課題番号:1446
東京大学・地震研究所
超巨大地震のグローバル長期評価手法の確立
1.新規に研究課題を立ち上げる
5(2)イ.超巨大地震の長期評価手法
(2)地震・火山現象に関する予測システムの構築
(2-1)地震発生予測システム
ウ 地震活動評価に基づく地震発生予測
極値理論で用いられる超過確率(exceedance probability:変量がある値を超過する確率)が巨大地震の発生確率の算出に適用可能であるような定式化を検討する。次に、東北地方太平洋沖地震を含む日本のM8+クラスの地震及び、世界中で起きたM8+クラスの地震について、検討された定式化を用いて超過確率の算出を試みる。それらの結果を比較することから、テクトニクスの違う沈み込み帯やプレート内で起きる地震の長期予測が、統一的に理解できるかを考察する。
さらに長期予測の妥当性を検証するため、使用するデータの品質を評価し、データの全部またはその一部を取捨選択して使用できるように整理する。例えば、グルーバルな地震データでは、Global CMT解、USGS PDEカタログなどであり、日本のリージョナルなデータとしては気象庁一元化震源カタログ、Hi-net自動処理震源リスト、F-net広帯域地震観測網メカニズム解カタログなどである。また、超過確率に基づく予測結果を客観的に評価する手法を開発し、研究基盤を整える。
本課題を効果的に推進するため、他国のテクトニクスやグローバル・リージョナルデータに関する情報収集及びデータ交換、さらには研究成果の共有が必要であり、国際会議での講演などを通して、CSEPとGCSEPとの連携を強化する。
M9の超巨大地震である東北地方太平洋沖地震の再来周期が数百年かそれ以上であることが、これまでの研究により知られており、また、観測史上世界的にみてもM9クラスの地震は6例しかない。そのため、希な超巨大地震をもれなく調査することには限界があるため、その物理・化学的過程を完全に理解し、その知識で超巨大地震の予測可能性を議論するのは不十分である。このような場合、地震統計的観点からも検討して発生予測の精度を上げることに資する研究が必要である。従来のアプローチは、中・小地震の起こり方から外挿して、大地震の発生を予測することであり、大地震の発生様式(地震の規模別頻度分布)と中・小地震のそれとが相似であることが大前提となっている。しかし、相似性が成り立つことが必ずしも保証されているわけではない。
そこで本課題では、新視点のアプローチを導入する。それは、希にしか起きない現象を取り扱う極値理論の概念を活用することである。極値理論は、標本または確率過程の極値(最大値や最小値)の漸近挙動を問題にする。すでに大規模な洪水の発生確率や、ある地点における強風の年最大値の確率を評価して、対策を立てるために用いられている。そこで、この理論を用いてM9の東北地方太平洋沖地震をパイロットケースとして解析し、超巨大地震の発生確率を算出する方法を検討する。本課題では世界で起きた他のM9クラスの超巨大地震及び、世界・日本で起きたM8+クラスの巨大地震を評価して、テクトニクス環境の異なる場所で発生する地震の長期評価が統一的に理解できるかを明らかにする。その課題を通して、本当の将来を長期予測するグローバル手法の高度化に貢献することを目指す。
東京大学地震研究所:鶴岡 弘(主担当者)・平田 直・佐竹健治・石辺岳男
他機関との共同研究の有無:無
部署等名:東京大学・地震研究所
電話:03-5841-5691
e-mail:tsuru@eri.u-tokyo.ac.jp
氏名:鶴岡 弘
所属:東京大学・地震研究所・地震火山情報センター
電話:03-5841-5691
FAX:03-3814-5507
e-mail:tsuru@eri.u-tokyo.ac.jp
研究開発局地震・防災研究課
-- 登録:平成25年04月 --