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1(3)火山

「火山」計画推進部会長 大倉敬宏(京都大学大学院理学研究科)
副部会長 野上健治(東京工業大学火山流体研究センター)


火山噴火による災害を軽減するためには,火山噴火現象を解明すること,火山噴火の発生の場所・規模・時期を予測すること,および火山噴火現象の発展段階に応じた災害の推移を予測することが重要である。「火山」計画推進部会では,発災の原因である火山噴火を科学的理解に基づき予測する手法の開発をすすめるとともに,火山噴火予測の基礎となる火山噴火の仕組みを自然科学的に解明する研究を推進している。そして,これらの研究を支える観測手法の開発および体制の整備も主たる推進内容の一つである。

1.地震・火山現象の解明のための研究

(1)地震・火山現象に関する史料,考古データ,地質データ等の収集と整理

ウ. 地質データ等の収集と整理

火山現象とそれに伴う災害を長い時間スケールにわたって正確に把握するために,岩石資料や地質調査データなどの分析を行うことが重要である。そこで,東京大学地震研究所([課題番号:1502])は,約3万年前に発生した姶良カルデラ噴火の前半を構成する大隅降下軽石,妻屋火砕流の噴出物を収集し,その分析を行った。その結果,噴火前のマグマ溜り上部の深さは4-5kmであったことがわかった。これは従来考えられていた姶良カルデラ噴火のマグマ溜り深度の見積もり(7-10km)よりも浅く,歴史時代の桜島噴火の噴出物のマグマ溜りの環境とも大きく異なっている。このことは,次の姶良カルデラ噴火に至る過程を考察する上で非常に重要である。

(2)低頻度大規模地震・火山現象の解明

ア.史料,考古データ,地質データ及び近代的観測データ等に基づく低頻度大規模地震・火山現象の解明 

低頻度で大規模な火山現象の発生過程や噴火現象を理解するためには,現在の火山学の知見と対比しながら,近代的観測データの解析,岩石・地質データの分析を行うことが必要である。この目的のため,1888年磐梯噴火・山体崩壊の文献調査と地質調査および1914年桜島噴火の観測データの再検討を開始した(北海道大学[課題番号:1001],京都大学防災研究所[課題番号:1902])。また,低頻度で大規模な火山現象であるカルデラ形成噴火に関するこれまでの研究の成果と課題を整理した(北海道大学[課題番号:1001])。姶良カルデラの約10万年間の噴出物の化学組成と記載岩石学を整理して噴火サイクルを定義したところ,姶良火山は互いにマグマ組成が異なる3つのサイクルからなり,姶良火砕噴火と前駆噴火の噴出物は第2サイクルに位置づけられることが明らかになった(図1)。また,摩周,支笏および洞爺など北海道のカルデラ火山について表層地質調査および物質科学的解析,比較研究のためのインドネシアのリンジャニ火山の物質科学的解析が行われている(北海道大学[課題番号:1001])。

(3)地震・火山噴火の発生場の解明 

ウ.内陸地震と火山噴火

マグマ溜まりや火道などの構造や物質科学的特性,火山周辺の応力・ひずみの時空間分布を明らかにし,火山噴火現象のモデル化の研究を進めるためには,地震・地殻変動観測や電磁気探査などを実施することが効果的である。この目的のため,蔵王山周辺で,地震・地殻変動,重力や地磁気の総合観測を実施している。その結果,長期的な山体膨張は検出されてはいないが,山体浅部の地熱流体活動に対応する消磁,重力の増加および長周期微動の活発化がとらえられている(東北大学[課題番号:1202])。また,阿蘇カルデラでは,遠地地震波形のレシーバー関数解析により中部〜下部地殻に地震波の低速度領域が検出された(図2)。一方,九重火山では深部構造を明らかにする目的で広帯域MT観測が実施され,データ解析が進められている(九州大学[課題番号:2201])。

(5)火山現象のモデル化

大規模な災害を引き起こす可能性があるマグマ噴火を主体とする火山,および噴火規模は小さいものの災害を引き起こす可能性が高い水蒸気噴火を主体とする火山それぞれに対し,火口近傍や火山周辺における多項目の観測や火山噴出物の解析から,先行現象とそれに続く噴火現象を把握し,それら諸現象のモデル化を行うことを目的とした研究が実施されている。

