産学官連携推進委員会(第6回) 議事録

1.日時

平成13年9月5日(水曜日) 17時~19時

2.場所

文部科学省 分館 201・202特別会議室

3.出席者

委員

 末松(主査)、伊藤、小野田、川崎、岸、北村、清水、白川、田中、田村、丹野、平井、堀場、安井、吉田

文部科学省

 加藤研究環境・産業連携課長、合田大学課長、磯谷技術移転推進室長、柴田技術移転推進室長補佐  ほか

4.議事録

(1)産学官連携推進に係る最近の動きについて

 資料2、資料3に基づき事務局から説明した後、その内容に関する質疑が行われた。
 その内容は以下のとおり。

【委員】
 マッチングファンドは、研究費を半分ずつ出し合う制度と聞いたが、この資金で足りなくなるようなことはないのか。上限があるのか。

【事務局】
 予算の枠内で大体1件当たりの幅を決め、競争的に選考して決める。その代わり、国公私立大学と独法国研も含めて公平にアプライ(申込み)してもらう。

【委員】
 2点ほど伺いたい。この予算の実施主体はどこになるのか。地域のほうは都道府県で、大学というのは共同研究センターになると思われるが、どういう形の実施主体を考えているのか。また、マッチングファンドとあるが、多くのベンチャーの形態というのはベンチャーキャピタルが共同出資する形が多いので、その中に参加するという意味なのか、あるいは反対に、自らリードして民間も参加させるということなのか。

【事務局】
 「1.産学官連携イノベーション創出事業」は、基本的にはベンチャーを立ち上げようと計画している個人に対する支援になる。

【委員】
 受付はどこになるのか。

【事務局】
 それについてはいろいろと検討している。科学研究費補助金と同じように個人に対して補助金を出すが、30%の間接経費を乗せるので、その30%は例えば大学に入れるようにするなど考えている。

【委員】
 大学の事務局を通じて個人がアプライするという形か。

【事務局】
 例えば共同研究センター長の推薦をもらって、大学人としてアプライする、あるいは大学の技術成果を使って申請するという形を考えている。それから、TLOが個人と共同で行い、TLOからアプライして、そのTLOが知的財産権の管理も含めてインキュベーションをしていくことも考えられる。
「○独創的革新技術開発提案公募制度」は既に本年度1回実施している。これを発展させたものなので、対象としては民間企業ということになる。
 「3.産学官連携支援事業」のコーディネーター等人材の派遣については、資金は国のほうで用意するが、資金の管理については基本的に全国的な法人などが受け取り、そこから大学の要請に応じて人材を派遣することになる。
 「2.マッチングファンドによる産学・産官共同研究の推進」のマッチングファンドについては、2番目の質問とも絡むので併せて答えたい。ファンドというのは命名としてふさわしいかどうかという問題があるが、趣旨としては実施主体である大学若しくは独法国研が民間企業と共同研究をして、企業から資金を受け取った場合に当該大学等に対して政府が資金を支出するということである。資金を使うという意味では、大学や独法国研が主体となる。先ほど言われたベンチャーファンドとの関係については、これはあくまでも民間と大学との共同研究のためのマッチングファンドという形であるので関連がない。
 「4.独法成果活用事業」は独立行政法人が主体となる。「5.産学官連携に係る調査機能の強化」は、文部科学省の科学技術政策研究所というシンクタンクがあるので、そこが調査の実施主体となる。
 「知的クラスター創成事業」の実施主体については、大学側では大学の共同研究センターが専らその研究の執行の舞台となる。資金については、国から県の財団若しくは既存の財団例えばテクノポリス財団や産業振興財団などに資金を流し、そこから大学に対して資金が出るということを考えている。
 「中小都市エリア連携基盤整備事業」については同じようなスキームである。県関係の財団等に資金を出して、そこから関連機関に研究費が出るということを考えている。

【委員】
 確認であるが、資料2の2枚目、3枚目の参考のところから抜き書きして、一番最後のページのプランにまとめているということか。

【事務局】
 そうである。

【委員】
 知的クラスター創成事業の内容について質問するが、国から県の財団等を通じて研究費等が支給されるという話であるが、あくまで事業費の中身は研究費とか人件費などのソフト面を対象にするという考えでよいか。

【事務局】
 そのような考えで結構である。

(2)今後の審議の進め方について

 資料4に基づき事務局から説明した後、自由討議が行われた。
 その内容は以下のとおり。

【主査】
 議論の前に確認するが、当委員会の中間取りまとめの中で、国公私の大学すべてを対象として産学官連携について議論をしたわけであるが、今度は国立大学の独立行政法人化について、産学官の連携がしやすい形を提案したいという趣旨でよいか。

【事務局】
 そうである。

【主査】
 中間取りまとめの中で議論されていることが、国立大学の独立行政法人化の話の中にうまく入れ込められるような仕組みをもう一度確認するということにし、その具体的な内容は資料4の2枚目に書かれているということでよいか。

【事務局】
 これは事務局のほうで整理した項目であるので、これに対しての意見もいただきたい。

【主査】
 一応これを一つの骨子として議論をしていただきたい。第7回に産総研の経験を聞かせてもらい、第8回に国立大学法人について現在進められている議論内容に対して産学連携という面から見た場合に何か問題がないかといったことを確認した上で、第9回にまとめる、もしまとまらなかったらもう1回行うという予定でよいか。

【事務局】
 その予定である。

【主査】
 今回は非常にターゲットが絞られているので、本日はジェネラルディスカッションということでよろしいか。これに関して今までの確認、あるいは今まで言い足りなかったこと、あるいは今まで遠慮していたことについて率直な意見を伺いたい。

