第30回技術士分科会における主な発言

基本的な考え方

●国際的通用性の観点から、今後の技術士制度の在り方をデザインすることが必要。
これからの日本の産業は、国内のマーケットだけでなく、世界、特にアジアのマーケットで通用していかないといけないアジアのエンジニアと一緒に働こうとすると、彼らの技術者資格とバイラテラルでないといけない。10年後にアジアの技術者資格との互換性を目指すことが必要
●「技術者に求められる資質能力はますます高度化、多様化している」という「社会的背景」「社会的要求」に応えるために、「技術士制度の活用促進が必要」「技術士資格を通じた資質向上が重要」「技術士資格の国際的通用性を確保することが喫緊の課題」という論旨の流れではないか。

技術者キャリア形成における位置付け

●(分科会資料2pp6~7)「技術者キャリア形成スキーム(例)」の「(ものづくり)製品に対する品質、コスト及び生産性に関する姿勢」は、メーカーの立場からすると、非常に胸に落ちる。ただ、メーカーだけでなく、コンサルタントしている方、官公庁に勤めている方からすると、ちょっと違和感がある。ものづくり以外の業務においても、品質、コスト、生産性のような観点で書いてほしい

第一次試験

(位置付け、目的・程度)

●第一次試験の位置付けについてIEAのGAを踏まえることが、国際的通用性の観点から重要である。
第一次試験合格者や技術士補資格保有者について、認定された力を持っている者であることを企業側が認識すると、両者(輩出側と受入側)の関係が実りあるものに近づくのではないか。
●企業の立場からすると、大学の授業が非常に幅広くなっていて、なおかつ、必修科目がかなり少なくなっている。どんな科目で単位を取得しても卒業できるような印象を持っている。専門的なコンサルタント会社では、大学を卒業したときに、構造力学、土質力学、水理学という三力を勉強してきてほしいと言いたいが、これらを学ばずに、就職試験に受験してくる者がいる。
●第一次試験に合格していれば、企業の採用の際に学問的なところは問わず、人物だけを確認することになる。大学においても、このような観点から学生に対して、第一次試験受験を積極的に勧めるようにしてほしい。
●この観点から、第一次試験でできるだけ多くの方々が合格してほしいという考えと、知識や認識を問う必要があるという考えは、二項対立、二律背反のようなところがあるので、バランスを取りながら決めていくことになろう。
●大学等の高等教育機関の在学者が、第一次試験に合格するケースがある。このような例があると、周囲の学生も受験してみようと思うようになり、学内でいい循環が生まれると思う。学生が受験できるような広報的なものがあるといい。
技術士試験は難しいという世評を払拭するような活動も非常に重要。第一次試験については、それぞれの技術者が自らのキャリアを生かすための入口だととらえて、大勢の方々が受験できるような環境ができるとよい。

(試験科目、問題の種類・内容)

IEAのGAの7番目の項目「環境と持続性」は重要なアイテムであり、第一次試験において特だしで記述してほしい
●IEAのGAのポイントになっている「技術者倫理」「チームワーク力」「社会とのコミュニケーション能力」「生涯継続学習の心構えと能力」は、適性科目以外で問いようがないので資料2p11のようになっていると思う。技術士制度は一定の実務経験も加味した制度であり、これらの知識があるかどうかではなく、知識を与えることで習得できる。
 例えば、第一次試験合格者に対して、サブ読本、パンフレットを配布して、これらを活用することを通じて実務するというような技術士になる(第二次試験受験までの)過程において習得していくように考えた方がよいのでは。試験だけで確認するという考え方は短絡的ではないか。
第一次試験で問われるものの中で、例えば技術者倫理について、どのようにして勉強したらよいかということを受験者から相談されたことがある。受験しやすくするためには、事前に勉強できるようなテキスト、リーフレット、講習会のようなものがあるといい
第一次試験適性科目で問いたいのは、「生涯継続学習の心構え」があるかどうかということ。これらを知っているかどうかも非常に重要。IEAのGAにおいても、このようなことを認識しているかどうかが重要で、これらの基本的な知識があるかどうかを問うしかできないのか。これらの能力を身に付けて技術者として発揮していくには経験が必要であり、OJTやIPDで身に付けていくもの
例えば「環境と持続性」についても非常に重要であるが、必要性を認識しているかを問うことだけでなく、知識はどうだ、ちゃんと判断できるのかを問うと難しくなってしまわないか