ア.マグマ噴火を主体とする火山

2009年後半以降活発なブルカノ式噴火活動が継続している桜島火山を対象として,地下のマグマの状態変化や今後の火山活動をモデル化するため,地震および地盤変動観測,重力測定,火山ガス放出量測定,噴出物の分析,火山体構造の変化抽出のための探査などが継続して行われている(京都大学[課題番号:1908])。前計画中に得られた各種地盤変動データの解析から,火山活動が活発化した2009年10月~2010年5月および2011年11月~2012年2月前後の地盤変動は,姶良カルデラ下約10kmのマグマ溜まり(図3のA)への供給量増加と,ここから北岳下4kmのマグマ溜まり(図3のK)へのマグマ移動,さらには南岳下約1kmのマグマ溜まり(図3のM)を経由したマグマ放出で説明出来ることが明らかになった。一方,2009年から2013年まで桜島の東部から北部において実施された反射法反復探査の結果,北岳の北東部の深さ約5kmにおいて,2009〜2011年に反射強度の増加その後の減少が検出されており,反射強度の増加は上述のマグマ移動により当該地域の地震波速度が低下したためであると解釈されている。また,2009年10月以降の噴出物に含まれるガラス中の二酸化ケイ素の組成は低下していることから,玄武岩マグマの関与が指摘されており,高温で新鮮な玄武岩質マグマの貫入がマグマ溜まりの速度低下を引き起こしたと考えられる。さらに火山灰に付着する塩素イオンと硫酸イオンの比も2009年10月以降のマグマ貫入期に対応して増大するなど,多くの観測量がこの時期のマグマ貫入を示している。
一方,昭和火口において発生する個々の爆発の直後には地盤の収縮が始まり,その変動速度は時間の経過とともに減速し停止する。Nishimura (1998)は,理想気体に満たされ,マグマ溜まりに繋がる火道の最上端の蓋が開口した場合のマグマ溜まり圧力の時間関数を提唱している。昭和火口の噴火に伴うひずみ変化は,火道の開口による深さ1kmと4kmのマグマ溜まりのいずれか,あるいは両方における圧力の時間関数によって説明できることが明らかになるなど,火山活動のモデル化への進展がみられる。
傾斜計,GNSSおよびInSAR解析により地殻変動を検出し,火山活動の評価やマグマ供給系のモデリングを行う研究も実施されており(国土地理院[課題番号:6002],気象庁[課題番号:7003,7004]),桜島での総合的な観測的研究の成果が生かされつつある。
噴火のモデル化を行う際には,マグマの挙動についての理論的及び実験的研究の成果を取り入れることも重要である。そのため東北大学([課題番号:1205])は,岩石組織解析に基づく火道浅部プロセスの推定手法に関する研究を行った。その結果,2011年の霧島火山新燃岳噴火の噴出物の石基結晶のサイズ分布(Crystal Size Distribution: CSD)に,サブミクロンサイズのナノライト領域において,三つの異なる爆発性を持つ噴出物(サブプリニー式軽石,ブルカノ式軽石・本質石質岩片)ごとに,それぞれ異なるナノライトの鉱物組み合わせが存在することが見いだされた(図4)。一方,それよりも大きいマイクロライト領域では,これらの噴火様式の間で,表面現象(爆発性)が全く異なるにもかかわらず,互いに区別ができなかった。これまで,サブプリニー式と溶岩噴火では,マグマ溜まりから火道浅部までは,マグマはほぼ共通した上昇減圧過程を経過しており,それに続く爆発性は,火道浅部での圧力の解放過程の相違で決定されるというモデルが提唱されていたが(Castro and Gardner (2008))が,この研究はこのモデルをさらに発展させ,火道浅部~地表付近での噴火様式の分岐に対応した,結晶作用の相違を初めて発見したものである(図5)。その他,北海道教育大([課題番号:2925])は,十勝岳1962年噴火の噴出物と1988-89年噴火の噴出物の微細組織の解析を行い,石基の発泡度やマイクロライト組織,ガラス組成の違いから,マグマ供給系におけるマグマ混合の役割やマグマ上昇速度が二つの噴火で違っていたことを指摘している。このほか,桜島や阿蘇の火山灰の構成粒子組成の時間変化に関する研究や西之島火山のマグマの特性を明らかにするための噴出物の岩石学的解析も実施されており,進行中の噴火の噴出物を迅速に分析することで,火山活動の評価と予測に対して大きく貢献している(産業技術総合研究所[課題番号:5006])。
これまでに桜島の例で述べたように,マグマ噴火のモデル化のためには地球物理学的観測だけでなく,地球化学や岩石学的手法を用いた多項目の観測が必要である。そのため,伊豆大島,霧島,有珠,浅間山など他の火山においても多項目観測による比較研究が行われている(東京大学地震研究所[課題番号:1508])。

