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1(8)データベース・データ流通

「データベース・データ流通」計画推進部会長 鶴岡 弘(東京大学地震研究所)
副部会長 大見士郎(京都大学防災研究所)

 データベース及びデータ流通は,本計画を実行して行く上での,多項目の観測データを安定的かつ継続して生産し,かつ,それらの連続データをリアルタイムで流通させる研究基盤の運用・維持・管理を実現している。また,観測データ解析アルゴリズムの高度化も継続して実施している.さらに,研究成果をコミュニティーで効率的に共有する仕組みの構築の実現を引き続き検討した。

2.平成27年度成果の概観

以下,平成27年度の主な成果について概観する。

1.地震・火山現象の解明のための研究

(1)低頻度大規模地震・火山現象の解明

 火山噴火予知連絡会で中長期的に観測体制の充実が必要とされた47火山について,地震計,空振計,GNSS等の観測データを蓄積した。全国の火山について,地震観測,GNSS繰り返し観測,熱観測等の調査的な機動観測により得られた観測データを蓄積した。平成27年度に噴火が発生した口永良部島や阿蘇山及び桜島のほか,火山活動の高まりがみられた雌阿寒岳,蔵王山,箱根山,浅間山,霧島山(えびの高原(硫黄山)周辺)において,緊急観測により収集した火山活動の詳細なデータを解析し,蓄積した。これらのデータの蓄積にあたって,今後の活火山総覧の改訂に活用できるようにデータベース化した(気象庁[課題番号7001])。石巻平野,福島県北部に加え,青森県太平洋沿岸の一部における津波堆積物に関する地質柱状図等の情報についてウェブ公開をした(産業技術総合研究所[課題番号 5001])。活断層データベースに収録している活動セグメントの形状やパラメータについて,最新の調査研究の成果に基づいて見直しを行い,28の活動セグメントを新規追加するとともに,37の活動セグメントの位置・形状を変更した(産業技術総合研究所[課題番号 5002])。さらに,火山防災のために監視・観測体制の充実が必要な活火山(47火山)の地質図整備では,富士山地域の地質図を解説書付きで取りまとめ,印刷中とした。伊豆諸島,恵山で噴火履歴調査を引き続き実施し,御嶽山では調査を開始した(産業技術総合研究所[課題番号 5003])。

(5) 火山現象のモデル化

 全国の主な海岸部27点で運用しているGPS観測点において通年の観測を実施し,得られた成果(図1)について地震調査委員会,地震予知連絡会及び火山噴火予知連絡会に報告した(海上保安庁[課題番号 8004])。