【委員】
 確認であるが、今後の検討も中間取りまとめと同様、「大学発の連鎖的な新産業の創出を加速するために」という言葉についての議論と考えてよいか。産学官連携の概念は非常に幅の広いものである。

【事務局】
 「大学発の連鎖的な新産業の創出を加速するために」は中間取りまとめの副テーマであり、副テーマそのものにとらわれる必要はないと思われる。当委員会の第1回で配布した要綱の中に「連鎖的な新産業の創出」などということもターゲットに入っているので、この副テーマそのものの文言にとらわれることなく、結果としての新産業創出、社会の活性化等を睨んでの産学官連携ということで理解してほしい。この副テーマよりは少し一般的に考えていただきたい。

【委員】
 大学法人の在り方についての本体の検討組織がある上でということであるが、当委員会からのものと似たような注文をつけてくる、ここ以外の審議機関等はあるのか。

【事務局】
 聞いている範囲では、今、大学法人化の調査検討会議において、各四つの部会があり、そこで組織とか評価とか人事とか、そういったテーマごとに議論を進めている。おそらく中間報告が出た後に関係団体からいろいろ意見を聞くことになると思う。そうした形でいろいろな分野、あるいは関係団体からの意見を盛り込み、最終的には来年の3月までに最終報告をまとめるということで理解している。特に産学官連携はこれだけ大きな話題になっており、大学法人化において非常に重要な地位を占めるであろうと思われる。事務局としては、産学官連携を議論している委員会からも法人化についての制度設計、方向性に関して提言をいただいた方法がいいのではないかと判断してお願いしている。

【事務局】
 基本的には、今説明のあったとおりであり、国立大学の法人化については、現在、検討会議を設けて制度設計の議論を行っている。9月中には中間報告の形で公表し、各方面から意見をいただいた上で年度内に最終の取りまとめを行うというスケジュールで検討してもらっている。
法人化の制度設計に当たっては、例えば人事制度をどうするかといったような観点については、産学官連携も当然視野に入れて議論してもらっているが、本委員会においては、そうした観点から専門的な意見をいただければ大変ありがたい。10月4日の委員会において当該中間報告について説明することになっているので、いろいろと検討していただきたい。

【委員】
 関西のほうのベンチャーキャピタルを創って起業家を募集する事業に、私自身が最初、幾分か関与できないかと事務方に相談に行ったことがある。そのとき、アホかと言われてそれで終わりになった。今は私の友人にやってもらって、時々アドバイスをするというだけの立場である。
 最近、そこが技術系の会社に投資をしたところ、問題が山みたいに出てきた。会社の組織を作ることがいかに難しいかということについて話したい。問題は人材である。インキュベータの会社の社長をずっとやってた方が退職されたので、その方にその会社の副社長に入ってもらい実質的な社長のような仕事をしてもらった。研究開発型のベンチャーというのは研究だけをしていたわけで、販売する方法を知らないため、販売部門には商社の部長で早期退職された方を、私のやっている研究会のネットワークの関係で引っ張ってきて営業体制を創らせている。まず第一に人材を供給する仕組みを持っておかないと、結局、企業としては動かないということになる。
 ベンチャーキャピタル側としての経営コンサルティングや経営指導についても一つの案件に投資しただけで、もうてんやわんやで仕事をしているという状況がある。今後、こうした制度がスタートして、投資をした時に、そうしたファンドマネージングなり単なるセレクションだけでなく、その後どう成功させるかについて具体的に経営の内容に関与していかなければならないが、そうした人材というのは本当に数が限られている。
 あまりネガティブなことは言いたくないが、資金が出来て予算をつけて動かした後、今言った魂をどうやって創っていくのか。こうした大学から出資して研究開発型企業を起こすとすると、企業としての組織作り、それから販売体制を作るといったことについて徹底した指導ができる人たちがいないとうまくいかない。普通、ベンチャーキャピタルの場合は、数社が共同出資して、誰かがリーダーになって責任を持ってやっていく。大学側がその出資の仕組みのスキームを作るとしても、民間のベンチャーキャピタルのキャピタリストとしての機能を持ってるところがリーダーインベスターになるほうが望ましいと思われる。役所の仕組みとどうマッチングさせるかという点で非常に難しいところだと思うが、そこは是非工夫してほしい。このような表現をしたら問題かもしれないが、学者先生やお役人はフォロー、サポーターに徹してもらい、リーダーインベスターとしてベンチャーキャピタリストが中心となるようにしていかないと、ベンチャーとして企業として成立しないと考えたほうがいい。どういうふうな仕組みでやったらいいのかを、是非考えてほしい。

【主査】
 今の意見は、実際に会社を創ろうとする上で重要なことであり、それを大学の仕組みと関わらせていくには、おそらく何か別の仕組みがもう一つ必要になるということであると思われる。大学発ベンチャーへ持っていくために大学はどうあるべきかということの前提になるのではないか。