イ.熱水系の卓越する火山 

熱水系の卓越した火山で発生する水蒸気噴火や小規模なマグマ水蒸気噴火の準備過程に関連する先行現象の事例を多数集め,それらの現象の理解を深めるため,十勝岳・吾妻山・草津白根山・阿蘇山・口永良部島を対象とした全国連携の比較研究が開始された(北海道大学[課題番号:1003])。5火山共通の観測基盤構築のため,今年度は十勝岳に広帯域地震計・傾斜計・プロトン磁力計などが設置され,高周波微動振幅の変化に対応する全磁力変化など,熱水活動を示唆する変化がとらえられつつある。高密度の地球物理観測は開始されたばかりであるが,同火山では熱水系由来噴火の履歴解明のための噴火堆積物の露頭調査と物質分析も行われ,ヌッカクシ火口域では,約3,000年前の山体崩壊を伴う活動のあと,約500年前までの間に少なくとも5回の水蒸気噴火が発生したことが明らかになった。
吾妻山では大穴火口の周辺2点においてプロトン磁力計による全磁力の連続観測が開始され,大穴火口周辺での継続的な消磁傾向を示す地磁気変化がとらえられている。同火山でも噴火堆積物の露頭調査と物質分析が実施され,吾妻小富士の主要活動期である約6,000年前から5,000年前までの堆積物の観察からは,マグマ噴火主体で始まった吾妻小富士の噴火活動の後半では,水蒸気噴火とブルカノ式噴火が交互に発生していたことなど,今後の同火山の噴火シナリオを構築していく上で重要な噴火履歴が明らかになった。
草津白根山では,2014年3月から湯釜火口周辺域で膨張性の地盤変動が始まり,4月に噴気ガスのH2S濃度の大幅な減少,5月に地震活動が活発化,5 月から6 月にかけて小規模ながら湯釜地下での熱消磁とみられる変化が観測されるなど,高温の火山性流体の供給が示唆される状態が継続している(東京工業大学[課題番号:1601],気象庁[課題番号:7005])。この草津白根山についても,地質調査と岩石学的分析が行われ,約4,900年前より新しい層に多数の小規模な噴火堆積物が発見された。それらのいくつかには,水蒸気噴火からマグマ噴火への遷移に起因する堆積物が確認されるなど,同火山の今後の活動を予測する上で,また他の熱水系卓越型火山との比較という観点からも重要な結果が得られている(山梨県富士山科学研究所[課題番号:2924])。
箱根山の大涌谷では,これまでの研究からガスの成分,特にCO2濃度が群発地震の発生と関連していることが明らかとなっている(Ohba et al., 2011)。2014年10月の火山性地震の増加の際にも,噴気中のCO2/H2Oの上昇が観測されている(東海大学[課題番号:2922])。
全国連携の比較研究において対象とした5つの火山は,いずれも平成26年度中に活動が活発化し,気象庁の噴火警戒レベルが2または3に引き上げられた。その中でも,口永良部島と阿蘇山は噴火にまで至った。以下に口永良部島と阿蘇山での噴火に至る経緯を記す。
口永良部島では,2014 年8 月3 日にマグマ水蒸気噴火が発生したが,約15年前から各種の観測量に異常な変化があらわれていた。1999 年から数年おきに発生する群発地震活動とそれに連動する地盤変動と火道浅部の蓄熱を示唆する全磁力の消磁である。その後,噴気活動の高まりや二酸化硫黄放出量が増えるなどの異常が表面現象にも表れるようになった一方で,数ヶ月から数年の時間スケールでは地震回数や地盤膨張率に大きな変化は見られなかった。このため,異常がさらに進行していることは認識できたが,噴火時期を予測するには至らなかった。しかしながら,火口近傍の傾斜計が噴火直前の約1 時間半前から火口の急激な隆起を捉えていた(図6),これは水蒸気噴火のリアルタイム警報への応用可能性につながる知見である(北海道大学[課題番号:1003],産業技術総合研究所[課題番号:5006])。
阿蘇山では,1993 年以来のマグマ噴火が2014年11月25日に発生した。これに先立ち,2008年ころからマグマ溜まりへのマグマ供給量増加を示す地殻変動が観測されていた。2013年9月には,二酸化硫黄の放出率増加とそれに対応する長周期微動の活発化と地殻変動が観測され,この後2013年1月の小噴火に至る時期に熱水だまり(火口下数100m)の温度上昇を示す磁場変化および比抵抗変化が観測された。さらに,マグマ噴火の1ヶ月前から長周期微動活動が過去最大級となり,火口直下150mの消磁を示す磁場変化がとらえられるなど(図7),噴火シナリオ高度化に資する観測データが得られている(北海道大学[課題番号:1003],京都大学理学研究科[課題番号:1802],産業技術総合研究所[課題番号:5006])。

