産学官連携推進委員会(第5回) 議事録

1.日時

平成13年7月12日(木曜日) 14時~16時

2.場所

経済産業省 別館 T20号会議室

3.出席者

委員

 末松(主査)、生駒、市川、伊藤、小野田、川崎、北村、清水、白川、丹野、平井

文部科学省

 坂田審議官、加藤研究環境・産業連携課長、磯谷技術移転推進室長、柴田技術移転推進室長補佐  ほか

4.議事録

中間取りまとめ(案)について

 資料2に基づき事務局から説明した後、その内容に関する質疑が行われた。
 その内容は以下のとおり。

【主査】
 それでは、本文の1、2ページの「はじめに」について何か意見はあるか。この中には、大学の基礎的な研究が大事であると同時に、産学官連携が大事であり、車の両輪のようにして進めていただきたいということが書いてある。また、産学官連携の課題として5つがここに提示してある。

【委員】
 スケルトン案に比べて大幅に改善されていると思うが、抜けている視点がある。今、日本の大学に本当にいいシーズはあるのかないのかという視点である。シーズがあるという建前で書かれているが、我々産業界としては必ずしもそうとは思えない。もっと書いてもいいのではないか。2の「大学等の経営力の充実」も確かに大事なファクターであるが、遠山プランにあったようなもっと大胆な視点を入れてもいいのではないか。つまり、もうエッジの勝負のできる、研究・教育両面において最先端の世界で勝負ができる大学というものをみんなで作っていかなければならないという主旨が見あたらないので、どこかにそうしたフィーリングを書き入れる必要がある。

【事務局】
 教育・研究において世界的水準を目指してというようなこと、あるいはシーズがまだ出ていないのではないかということについて直接的な記述はしていないが、その辺は議論を踏まえて考えていきたい。

【主査】
 この点はもう少し強調するということでお願いする。

【委員】
 今の話にも関連するが、2の「経営力の充実」は何でも入るのかもしれないが、むしろ教官が積極的に活動できるような大学内の支援体制の充実についてどこかへ書き入れた方がいいのではないか。経営力がマネジメントの中に入ることは間違いないが、経営力だと私の理解から離れる気がする。

【主査】
 この点については、1と2に分散すると思われる。今言われたことを頭に置いて表現したい。

【委員】
 ただいまの意見とほとんど同じかもしれないが、私はインターフェイスが非常に重要だと思う。大学と産業界の間のインターフェイスのシステムをどうするか。つまり、経営力重視という問題ではなく、その仲介に立つ道を何種類か作り、それはどういうふうに動いて、そこでどういう人たちが頑張っているのかということが明確に見えるようにすることが重要である。その点も書き入れてほしい。
 あと、1に関連するが、弁護士・弁理士という部外者の立場から言わせてもらう。例えば、外国からきた研究者が、大学の教授会において、その人が持っているバックグラウンドや考え方を取り上げれるような環境にあるのか。本当に競争力を高めるという意味であれば、どんどん海外の優れた研究者が入ってきて、それにより日本の大学の質がどんどん競争によって向上されていくということが必要である。ところが、私が外から見ている感じでは、学閥あるいは旧来の慣行などいろいろな問題があり、外からの「知」が活躍しにくい部分があるのではないかという気がする。そうした内部における競争の活性化についても、長期的な問題かもしれないが、考えてほしい

【主査】
 どんどん国際化をして、いろいろな人が大学の中で競い合うということは重要である。これについても盛り込んでほしい。

【委員】
 いろいろなところに配慮の行き届いた記載がされていると思う。ここ数年の間に実施されているいろいろな施策をシステムとしていかにうまく機能させるかという観点も書き込まれているようである。TLOなどのいろいろな仕組みや助成の上にワンストップの窓口を作るといったことを含めて、現場で必ずしも各制度が周知されているとも限らない中でそうしたことをいかにシステムとして連携を持ちながら現場で展開していくかという点を前半部分に盛り込んでほしい。

【主査】
 できるだけ総体的にうまく機能させることも非常に重要な指摘である。

【委員】
 先ほどの大学にシーズがあるかという話についてであるが、私は日本の大学には十分あると思う。しかし、この報告書にも書いてあるが、大学側の企業に対する窓口、企業側の大学に対する窓口の両方の連携がうまくいっていない。これは大学側が産学連携について十分トレーニングされていないということと、日本の企業がほとんどこれまで大学を見てきていないということのためであると思う。大学側については、文部科学省の部局ができていることもあり、産学連携推進の方向でかなり動いていると思う。企業側についても、是非その方向で動いていただきたいということを求める箇所を盛り込んでほしい。産学連携の現場にいて企業側と接すると、企業側のワンストップウインドウは非常に権限のないところである。企業側でもシーズを探す人を育ててほしいということを、いろいろな方に話すと、それは非常に難しいとすぐに言われる。そうした点を産業界と大学の両方で対処できればということを書いてほしい。