【委員】
 今の話に関連するが、まず大学発ベンチャー1,000社と一応出ているが、これはいつの時期を目標にしているのか。

【事務局】
 今一応言われているのは、3年間で1,000社という目標である。

【委員】
 先ほどの話と重複するかもしれないが、我々企業が目利きをやって、それをまたバックアップしても1社創るのにものすごく苦労しており、なかなか成果が上がらないということが常識である。1,000社創っても10社ぐらいが生き残れば、あとは死んでもいいという1,000社なのか。1,000社を全部生かすのであれば、これは1万社ぐらい創らなければ1,000社は生き残れない。大事なのは最初の目利きの時が甘くないかどうかである。面白いなとわあっとやって、一発当たって終わりという事例が非常に多い。まず最初の段階でなぜ目利きが必要かというと、医者でいえば診断が正しければ後の治療というのは比較的簡単であるが、診断を間違えていろいろなところに薬をやったり外科手術をしたりすれば、ますます病状が重くなって生きる者も死んでしまうということと同じである。最初の診断とその後のバックアップ体制の二段構えが必要である。このポンチ絵で見たらグリーンとピンクと紫色の間にずっと溝があり、ここには何の連絡橋もないが、これは断絶しているのか、あるいは何かここに仕掛けがあるのか、その辺のところがはっきりせず非常に不安な感じがする。その辺のところをもう少しディスカッションしなければ、現実問題として1,000社創るというのは、イメージとして湧いてこない。

【主査】
 確かに大学側の仕組みについては、現在はまだ必ずしもフレキシブルではないが、そうなったとしても、ここから先が問題であり、本当にわかる人をどれだけ配備するかということが非常に大事だと思われる。大学側に配備するのか、あるいはいわゆるキャピタリストみたいなところにいて、ファンディングしながらうまくリードしてマネージメントしていくことになるのか、その辺は非常に大事なポイントだと思う。

【委員】
 大学の中に目利きを持つか持たないかは別にしても、目利きがいなければ、大学発のベンチャーというものは結果的に生まれないと思う。ベンチャービジネスというのはやはりビジネスでないといけない。そのビジネスの核を整えるための仕組みがあるからあなた頑張ってやりなさいと言うのか、あなた自らの責任でやりなさいと言うのか、どちらかをはっきりさせなければならない。

【主査】
 今の指摘は、大学自らが行うのか、あるいは社会、政府等で別の形の仕組みを整えてもらい、人・金等を持つ集団と大学との連携が取りやすい形をとるのかということだと思う。そこまで言及をしないと大学発ベンチャーは出来ないため、大学と直接関係ないかもしれないが、大学の制度設計と並んではっきりとそのことについて言っておく必要があるということだと思う。

【委員】
 スピンアウト等と書いてあるが、大学の先生がスピンアウトして、中途半端に事業を起こして全部失敗させるというようなことがあってはいけないと思う。ビジネスを、全部が全部とは言わないが10やればせめて5つぐらいは成功させないと、こんな甘言に乗ってやってみたけど日の目を見なかったということに結局なり、大変なことになる。もう現実問題として、大学関係ではないが、一般の経済界でもベンチャーやれやれとみんなにおだてられてやって、それで財産を全部すってんてんにしてしまい、ひどい目に遭ったという人はたくさんいる。大学の先生が万が一スピンオフでもやって、事業をやって、身ぐるみ剥がされることになったとしたら、これは悲劇である。やはり全体の中でこの分野についてはこれだけ責任を持つということを明確にしなければ、なかなか踏み切りが難しいのではないか。

【委員】
 とりあえず大学をどうするかということについて、この検討事項の案に沿って私が思っていることを幾つか言いたい。法人化自体についてではなく、今後法人化することを前提とした形で話をしたい。検討事項(案)の「2.検討事項」の例の「2)組織業務」にある「1.産学官連携組織の在り方」についてであるが、基本的に今後大学が独立行政法人になった場合に、どういう産学官連携システムが出来るかというと、基本は三つになると思う。一つは大学そのものが主体になるパターン。それから二つ目が大学のそばにある財団法人が主体的に動くパターン。それからもう一つはTLOが主体的に動くパターン。多分この三つに収斂していくと思われる。この三つのパターンを軸において、何が問題なのか、こうしたパックをとった場合にはどこが問題なのか、どこを直さなければならないのかを一つ一つ検証していくべきである。ここに挙がっている検討事項というのは、かなりの部分網羅していると思われるが、補足として今の三つについて少し述べさせてもらう。
 研究成果を基とするベンチャーを創ったとき、そのベンチャーのワラントとか、あるいはストックオプションを発明者の先生などに還元しようという話がある。では、大学が主体に動いた場合に、大学がワラントを取れるのか、株式を持てるのか。これは出資の可能性があることとと関係するが、大学は現在ワラントを持てない。仮に法改正をして大学がワラントを持てるように、あるいは株式を持てるようにしたとしても、実際これを運用できる能力は大学にあるのか、そうしたことに詳しい事務スタッフがどれぐらいいるのかという問題がある。ワラント等を持てるようにすること、それをきちんと管理・運用できるようにすることの二点がまず重要になる。
 財団法人が主体になった場合にどうなるか。財団法人の場合はやはりエクイティを持てない。現在、定款でこれは禁止されているはずである。財団法人が主体的にベンチャーをやろうと思っても、一番大事なツールであるエクイティが使えないわけである。これは非常に障害になるので、財団法人もエクイティを活用できるように、きちんとサポートするべきである。
 TLOの場合は、前者の二つに比べればまだいいと思われるが、それでもTLOが株式を保有することは基本的にできない状況が続いている。株式会社なので法律上はできるはずであるので、TLOも出資出来るし、かつエクイティを取れるんだということをきちんと文部科学省としても認めてもらいたい。
財務会計の点になるが、大学と財団とTLOを比べると、逆にTLOが不利な点がある。TLOは、通常株式会社の形態をとることが多いので、もし株式会社になれば税金を払う必要がある。TLOの事業というのは、儲かれば、そのお金を大学とか先生とかに還元するので、準公益的である。にもかかわらず、税金を払わなければいけないことは前二者に比べて不利であるので、是非TLOをNPOとして認定するような方法で、優遇税制などを設けてほしい。これで初めて、この三者が均等に公平な立場で競争するという仕組みが出来る。
 ここでは大学、産業界、地方自治体、地域との連携があるので重複になるが、3番目に大学の周辺にある財団法人をどうやったら活用出来るのか、その財団法人はどうあるべきなのかということを付け加えてほしい。
 現実の技術移転の中で非常に重要な契約というのが三種類ある。マテリアル・トランスファーという試料提供契約、スポンサードリサーチ(委任受託研究、委託研究)、それからCRA(共同研究)である。この三者が大学主体、財団主体、TLO主体、いずれの道を通った場合にもスムーズに契約ができるようにする必要がある。実際、MTA(マテリアル・トランスファー)の試料の所有権というのは、大学側が持つ。大学主体の場合には非常にMTAはスムーズであり、大学が、あの試料はその研究者に譲りなさいと一言いえばそれで終わってしまう。ところが財団が主体になった場合は、財団は1回大学にお伺いを立てて、大学の資産であるあの試料をどこどこに送りたい、いいですかということをしなければいけない。TLOの場合も1回大学にお伺いを立ててやらなければいけない。こうした迂遠な道はなるべく避けたいので、大学の資産、研究に関する資産は柔軟な運用を大学以外の技術移転機関にも認めてもらいたい。そうしたスムーズなオペレーションがなされることによって、技術移転がスムーズにいくのではないか。
 目利きの問題は重要であると思うが、目利き700人創設は難しい。現実に我々がどういうふうにベンチャー企業で目利き的な作業をやっているかというと、大体はいろいろなベンチャーキャピタルとか、いろいろな市場で活躍している会社に聞いたり、いろいろな人脈を通じて幅広く聞いて情報を集めて目利きをすることが多い。そのため、マーケットにも詳しい、サイエンスにも詳しい優れた目利きを独立した個人として700人生み出すよりも、機能的な100人ぐらいのネットワークを作るべきである。これができれば、700人の目利きに匹敵する力があると思う。例えば、私はバイオについて詳しい、バイオのことだったら聞いてくれよといった、目利きが情報交換ができるシステムを設ければ、700人は難しくともそれに近いぐらいのパフォーマンスを出せるのではないか。