2.地震・火山噴火の予測のための研究

(4)事象系統樹の高度化による火山噴火予測

火山活動の推移を俯瞰的に理解してその予測を目指すためには,史料,考古データ,地質調査,火山噴出物の解析,地球物理観測の研究成果を多角的に取り入れ,可能性のある火山活動や噴火現象を網羅してその時系列を整理した噴火事象系統樹を作成することが重要である。本年度は,ここ数年間で活動が活発化した蔵王山の噴火事象系統樹を緊急的に作成した(北海道大学[課題番号:1004])。検討の結果,蔵王山の過去の噴火の特徴として,噴火活動に先駆けて熱水活動が継続・増大していく可能性があることが指摘された。またその活動の分岐の判断には,ガスや水の地球化学的観測を含めたモニタリングに加え,開口型火山であることから地殻変動観測が重要で,地震観測においては微動の周波数特性に注目することが重要である。これらは同火山の活動予測や今後の噴火警戒レベル導入にも活用される成果である(図8)。
事象系統樹の高度化には,噴出物の年代を正確に決定することも必要である。熊本大学は([課題番号:2921]),従来は溶岩試料に対して行われてきた古地磁気方位による年代決定法を,より適用範囲の広い火山灰試料に対して拡張することを目指し,伊豆大島の試料で予察的な実験を行った。
また,山形大学([課題番号:2923])は地質調査と火山噴出物の解析により,那須岳の噴火推移を明らかにした。那須岳最新活動期の6回のマグマ活動の大半は水蒸気爆発→ブルカノ式噴火→溶岩流出と推移した。しかし,約2,600年前の活動でのみブルカノ式噴火とともに火砕サージを伴うマグマ水蒸気爆発が発生したことが,その堆積物の特徴から明らかになった。このことは同火山の火山災害対策を講じる上で重要な成果である。
一方,火山活動の活発化や噴火の発生,噴火発生後の噴火規模や様式の急激な変化の予測を行うためには,これまでの火山学的知見や本計画の成果をもとに,観測データの特徴,火山噴出物の解析などから,事象分岐の条件や論理を導き出すことも不可欠である。この目的のため,多項目観測が中長期に実施されている,雲仙岳,モンセラート島(スーフリエール・ヒルズ),シナブン火山,伊豆大島,三宅島,霧島山新燃岳を対象として,噴火事象と観測量を時系列化し,噴火現象の分岐前に共通して現れる観測量をまとめた。その結果,マグマ噴火開始前には中期的な全磁力等の異常が,水蒸気爆発からマグマ爆発への分岐前には山体膨張,地震活動と火山性ガスの活発化などが観測されており,いずれにも事象の分岐には新たなマグマ供給が強く関与していることが明らかとなった(東北大学[課題番号:1208])。

4.研究を推進するための体制の整備 

(1)推進体制の整備

観測研究の成果が防災・減災に効果的に役立つためには,行政機関等の関連機関との連携の下に,適切な計画推進体制を整備する必要がある。そのため気象庁は,3回の火山噴火予知連絡会(定例会),平成26 年8 月3 日の口永良部島の噴火および9 月27 日の御嶽山の噴火に対応して噴火予知連絡会(拡大幹事会)を開催した。ここでは,火山活動の評価・検討が行われ,その検討結果はHP などで公表されている(気象庁[課題番号:7013])。