【委員】
 冒頭にあった日本の大学にシーズはあるのかという話をもう少し広げると、日本の大学はだらしがないという話だと思う。支援者の問題についても話が出たが、結局、この委員会での議論をまとめたこの報告書の中で、大学がだらしがないのでだらしがあるようにしたい、となる。こういう日本語はないが、もし大学にだらしがあれば、それだけで大部分の問題は解決してしまう。したがって、この報告書の中にそうした前提を入れたいことはよくわかるが、大学をだらしがあるようにするという発想で考えていくと、とてもここに書いてあるようなことだけでは済まない話である。率直に言うと、私学はそうではないかもしないが、国立大学では、先生方が管理運営と入学試験等で忙しくて、研究や教育などをしている暇がないという状況が現実にある。そういう文化というか、そういう枠組みを壊していく必要がある。
 更にあえて言えば、少なくとも1980年代から90年代初頭にかけて、日本の社会は大学に資源を投入してこなかった。通常、先進国ではGDPの1%が投入されている中で、日本は0.5%以下であった。国家支出の中で占める大学への資金投入の割合も極めて低かった。一言で言えば、日本の社会は大学を大事にしてこなかった。その問題が現在改善されているかどうかはよくわからない。大変失礼であるが、遠山プラン第1項はそういう問題を差し置いて、小さな大学は統合する、再編する、スクラップアンドビルドするということを掲げている。今まで当事者能力を与えていなかったことについて、スクラップアンドビルドを行うわけである。大学をだらしのあるようにするという議論をここでするとすれば、もう少しはっきりとその枠組み、システムをしっかりと眺めて行うべきだと思う。

【主査】
 今の指摘は、すべて戦後の大学行政あるいは研究支援行政に直接かかわってくる話である。これをどこまで書けるか、あるいはこうしたショートレポートで本当に掲げられるかどうかということは非常に難しいと思うが、やはりそうしたことが一つのツケとしてこうした状態を生み出しているということを、ある程度書いたほうがいいと思う。
 ただ、その前に言われていたように、そういう状況の中にも大学にはいくつかのシーズがあることは確かである。インターフェイス問題というのは、経営力としてここに書いてあるが、それは実行力ではないかと思う。そうしたことも含めて論議してほしい。

【委員】
 先ほどの委員の発言は、そのとおりだと思う。ただ日本工学アカデミーへの寄稿文の中で、日本の大学は論文数について世界に冠たるものがあると指摘されている。旧文部省のプアな予算配分にもかかわらずである。東京大学はナンバーワンだそうである。少なくとも一流誌の国際的論文で、論文数の上位50位の中に9校ほど入っており、論文数は非常に多くあるので、研究はしっかりやっているわけである。シーズと言うが、何のシーズを指して言っているのか。特許のシーズについて言っているのか。それとも技術のシーズについてなのか。大学が特許を取るということは、大学の本来の目的ではないし、技術開発は大学の中のほんの一部でしかない。工学部、農学部、薬学部などの実学の部分である。しかも、技術開発の研究というのは、そのうちのごく一部で成果を上げている。新しいアイデアとか発想をシーズとすると、これはたくさんある。しかし、技術に結びつけることが目的ではないので、企業がシーズであると思うようなことを大学で研究しても、企業側にとってはあまり意味がない。企業は、大学にシーズの前の段階を研究してほしいのである。大学のシーズとは一体何を意味するのかよく定義した上で議論をしなければ、大変なミスリーディングである。
 それから、スイスにある研究所(IMD)の報告書の中にある日本の大学が47位ということについてコメントしているが、もう少し事実に基づいて書かなければならない。ミスリーディングになる。これは世の中に出るので、その辺を気をつけたほうがいい。

【主査】
 ただいまの意見は、非常に重要なポイントである。このはしがきの一番初めに、基礎的・長期的な分野を研究していくことが非常に重要であると指摘しており、産学連携において一体何を期待するのかということが一番重要である。

【委員】
 成功しているかどうかわからないが、確かに我々が行うシーズ探し若しくはシーズの拾い上げについては、欧米の大学の方が日本の大学に比べて圧倒的に多いことは事実である。大手の企業は間違いなくそうである。例えば、企業側の窓口が全くしようがないという話が先ほどあったが、この点での対応が日本の大学に対する場合と欧米の大学に対する場合では決定的に異なる。確かに我々が欧米の大学と接点を持つ場合は、その場で相当のデシジョン(決定)ができる人間が接触をしている。なぜならば、その接触する前の時点で、彼らの方から、我々はサイエンティフィックなこういうシーズがある、これはこういうテクノロジーの何になる可能性があるといった、様々なケーススタディーのプロポーザルが山ほど来るためである。やはり、大学の方から、そうしたシナリオをいただけなければ、ある意味では企業人はシーズに気が付かないだろう。確かに企業の人間は、そんなに知的レベルが高くないのかしれないが、漠然としたシーズを片っ端からテクノロジーの苗まで想定して議論できる人間は正直言って少ない。そうした点から言うと、アカデミアサイドからのアプローチが主とした流れであるため、欧米の大学と日本の大手企業がこれだけ多くのコンタクトを持っているということが実態なのではないかと思う。

【主査】
 今の両委員の話で、課題が浮き上がってきていると思われる。最初に言われたように、日本の大学は国際的には低いと見られているが本当にそうなのかということに対しては、科学技術白書の中に技術的な競争力は今でもアメリカの次であるとされている。IMDの報告書というのは感想が主体であり、客観的なデータはあまりない。また、委員が先ほど話したように、企業から見て大学がそれだけちゃんといろいろ考えて行っているのであれば、そこにこういう可能性があるということを企業で考えたらどうかという段階までフリーターンがなされてるはずである。それがなされていないのは、先ほどいわれたとおりのことなのであろうと思う。

