産学官連携推進委員会(第2回) 議事録

1.日時

平成13年5月30日(水曜日) 14時~16時

2.場所

文部科学省 別館 第2会議室

3.出席者

委員

 末松(主査)、生駒、市川、伊藤、小野田、川合、北村、清水、田村、丹野、古川、堀場、安井、吉田

文部科学省

 坂田審議官、中西研究環境・産業連携課長、磯谷技術移転推進室長  ほか

オブザーバー

意見発表者
 北村  健二  氏(独立行政法人物質・材料研究機構機能化領域長)

4.議事録

(1)大学・国研発ベンチャーの支援・育成について

(2)大学等の研究成果の効果的な社会還元について

  • 資料4、5、参考資料2、3、4に基づき事務局から説明した後、その内容に関する質疑が行われた。

 その内容は以下のとおり。

【委員】
 ドイツの例は非常におもしろい例である。少し前まで、ドイツのプロフェッサーと話をしても、例えば兼業なんてとんでもないと言うのがほとんどだったが、いつの間にか大学等発ベンチャーの数が多くなっている。しかも、今の説明によると、任期付きになったためとか、不景気で就職先がないからやったなどネガティブインセンティブによるもののようである。
 私は、日本でインキュベーションをやるには、例えばストックオプション制度をもっと整備するなどポジティブインセンティブでやるのがよいと思う。現状では、大学からベンチャーをやって最後までお金が入るようにするというのはほとんど不可能であり、よほど幸運な人にしか入らない上、お金が入るまでに時間がかかる。
 ベンチャーの成功例について、成功したと認定されるためには少し違った観点が必要ではないかと思う。例えば、アメリカの場合は、M&A、大企業が莫大な金で買い占めて、その技術を世の中に流す。違ったプロセスを考えないと、特に日本の場合には大企業が大きいので、そういうポジティブインセンティブをかけるようにいろいろなところで言っている。ドイツの場合、ネガティブインセンティブからそんなに出て成功しているというのは非常に不思議である。
 ドイツのプロフェッサーについては兼業禁止事項はもう解除されているのかということと、バイ・ドール法に似た制度が作用して何らかの格好でポジティブインセンティブが働いているのかということについて伺いたい。

【事務局】
 前の質問については、ドイツでは、概して、教授は勤務時間の20%までは兼業ができるということになっており、それにより減額されることもなく、両方から給料をもらえるということになっている。イギリスも同じように勤務時間内の兼業がある程度許されており、給料の減額はない。米国の場合には、全部給料をもらっている先生もいるが、よく言われるのは、9か月分しか給料がもらえないシステムの中で働いているので、週1日ぐらい兼業して他から給料をもらってもかまわないという発想で認められているということである。
 後者については、確かに事の始まりはネガティブインセンティブが非常に高かったと思われるが、政府がいろいろなテコ入れをして、いろいろプログラムを発動させたのも非常に大きいのではないかと考えている。

【委員】
 もう一つ質問したいが、日本の場合の兼業は、だいぶ緩和されたと聞いているが、依然として兼業は休日に行うなどの時間割振りをしているのか。

【事務局】
 時間外の兼業システムである。時間内での割振りはないのが現状である。

【委員】
 日本は、依然としてそうしないと世論は難しいのか。週に1日、外へ行って儲けていいというのは、ドイツ、イギリスではどのようにトランザクションをしたのか知らないが、日本の世論では無理なのか。

【事務局】
 ノーワーク・ノーペイの原則がある。給料をもらいながら、時間内で兼業するのは難しい。そのため、例えば、時間の割り振りの工夫、月曜日から木曜日まで余分に働いて、実質週40時間は働くので、金曜日は空いた時間として兼業をするなどいろいろな工夫をしている。あるいは、無給の兼業でもかまわないので、兼業をさせてもらうといった工夫をしないといけない。

【委員】
 日本の世論は兼業の緩和を認めないのかという先ほどの質問について答えたい。産業技術力強化法案が国会にかかった時、人事院として衆議院と参議院の委員会に出た際に、たとえ時間外で労働したとしても、それに対する報酬の最高額は抑えるべきであるという厳しい意見があった。人事院案(すなわち現状)では報酬は青天井になっていた。研究成果で金を稼いでいるのであれば、その研究成果は国費を受けてやったものであり、それを基にして、たとえ時間外といえども青天井の報酬をもらうのはけしからんと言う方もいれば、その逆の意見の方もいた。当然のこととして議員の意見は分かれ、世論も一様ではないだろう。しかし、今の立法府の雰囲気としては、連携は更に進めるべきであるが、特定の個人が不当に金を儲けるのは看過できないという感じがある。