【主査】
 財産管理というか、共同研究等で得られた利益をどう管理していくかについて考えると同時に、目利き養成について情報交換ができる組織あるいはネットワークを作っていくことが重要であるという現実的な話である。

【委員】
 技術移転とは、結局、A先生とB社の間で行われるものである。決してA大学とB社ではない。A先生とB社とが組んで研究する場合、応援的雰囲気のある大学と、何となくそうしたことに対してやましさを感じさせるような雰囲気の大学とがある。率直に言えば、ある大学の先生は非常に積極的、ある大学の中のある研究所では盛んであるということがあるので、決してこのようなきれいごとの話ではダメである。問題の解決策として、邪魔をしている制度をどう取っ払うかということのほうが、ここに書いてあるいろいろな事項よりもはるかに個人の創意が生きるのではないか。独法化しようとどんな法人になろうと、そうした癖のある先生の多い大学は結局ダメだと思う。
 こうした制度に乗っかってやって失敗した場合、制度を創った文部科学省に責任があるのか、文部科学省が選んだ目利きの人が責任を持つのか、それともやはりやった本人の自業自得になってしまうのかというところまで考えなければならない。よって、我々が考えるべき制度というのは自己責任でやりやすいようにしてあげて、なおかつ、一人でできない部分を何らかの公的な形でバックアップするということが基本的な制度設計のスタンスになるのではないか。科学技術振興事業団のプリベンチャー事業の一例でいうと、この事業では、二人がお見合いして意気投合して判を押して二人で責任をとって研究開発を行うという形で提案を出してもらっている。二人というのは、研究する大学の先生とそれで一山当ててやろうという方との組み合わせである。それで3年間は事業団のほうで金銭的な保証をする。金銭的に出すものに見合っているかどうかという事前評価は、複数の有識者の評価を入れて選定をしており、大体100件の応募に対して15、16件が採択される。この事業については、選定者には責任はなく、実施者である二人の責任になっている。この資料の検討項目だとすべてについて、新しく法人化された大学が責任を負うのか負わないのかがはっきりしない。先ほど指摘のあった財務の問題も皆そこに尽きると思う。大学が独立行政法人になったから何でもできる組織になれるとは思えないので、その辺を含んで考えてほしい。

【主査】
 やはり最後は人であり、産学官連携を行いたい人が働きやすいように障害になっている制度を取り外すことを基本とした上で、その人を支援する仕組みができればいいということだと思われる。