【委員】
 これはインターフェイスが悪いということである。

【委員】
 今言われたことは事実である。大学が組織として売り込む、大学が組織として何かやるという機能が日本には全くない。学部にもない。学部とどこかの企業がコンセッションを作って何かやろうとしても、学部自体は法人格を持っていないので、全部個人で行うことになる。そうしたことを、むしろ実際に研究に携わっている人が自分で行った方がいいのか、大学として行い、研究者はその中の一員になった方がいいのかということは大きな問題である。そこがアメリカの大学と日本の大学との大きな違いである。大学が総体として、その関係の先生を複数ピックアップして、どこかと共同研究を行うことがいいのかどうかはわからない。しかし、それをアメリカはどんどん行っている。そうした機能が大学にないことをどう考えるかというのは非常に大きな問題である。

【主査】
 アメリカの場合は外郭団体というか、非常に強力なリエゾン機能を持っている。大学自体に強力に支援する部局がある。日本では、おそらくTLOがその代替を今やろうとしているのではないか。

【委員】
 スタンフォード、MIT、サンタバーバラ等といろいろ共同研究を行っている関係で話をすると、共同研究の契約を結ぶときに全部事務局が出てくる。テクニカル・ライセンシング・オフィスという組織が出てきて、ローヤー(弁護士)が契約を取り決め、最後に先生が代表研究者として指名される。それで終わりである。その先生から出ているリクエストをどう具体化するかについては全部事務局が行う。
 日本の大学は、小・中・高を通じての日本の教育システムの欠陥である、先生が何でもやる仕組みになっているが、これは無理である。研究をやり、教育をやり、考え、対外活動をやりながら、内部の事務的な処理までを全部その先生が当事者として処理するのであれば、契約1つでも無理である。そういう意味では、大学にせっかくあれだけの事務局があるのだから、徹底的に先生の活動を裏からサポートする仕事を全部そこがやるべきである。この点について思想改革をしなければ、意欲のある先生ほど忙しくてできなくなるという矛盾に陥ると思われる。言い過ぎかもしれないが、是非やってほしい。

【委員】
 なぜ私が個人でベンチャーをやったかというと、大学を通じると何もできないからである。もちろん今指摘があったように、もし私がやるとすれば、事務量がむちゃくちゃ増える。そのようなことをやっていられないので、外に出たわけである。今後もしTLOとかそういうものを運営するのであれば、徹底的にアメリカ型のオフィスを作らないと長続きしないと思う。
 それから、何回も話してきたように、アメリカの大学ですごい研究ができるのは、優秀な学生が入ってくるからである。そうした学生がどうして入ってくるかと言えば、やはりNSFからのファンド等で給料を支払い雇えるというシステムによる。ずっとこの案を見ていると、何もそうしたことが書いてない。例えば科研費で大学院の学生を雇えるようになったと言っても、科研費はいつ通るかといえば、来年の分なので今年の分は出ない。科研費に通れば雇えるということではどうしようもない。今、我々は委任経理金で秘書を雇うことができるが、委任経理金で学生を雇うことは、多分できないのではないかと思う。科研費で学生を雇えるようになったとしても、それはあまりにもトゥー・レイトである。もっと前の段階から優秀な学生を大学院に留めておき、一緒に共同研究するような抜本的な制度の改革が必要である。

【主査】
 大学院生をどうするかということについてはいろいろ意見があると思うが、適切に協力を得ることは必要であり、そこは大きな問題である。

【委員】
 大学のそうした認識というのは、5、6年前からずっと言われていた話であるが、1年半前にいわゆるTLOを作ってから、かなり努力して1年半前とは大分違った状況が大学の中に出てきている。このように全く何もないベースから始まっているわけではないので、その点も踏まえて議論しないと、なかなか行き着く先にいかない。現状を踏まえて、特許の出願、ファイリング、ライセンシング、あるいは利益相反について急ピッチで整備しようとしているので、その点を留意して書いてほしい。

【委員】
 今の意見に賛成である。産学連携について大上段の議論をやるのはいいが、一番最初の議論の際、当面急がなくてはならない問題をどうするかという話がたしかあったと思う。その問題を検討するのがこの委員会の一番の目的である。現実にはTLOなどで具体的な課題がいろいろと出てきている。そうしたことを詰めていくのが目的であり、大上段の議論をするのは、この委員会の本来の目的と少し違う感じがする。
 ここでは今後の在り方を考えるのであり、今まで日本でこういう問題があったということをいくら言っても、あまり建設的な話にはならないのではないか。私は大学外の人間の立場で発言しているが、どういうところにこの委員会の目的を持って議論していくかを位置付けないと、そもそも論をここでいろいろしても、前進しないのではないかと思う。

【委員】
 今の意見とも関連するが、私は、意義や背景など何か客観的なことを言うのではなく、産学官連携という手段で何を達成したいかという目的を明確に出したほうがいいと思う。事前にいただいた案にある意義について読んでみると、これもできる、これもあるとあり、目的が書いてない。波及効果みたいな話が多いので、その中から選び出して、2行でも1行でもいいが、例えばブレークスルーを社会に実現するためにはどうしても産学官連携が必要であるなど、産学官連携の目的を出した方がいいと思う。