  • 古川委員、北村氏から国研発ベンチャーの実状、課題について意見発表をした後、その内容に関する質疑が行われた。

 その内容は以下のとおり。

【委員】
 大学側のTLO事業をやっている人間として、問題点も非常にクリアにしてもらい参考になった。先ほどの話では、知的所有権の個人有が非常なインセンティブになっているということを述べていたが、TLO事業においてライセンシングまで行うプロセスで大企業を主体にしていると、どうしてもアメリカ型の組織有になるべくするという、ビジネスがしやすい方向にもって行きがちになる。ただ、こういうベンチャーをやろうという形にしたときには、今の大学はもともと個人有であるが、個人有の方が非常にインセンティブが働いてよろしいということになる。これは海外でも両論あり、その辺の弾力的な運営というのが非常にこれから大事になると思う。国研というのは主体は組織有から出発しているので、個人有が例外としてとらえられると思われる。個人有であるということがインセンティブとして働くというのは、組織有では使い勝手が悪いからという意味か、それとも自分のものだということが大事なのかということか聞きたい。

【意見発表者】
 先ほど説明したが、例えば個人有ではない場合にベンチャーを始めたときに、どの企業にライセンスがあるか分からない。国研の場合であれば、通常、科学技術振興事業団(以下「JST」)に専用実施権を与えて、JSTから通常実施権ということでアプライされた企業に対して移管する義務があると私は解釈している。
 今回もすべての特許に対して個人有ではなく、ほんのわずかでしかないが、個人有があるというだけで、万が一、大手企業がこの分野に参入し、JSTを通してライセンスのあっせんを受けるときには、出願人の一部として認めないことができる。その意味では、実際にベンチャーを始めるときには、かなり大きいのではないか。

【委員】
 専用実施権が与えられれば、そこはクリアできるということか。

【意見発表者】
 そう思う。

【委員】
 三点伺いたい。仮定の話で恐縮だが、人事院による緩和がある程度意味があったという話があったが、もっと思い切って、非公務員となり勤務要件等が独立行政法人と研究者との間の契約として定まるという環境と比較すると、こういう仕事をする上でどちらがよりやりやすいと考えるか。

【意見発表者】
 そういう意味では、最初に独立法人が非公務員型になるか、あるいは公務員型になるか、個人で選択するといった場合には、我々は迷わず非公務員型を選んだと思う。

【委員】
 二つ目の質問だが、いわゆる制度的な面以外に、日本の場合にはベンチャーを進めていく上での社会の行動様式もしくは文化といった障害がかなり大きいと思う。その障害を突破する上で大きな意味をもつのが、いろいろな意味での社会的信用を担保することである。日本は、個人に対する信用というのは非常に低く、組織に対する信用、組織の一員に対する信用というのが高い。そういうときに研究所側が法人としてその担保まで引き受ける。昔の例で言えば、理研コンツェルンがそうであったが、そういう形は今回の場合にはどのような意味をもつと思うか。

【意見発表者】
 実際に運用するとき、資金調達を継続して行うことが非常に重要である。今回の場合は政府系の中小企業投資育成株式会社に入ってもらったことが非常にいろいろな意味で重要性を持っていた。例えば、中小公庫からお金を借りるときに、通常、オキサイドのような会社に公庫が貸すということはまずあり得ないが、そういう会社が入っているということがその場合非常に大きい意味を持った。それと似たことが期待されるのではないか。

【委員】
 研究所自体が、理研のように中にベンチャーを抱えて、それから外へ出していくという形で社会的信用を研究所が担保する形をとるということでよいか。

【意見発表者】
 感覚的には、非常に重要だと思うが、実際にベンチャーとしていったんスタートすると、それが顧客にとってどれだけ新しい価値を提案できるかですべてが決まってしまう。そのため、今、オキサイドもいろいろな意味で支援を受けているが、良い製品がでなければ、いくらその研究所から出たものであっても、それは失敗することになる。その研究所で育成する前と出た後では違ってくるのではないかと思う。