(レベル、第二次試験との差異)

●第一次試験の合格レベルがどこまでなのかを議論していくと、第一次試験がどんどん難しくなってしまうのではないかと心配する。
第一次試験と第二次試験は何が違うのかというと、レベルだけでなく、試験の質が違うのではないか
第一次試験では、知識があればよいということでいいのではないか第二次試験では、実践能力を問わなければいけないと思う。単なる知識があるだけではなく、実践能力があるかどうか非常に重要だ。このような意味で、資質的な差を設けるべき。

技術士補・実務経験

●技術士補の位置付けは、大学学部課程というよりは、大学院修士課程を修了した程度の位置付けかと思うが、GAが「学部課程」と同等の基準であればそれでよい。
「技術士補」が就職時に有利に働くのであれば、学生がこの資格を取得するモチベーションが上がると思う。これは企業等の受入側がこの資格をどう評価するかと関係する。
●第一次試験受験者の割合をみると、学部在学中の受験者が年々増加している。これは、第一次試験に合格(技術士補資格を取得)して、技術士になりたいと思う方がいることが事実。技術士補の活用の場を作るべき。
●技術士補資格の取得に対する「特権」が付与されていないため、同資格登録に対するインセンティブが働かないのではないか。
●しかし、技術士補資格を有することが、学部課程を卒業した、つまり専門知識を有していることの証明になり、企業側がその価値があるということであれば、就職上有利に働くことが現実的な方法になるのではないか。
●日本技術士会において、企業に対して、技術士制度があること、この資格を活用することを積極的に情報提供することが、技術士の活用を広げることにつながるのではないか。
●企業側の採用に対する考え方と、エンジニアを輩出する側(高等教育機関等)の考え方の違いがあると思う。
第一次試験合格者や技術士補資格保有者について、認定された力を持っている者であることを企業側が認識すると、両者(輩出側と受入側)の関係が実りあるものに近づくのではないか(重複掲載)。
●技術士補資格が、企業の中で実際に役立つかと言えば、役立たないと思う。しかし、採用においてこの資格を持っていることは非常に意味がある。
「技術士」と「技術士補」の資格名称は、レベルの差を明らかに感じさせる名称。日本人は、言葉によるレベルの差に敏感になる国民である可能性もあり、そういう点で名称のレベルの差を明らかに感じさせることは現状の問題点だと思う。

継続研さん(CPD)

●技術士資格は更新制度がないので、技術士であればCPD、第一次試験合格者であればIPDという研さんの積み重ねをどう評価するかということが、技術士資格者の活用にあたって非常に大事。これらの研さんをしっかり行っているかをしっかり確認する仕掛けが、試験とは別に大事

普及拡大・活用促進

●大企業だけでなく、中堅企業や中小企業までを対象に、技術士制度の普及を図った方がよいのでは。あるレベルに達したエンジニアに対する中小企業の期待、要求はとても大きい。
●最近の動きで、老朽化した社会インフラを適切にマネジメントし、維持補修していかなければいけない中で技術者が必要であろうと言われている。どういう技術者に委ねるのか。何らかの資格を持っている人であることが大事であり、技術士や技術士補の活用も、まな板の上に上ってくるかもしれない。
●技術士登録者数や技術士試験受験者数をもっと増やしていかないと、例えば、35歳で技術士になるとか、日本の産業界で技術士の位置付けが認識される、再認識されるということも大きな制度設計の役割ではないか。
●学生は大学教員の指導が絶対というところがあるので、大学教員に対して、技術士資格について理解していただくことが必要

第二次試験

第二次試験の在り方に関する議論はこれからだが、試験の内容として、ペーパーテストによる方法もさることながら、実務経験、インタビュー、面接を重視した試験内容にしていく方がよいのではないか
第二次試験は、それまでの技術者としての経験を踏まえて、例えば非常に困難な倫理的問題についてどう対応するかという問い方をしないといけないと思う。これが第一次試験との大きな差ではないか。その中で面接の果たす役割は大事だろう。

 

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