【委員】
 「IMDによると・・・大学教育の経済競争力への貢献という側面では」と書いてあるが、これはもう少しワールド・コンペティティブネス・イヤーブック(IMDの報告書)の最初の部分を読んでほしい。そこで言うところのコンペティティブネスは経済競争力のことではなく、その国で企業が活動する上での環境がどれだけ整備されているかということを指している。そのため、量的な項目はほとんどなく、質的な項目ばかりである。例えば、シンガポールが2位になるのは、そうした質的な環境は整えているという意味である。日本は今年は29位、去年は26位であるが、量的側面が反映していないからである。全然視点が違うということを十分認識してほしい。これを国立大学の学長会議で配って、日本の大学はだめだと言うのは全く見識がないことだと思う。

【委員】
 項目について、1.の意義のところで、2)の「大学等から見た産学官連携の意義」というのはあるが、産業界から見た産学官連携の意義がない。1)の「産学官連携の背景」の中に織り込まれているのではないかとも思われるが、例えば、雇用の増進あるいは自らの産業のリソースの多様化など大学等とは逆サイドの利点ないし意義をもう少し強調した方がいいのではないか。

【委員】
 産学連携がゼロから出発して書かれているような気がする。これまでに産学連携に関していろいろな報告書で提言をされてきたことがどのくらい実現してきたかということをどこかでまとめて書いてほしい。これを見るとゼロから出発して、具体的な施策については細かく書かれているように読める。むしろ今までどういう報告書がどういうことを言っていて、どれだけ実現して、それで足りない分は何なのかという事項と、新しくここで産学連携を推進する新規事項とを分けて書いた方がいい。

【主査】
 今でもTLOができて進んでいるし、いろいろなレポートが出ているので、それを踏まえて、ここの目的は何かということをもう一回整理し直すことにする。

【委員】
 産学連携に関した報告書が経団連など、いろいろなところから出ており、提言がなされ、いくつかは実現している。産学官連携について、ここでは新産業の創出、ベンチャー、という技術移転を取り上げているが、それ以前は共同研究が課題だった。また、産学官連携の中で新産業をする人がどういう位置付けにあるかというのは何も書かれていない。研究分担で企業と一緒にやっていく部分は産学官連携の大きな部分である。技術移転があって、それからベンチャーが来るという系統的な思想で書く必要がある。この点については、いろいろなところに入っているが、鳥瞰的に見えない。ベンチャーばかりというのは、ミスリーディングであるので、位置付けをどこかに入れてほしい。

【委員】
 先ほどからの話をサポートするデータがある。IMDの報告書の中に、ここで議論しているようなフォーマルな産学官連携をどれだけ制度として整備しているかというスコアがある。制度の整備を横軸にとり、縦軸に産業界における科学技術の水準に関するスコアをとってプロットしてみると、日本以外の国はきれいに相関のある線上に乗っており、産学官連携がいいほど、企業における技術水準が高くなっている。その中で、日本だけが異常で、産学官連携が割合低いにもかかわらず、企業における科学技術水準は高い。それが一体何を意味しているかというと、おそらく、そうしたフォーマルな産学官連携でないインフォーマルな、IMDの数値に出てこないような協力が過去からあり、それが押し上げているということではないか。インビジブルな産学官連携についてまで言及すれば、日本は産学官連携が進んでいるという認識もあり得るのではないか。今の問題は、そういうインビジブルなものではダメであり、できるだけフォーマライズして行うという視点で書けると思う。
 参考までに言うと、20年ぐらい前の話であるが、日本における大学と企業の共同研究について、アメリカから調査に来た方の話では、日本の産学連携の仕方は非常に模範とすべきであるという評価をしていた。

【主査】
 今までの産学官連携における大学から企業に移る情報は、菓子折り程度で良く、ただ同然であった。そうした情報が役に立っていたということは、私も大学人の端くれであるので、よくわかる。それが戦後の流れだったと思う。そういうことまで含めて、かなりのことが今までに行われてきているが、これからはよりきちんとしていく必要がある。
 また、産学連携には順序があり、連携により相互に影響し合うという段階、大学から企業への技術移転の段階、そしてベンチャーを作る段階の3段階がある、ということをはっきり書いた方がいい。このレポートではベンチャーは別にして、連携と技術移転が混在して書いてある。

【委員】
 教育も別にある。教育について随所に少し触れられているが、教育における産学連携も別に必要である。

【委員】
 9ページの下半分に2「産学官連携に対する企業の理解と協力」とあるが、私は企業というのは自らが生き残るために必死であり、それに役立つことはすべてやっていると思う。それにもかかわらず、仮にここで書いてあるようなことが日本の大学に対するこれまでの実態であったとすれば、企業の方々に今までの生き方を変えて、天下国家ではなく、日本の大学のために我慢して何かしてくださいという話になるのではないか。本当に企業はこうした要求でいいのか。