(2)研究基盤の開発・整備

ア.観測基盤の整備

イ.地震・火山現象のデータベースとデータ流通

ウ.観測・解析技術の開発 

長い時間スケールをもつ火山現象の理解とその予測には,その基盤となる観測網の維持・拡充を進めるとともに,データの継続的取得と膨大なデータの効率的利用が重要である。また,海域における観測体制の強化,各種観測を火口近傍で安全に実施する技術の開発,人工衛星を利用したリアルタイム火山観測システムの高度化,航空機搭載型センサーを用いた観測技術の開発も必要である。
海上保安庁([課題番号:8003])は,西之島の火山活動の航空機による定期的な目視観測および熱計測を行い,さらに衛星画像を活用した監視観測を継続している。一方,海底火山活動に伴って発生する変色域の規模や色調など,海面上に現れる異変は海域火山活動の把握のために非常に重要なシグナルであるが,Silicicなマグマ活動の場合,熱水中のAl濃度は高くなってもFe濃度が高くならないためにその色調には大きな変化は期待できない可能性がある。このような場合には,高温の火山ガスの主要成分であるが海水中には僅かにしか含まれないFの沈殿物量が活動度指標の一つになることが,沈澱生成実験から明らかにされた(東京工業大学[課題番号:1602])。
東京大学大学院理学研究科([課題番号:1403])は,口永良部島,御嶽山火山噴火に対応するため,二酸化硫黄簡易型トラバース測定装置の改良と高度化および解析ソフトの改良を行った。改良されたガス放出率測定器は屋久島町営フェリーに実装され,口永良部島火山の二酸化硫黄放出率モニタリングに活用された。そして,2014年8月3日以降のガス放出量増加がとらえられ,マグマ噴火への移行を判断する観測量として活用されている。その他,Lバンド航空機SARに火山観測のためのプログラム開発(北海道大学[課題番号:1008]),航空機搭載型光学センサーの開発(防災科学技術研究所[課題番号:3005]),衛星赤外画像を用いたサリチェフ2009 年噴火の活動推移の解析(東京大学地震研究所[課題番号:1520]),小型絶対重力計の開発と試験観測(東京大学地震研究所[課題番号:1506])が行われている。これら機器開発の課題の多くは,火山噴火事象の分岐条件や論理の構築のために分岐前に現れる物理量の変化を検出することを上位目標としており,たとえば宇宙線(ミューオン)を利用した火山浅部透視技術においては,活動中の火山における観測を目指して,観測射程の延長と時間分解能の向上が行われている(東京大学地震研究所[課題番号:1523])。

これまでの課題と今後の展望

「火山」計画推進部会では,火山噴火の事象分岐の条件・論理を明らかにし,事象系統樹の高度化することで,発災の原因である火山噴火を予測する(東北大学[課題番号:1208])ことを上位目標にすえ,低頻度で大規模な現象を含む火山噴火現象および発生場の解明,噴火のモデル化,観測手法の開発および体制の整備に関する研究等を推進している。
このような状況のもと,2014 年9月27日に発生した御嶽火山の噴火では,死者・行方不明者が63名となる災害がもたらされた。亡くなられた方のご冥福をお祈りするとともに,被災された方々,ご遺族に心よりお見舞い申し上げる。
本部会では,火口近傍を含む火山体周辺における地震観測,地盤変動観測や地球電磁気観測,物質科学的分析により,熱水系の卓越した5火山の比較研究(北海道大学[課題番号:1003])を開始したばかりであった。現状では水蒸気噴火や小規模なマグマ水蒸気噴火の予測は困難であり,噴火の準備過程に関連する先行現象の事例をできるだけ多く集めて,現象の理解を深めるべき段階にある。しかし,本計画では御嶽火山は熱水系の卓越した火山としての研究対象には含まれていなかった。本部会内の課題を整理し,2014年8月に噴火した口永良部島火山,御嶽火山,阿蘇火山を研究対象とした新規課題「水蒸気噴火後の火山活動推移予測のための総合的研究 −御嶽・口永良部・阿蘇−」を平成27年度から立ち上げる。御嶽火山を対象とした新規課題では,各火山において水蒸気噴火に至る過程で発生した地震・微動活動の変化,地殻・地盤変動,地磁気変化などを整理する。口永良部島火山で15年にわたる中期的噴火準備過程に見られた地盤膨張と全磁力変化などは,火道浅部に熱水系を有する火山に共通する可能性があり,他火山との比較を通じて検証していく必要がある。また,噴火直前に見られた火口の膨張と加速については,さらに観測事例を積み上げる必要がある。また,御嶽火山でどのような準備過程を経て噴火に至ったかを明らかにすることも非常に重要である。また,水蒸気噴火後の活動推移予測のため,これら三火山における活動推移の比較研究を行う。事例研究によると,水蒸気爆発からマグマ爆発への分岐前には山体膨張,地震活動と火山性ガスの活発化などが観測された例がある(東北大学[課題番号:1208])ことから,いずれの火山においても,地盤変動と火山ガスの観測は重要と考えられる。また,噴火中の火山で安全に観測実施可能な手法を開発していくことも重要である。また,熱水系の卓越する焼岳(京都大学防災研究所[課題番号:1909]),吾妻山(北海道大学[課題番号:1003])および九重山(九州大学[課題番号:2201])でも火口近傍の観測を強化する予定で,これらの火山での観測結果も新規課題の結果を踏まえて活動推移予測に資する。