【委員】
 組織の在り方、法人化後の国立大学という時に、これはまた別途の委員会の議論かもしれないが、組織の在り方の中で是非お願いしたい点がある。大学と企業との間で何かを一緒にやろうとする場合の一番大きな障害は、国立大学の意思決定が非常に時間がかかるということである。民間のテンポからいうと、はるかに時間がかかることが何をするにしても一番大きな障害になっている。ベンチャーはスピードが命であり、意思決定の遅れのためにアウトになるケースがかなり多いので、非常に速やかな意思決定を独立法人の自己責任でちゃんとやれるような形をお願いしたい。また、マネジメントの人材をどうするかという問題にも絡むが、大学の自治の問題のために従来、教授会など大学の先生方を中心に大学の運営をやってきたわけであるが、法人化後はそうした形だけでうまくいくのか疑問に思う。民間のマネジメントの経験者に、マネジメントの部門の適任者がいれば委ねるということも含めて幅広く考えていかないと、法人化はされてもマネジメントをどうやっていいのかわからないということになる可能性が十分にあるのではないか。そうした意思決定のスピードやマネジメントの在り方について十分検討してほしい。
 先ほど出資の議論があったが、ベンチャーに対する出資というのはこれは潰れるのがある意味では当たり前という前提でやらないと、潰れてからいろいろ批判が出ては誰もやる人がいなくなるので、そうした事もこの議論をする時には大前提として考えてほしい。
 最後に、TLOの在り方として法人化後にTLOを大学の中に置くかどうかというのは非常に大きな問題だと思う。今はどこのTLOも財政問題で苦労しており、アメリカのTLOも実は大半が単独では財政的には無理な状態である。大学の中に取り込むなり何か工夫をしないと組織としての存在自体が難しくなるので、組織の在り方の中でTLOを是非検討してほしい。TLOをすべて必ずしも大学の中に置く必要はないと思うが、既にTLOもかなりの数ができているので、そのあたりの組織の整理をどうするかということは大きな問題ではないかと思う。

【主査】
 大学を速やかに意思決定ができる組織にすべきである、マネジメントについてはちゃんと知っている人に任せる、ベンチャーは潰れるのは当たり前だという環境をまず作り、それを容認する環境を作らなければいけない、そして、TLOについては一部は大学が吸収するということも考えていくべきである、といったことが今の指摘だと思う。

【委員】
 我々の現状を紹介すると、先ほど財団法人は税務の面では有利だという話があったが、公益法人はTLOをやった途端に公益法人ではなくなって税金はしっかりと取られるので、その辺は誤解のないようにしたい。我々のTLOは、TLOの特許出願、ファイリング及び契約スキルをこの2年間で一応獲得したので、今は次のステージに進む段階にある。我々のTLOでは、キャピタリスト、いわゆるベンチャーを創る目利きの方、若しくはそのシンジケートを持っている方に入ってもらっており今動いている。そうした目利きの方というのは、そう安いお金で雇える人だと必ず失敗するので、辞めてきてもらったところと同じくらいの給料を払わないといけないが、TLO業務を一生懸命2年間やったぐらいの財政基盤では、そうした人材を雇うことは非常に難しい。自分で工夫しない限り、そこの成功というのはあり得ないので、自分たちに合った人は自分たちで探し、見つかった時に、そうした目利きの方に対してそれなりの給料を出して働いてもらうようにすることが望ましい。文部科学省が資料で示した支援については、どこかに資金をプールするとか人を紹介するよりも、さしあたっての財政支援を早急に作ってほしい。そうすれば年度内に4、5件のベンチャーを具体的に活動させる可能性が出てくる。
 先ほど指摘のあった共同研究、マテリアルトランスファーの契約についてであるが、ここは大胆に、例えばTLO事業をやっている、あるいは承認TLOを持っているところにかなりの権限を与えてほしい。要するに、共同研究を組む時に一々研究協力課に行って手続をしたところでスキルが全部尽きてしまう。むしろそうした制度があるために、相手方企業からどうして大学とダイレクトにやれないのかとよく言われる。大学と直接やれる可能性はあるが、契約などのスキルについては、今すぐには大学には用意できない。ゆくゆくはTLOを持っている大学においてはTLOにそうした業務を代行させてもらうぐらいの制度を早急に作ってもらえれば、かなり早い部分でいろいろなことができる。ベンチャーだけでなく、大企業からアウトソーシングしたいというアクセスが大分あるが、現行の共同研究、受託研究のルールに乗ってしまうと、ほとんど動かなくなる。せっかく今までTLOでスキルを養成してきたので、こうした業務を是非代行させてほしい。来年からではなくて、今からでも使わせてもらえれば大きな成果を上げることができる。

【主査】
 経験者の言として、年内に4、5件のベンチャーを創れるが、そのためにはTLOに権限を任せて欲しいということと、目利きというのはそれだけの高給取りなのでその支援が必要であるという具体的な提案である。

【委員】
 この独立法人と関連して、非公務員型なのか公務員型なのかという点が前提になることによって後の制度等がものすごく変わってくるだろうと思われる。議論の前提として、当面公務員型であるということであればそれに従って我々は議論をすればいいと思う。その点については他の場で議論していると思うが、その全体の流れとして当面は公務員型であるのかを事務局のほうから教えてほしい。

【事務局】
 そのこと自体については全くとらわれる必要はないと考えている。むしろ非公務員とか公務員ということをそれぞれ前提とするのではなくて、こうしたことをできるようにすべきだということについて、いろいろと議論をしてほしい。逆に、非公務員とか公務員という言葉だけが最初に踊ってしまい、非公務員でないと何もできないんだとか、公務員だとこうだとかということではなくて、産学官連携を進める上でどういう人事制度が必要なのかということで議論をしてほしい。

【委員】

 我々の経験から言うと、産学連携を進めるもう一つの大きなパートナーは職員である。職員が動かなければ、先生方はどうしても研究教育の片手間で行うことになり、継続的にはできないという側面がある。職員が公務員かどうかによって、産学連携の進め方がものすごく違ってくるのではないかと懸念するので、非公務員型であるのか公務員型であるのか伺いたい。