4. 研究を推進するための体制の整備

(2) 研究基盤の開発・整備

 全国地震カタログの作成において,「高感度地震観測データの処理方法の改善に関する報告書」(平成26年2月地震調査委員会,以下「報告書」)を踏まえた震源の決定等の処理の改善については,これまでのトリガー方式の地震検知に加えて新たな地震検知手法を取り入れ,自動処理による地震検出結果を検測処理の基本とする作業手順を確立した。新たな作業手順(図2)では,まず,自動処理による地震の規模の推定値が,あらかじめ定めたMth以上であれば,これまでと同様に人手により精査した結果を地震カタログに登録する。一方,Mth未満では波形を確認したうえで地震の相・振幅が正しく検測され良好に震源決定されていれば自動処理結果をそのまま,そうでなければ人手による簡易的な検測作業を行った結果を登録する。さらに,震源が決まらない場合も,地震検知の情報は登録する。波形を確認した結果,地震ではないと判定した場合には登録はしない。こうした作業手順により,必要十分な品質を確保しつつ,地震として検知されたイベントはもれなく登録されることになり,地震カタログの充実が今後図られる(気象庁[課題番号 7019])。
 地震観測,地殻変動観測,潮位観測,全国の火山観測を継続的に進め,観測機器の雷災対策や回線のデジタル回線化が進めた(気象庁「課題番号 7014, 7015, 7016, 7017」)。柿岡,女満別,鹿屋,父島の4地点に,祓川を加えた5観測点における地磁気4成分連続観測データを,引き続き統一的な形式に整理し,月毎に地磁気観測所データベースに登録,公開するとともに,国際的なデータセンターに提供した。さらに,活動的な火山を対象とする全磁力精密観測データについて,継続してデータベースに登録した(気象庁[課題番号 7018])。
 全国のGNSS連続観測点網(GEONET)による地殻変動連続観測が実施し,日本列島全域の地殻変動・火山活動のモニタリングを着実に行った。地震については,東北地方太平洋沖地震後の継続的な余効変動,2015年5月13日に発生した宮城県沖の地震(M6.8),2016年1月14日に発生した浦河沖の地震(M6.7)等に伴う地殻変動を検出した。また,2014年半ば頃からの紀伊水道周辺におけるプレート間ゆっくり滑り(スロースリップ)現象に伴う非定常的な地殻変動を検出した。火山についても,硫黄島,箱根山周辺(図3),桜島周辺等における火山活動に伴う地殻変動を検出する等,防災や地震発生・火山活動のメカニズムに関する研究等に寄与した(国土地理院[課題番号6005])。全国25験潮場の潮位連続観測を安定的に実施し,観測データをホームページで公開した(国土地理院[課題番号 6006])。地殻変動の観測結果(GNSS,水準,験潮)を地殻活動総合解析システムのデータベースに追加した(国土地理院[課題番号 6011])。
 電子基準点毎の固有の誤差について,搬送波位相観測値に見られる位相残差を用いてモデル化・可視化する手法を開発し,全国の電子基準点で最新の位相残差データを整備した(国土地理院[課題番号 6012])。また,重力測量については,南海・東南海地域を含む全国で基準重力2点の絶対重力観測,一等重力点等181点で相対重力観測を実施し,日本重力基準網の基準となる重力値を得るとともに,重力値の時間的な変化を把握した。地磁気測量については,鹿野山測地観測所,水沢測地観測所,江刺観測場及び全国11点の地磁気連続観測点で地磁気連続観測を実施した.また,地磁気連続観測点10点及び一等磁気点2点で地磁気絶対観測等を実施し,日本全国の地磁気の時間変化及び地理的分布を把握した。さらに,富士山中腹において,全磁力の連続観測を実施した(国土地理院 [課題番号 6007])。
 だいち2号のSARデータを用いて,北方四島を含む国土全域を対象にSAR干渉解析を行い,複数の活火山において変動を検出した。箱根山大涌谷周辺では,2015年4月下旬からの火山活動の活発化に伴い,5月から9月まで高頻度に観測されたデータをもとに,大涌谷内の直径200m程度の範囲における変動の時間変化を捉えた(図4)(国土地理院[課題番号 6008])。だいち2号から標準的に処理が可能となったScanSARモードを用いたSAR干渉解析により,2015年4月25日に発生したネパールの地震(Mw7.8),同年9月16日に発生したチリの地震(Mw8.3),同年12月7日に発生したタジキスタンの地震(Mw7.2)に伴う広域の地殻変動を検出することに成功した(図5)(国土地理院[課題番号 6013])。
 火山土地条件図「秋田駒ヶ岳」の数値データの整備及び「秋田焼山」の火山土地条件調査を実施した(国土地理院[課題番号 6009]).また,砺波平野断層帯とその周辺「高岡」,三峠・京都西山断層帯とその周辺「舞鶴」「綾部」,山崎断層帯とその周辺「北条」「高砂」,雲仙断層群とその周辺「雲仙」,人吉盆地南縁断層とその周辺「人吉盆地」7面の都市圏活断層図を整備・公開するとともに,森本・富樫断層帯,綾瀬川断層 ,山崎断層帯,菊川断層帯の調査を実施した(国土地理院[課題番号 6010])。
 海上保安庁,国土交通省水管理・国土保全局及び港湾局,国土地理院,気象庁が連携し,インターネットによるリアルタイム験潮データの公開を実施した[課題番号 8005],沿岸海域での海底地形の調査を実施した(図6)(海上保安庁[課題番号 8006])。
 Hi-Net, F-net, Kik-net など基盤的地震観測施設を安定的に運用した。日本海溝海底地震津波観測網(S-net)の構築に関して,宮城・岩手沖システム(岩手県~宮城県),茨城・福島沖システム(宮城県~茨城県)の敷設工事を実施した。2016年2月現在,釧路・青森沖システム(北海道~青森県)の敷設工事を実施中である。また,Double-Differnce法を用いた日本全国高分解能再決定震源カタログ(JUICE)の第一版を構築した(防災科学技術研究所[課題番号 3004])。
 東アジア地域を対象として,地質とテクトニクス,活断層,過去の地震の震央と震源域の分布,主要地震の犠牲者とその要因,津波分布と最大波高,完新世火山の分布,カルデラ・大規模降下火山灰・大規模火砕流の分布,主要火山の犠牲者とその要因について取りまとめた(図7)(産業技術総合研究所[課題番号 5009])。
 長期連続データ解析のための大規模解析システムを構築し,利用に関するルールを策定した(東京大学地震研究所[課題番号 1518])。研究成果共有システム構築にむけてウェブサイトを立ち上げた(http://evrrs.eri.u-tokyo.ac.jp)(図8)。また,ETAS解析ツールにおいて,1)地震活動の予測と観測との比較,2)地震活動度が高い期間の空間領域把握,3)地震活動変化点解析,4)ETASパラメータの誤差評価の4点について機能強化を実施した(東京大学地震研究所[課題番号 1519]).多項目データの全国リアルタイム中通一元化解析の環境整備として,地殻変動連続観測等データの全国流通・公開を継続した(北海道大学[課題番号 1009]).また,阿蘇の火山研究センターで保管されているウィーヘルト地震計の1933年~1940年に記録された煤書き記録2,000枚をスキャンして,ハードディスクに格納した(図9)(京都大学防災研究所[課題番号 1915])。

