課題番号:1441
東京大学地震研究所
東北地方太平洋沖地震前後の地殻変動・重力のモニタリングとモデル化
1.新規に研究課題を立ち上げる
5(1)イ.超巨大地震の発生とその前後の過程の解明
ア.超巨大地震の発生サイクルの解明
ウ.超巨大地震に誘発された内陸地震や火山活動等の解明
ア.超巨大地震の震源域における地殻活動のモニタリング
イ.超巨大地震の長期評価手法
東北地方太平洋沖地震以降、GPSにより観測されている余効変動の発生原因としては、プレート境界面上の余効すべり、下部地殻・上部マントルの粘性応力緩和、流体の拡散など断層運動によらない物質移動が考えられる。余効変動や余効すべりの時間発展から、下部地殻・上部マントルのレオロジーやプレート境界面のレオロジー・摩擦特性についての情報が得られることがこれまでの研究から知られている。このような情報は超巨大地震サイクルのモデル化に有益である。本課題では、GPS連続観測と重力観測を実施し、得られたデータと国土地理院GEONETのGPSデータ等の測地データを統合的に解析することにより、余効変動と余効すべりのモニタリングと発生メカニズムの解明を行う。
東北日本の超巨大地震発生サイクルの包括的な理解のために、本課題では、東北地方太平洋沖地震前の地殻変動についても検討を行う。東北地方太平洋沖地震前のGPSデータから、東北日本のプレート境界面における固着状況やM6-7級地震の余効すべりの発生様式の顕著な時間変化が報告されている。本課題ではGPSデータを用いて東北地方太平洋沖地震前に発生したM6-7級地震の余効すべりの時間発展を従来の研究よりも高い時間分解能で明らかにし、時間変化のメカニズムを考察する。
余効変動のモニタリングのため、千葉県から茨城県の沿岸部及びいわき市周辺の誘発地震発生域に合計20点、いわき市から新潟市に至る測線上等に20点のGPS連続観測点を既に設置し、観測を実施している。平成25年度までこの観測を継続する。これらの観測点から得られるGPSデータとGEONETのGPSデータを同一の解析ソフトウエアで統合解析し、余効変動のモニタリングを行う枠組みを構築する。GPS座標時系列から断層すべりの時空間変化を推定する時間依存インバージョン法を用いて余効すべりの時空間変化を1日毎に推定する。
余効変動の影響は震源から水平距離100km以上に及ぶため、地球の曲率の影響を評価する必要がある。このため、球体地球モデルを仮定したディスロケーション理論を用いて観測データをインバージョン解析するためのコード開発に着手する。このコードによる解析結果と半無限媒質を仮定した場合の解析結果との比較を行い、曲率がすべり分布の推定に与える影響を評価する。
本震のすべり分布モデルと粘弾性・球体地球モデルを仮定したディスロケーション理論を用いて東北地方太平洋沖地震後の粘性応力緩和による地殻変動の計算を行い、GPSデータと比較して下部地殻・上部マントルの粘性率構造の推定を行う。また、観測された余効変動には余効すべりの影響と粘性応力緩和の影響が両方含まれると考えられるため、粘弾性・球体地球モデルを用いて余効すべりの時空間変化を推定するためのインバージョン手法の開発に着手する。
余効変動による上下変動と地下の密度変化を検出するために、絶対・相対重力観測を東北地方及びその周辺の地域で実施する。得られたデータから流体等の物質移動の検出を試みる。
1996年から東北地方太平洋沖地震までのGEONETのGPSデータを余効変動と同一の枠組みで解析し、座標時系列を得る。得られた時系列に時間依存インバージョン法を適用し、東北地方太平洋沖地震前に発生したM6-7級のプレート境界地震の余効すべりの時間発展を高い時間分解能で推定する。
福田淳一、田中愛幸、三浦哲、加藤照之、加藤愛太郎(東京大学地震研究所)
他機関との共同研究の有無:有
太田雄策(東北大学)、GPS大学連合
部署等名:東京大学地震研究所
電話:
e-mail:
氏名:福田淳一
所属:東京大学地震研究所
電話:03-5841-0505
FAX:03-5689-7234
e-mail:jfukuda@eri.u-tokyo.ac.jp
研究開発局地震・防災研究課
-- 登録:平成25年04月 --