【委員】
 何年か前にあった旧文部省の産学連携に関する懇談会において、企業側サイドとして次のようなことを話した。どういう形で実際に産学連携が行われているのか、膨大な奨学寄附金が何を意味するのか、これで非常にコストパフォーマンスのいい産学連携を我々は行っている、ただし、これからはこの形が通用しない時代になるのは明らかなので直さなくてはならない、今我々がそうした奨学寄附金型で行っているものはスケールの小さな産学連携しかできないが、これからはテクノロジーの幅が非常に広がり、インターディシプリナリー(学際的なもの)も増えてくるので、そうした場合に対応できる仕組みが必要になる、またそういうことを行おうとすると、ひもつきになる可能性がどうしても出てくるので、オープンにしなければならない、企業は今の時点でオープンにするのは丸損であるが、それをしなければ、将来日本の企業は非常に大きなハンディキャップを負うことになる、といったことである。
 これは、この2のことであり、今やはりこういう目をもって日本の企業人も日本の大学を見て、一時的にはボランタリーな精神で協力するということはあるかもしれない。それがやがて大きな形に育つので、やらなければいけないという時期にきていると私は思う。私はよく誤解を受けるが、大学サイドに非常にきついことを言いつつも、それの倍以上、3倍以上きついことを企業に対しては言い続けているつもりである。そうしなければ、やがてブーメランで日本の企業は辛いことになる。

【委員】
 私は普段TLOの活動の中にどっぷりと漬かっているおり、いつも企業と大学の間に入っているので、この2は痛切に感じるところである。例えば、TLOから契約書を企業に出して必ず向こうから出てくる返事というのは、企業の独占にしてほしいというものである。9割ぐらいがそうである。しかも金額もかなり安く、イニシャルペイメントも非常に安いうえに、ランニングロイヤリティーを決めてくれないというのが基本的なパターンである。そういう中で今TLO関係者は、何とか大学の先生の成果物を守りたいという意識で日々頑張っている。ゆえに、ここの2というのは恩恵をくださいとか、少し甘く見てくださいと企業に対してお願いするという問題では決してなくて、通常のビジネスルールに戻してほしいという話である。これは決してアンフェアなことではないし、むしろフェアに戻していることになる。それによって、アメリカや諸外国と同じルールになるので、これで先ほどの話にあったように、日本の企業も日本の大学もグローバルスタンダードの中できちんと成長していくというインフラができると思う。例えば、企業と大学との共有特許に関して大学やTLOへの還元など大学の特性に配慮した連携の在り方への理解等を強調して書くことにより、企業の方に強く訴えてほしい。

【委員】
 こういう形で踏み込んで大学の社会還元を積極的に国として進めようということであるが、国立大学の立場から言うと、発明の帰属など、極めてプリミティブなところに障害があるので、旧態依然の個人レベルの話から組織レベルの話に移行しようということをこうしたレポートで明確にしてほしい。つまり、個人レベルですべてをマネジメントすることは、現代においては通じないというところまで踏み込んで書いてくれれば、TLOとしては非常にやりやすい。それが今一番のネックである。

【委員】
 質問がある。12ページの2のところのマッチングファンドという言葉は以前からいろいろな資料に出てきているが、マッチングファンド自体もいろいろな意味合いがあるので、具体的なイメージを教えてほしいという点が1つ。
 あとは、15ページの2「大学等発ベンチャーのスタートアップファンドの充実」の最初の文に、民間のベンチャーキャピタリストによるファンド審査の促進とあるが、現状ではファンドの運営というのは民間のキャピタルの経験者にやってもらうような方向にあると思う。もしそういうことであるならば、キャピタリストの自由な判断でやってもらえればそれでいいわけであるが、何をもってこのファンド審査の対象にするのかという点がはっきりしない。

【事務局】
 文章には書いていないが、我々が考えているのは、いわゆる外国で言う正式のマッチングファンドである。企業から資金をもらって、大学が共同研究などをする場合に、その大学に対して、理想的には同額をつけるという意味でのマッチングファンドを検討したいと思っている。国立大学だけであるが、共同研究A区分というものがあり、300万円以上企業からもらって共同研究をやった場合、その大学に対して特別会計で何がしか配分するということがある。しかし、予算の制約もあり充当率が低い。また、従来の文部省、通産省の両省庁でそれぞれ金を出してやるマッチングファンドというものがあったが、企業から資金をもらったことに対してのマッチングというのをやってほしい。
 それから、ファンドの話については、ファンドを決めるときの審査に、そうした民間人のベンチャーキャピタリストを入れるという記述を入れた方がいいという委員の意見がてあったので記載した。

【委員】
 ファンドを決めるときとはどういうイメージなのか。投資先を決めるのは当然、民間のキャピタリストがやるわけである。

【事務局】
 それを促進するという話である。

【委員】
 私が経験した外国の産学連携の一つの型にインダストリアル・リエゾン・プログラムという形式がある。要するに大学側が主体的に我々はこういうことをターゲットにして、こういう活動によって、こういう成果を出すということを掲げて、それに対して民間企業がスポンサーになるということである。状況によっては、もう少し踏み込んでクライアントになるという構造がある。このような仕組みはどこで読めるのか。ニーズに対応した研究開発の推進でもなく、研究成果の効果的な社会還元でもなく、産学官連携の組織の強化でもない。比較的大きな意味を持って民間のファンドが大学に入ってくるメカニズムというのは、どこで読めるのか。