【事務局】
 我々のほうの検討会議での検討状況を少し報告させていただく。これはまだ中間報告ができていないので、現段階の検討状況ということになる。独立行政法人には、今の話にあったように公務員型と非公務員型がある。大学の教員なり、事務職員なりについてどうするかといえば、公務員型がいいという意見もあり非公務員型がいいという意見もある。今のところどちらという結論は出ていない。公務員型であったとしても、例えば、給与の決定については今の公務員とは違う扱いにすべきである、各大学ごとにその先生の能力に応じて給料が決められるようにしなければならない、あるいは定員管理をなくそう、という議論がある。その他、公務員型であったとしても大学の教員なり事務職員の人事システムとして必要な特別措置を講じる必要があれば、それは講じるべきだという議論になっている。非公務員型になったとしても一定の場合、極端な話を言えば、刑法の適用あるいは守秘義務といったような問題については公務員に準じた取扱いにすべきであるので一般の民間の職員と全く同じというわけにはいかないだろうという議論になっている。そうした状況であるので、個別個別の事柄によって大学としてふさわしい人事設計を、これはもういろいろな事についてこれまでどうだったかということにとらわれずに、議論していくことになっているので、こちらの委員会で産学官連携の観点から人事制度についてはこうあるべきだという意見があれば是非お聞かせ願いたい。

【委員】
 1,000社創るということは、1,000人の社長がいるということである。民間の場合、皆パートナーを組んでやっており、技術者一人で会社を創ることは基本的に不可能である。それぞれ組んでやっているが、組めないような人はアプライすれば社長を紹介してもらう。社長というのはすぐ簡単にやれるものではなく、そのステージによって必要な社長の能力が変わってくるので、どんどんクビにするわけである。そうしたことは日本の風土には多分合わないと思う。少ない人材をどうやって活用していくかという仕組みと、人材を育てていくためのサポートシステムが非常に重要になってくる。京都ベンチャー総合支援機構なるものの設計図を書かされた時の考えは、株式会社としてのベンチャーキャピタルで投資の仕組みを作ることと、ベンチャーに対して皆で寄ってたかって支えていこうということの二つで成り立っている。あまり支えてばかりいたらいつまで社長はできないので、それも問題であるが、とりあえず今の日本社会はあまりにもベンチャーに向いていないので、財団と株式会社の二本立ての仕組みを作ろうということになった。
 財団のような機能は、アメリカでいうと例えばMITなどでは、ネットワークみたいな形として財団を作り、それに対してベンチャーを成功した人とか地元のベンチャーの人が資金を出す代わりに低価格の様々なサービスを受けるという仕組みがある。そうした支援機構の仕組みを設計図を書いて持っていったら、ものの見事に誰も協力してくれなかったので、先ほど述べたベンチャーキャピタルを創ったわけであるが、その時もやはり二つの柱として、出資をするベンチャーキャピタルと、それから支援をするネットワークを同時に作ろうとした。ベンチャーを起こした際に、いろいろな業務上、法務上の仕事などがもういやと言うほど出てきて、私の友人は毎日のように弁護士のところに行って相談をし、更に公認会計士にもしょっちゅう来てもらっていた。そうした事を、そのネットワークとキャピタルの仕組みでできるのではないかと今、実験中である。そうした仕組みを同時に持たないと、おそらく日本では非常に難しいと思う。
 それから先ほど目利きの話もあったが、ある研究開発助成の組織で審査もしているが、申し込んでくる人々が非常に両極端であった。ほとんど科研費の請求と同じような形の研究をアプライするグループが一つ、もう一つがもう何かの寄せ集めで誰でもできる家庭料理のようなものを出してくるグループというふうに両極端であった。その両極端の中間のところがうまく出てこない。中間のところを作る人材なり、あるいはインスパイア(奨励)する仕組みというのも必要ではないかと思う。今年から当大学で事業創生講座を5人のスタッフで作ってもらったが、そこに経営コンサルタントをやっていた人をスカウトしてきて入れている。そうした大学の中に社長業を教育できる仕組みを作っていかないと、結局技術があっても会社はできない。そういった支援機構あるいは、ベンチャーをやりたいという人がいれば社長を紹介するということができる仕組みを作らなければ、なかなか事業としてやることは難しいと思う。

【委員】
 大学内でのコンセンサスというか、サポートというのが非常に重要だと思うが、やはり独立行政法人化すると産学官連携何でもありきというような考えの人が随分いる。そうしたことは逆に言えば反対側の立場の人にとっては非常に気を付けなければいけないことであるので、基本的な考え方の中に独立法人化後の産学の節度ある連携というのはどうあるべきかということを明らかにしておくべきである。
 それから、大学内でどうやって企業を支援するかということは非常に重要だと思うが、現在、我々のところでは大学発の企業をどうやって創れるかということについての検討会を行っている。是非日本型のしっかりした支援体制を作るべきであって、それがどういう形になるのかということはこれから検討していかなければならない。その検討事項の一つとして学内のインキュベーションも非常に重要である。学内のインキュベーションの中には、いろいろなフェーズがあると思うが、すぐに企業ができるかどうかというところについてサポートする部分も用意しなければない。そうすると、インキュベーションの中で、例えば、会社ができてやろうとすると、サンプルを売る、売れないとかの問題が出てくる。サンプルが売れなければ、マーケットのチェックもできないので、現時点で国有財産を使った場合にどうなるかということなどについても検討を進めている。その辺についても考えてほしい。

【委員】
 先ほどから、大学発のベンチャーをいかに創るか、あるいは1,000社を3年間でどう創るかという議論があるが、大学側が無理矢理その目標に引きずられるという構図ができつつあるように思える。そうなってくると、ますます大学からの協力を得がたいような状況になるのではないかという危惧があるので、この点は警戒しなくてはいけない。例えば独立行政法人化した後に大学が特許に対してどういう戦略をとるかということ一つを考えても、まだ考えをまとめることが難しい状況である。目利きの方にいい特許というものを選んでもらっても、それを大学が保持するような体制すらとれるかどうか危ない状況である一方で、ベンチャーを創っていかなければならないプレッシャーがあるということが現実ではないか。