【委員】
 先ほどの話の中で、オキサイドと無機材研との間で、研究所内の連携プロジェクトの存在が非常に有効であったという話については、私もこの種のプロジェクトについては大変重要なことだと実感している。その場合、国研あるいは大学でも可能かもしれないが、公的機関がそのような形で連携しながら応援するということは、あまりコストがかからずにベンチャー企業の負担にならないのでやりやすい。一方、民間企業との共同プロジェクトといった連携のような場合には、民間企業サイドとしては、当然ながら設備関係の貸与も含めた協力についてコストを回収したくなるものである。その点、公的機関の無償に近い形でのベンチャー支援というのは、バイ・ドール法の考え方にも共通する点があるかもしれないが、ベンチャー企業のスタートアップについて非常に有効であることを強調しておきたい。
 大まかなイメージでよいが、金額的なバランスで、そのような連携があることによって、オキサイド側の負担が何分の1というかどのぐらい軽減されたのか。

【意見発表者】
 具体的な数字で言うのはなかなか難しい。民間企業と連携するということについては、この一つのプロジェクトは、既に共同研究ないし特許の実施契約を交わした企業とのみ行っている。したがって、もう既にあるロイヤリティーを払っており、ここから出るプロダクトは、やがて我々のところに還元できることになる。昔で言うと、企業との癒着かもしれないが、我々の研究所に還元できるということで連携して、かなりエクスクルーシブに進めている。
 各研究所あるいは企業で結晶をつくることはできるが、新しい材料であるがために評価は非常に難しい。その評価というものに対する設備まで全部取りそろえるのは、非常に投資としては難しい。したがって、我々はその出た材料について、どういう材料であるかという評価を我々の研究所がするといった契約を結ぶ。これが有償であるか無償であるかは今後変わるかもしれない。我々は長い研究経歴を持っており、こういう状況にあれば結晶はこうである、あるいはこの次はこうすべきであるという指針ができるので、そういう意味で品質管理及びそういった評価を我々のプロジェクトが行うという形をとっている。
 当然製品は製品管理したものを市場に出さなくてはいけないが、評価部分の軽減という意味では相当大きなメリットがあるのではないか。

【委員】
 簡単に三つほど質問したい。
 一つは、同僚で同じような研究をしている人は多くいるわけだが、なぜその人は起業しないのか。
 それから、その場合、例えばベンチャー教育のようなものがいろいろな場所で行われているのであれば可能なのか。
 それから、もう一点、ベンチャーキャピタルの200万ドルのオファーを断ったという話があった。一般にベンチャーキャピタルの出資を受けると、ずっとコンサルティングをしてもらい、会社としてはあるノウハウを生かすことができるわけであるが、そういうものの必要性をあまり感じていないということか。

【意見発表者】
 まず、最後の質問から。最終的にM&AとかIPOとか考えると、最初からそれらをかなり考えてやったほうがよい。ただ、そのときは、そこまでの途中段階であり、最初からそれだけを目指した会社ではないという理由でそれを拒否した。現在は事業もいくらか製品ができて売れ始めているので、そういったキャピタルとの提携も視野に入れ始めている。ただ、ベンチャーキャピタルの資金提供を受けると、それはそれでレポート書きに忙殺されるという問題がある。
 どうして他の人がベンチャーを始めないのかについては私もよく分からない。ただ、私の知り合いの中には、同年代で興味を持っている人はたくさんおり、よく何人かが相談に来るが、依然として、やりたいと言っている割には、あちこちで発表してしまって特許は全然持っていないということがある。また、私から会社を自分で始めるのはいいがどうやってその研究成果をプロテクトするのかなどいろいろ尋ねるとしゅんとしてしまうような感じがある。

【意見発表者】
 水を差すような言い方かもしれないが、技術移転とは別の話で、企業を作るということはやはりリスクを伴う。これは、現実として企業をやり始めれば、自分自身のリスクというものがあり、実は優等生にはできないと私は思う。ベンチャーの中で、優等生と優等生でないの2つのタイプを分けたときに、優等生ではないところのほうが成功率が高い。そういう意味では、私自身も非常にメジャーなものに頼ってきており、そういう体質が依然としてあることは事実だと思う。
 私は大学の教授をやっており、学生に特別講義で、ベンチャーはこういうふうにやっていると教えているが、最後に第1志望から第3志望の就職希望を見たら全部大企業と書いている。そういう意味ではメンタルにおいてそのギャップは越えにくいのではないか。特に優等生には難しい。

5.今後の日程

 次回は6月中旬に開催する予定とし、各委員との日程調整の上、事務局から改めて連絡することとされた。

お問合せ先

研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室

(研究振興局研究環境・産業連携課技術移転推進室)