【事務局】
 広い意味でリエゾンの機能の一部としてスポンサード・インダストリアル・リエゾン・プログラムがあるので、具体的、明示的には書いていない。

【委員】
 まさに私が言ったところが区別されていないからである。要するに、共同研究というのがあり、技術移転になってベンチャーになる。共同研究の部分というのは、大学ができるだけその共同研究プログラムを呼び込むために活動しているわけである。この先生はこのような研究をしていますというものを作り、みんなに配り、資金をもらうという共同研究の推進があり、それを核として、大学の先生たちは産学官がどういう関心を持っているかがわかり、その中から技術移転が生まれて、ベンチャーが生まれてくるというプロセスが区別されていない。TLOがいきなり特許云々に走ってしまっているのは、日本の産学官連携の非常にまずいところだ思う。

【事務局】
 言われたとおりであるが、10ページに、大学の研究開発の推進、そして社会還元の推進、そしてベンチャーの育成というその段階が入っているが、明示的ではないので、委員の言われるように変えたいと思う。

【委員】
 それに少し関係してくるが、TLOの関係の特許の取得について質問がある。特許を取るための経費というのは、昔は日本学術振興会で、今は科学技術振興事業団(JST。以下同じ。)の方で行っているが、そのための国の予算はいくらぐらい増えており、何件ぐらいを予測しているのか。

【事務局】
 今すぐには手元に正確なデータがないが、仕掛けとしては、国有特許の場合、JSTが弁理士を最終的に斡旋している、特許を取るための費用については特別会計予算から年大体1億5,000万ぐらい出している。

【事務局】

平成13年度予算で大体2億円ぐらいある。

【事務局】
 それから、間接経費が今度導入されたので、間接経費の中でも特許経費は見られるようになっている。

【委員】
 当大学の例を言えば、初め大体ポテンシャルとして発明届が230件ぐらい出てくる。そのうちの85%は個人有である。よって、ほとんどはTLOが引き受けるべきであるが、大学の資金は一切使えないため、我々の場合にはリエゾン活動とTLO活動をパッケージにして、リエゾン活動の会費収入を特許出願にあてているという極めて苦しい状況であり、約7、8千万円で100件ぐらいの特許出願をしている。

【委員】
 学生、ポスドクまで特許を取れ、取れと書いてあるが、特許出願経費は国が面倒を見てTLOが売りにいくというようにしなければならない。TLOがリエゾンを頻繁にやって、会費を集めておいて、特許を取るというのは、一種会員をだましていることになる。資金を出した方は特許で逆に自分のほうが縛られている。何でそのようなものを支援するのかという話になる。

【委員】
 まさに今の議論に日本の大学の、ある意味では技術移転の一番の問題点が凝縮している。本来TLOというのは、その名のとおりの機能のはずなのに、裏でインダストリアル・リエゾン・プログラムを抱えて会員制をとるなどしており、本来大学においてポリシーを持って機能しなければならないことを行っている。この形をやる限りにおいては、きちんとした産学連携はできないと私は確信している。

【主査】
 産業側から見ると中途半端かもしれないが、多分この問題は独法化と非常に強い関係があり、今はまだそこまでの助走段階ということではないか。

【委員】
 独法である必然性はなく、基本的には今でも全部できる話だと思う。

【委員】
 大学の中に特許課というのを作らないとダメである。特許は費用がかかる。多分儲かるのは千に一つぐらいではないか。特許を取れ、取れと、皆が特許で儲けようとするならば、ものすごい投資をしないと回収できないうえに、回収は大体10年後になる。よって、TLOでやろうと言うのは無理である。公的資金を導入するとしても、10年後に公的資金を回収するといったメカニズムに頭を切り替えなくてはならない。

【主査】
 それができれば非常に問題が少ないが、できないからTLOでそれを承知の上でやっているわけである。

【委員】
 もう一つ付け加えたいことは、最初の議論で日本的な企業もどちらかといえばボトムアップの企業の体質があるので、会員制なんかとってできるはずがないという話があったが、実際やってみると、見事に逆の話が出てきたということである。日本の企業はボトムアップで、ものをどこへ投げていいかということについてほとんどわからないが、120万円の会費を取ると、その責任者が出てきて、ちゃんとルートを自分で作り、自己組織化をする。これは日本的で非常によろしい。すべてにいろいろなことが重複して出てくるので、オン・ザ・ジョブ・トレーニングで行った方が、この場合非常に落としどころのいいところが見つかるということが我々の体験である。
 先ほどの話にもあったように、私の実体験として、日本の大学というのは、潜在的な面で産学連携がうまくいっている。それをどうやって公式化するかという方が現実に近い。会員制というのは、リエゾン活動やTLOとは相反する。ただ、イギリスなどもむしろそうしたパッケージにした活動を行っている。アメリカみたいにセパレートできるというのは、ああいう社会だからできるのであり、やはり構成している人間が違うと、それなりの対応をしないといけないということが、私の数年間の学習結果である。

【委員】
 今の議論でTLOがすべて会員制だという誤解を招くおそれがあるので、それぞれのTLOでは異なることを言いたい。株式会社制の場合は別に会社から何もお金をとっていない。いろいろなところから補助を受けているが、TLO自体の単年度で何とか黒字になりつつあるぐらいの活躍はしているところもある。13ページの上から3つ目にある国有特許を管理する認定TLO制度というのは、国有特許についてTLOが扱う権利を持てるということであり、これはTLOをいかに強くしていくかということにおいて非常に重要な制度なので、是非文科省のほうでも早急に進めてほしい。