【委員】
 確実に目利きの数が非常に少ないので、どうやって目利きを育成するのかということが毎回この委員会でも取り上げられていた。その辺の制度について、この委員会できちっとしたものを作ってもらえればありがたい。私が実際に今関わっている、京都リサーチパークセンター(KRP)も、目利きの方が専門分野毎にいるが、専門家の間のつながりが全くなく、ポイントポイントでの支援しかできないという現実があるので、今年から支援者、目利き人材を育成する講座を設けている。今まではどちらかというと講座を作っただけで育成しないまま終わっていたが、今回はその先生方を通して、現実に今案件が出ているところまで落とし込み、その育成した結果がどこまでいくかということについてまで見ている。そうした仕組みの案が出来ればいいと思う。
 目利きの場合、ある地方公共団体でやっているベンチャーマネージャーという制度があるが、その制度の受け手側もあまりよく知らず、事実上マネージャーのアドバイスがあまり役立っていないという問題が現実にあった。そうした現実を踏まえて、マネジャーの中でも質のいい方たちが自分たち自身のレベルアップをするために勉強会を始めた。こうした意識の高い人たち同士が地域地域に今、少しずつ現れてきているように思われる。こうした人たちをネットワークで結ぶことにより、経験者を中心とした、ベンチャーに前向きな人たちを吸い上げていくネットワーク型の仕組みが作れるのではないかと思う。
 また、先ほどから責任の所在についての議論があるが、こうした制度を作った時、往々にしてその制度を使った時、使われた後の失敗を含めて、どこに責任があるかという問いかけがわりとないことが多い。その辺をはっきりすべきではないか。例えば、私はある革新技術開発支援制度の審査委員をさせてもらっているが、こちらのほうでもかなりの案件が出てきていた。ベンチャーのための民間による制度ではあったが、選ばれた案件を見たところ、ほとんど中堅企業にも値しないところばかりであった。予想以上だったので驚いたが、こうした制度が中小企業やベンチャーにあまり浸透していないという問題が大きいと思う。
 最後に、出口(結果)の問題が大きいのではないかと思われる。結局、制度は使うけれどもその成果については追跡していないというのが大きな問題ではないか。この委員会のいろいろな仕組みや制度を作る時に、どこまでその出口を追っていくのかということを一つ視点の中に入れていただければありがたい。

【委員】
 私の大学には、ビジネスにできる技術が非常に多く周りにある。ところが先ほどからの話を聞くと、どうやってベンチャーまで持っていったらいいのかという話題はあるが、どういうふうにしてビジネスに持っていくかということについて話がない。Aランク、Bランク、Cランクと設けて、その先生があまりベンチャーをやる気がないが、非常にビジネスとして有望性があるようなものを例えばCランクに持ってくるなどすればよいのではないか。そうしたA・B・Cのランクの人たちをいかにビジネスに持っていくかというような具体的な支援策をもう少し考えていただければ非常にありがたい。財務などいろいろなことを考えると、そうした先生方がギブアップしてしまうという事が多々ある。そうした先生方をエンカレッジして、テーブルに出させて、ビジネスまで持っていくという仕組みをもし作ってもらえれば、我々のほうでベンチャーを創る自信はかなりある。

【委員】
 産学官において何か必要な事をやるということが重要であり、国家公務員型か非国家公務員型については、あまり問わないということであるが、非国家公務員型のほうが悪いという話はほとんど出てこないと思う。やはりこの話は、検討事項として非常に重要である。
 また、「5)その他」の「1.大学と産業界、地方自治体との日常的ネットワークの形成」とあるが、我々が一番困っているのは公務員倫理法との関係である。この法律ができてからお付き合いが非常に難しくなっている。日本の大学の先生は自身を独立自由人だと思っており、あまり国家公務員の自覚がない人がいるので、この法律に縛られないで活躍していると思うが、旧国研の独立行政法人はものすごくこの問題にナーバスである。一番大事なネットワークについて話す時に、食事だの何だのが入らないかということに異常な神経を使っている。私はここの項目の一つに、公務員倫理法と産学官との在り方というのを入れてほしい。あまり露骨だと問題なので、5)の1.の中にそれが入っているということで是非一度議論してほしい。例えば、アメリカなら20ドルまでは食事をしていいんだというルールがあるそうだが、そのルールについて誰か詳しい人がいたら教えてほしい。

【委員】
 大学の先生方がたくさんいるので教えてほしい事がある。この事務局案の中に利益相反の問題が挙げられているが、そもそも現状において利益相反というのは国立大学だけの問題であり、私立大学においては問題がないということなのかという点と、大学の独立法人化を考えた場合、公務員型になるのと非公務員型になるのでは利益相反の考え方が大きく左右されるのか、できあがった法人がそれぞれルールを決めれば済む問題なのか、といったことについて現場の実感としてどう受け止めているのか教えてほしい。法人化の議論の中でそうした現場の意見を反映させることを考えたほうがいいのではないかと思う。

