第10回制度検討特別委員会における主な発言~今後の第二次試験の在り方について~

国際的通用性の観点 ~IEA-PC、技術士コンピテンシー~

●技術士資格付与にあたって、「技術士に求められる資質能力(コンピテンシー)」を有することを、様々な方法で確認することが必要
 このために、第二次試験筆記試験だけでなく、受験申込みまでの受験者の業務経歴においてどの部分が上記コンピテンシーを有するために取り組んできたことなのか把握できるようにし、これをもとに口頭試験を行うことが重要。よって業務経歴票を重視(工夫)すべき。

現行の第二次試験を通して上記コンピテンシーを全て確認できるかといえば、確認できない
 誰が確認(チェック)するか。受験者がドキュメントを作成して、技術士有資格者のチェックが必要。
 例えば、受験者の所属組織の技術士有資格者がこのようなドキュメントを事前にチェックして推薦書を受験申込み時に添付したらどうか。一方で、このような技術士有資格者がいない場合は、ドキュメント以外による確認が必要か
 受験者全員が同じ方法ではなく、二本立てにするなどを考えてもよい。

IEA-PC、上記コンピテンシーの「評価」の項目について、自分が行った業務を評価して改善することが技術士に求められると考えるが、受験者にこの能力があるかどうかをどのように測るのか

●以前の技術的体験論文では、自分の業務について、どのような業務であったか、自分の役割は何だったか、どのように解決したか、それを振り返ってどのように評価したか、あるいは提案できたかという観点で、自らの業務経歴を論文のように書いた。
 現在の議論を踏まえて、このような観点により業務経歴を記載させるか、試験で問うか

●受験者が所要の実務経験を経て、上記コンピテンシーを身に付けるためにどのようなことに取り組んできたのかその代表例を、業務経歴票の「業務内容の詳細」に記載するにあたって、出題者側が求めるものに対して、受験者側がそれに応えるように注意すべき
受験者が自分の得意分野の詳細を書いても、出題者が確認すべき上記コンピテンシーを確認できないようなミスマッチが起きないようにしないといけない。

●(9/30資料5「ポイント(キーワード)」欄の)「2.複合的な問題に対する…評価…」をどのように改善に結び付けるのか。受験者が業務経歴票にキーワードを含めて記載することで、上記コンピテンシーを満たしていることがある程度確認できるのではないか。

●受験者が、実務経験の中でいろいろな選択肢から何を選びそれを実施したのか、どのような反省や改善の余地があったのかを業務経歴票に記載し、これをもとに口頭試験を行えば、業務を通じてどのような成長があったのかをある程度把握できるのではないか。

筆記試験と口頭試験それぞれで確認すべき内容を切り分けた方がよい

●受験者が受験申込み前にどのような研さんを積んできたのかについては、業務経歴とは異なる観点の情報として、口頭試験の面接者にとって必要

技術者倫理について、知識として得るべきものと、実践を通して身に付けるべきものがあろう。「知識」は筆記試験で問えるが、「実践」は、業務上起こりうるいろいろな問題についてどのように解決したのか、自分がどのように判断して行動したのかが重要であり、これらを記載した業務経歴票をもとに口頭試験で確認するという方法があろう。

●上記コンピテンシーを、業務経歴票、筆記、口頭等の方法で何を確認するのか、どの程度のレベルを確認するのか、もっと細かく決めないと、試験問題を作成する試験委員が作問等対応しにくいのではないか。

●現行の第二次試験の必須科目は、「技術部門全般にわたる専門知識」を問うているが、暗記的な要素も多く、このような問題は第二次試験では不要ではないか。
 知識はいろいろなところから得ることができるが、このような知識確認を簡素化する方法も考えられる。

口頭試験を中心に実施している国では、基本的な知識を確認する試験は行わず、口頭試験を1時間程度実施している。技術者としてどのように問題を抽出し解決して、どうやって改善していくのかという能力の確認を、口頭(面接)中心に行われているのではないか。

業務経歴票を工夫した上で、受験者が自らの専門知識がどのくらいあるのか説明すれば、口頭試験で細かく確認する必要はない

科学技術イノベーション推進の観点 ~高い専門性と倫理観を有する技術者~

●これまでの第二次試験は、与えられた課題をどのように解決していくかを問う問題が中心であった。イノベーションとは新しいものを生み出していく、物事を革新していくという意味であるから、いろいろなものを考えて、問題を発見する、抽出する、デザインする能力を確認していくことが必要
 単に与えられた課題だけを問うような問題も重要だが、一歩踏み出す必要がある。