【委員】
 そこに予算を多くつけてTLOに無料であげるようにし、10年後に回収できるようにしてほしい。

【事務局】
 経済産業省の方から現在出している補助金の中で特許の手数料が対象に入っていないという問題は前からあるので、その点についてどういうふうに書くかは経済産業省と相談したい。アイデアとしていろいろな意味で言われるとおりであり、組織有に転換することととも多少絡んでいるので、文面として検討したい。

【主査】
 それともう一つ付け加えて、研究費から個人の特許申請費用あるいは弁理士費用が出せるようになれば、国で費用を負担しなくても個人で出せると思うので、委任経理金についてでも、そうしたことに少し触れてほしい。

【委員】
 TLOの話の出発点は、国有特許にしてしまうと動かないし、個人有特許にしても眠っているという状況をどうするかというところから始まった。先ほど指摘があったように、共同研究がスタートとしてライセンスなどの流れになるという技術移転もあると思うが、もともとは大学に眠っているであろう個人有のシーズをどうやって発見して、それを権利化して、どうやってライセンスして、インダストリーをつくっていくかというところに主眼があった。指摘されたことはよくわかるが、もともと出発点が違うというふうに理解している。最終的には、法人化されれば解決される問題は多いと思う。大学の特許を個人有に落としていくなど、帰属の問題が解決されるので、法人化されれば、非常にきれいな形に戻ると思う。今までのTLOというのは、従来型の個人有特許プラス奨学金というゆがんだインフラの中で、最大の効率を上げるために努力してきたと思う。もう一つ言うと、資金を付ければいいかという部分については、微妙なところがあり、資金を付けて国有にしてしまっては、元の木阿弥になる。

【委員】
 私が言っているのは、特許を取るよう奨励するのであれば、それなりの予算をきちんとつけて1回国有特許にして、その国有特許はある条件下でTLOに降ろし、TLOはそれを売りに歩き、10年後に回収したらそれを国に納めるといった長期的なフィードバックシステムで国有特許を渡せばいいのではないかとうことである。行政が変われば変えられるはずである。今の規則を変えればいい。

【委員】
 それができなかったので、今までできない枠組みの中でこういうシステムを作って成功している。言われていることはバイドールのシステムと同じなので、今後独法化されて大学が機関として、機関有にする、あるいはその機関が単に独占的な実施権を外部に与えられるようにして、その機関がライセンスするようになれば、すべては解決すると思う。独法化はまだ未定であるので、それを視野に置きつつも今の枠組みの中で最大限どういった施策を行えば最大の効率が上がるかということが今やっている議論ではないか。

【委員】
 国庫から資金を出すことについては、文科省がルールを決めればすむことである。ルールを変えるための提言をしているのであって、できないことを前提に話をしているわけではない。

【主査】
 今の話は非常に重要である。前提として、国がちゃんと出して、一度民間とTLOに移して、その後で必要なら戻すということが本来は一番いいと書いて、できなければこうだという風に書けばいいのではないか。

【委員】
 そういうふうにもしも国の特許を奨励するのであれば、しかも、それを使えるようにするためには、そうするべきである。私は今のTLOに特許を無料であげようと言っているわけではない。

【委員】
 14ページの下に3.「産学官連携を支える人材の育成」とあるが、大学サイドの方からの誤解があるようである。下から4行目に「企業の知的所有権部門経験の専門家等を活用して……」とあるが、これらの人材は何も目利きでも何でもない。むしろ原則論としては、企画部門的な人でないと目利きは向かないと思う。
 また、先ほどのTLOの話になるが、今のリエゾン機能とTLO機能をごっちゃにすることについて依然としてアンクリアな便法をやっているのではないかという危惧を抱く。アンクリアな便法でやるのであれば、企業から言えば昔の方が一番金もかからないコストパフォーマンスで良い。これをオープンに変えようとする代わりに、大学サイドも産学連携の価値というものを大学として大いに評価、オフィシャルにきっちり評価できる体制で応えてほしいという思いが企業サイドにある。企業サイドには、リエゾン機能というのは、大学そのものの中核のファンクションとして置いてほしいという思いが常にあることを理解してほしい。

【委員】
 我々も何の制限もかかっていなければ、その形が望ましいことはわかる。ただ、あるシチュエーションの中で、ある限られた法人化までの間にそれだけのことをやらなければいけないのであれば、それぞれの選択肢で選ばざるを得ないということも理解してほしい

