分この活動は進むと思う。

【意見発表者】
 産総研の中では知的財産部と産総研イノベーションズの協力で共同研究契約を作り上げるというやり方をしており、実は企業側からかなり細かいことを言われているが、産総研イノベーションズに企業でいろいろ経験を積んだ方が6名いるので、その辺の知恵をいただきながら共同研究契約を作り上げている。そういう意味では、企業の方の知恵がないままに、今までの役所的なやり方でやっていたら、多分相変わらずそっぽを向かれるという状態にあったのではないか。

【委員】
 前回の議論でも、多分両論が出ていたかと思う。一つは国立大学の法人化後のTLOの機能というものを思い切って拡大して大学につないでいこうという、先ほどあった、実務経験に基づく指摘である。一方、別の委員から話があった、国立大学が自らの経営方針を明解にして、産学連携というものに対して大きなウエイトを置くポリシーを出した場合には、全学体制として学内にしっかりしたリエゾン機能を持たなければいけないし、また、法人になっていれば、先生方が苦労してTLOを立ち上げたのと同じように、どんどん外部のスペシャリストを呼び込んで学内にしっかり機能するリエゾンオフィスを作ることもあり得る。バラエティに富んだそれぞれの大学の個性にあわせて類型化し、幾つかをサンプルとして示して、その中から選んでもらうということが適切ではないか。学内にリエゾンオフィスを持ってもらうべきだという理論にこだわっていたが、今日の話を聴きながらそう感じた。

【主査】
 TLOの在り方の多様性を考えたほうがいいという指摘である。

【委員】
 週に1日ぐらい、外と共同研究できるというふうな仕組み、恐らくそういうことになると思う。また、逆の場合でも必要になると思われる。週に1日だけ大学に来て、残りで共同研究をやる。つまり、共同研究で出た成果が大学に残っていかないと蓄積にならないので、逆に4日は外で1日だけ中ということも十分あり得る。非公務員型にすれば可能ではないか。あるいは、非公務員型だったら大学との契約において、その代わりに給料は5分の1でもよいということも可能ではないか。もっと個別にブレイクダウンできるような仕組みにしなければならない。

5.今後の日程

 次回は10月上旬に開催する予定とし、各委員との日程調整の上、事務局から改めて連絡することとされた。

以上

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