海域観測による超巨大プレート境界地震震源域の実体解明

課題番号:1443

(1)実施機関名:

東京大学地震研究所

(2)研究課題(または観測項目)名:

海域観測による超巨大プレート境界地震震源域の実体解明

(3)研究執行の形態

1.新規に研究課題を立ち上げる

(3)もっとも関連の深い建議の項目

5 超巨大地震に関する当面実施すべき観測研究の推進

(1)超巨大地震とそれに起因する現象の解明のための観測研究

イ.超巨大地震の発生とその前後の過程の解明

(4)その他関連する建議の項目:

見直し前の建議の項目番号

2.地震・火山現象解明のための観測研究の推進

(1)日本列島及び周辺域の長期・広域の地震・火山現象
イ.上部マントルとマグマの発生場
ウ.広域の地殻構造と地殻流体の分布

2.地震・火山現象解明のための観測研究の推進

(2)地震・火山噴火に至る準備過程
(2-1)地震準備過程
ア.アスペリティの実体
イ.非地震性滑りの時空間変化とアスペリティの相互作用
エ.スラブ内地震の発生機構

3.新たな観測技術の開発

(1)海底における観測技術の開発と高度化
イ.海底地震観測技術

(5)これまでの関連する研究成果(または観測実績)の概要(もしも継続課題ならば):

 1995年以降、三陸沖などにおいて構造探査実験を実施し、プレート境界域付近での不均質構造とプレート境界からの反射波の振幅強度の空間分布を求めた。2004年は、宮城沖において想定震源域付近で大規模な構造探査実験を行い、沈み込む海洋プレートの形状とアスペリティに関連があるらしいことを見いだした。また、宮城県沖地震のアスペリティからの反射波の振幅強度は相対的に小さいことが示唆された。2006年は、福島沖及び茨城沖陸側海溝斜面において、大規模構造探査実験を行い、その結果、最上部マントル速度が、8km/sを切る速度に低下する領域があることがわかった。この低速度域は、1938年の塩屋崎地震群の震源域の一部にあたっている。また、2008年には、房総沖において、大規模構造探査実験を行い、その結果、犬吠埼沖で沈み込むフィリピン海プレートが太平洋プレートと衝突しているらしいことがわかった。この他にも、今回の震源域では、多数の構造探査実験が行われ、詳細な構造が明らかになっている。
 一方、2004年より、文部科学省「東南海・南海地震等海溝型地震に関する調査研究」により、1年間連続観測可能な長期観測型海底地震計による観測を実施し、日本海溝・千島海溝周辺域の高精度震源分布が求められている。これらの結果から、深さ60km程度までのプレート境界位置を求めることができた。また、本計画により、2009年には、房総半島南東沖で、長期海底地震観測を行ったほか、2010年には、茨城沖に置いて、空間的に高密度な長期海底地震計アレイによる観測を実施した。このように、地震発生前の地震活動が、正確に求められている。さらに、今回の地震発生に伴い、文部科学省科学研究費補助金特別研究促進費により、発生直後から海底余震観測を実施し、本震直後の正確な余震分布が求められつつある。
 広帯域海底地震計に精密絶対水圧計を付加し、地震帯域から測地帯域に至る超広帯域観測が近年実施可能となっている。今回の地震の緊急余震観測の一部として、水圧計付広帯域海底地震計が震源域に設置され、マグニチュード7クラスの余震に伴う地殻変動を観測することに成功した。

(6)本課題の平成25年度までの到達目標:

 超巨大地震の発生様式を考える上において、従来考えられていたアスペリティの拡がりを超える平成23年東北地方太平洋沖地震の震源域の実体を明らかにすることは、震源過程の解明のために、重要である。また、発生後の地殻活動を正確に把握することは、地震発生サイクルを考える上に置いて、有益な情報である。そこで、本観測研究計画は、海底観測により、震源域及び周辺の地殻活動を明らかにすると共に、超巨大地震の震源域の実体解明に貢献することを目指す。

(7)本課題の計画の概要:

 平成23年東北地方太平洋沖地震は、従来考えられていたアスペリティの空間的広がりを遙かに超えた震源域を持っている。また、超巨大地震発生により、プレート境界域および、その周辺において、地震発生前から応力状態が大きく変化し、地殻活動に変化が生じたことが推定される。そこで、本観測研究計画は、海底観測を軸とした
1.震源域における構造不均質の解明のための大規模制御震源構造調査
2.正確な地殻活動把握のための長期繰り返し海底地震観測とデータ解析
3.プレート境界における滑り特性解明のための海底超広帯域地震データの解析
を実施することにより、超巨大地震の震源域の実体解明、さらには超巨大地震の発生機構解明に貢献することを目指す。また、これまでに実施されてきた「アスペリティの実体解明」により蓄積されたデータ・結果と比較・検討を行うことにより、地殻活動の時空間変化に着目し、超巨大地震発生域におけるカップリングの回復過程の推定を試みる。

(8)実施機関の参加者氏名または部署等名:

篠原雅尚・塩原肇・望月公廣・山田知朗・一瀬建日

他機関との共同研究の有無:有
 北海道大学(村井芳夫)、東北大学(日野亮太・伊藤喜宏)、九州大学(清水洋)、鹿児島大学(八木原寛)、千葉大学(佐藤利典)

(9)公開時にホームページに掲載する問い合わせ先

部署等名:東京大学地震研究所 地震予知研究推進センター
電話:03-5841-5712
e-mail:yotik@eri.u-tokyo.ac.jp

(10)この研究課題(または観測項目)の連絡担当者

氏名:篠原 雅尚
所属:東京大学地震研究所 地震地殻変動観測センター
電話:03-5841-5794
FAX:03-3812-8265
e-mail:mshino@eri.u-tokyo.ac.jp

お問合せ先

研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)

-- 登録:平成25年04月 --