【委員】
 私が冒頭でサブタイトルにこだわったのは、日本の企業は海外にガバガバお金を出していて、日本の大学には出していない現状を解決してほしいからである。確かにベンチャーには、いろいろな問題があるが、そうしたことが解決されるような体質に大学がなっていなければ、できないのではないか。いろいろな法的な面やルールの整備をひと通りきちんと行い、もう目利きも揃っている、ビジネスのチャンネルも持っている、ないのはいい技術だけだというふうに、勝負ができる体勢をまず整えてほしい。もちろん、ピンポイントで行うので、並行的にやってもらってもかまわないが、是非そうした視点も忘れないでほしい。また、私の懸念としては、その種のすべての窓口をTLOとした場合、そのTLOが学内に対して相当の権限を持っていないと難しいということである。我々が欧米の大学と産学連携を行う場合、大抵、大学の方は担当のプロフェッサー、総長クラスであり、そうした形で我々の委託研究、共同研究を広げている。そうした構造ができない限り本格的な産学連携は組めないのではないか。

【主査】
 議論を進める上で、日本の大学が、日本の企業が海外に投資しなくて済むような大学になることが前提であるという指摘である。

【委員】
 今の話に少し注釈を加える。出資してもらった人に対して見返りを契約することがあるが、国費によるものの場合、そうした契約ができるのかどうかということが問題になると思う。独立行政法人になった時に、何かそういった資金を出したことに対して、ベネフィットがある契約をしても問題ないというような事を盛り込んでもらったほうがいい。そうしなければ、企業は皆外国ばかりに投資・寄附を行い、国内の大学には来ないという寂しいことになると思われる。

【主査】
 先ほど話にあった国家公務員倫理法に関してであるが、産学連携についてこうした議論をする一方で、今、産業界とのお付き合いを断っている状況にある。今の状況がこれ以上続くとおかしくなってしまう。ここまでなら大丈夫といった、何か資料を委員の方でどなたか持っていないだろうか。例えばアメリカとかヨーロッパの事例など持っていれば、是非提供してほしい。

【委員】
 私の父の会社は産学連携をやっていたので、しょっちゅう大学の先生が私の家に泊まりに来ていたし、昨日はどこどこに連れて行ったとかそうした話を言っていた。もう少しそういった、先生と企業との関係が大らかになるような仕組みを考えてほしい。

【委員】
 利益相反について一言意見を申し上げたい。おそらく利益相反は国立大学でも私立大学でも問題になると思う。利益相反というのは、国家公務員だからという問題ではなく、自らの職務におけるインテグリティ(誠実)、要するに二つのボスを同時に持ってはいけないということが原則にある問題だと思うので、間違いなく私大でも問題になると思う。むしろ世間の目が厳しい私立大学は、この問題をきちんと対処することによってその評価を高めると思う。ゆえに、国家公務員だからといったことにとらわれずに、いい利益相反のルールを作ることということが重要であると思われる。

【委員】
 大学として意思決定をしてベンチャーをやる必然性は全くなく、それは個人の先生の良識のある判断、個人の機能に基づくものであると思う。大学の中にはベンチャーが合う人と合わない人が両方いる。例えば、昭和35年から37年にかけて、日本の経営学の権威である教授がベンチャーをやって見事に失敗したという有名な話がある。その時、その先生自身のリスクでやった事なので、その属していた大学が何をしたという問題にはならなかった。先生個人を中心に考えるべきであり、何でも大学でやるのでお墨付きがあるから安心だということで行う限りは、日本の中で全然ベンチャーなんていうのは出てこないのではないか。これはあくまで個人のアドベンチャーだと思う。

【主査】
 今の指摘は、個人の責任を基にベンチャーを行うべきということである。今までずっと言われてきたことの繰り返しになるが、大学の機能というのは非常に長期的かつ基礎的な研究をやる機能と、フェーズとして産業界と非常にクロースな責任を持って接触できる機能の二つに大まかに分けられる。その機能が両方ないと長期的に困るということが、中間取りまとめの前文に書かれているので、この点については異論ないかと思う。この点が皆の共通事項にあって、たまたま今、企業の間との連携ができているグループ、あるいはそうした志向のある人たちが積極的に産学官連携を行う事に対する障害を取り除き、かつ、その支援ができるような仕組みはどうあるべきかということについて議論をしていくということでよろしいか。

【委員】
 先ほど話があったように、大学の中にはいろいろとネタがあると思う。新しくベンチャーを起こす、新しい技術開発も結構であるが、今あるネタをまずモノにすることがプライオリティ(優先順位)として一番だと思う。それにも関わらず、まず先生自身にその気がない、若しくはその気があってもどうしたらいいかがわからない。我々の企業のほうも、どこでどの先生が何をしてるかということがわからない。京都の場合、データベースを強引に作って、4,300の先生方の今までの罪状でなしに、その業績を可能な限り全部調べたところであるが、そのデータベースを公開するかどうかということが今問題になっている。きちっとしたデータベースを作ってそれにアプローチして、事業化できるシステムがあれば、今あるネタでもたくさんできる。まずこれをやらずして、今からまた新しいベンチャーのために開発をするということは、せっかくある餌を腐らしてしまっていることになるのではないかと思う。是非この点についても取り上げてほしい。

【主査】
 これは、今あるもの、あるいは今まで蓄積されてきたものをベンチャー、産学連携に移していく仕組みが必要であり、独立法人化になったらそうしたことを踏まえながら、もっと加速をしていくようなやり方を考えてほしいという指摘だと思われる。
 本日は、大変ざっくばらんに、なおかつ、非常に具体的な提案をいただいたので、事務局にはその整理をお願いしたい。

5.今後の予定

 次回は9月末に開催する予定とし、各委員との日程調整の上、事務局から改めて連絡することとされた。

お問合せ先

研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室

(研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室)