これまでの課題と今後の展望

 データ・データ流通部会におけるこれまでの課題は,各研究機関において蓄積されているそれぞれのデータ及びデータベースを有機的に統合化することである。前計画においては,関連機関が構築しているデータ・データベースの所在情報をまとめたポータルサイトを構築し,一定の成果が得られた。さらに,本計画においては,研究成果共有システムの開発・構築も着実に進める必要がある。ただし,データベースの統合化や研究成果共有システムの構築はなかなか捗っていないのが現状である。この要因の一つとして,データベース構築そのものが研究成果と同様の評価がしにくいこともあげられるのではないかと考えている。また統合データベースの構築のためには,複数の基礎データベースの高度な理解が必要であり,課題担当者レベルの枠を超えているともいえるのではないかと考えている。
 一方,基礎データベース可視化システム,解析ソフトウェアの整備・解析基盤の開発,史料・考古のデータベースにおけるGISへの導入などは,着実に進められる項目であるので,今後はこれらの課題へ積極的に取り組むべきであろう。さらに日本海溝海底地震津波観測網(S-net)が稼働をはじめており,それらのデータを効率的に全国流通させる次世代流通システムの開発も必要であろう。

成果リスト

Ishizuka, O., R. N. Taylor, N. Geshi, T. Oikawa, Y. Kawanabe, and I. Ogitsu, 2015, Progressive mixed-magma recharging of Izu-Oshima volcano, Japan: A guide to magma chamber volume. Earth Planet. Sci. Lett., 430, 19-29.
及川輝樹, 2015, 噴火災害から学ぶ-御嶽山2014年噴火. 日本の科学者, 50, 230-235.
高田亮, 2015, 将来を物語る激動の噴火史-宝永噴火後300年の富士山(静岡県・山梨県)-.地学雑誌, 124, 69-78.
山元孝広, 2015, 富士山の噴火史と火山災害. 電気評論, 100, 18-21.
溜渕功史・森脇健・上野寛・束田進也,2016,ベイズ推定を用いた一元化震源のための自動震源推定手法,験震時報,79,1-14.
気象庁,地震月報(カタログ編)
鶴岡睦・鈴木博樹・九谷昌治・中舘明,2015,潮位・津波観測システムについて,測候時報,82,特別号,105-123.
阿部聡・宮原伐折羅,2015,主成分分析を用いた日本周辺の地磁気変化モデルの開発,国土地理院時報127集.
阿部聡・宮原伐折羅,2015,日本の磁気図作成における地磁気値の空間補間手法の検証,国土地理院時報127集.
山田晋也・三浦優司・山中雅之・仲井博之・和田弘人,2015, 「だいち2号」を利用した宇宙からの火山活動の監視,平成27年度国土交通省国土技術研究会論文集,248 - 252.
山田晋也・三浦優司・和田弘人・仲井博之・山中雅之・撹上泰亮・上芝晴香・矢来博司・小林知勝・森下遊,2016, だいち2号SAR干渉解析によって検出された箱根山大涌谷周辺の地表変動,国土地理院時報,128.
三浦優司・和田弘人・仲井博之・山中雅之・山田晋也・撹上泰亮・上芝晴香・矢来博司・小林知勝・森下遊,2016,だいち2号を活用した口永良部島新岳噴火に伴う地表変位の検出,国土地理院時報,128
Kobayashi, T.,Y. Morishita, and H. Yarai, 2015, Detailed crustal deformation and fault rupture of the 2015 Gorkha earthquake, Nepal, revealed from ScanSAR-based interferograms of ALOS-2, Earth Planets Space, 67:201, doi:10.1186/s40623-015-0359-z.
Kimura, T., H. Murakami, and T. Matsumoto, 2015, Systematic monitoring of instrumentation health in high-density broadband seismic networks, Earth, Planets and Space, 67:55, do:10.1186/s40623-015-0226-y.
宝田晋治,J. Bandibas,and O. Prambada, 2015, 日本及び世界の火山データベースの現状と展望.火山,60,125-142.
宝田晋治・G-EVER推進チーム, 2015, G-EVER火山災害予測支援システム,アジア太平洋地域地震火山災害情報図プロジェクトによる火山災害軽減.Proceedings of the international Meeting on Eruptive History and Informatics,2, 44-47.
Takahashi,H., 2015,Proposal for robust monitoring of catastrophic tsunami using onshore strain and tilt geodetic sensors, Jour. Disaster Res., 10, 770-776.

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(研究開発局地震・防災研究課)

-- 登録:平成29年07月 --