1.はじめに

「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」(以下,「本研究計画」という。)は,科学技術・学術審議会において平成25年に建議され,平成26年度から5か年計画として実施されている。本研究計画は,平成23年の東日本大震災の発生を受け,これまでの地震及び火山噴火予知のための観測研究計画の方針を見直し,地震発生・火山噴火の予測を目指す研究を継続しつつも,地震・火山噴火による災害誘因の予測の研究も組織的・体系的に進め,国民の生命と暮らしを守る災害科学の一部として,以下の4項目を柱として計画を推進することとなった。
1.地震・火山現象の解明のための研究
2.地震・火山噴火の予測のための研究
3.地震・火山噴火の災害誘因予測のための研究
4.研究を推進するための体制の整備

上記項目のうち,1は地震・火山噴火の発生予測や地震・火山噴火に伴う地震動,津波,火山灰,溶岩の噴出などによる災害に備えるための基本として重要である地震・火山現象の科学的解明のための研究を行うものであり,次のような中項目に分けられている。
(1)地震・火山現象に関する史料,考古データ,地質データ等の収集と整理
(2)低頻度大規模地震・火山現象の解明
(3)地震・火山噴火の発生場の解明
(4)地震現象のモデル化
(5)火山現象のモデル化

2は,1で得られた科学的理解に基づき地震と火山噴火の予測を目指した研究を行うものであり,次のような中項目に分けられている。
(1)地震発生長期評価手法の高度化
(2)モニタリングによる地震活動予測
(3)先行現象に基づく地震活動予測
(4)事象系統樹の高度化による火山噴火予測

3は,地震・火山噴火が引き起こす地震動や津波,火山灰や溶岩の噴出などの災害誘因を予測するための研究を行うとともに,自然・社会の脆弱性である災害素因と災害誘因の結びつきを考慮して地震・火山現象による災害事例や災害発生機構を研究し,地震・火山に関する情報を災害軽減に利用するための方策を研究するものであり,次のような中項目に分けられている。
(1)地震・火山噴火の災害事例の研究
(2)地震・火山噴火の災害発生機構の解明
(3)地震・火山噴火の災害誘因の事前評価手法の高度化
(4)地震・火山噴火の災害誘因の即時予測手法の高度化
(5)地震・火山噴火の災害軽減のための情報の高度化

4は,計画全体を組織的に推進する体制の整備や,基礎的な観測体制の強化を図るものであり,本研究計画全体に関わる観測・解析技術の開発や,本研究計画で得られるデータや研究成果に関するデータベース等の研究基盤の開発・整備が含まれ,次のような中項目に分けられている。
(1)推進体制の整備
(2)研究基盤の開発・整備
(3)関連研究分野との連携の強化
(4)研究者,技術者,防災業務・防災対応に携わる人材の育成
(5)社会との共通理解の醸成と災害教育
(6)国際共同研究・国際協力

平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震(以下,東北地方太平洋沖地震という),南海トラフの巨大地震,首都直下地震,桜島火山噴火については,災害科学の発展に着実に貢献できることや,発生した場合の社会への影響の甚大さから,上記4項目を含む総合的な研究として優先して推進することとなっている。

本研究計画は,国立大学法人等,国立研究開発法人,独立行政法人,政府機関1)が策定した138の実施計画(個別課題)及び公募による23の実施計画(個別課題)からなっている。平成26年度の個別課題の成果は,「平成26年度年次報告【機関別】」に取りまとめられている。これらの個別課題による成果を基に,本観測研究計画の項目別の成果を取りまとめたものが,本報告書「平成26年度年次報告【成果の概要】」である。
本報告書では,難解な学術用語をなるべく避け,平易な文章で学術的成果を記述することを心がけて作成した。しかし,専門用語を使用しなければ説明が冗長となる場合があるため,必要に応じて本報告書の後の「用語解説」2)のページで解説した。
また,参考資料編には[計画推進部会及び総合研究グループ等別の成果]を添付した。これは研究分野等の分野別に学術報告として成果を取りまとめたもの3)であり,より詳細な成果が報告されているので参考にされたい。



1):国立大学法人等(北海道大学,弘前大学,東北大学,秋田大学,新潟大学,東京大学,東京工業大学,名古屋大学,京都大学,鳥取大学,高知大学,九州大学,鹿児島大学,立命館大学,東海大学),国立研究開発法人(情報通信研究機構,防災科学技術研究所,海洋研究開発機構,産業技術総合研究所),独立行政法人(国立文化財機構),政府機関(国土地理院,気象庁,海上保安庁)
2):用語解説に掲載している用語に,*を付記している。
3):東京大学地震研究所には,本研究計画で立案された研究を推進する目的で地震・火山噴火予知研究協議会が設置され,同協議会には研究分野毎に効率的かつ調和的に研究を推進するために,8の計画推進部会と4の総合研究グループが設置されている。また,東京大学地震研究所と京都大学防災研究所は,地震・火山学の成果を防災研究に活用する目的で拠点間連携共同研究委員会を設置した。参考資料編の[計画推進部会および総合研究グループ別の成果]は,計画推進部会,総合研究グループ等,東京大学地震研究所と京都大学防災研究所の拠点間連携共同研究別に平成26年度の学術的成果を取りまとめたものである。
 

お問合せ先

研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)

-- 登録:平成29年07月 --