●これまでの技術士試験は、科学技術イノベーションの観点、すなわち、変化する世の中でいろいろな問題が起きて、それらを解決していかないといけない、取り組んでいかないといけないという観点を踏まえて実施しているとはいえないのではないか。技術的問題についてはどのように解決できるかという問い方をしているが、もう一歩踏み込んで、社会が抱えている様々な問題をどうやって見つけて解決していくかというところまで求められているのではないか。

●イノベーション推進にあたって、技術士は、いろいろな分野の専門家と一緒に働くことになり、(この場合は)個々の狭い知識をどのくらい必要とするのだろうか

●(9/30資料5「10.コミュニケーション」について)他の専門分野への理解力も必要であり、専門家としてのコミュニケーション能力、すなわち他の専門分野の人々へ適切に説明できること、これらの人々の言っていることを理解することも「コミュニケーション能力」だと思う。

●東日本大震災の際は、技術者に専門家としてのコミュニケーション能力が求められた。自分がリーダーシップを持ち、周囲の人々とコミュニケーションを取り、どのように新しく提案したり解決していくのか
 海外で業務に携わるときも、専門知識を単に持っているだけでは、相手と業務ができないのではないか。

基本的なことを理解し、法令や倫理を判断材料にした上で、どのようにしてそれらを用いて課題を見つけたり解決したり、改善していくのかを、技術士試験によって確認すべき。これでもうおしまいではなく、キャリアの中で、業務やCPDによって、その能力を開発していくことが本来の技術者の姿

●イノベーションとは、例えば、矛盾マトリックスを解くようなもの。これを解くためにAかBか選ぶ上で、社会観や倫理観がなくてはいけない。

個々の技術者のキャリア形成の観点 ~複合的な問題の解決、資質向上~

●現行の第二次試験は一発勝負だが、そのような方法ではなく、むしろ、受験によってあるレベルまで達していることが明確になり、その次はまだ達していない部分を受験すればよい…というように、技術者として一つ一つ積み重ねて受験し最終的に第二次試験に合格できるというやり方が可能であれば、個々の技術者の資質向上を図る手段になるのではないか。

●エンジニアとして普段働いている人々が、「技術士」「プロフェッショナルエンジニア」を目指す中で、どのようなレベルをもって「プロ」というのか
 今後の第二次試験の在り方を考える上で、このレベルをどの程度に置けばよいのか。レベルをやたらと容易にしたり、かつてのように非常にレベルが高く完成した技術者だけを認定することでよいのかという問題が起きている。

●35歳程度の技術者が、技術士資格取得について、仕事上あまり必要性を感じておらず、もう少し年齢が高い技術者は「あれは難しい」という意識を持っているようだ。本当に技術者になろうとするならば、30代、35歳程度までに目指す資格であることをもっとはっきり出していきたい。

●科学技術政策の視点から、これから働く人々が技術士資格を取得しやすい制度にすることを考えるべき。35歳程度の技術者にターゲットを合わせると、試験の難易度の議論を避けて通れない

35歳程度の技術者は、エンジニアとして仕事がきちんとできていると思う。それで技術士試験に合格しないというのは、試験の実施方法、難易度、レベルを見直さないといけないのではないか。

第二次試験の肝、核となるものは、「複合的な問題」。
 例えば、ある想定される問題点を3つ挙げて、それぞれどのような解決方法があるか、なぜこれらが解決方法になるのかを説明せよという設問があったとする。
 試験によって、受験者が複合的な問題を解決できる能力を有するかどうかを確認しようとしたときに、受験者が簡単に解ける問題を3つ挙げてしまうと、複合的な問題の本質を理解しているのかどうか確認できない。
 どのような問題を解けたときに複合的な問題を解けたことになるのか、現実的な問題として、どのようなものが複合的な問題であるのか、目標値として何か明示する必要がある。

●IEA-PCの「Complex」という表現についてもう少し議論することが必要

「複合的な問題」の答えは一つではない場合が多い。ある問題はこういう選択肢があり、それぞれの選択肢はメリット・デメリットがあって、波及効果、影響が考えられる中で、現時点では、○○という答えが最善と判断できる…と言えることが重要

●キャリア10年程度(35歳程度)の技術者にとって、「複合的な問題」に対する解決能力は、どの水準まであったらよいのか、その水準を作らないといけない。高度なレベルの問題解決能力を求める水準から、そこそこのレベルの水準までいろいろあり、この水準を明確にしないと、試験問題作成の際にばらつきが生じてしまう。 

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科学技術・学術政策局人材政策課

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