4.まとめ

 「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」の2年目に当たる平成27年度に発生した主な災害として,2015年5月29日の口永良部島における全島民の島外避難を伴う火山噴火災害が挙げられる。口永良部島では2014年の噴火以降継続的な観測が行われていたため,噴火前の島全体の膨張や地震活動・地熱活動の活発化が観測されるなど,噴火の先行現象を捉えていた科学的意義は大きい。この噴火前後の諸現象の観測により得られた記録は,その後の噴火警戒レベルの引き下げ等にも活用された。この他,災害には至っていないものの,桜島では2015年8月のマグマ貫入イベントに伴い噴火警戒レベル4(避難準備)まで引き上げられるなど活発な火山活動が観測され,今後も継続的な観測研究が求められる。東北地方太平洋沖地震とそれに伴う東日本大震災以降,継続的に行われた観測や実験,調査等により明らかとなった研究成果が数多く挙げられ,それらのうち代表的な成果を冒頭に報告した。今後も同地震に伴う余震活動や余効変動等の地殻活動が継続すると見られるため,引き続き観測研究が必要である。また平成27年度は我が国の災害に限らず,甚大な被害の出た2015年ネパール地震に関して,国際共同研究・国際協力が進められた。以上のような災害誘因に関しての理解を深めることが防災力向上の方策の一つであり,防災・減災へ貢献することができる。
 本研究計画は,前計画では不足していた工学や人文・社会科学分野の研究者の参加による学際的研究の推進が特徴である。平成27年度には南海トラフ巨大地震に関する総合研究,火山噴火災害史などの学際的研究集会が開催された。また,地震・火山噴火に関連する史料・考古データの収集と整理が進みつつある。近代的観測装置により計測された記録のみならず,このような歴史的な災害情報を危険の想定へ活用していくことが災害軽減のために必要である。


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(研究開発局地震・防災研究課)

-- 登録:平成29年07月 --