成果リスト

相澤広記, 小山崇夫, 長谷英彰, 上嶋誠,2014,MT連続観測による桜島地下3次元比抵抗構造とその時間変化,桜島火山における多項目観測に基づく火山噴火準備過程解明のための研究,平成25年度分報告書,87-92.
Araya, A., H. Sakai, Y. Tamura, T. Tsubokawa, and S. Svitlov, 2014, Development of a compact absolute gravimeter with a built-in accelerometer and a silent drop mechanism, in Proc. of the IAG Symposium on Terrestrial Gravimetry: Static and Mobile Measurements (TGSMM-2013),, 98-104.
浜口博之, 植木貞人, 中道治久, 2014, 1888年磐梯山水蒸気爆発に関するノートー(3)1888年の水蒸気爆発論考に潜むジレンマー,火山,59, 287-298.
Harada, N., K.Katsuki, M. Nakagawa, A. Matsumoto, O. Seki, J.A. Addison, B.P. Finney,and M. Sato, 2014, Holocene sea surface temperature and sea ice extent in the Okhotsk and Bering Seas. Progress in Oceanography, 126, 242-253.
長谷川健, 中川光弘, 2014, 岩石学的特徴を利用した対比・同定の有効性:北海道東部,阿寒・屈斜路火山における大規模火砕流堆積物の露頭情報,火山,59.269-27.
橋本武志, 2015, 火山地磁気効果と水蒸気噴火, Conductivity Anomaly 研究会2015年論文集,75-81.
井口正人,2014,桜島火山の噴火活動 -2013年7月~2014年6月,桜島火山における多項目観測に基づく火山噴火準備過程解明のための研究,平成25年度分報告書,1-10.
井口正人,2014,2006年以降の桜島の火山活動の評価,桜島火山における多項目観測に基づく火山噴火準備過程解明のための研究,平成25年度分報告書,121-124.
井口正人, 平林順一,2014,桜島・黒神における温泉ガス濃度(2013年・2014年),桜島火山における多項目観測に基づく火山噴火準備過程解明のための研究,平成25年度分報告書,93-96.
井口正人, 為栗 健,2014,桜島昭和火口の2013年8月18日噴火について,京都大学防災研究所年報,57B,106-115.
井口正人, 太田雄策, 中尾茂, 園田忠臣, 関健次郎, 堀田耕平,2014,桜島昭和火口噴火開始以降のGPS観測-2013年〜2014年- ,桜島火山における多項目観測に基づく火山噴火準備過程解明のための研究,平成25年度分報告書,63-68.
稲倉寛仁, 成尾英仁, 奥野 充, 小林哲夫, 2014, 南九州,池田火山の噴火史.火山,59, 255-268.
小林哲夫, 2014, 日本の姶良カルデラとフィリピンのイロシンカルデラの噴火推移の比較研究.地学雑誌, 123, 739-750.
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松本亜希子, 中川光弘, 宮坂瑞穂, 井口正人,2014,桜島火山2006年以降の昭和火口噴出物の岩石学的特徴,-2012年5月〜2014年1月について-,桜島火山における多項目観測に基づく火山噴火準備過程解明のための研究,平成25年度分報告書,113-120.
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-- 登録:平成29年07月 --