【委員】
 13ページの上から4ポツのところにある「緊急特許化アドバイスシステム」であるが、これは非常に優れたアイデアだと思う。ただ、弁理士とか弁護士もそうであるが、コンフリクトという問題がある。つまり同じ業界で競争相手になるような会社からはアドバイスを受けられない。このような1つのシステムが多数の依頼者を持つようになると、コンフリクトの問題が必ず発生する。例えば、電機業界でソニーと東芝の両方からやれといわれてもそれはできないという問題が必ずある。システムを作ることはいいと思うが、具体的な細かいところを詰めたほうがいい。
 それから同じ13ページの一番下の黒ポツにある「社外取締役兼業の検討」について、もちろん結構だと思うが、取締役は必ず経営責任が伴う。教員の方、教官の方が経営責任を取るにふさわしい方かといえば、果たしてそうではない場合がかなりあると思う。よって、社外取締役兼業に加えて、いわゆるサイエンティフィック・アドバイザリー・ボード(技術顧問会議、SAB)を活用するようにする。できればSABに優れた一流の科学者、そして経営陣、CEOにはいわゆるマネジメント・オブ・テクノロジー(MOT)あるいはビジネスの分野の専門家でもいいので、そうした優れた経営者を取り込むというシステムの方がいいのではないかと思う。
 それから、あともう1点であるが、14ページの2 3ポツの中に「弁理士の常駐の実現」とあるが、弁理士は数がものすごく少なく、しかも社内の弁理士がかなりいるので、フリーの弁理士は非常に少ない。1人の弁理士を常駐させるならば、そのコストはものすごくかかるので、これは多分すぐには無理である。なるべく弁理士を増やすようなシステムなどと相関しながら考えなければ実現は難しい。もちろんこれを書くことはいいと思うが、実現のためにどうしたらいいかという実例をもう少し考えた方がいい。

【委員】
 12ページの「産学官の対話会議」というのは非常に重要だと思う。産学官対話会議というものは常置して行う必要があると思う。そのときに学会の役割が出てくると私は思う。学会というのはそもそもこういうことをやらなくてはいけないものであるので、是非そこのところを書き込んでほしい。

【委員】
 社外取締役論についてであるが、ここに言われるものは実は取締役ではない。取締役であれば、株主総会で株主から経営を委任されているので、経営に失敗すれば背任罪に問われる。それを阻止するメカニズムとして監査役というのがあるが、現在の商法上では監査役の機能は非常に限定されおり、主として会計的なものが多い。新しく商法を改正して導入しようとする社外取締役では、経営責任は負わず、経営に対してアドバイスを行い、株主からその限定付きで委任されるといった形ができる可能性がかなり高い。

【委員】
 この14ページの人材のところで5年間で目利き700人とあるが、この数字というのはある程度スローガン的に置くという意味がなくはないと思う。目利きの定義というのは、先ほど指摘があったように、必ずしも知財部門の経験者でなくても、企画など将来どうなるかを予測する人材もあてはまる。目利きの定義がはっきりしない。ただその数字はいろいろな数字をとるということであればそれでもかまわないが、誤解のないように、もう少し目利きの位置付けなどを明確にしておいたほうがいいと思う。
 それから、もう一点。共同研究等いろいろなステップを踏んで、ベンチャーに進むべきだという議論がある一方、共同研究であまりうまくいかなかったという反省もある。そうした反省の中で、いきなり大学のシーズを共同研究なしにベンチャーで立ち上げるというケースも当然あるわけであり、ある意味では今逆にベンチャーが注目されている理由として、これまでの国と企業との共同研究があまり成果を生まなかったという反省もあるのではないかという気がする。

【委員】
 1980年代の初めにNATOのイタリーワークショップでインダストリアル・アカデミー・リエゾンというのを行い、私がただ一人日本から招かれて出席したときに、大学間のライセンシングの話をさんざん行った。MITやスタンフォードなどに、日本の企業が来て、先生のアイデアをうまく取っていって、商業化していることはけしからないので、何とかしてそれをIP化して売ろうという議論であった。さんざん共同研究をやっていて、生まれたアイデアは日本の企業が持っていくので何とかしようということから、実はTLOというのはできたと私は理解している。そのときのワーキングショップにおいても、大学はマーケティングなんかやっていないから大学の技術でもって使いものになるのがほとんどないという議論がやはりあった。そもそも大学はアカデミズムだから間違っているんじゃないのという議論もあり、それについての賛同者もかなりいた。そうした経緯があって、アメリカはバイドール法を作り、TLOのようなものを作った。その以前からリエゾンオフィスというのはMITなどでずっとやっていた。そうした歴史的な経緯を踏まえて、20年遅れてTLOなどが日本に入ってきたというのが私の認識である。

【主査】
 日本の研究者というのは、そうした契約を経ないで、これをやってほしいと言って意図的に仕掛けてきた。本来なら特定の人に話すべき内容のものを、これが面白いということで学会でどんどん発表していた。日本がある領域をリードした中にはそういうことが非常に多かったと思う。それについては是非どこかに書いてほしい。
 また、シーズがあるかないかという議論があったが、私はかなりあると個人的には思う。実はかなりあるが、大学の先生はそれを意図しないでツルツルと出しているので、ないように見えるという感じがする。そろそろ組織化すると同時に、一方では産業界から見て頼りないところがあるので、それはそれできちんとしてほしいという二面性の議論ではないかと思う。
 基本的にこの性格で出していきたいが、ただこれには今までの文献等を付ける必要がある。文部省などが過去に出してきた報告書などを参考資料に書き、あるいは最近の法整備の流れも踏まえた上で現状を少しでも改善しようということで、これが検討されたのだということにしたい。

5.今後の予定

中間取りまとめを主査一任とし、各委員の意見を踏まえて修正した上で、8月初旬までに公表することについて委員から了承された。

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研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室

(研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室)