4.まとめ

「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」の初年度である平成26年度には,地震や火山噴火による災害を考える上で重要な地震と火山噴火が発生した。平成26年9月27日御嶽山噴火は噴火の規模としては特別に大きなものではなかったが,火口付近に多くの観光客がいたために,戦後最大の火山噴火災害となった。これは,火山現象の規模と災害の規模が単純に比例するわけではないことを示し,災害に結びつく様々な要素を考慮した上で地震・火山現象の研究を行うことの重要性をあらためて認識することとなった。一方,御嶽山の噴火は規模が小さいものではあったが,災害軽減に結びつけられる可能性のあるいくつかの先行現象を捉えることができた。このような現象を確実に観測し,適切に評価して噴火予測につなげるための研究はますます重要になっている。平成26年11月22日に発生した長野県北部の地震は,これまでに知られていた活断層の一部が破壊された地震であり,本震発生の4日前から群発地震活動が観測され,本震発生前に震源域に臨時観測点を設置していた。これらは,地震の予測可能性を示す結果といえるが,その信頼性や確実性などの評価には至っていない。活断層の一部を破壊するような地震の長期的な予測の手法や,前震活動の評価手法など,地震発生予測を実現するための課題は多い。

本計画では,地震・火山現象の解明と予測のための研究を行ってきた理学研究者に加え,史料や考古データに基づく近代観測以前の地震・火山噴火の解明や,地震・火山に関する研究成果を災害軽減に活用するために,工学や人文・社会科学の研究者も参加し,総合的,学際的な研究を推進する。平成26年度には,複数の研究分野が合同で研究集会を行うなど,具体的な取り組みがいくつか始まっている。歴史地震に関するデータベースの構築の開始や,南海トラフ巨大地震のリスク評価に関する取り組みなどは,本計画のような枠組みではじめて実現可能になったものである。今後,これら研究分野の研究者の協力をより強固なものとして,地震や火山噴火による災害の軽減に貢献できる研究を推進していかなければならない。


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-- 登録:平成29年07月 --