ここからサイトの主なメニューです

2.平成26年に発生した顕著な地震と火山噴火

2-1.平成26年9月27日御嶽山噴火

平成26年(2014年)2014年9月27日の御嶽山噴火は,火山噴火の規模としてはそれほど大きなものではなかったものの,紅葉期の週末昼に突然発生したこともあり,戦後最大の犠牲者を出した。このような痛ましい火山災害の軽減に生かせるように,今回発生した水蒸気爆発の科学的な理解と予測技術の開発を進めてきた。
これまでのデータ解析によると,いくつかの噴火の先行現象が検知されている。火口から約3kmにある気象庁の傾斜計データに降水補正等を行うことにより,半月ほど前から火口方向隆起の傾斜変動が検出された。この山体変形の発現は火山性地震活動の活発化とほぼ同期しており,火口浅部に圧力が蓄積され始めたことが示唆された。噴火開始の11分ほど前には火山性微動が観測された(図1)。さらに,約7分前から,火口が隆起するような急激な傾斜変動が起こり,噴火直前までに火口直下浅部で最大38万m3の体積膨張が起きたと推定された。この傾斜変動の発現とほぼ同時に,火山性地震の発生域が若干浅部へ移動したことが,高精度震源決定の結果から明らかとなった。一方,噴火直前の火山性微動は,その振幅の空間分布から,震源が深くなる方向に移動している可能性がある。このように,地震,地殻変動に,噴火に先行する現象が捉えられていた。しかしながら,傾斜計記録は山麓の1点に限られ山体変形も微小であったこと,噴火前の地震活動がこれまでにしばしば使われるモデルと必ずしも一致していなかったこと,また,噴気活動など表面現象に特段の変化がなかったこと,などから,半月ほど前からの火山活動から噴火発生の危険性を予見できなかった。
今回の御嶽山の噴火は,山麓で採取した火山灰のほぼすべてが変質岩片からなり,マグマ物質を含まないことから,水蒸気爆発と推定された。映像解析などから,火砕流は,山体西および南側へ流下し,南側の地獄谷沿いにはその長さが約2km となったことがわかった。また,噴煙の高度は海抜7-8kmと推定された。気象レーダーを用いた噴煙高度の解析や,その結果を基にした降灰域予測を試み,現地調査データや花粉センサーネットワーク時系列データと比較した。また,ひまわりによる画像から,噴煙上部は火山灰よりも水蒸気が多く含まれていたと推察された。
噴火に伴う火山浅部の活動も調べられた。火山性地震の震源は,火口列の分布とよく一致する北北西-南南東方向に約500m,鉛直方向に約1kmに広がる面上に分布した。また,噴火前は東西方向に主張力軸を持つ正断層型地震が卓越する一方,噴火後は東西方向に主圧縮軸を持つ逆断層型地震が卓越することがわかった。人工衛星によるSAR干渉画像解析から,噴火を挟む8月18日から10月13日の期間に,地獄谷の噴火口付近に10cmを超える隆起あるいは西進があり,火口直下の極浅部にある鉛直クラックの開口で説明できる可能性があることがわかった。また,航空機を使ったSARやレーザによる反射強度画像等から,新たに形成された噴火口の推定が行われた。
以上のように,御嶽山の噴火は,水蒸気爆発という小規模な噴火ではあったものの,いくつかの噴火先行現象を検知することができた。噴火前に噴火警報を出すには至らなかったものの,高感度の地盤変動観測点を複数設置することなどを始め,各種観測の稠密化や迅速なデータ解析技術開発を行うことにより,災害軽減に資する事前情報発信ができる可能性があることがわかった。

2-2.平成26年11月22日長野県北部の地震

2014年11月22日22時8分頃,長野県北部を震源とするマグニチュード(M)6.7(モーメントマグニチュードMw6.2)の地震が発生した。白馬村では,この地震発生の4日前から,M3を最大規模とする小さな群発地震活動があったため,本震発生の2日前から震源域直上に臨時観測点を設置していた。そのため,本震や余震分布を精度良く決定することが可能になった。本震前の地震活動は,本震破壊開始点のやや北で始まり,約7時間でその主な活動は終了した。その後も若干の地震活動があり,その震源は徐々に南下していき,その近くで本震が発生した。余震分布はおおむね東傾斜である。この東傾斜の断層面上の余震だけを抜き出すと,その分布には粗密が見られる。本震直下には,3×10kmの広がりを持つ余震のほとんど起きていない領域があるが,これは強震動を引き起こした破壊領域にほぼ一致する(図2)。この地震により多数の家屋の倒壊等の被害があったが,迅速な救助などにより死者はなかった。
だいち2号 のデータを用いたSAR 干渉画像解析により,白馬村を中心とする東西約30km,南北約30km の地域において,この地震に伴う地殻変動が検出された。GEONET による地殻変動データも用いて震源断層モデルの構築を行ったところ,東に傾き下がる断層面上で,左横ずれを含む逆断層運動が推定された。本震破壊域は,水平方向に約20km,深さ方向に約10kmであった。
この地震の発生に伴い,長さ約9kmにわたって地表地震断層が出現した。これは,余震分布の東傾斜の面を地表へ外挿する位置に対応している。本地震は南北方向に走る東傾斜の逆断層である神城断層が活動したもので,神城断層は変動地形学的な手法によって詳細活断層図が作成されていた。地表地震断層の位置,変位様式,変位量を現地調査し,既存活断層線との関係を考察したところ,地表地震断層の多くは東上がりの成分を持ち,既存の活断層の位置と概ねよく一致していた。糸魚川-静岡構造線北部では,断層変位地形から算出された平均変位速度分布に基づいて,同区間が一括して活動した場合のMwは約7.5と推定されているが,今回の地震は,この様な大地震よりも規模の小さな地震がより短い区間で発生したものである。発生が想定される大規模地震と実際に発生したより中小規模地震との関係を検討する必要があり,長大な活断層について,活動履歴以外の情報に基づいて地震を起こす領域を分割する方法を検討する必要がある。
この地震は,既知の活断層の一部が活動したものであり,本震に先行して群発地震活動が発生した。地震の長期的予測を改善するためには,長大な断層の一部が破壊される地震の評価を行う手法の開発,短期予測のためには地震活動評価手法の改善が必要であることをあらためて示した。

お問合せ先

研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)

-- 登録:平成29年07月 --