海底地殻変動観測システムの高度化

課題番号:1222

(1)実施機関名:

東北大学大学院理学研究科

(2)研究課題(または観測項目)名:

海底地殻変動観測システムの高度化

(3)研究執行の形態

1.新規に研究課題を立ち上げる(×)
2.従来ある研究課題の研究計画に修正を加えて実施する
(現研究課題番号:1217)

(3)もっとも関連の深い建議の項目

5(3)ア. 超巨大地震のための海底地殻変動観測技術

(4)その他関連する建議の項目:

見直し前の建議の項目番号

3(1)海底における観測技術の開発と高度化

ア.海底地殻変動観測技術

(5)これまでの関連する研究成果(または観測実績)の概要(もしも継続課題ならば):

 手探り状態から開始した海底地殻変動観測であったが、海底の水平変動の検出を主たる目的とするGPS/音響観測に関しては、技術開発・実地観測ともに着実に進展しつつある。独自の観測形態として曳航ブイ方式を提案し、ブイの外装の改良やGPSジャイロの導入により、陸上基準局に対するブイの位置・姿勢を正確にモニターすることが可能となった。さらに、海中音響測距で用いる音波波形の工夫などで、ブイに対する海底局の相対測位精度を上げてきた。こうした観測技術開発と並行して、宮城県沖および熊野灘に海底局アレイで構成される観測点を構築し、観測を継続して行ってきた。それらの成果として、宮城県沖プレート運動方向と整合する観測結果が得られ、熊野灘の観測点においては2004年紀伊半島沖地震に伴う地震時変動を捉えることができた。
  2011年3月の東北地方太平洋沖地震後に緊急観測を行い、地震に伴う、31mにも達する巨大な海底地殻変動を検出した。また海溝の海側における海底GPS観測にも以前から取り組んでおり、陸からの距離約300km、水深5500m付近の海底に出力アップした海底局を設置し、15kmの海中距離まで精密測距に成功しており、大水深におけり海底GPS観測の可能性は確認済みである。
 一方で、海底圧力計による宮城県沖から海溝付近までの地殻上下動観測も継続させており、その時系列データの解析から、2008年には中規模な地震に先行すると思われるスロースリップを検出し、東北地方太平洋沖地震時には最大5mに達する上下変位の他、その前震から余効変動に至る時系列データをたら得ており、地震全体の挙動に関する貴重な情報を提供した。
 また、海底間音響測距観測においては、試験観測により基線1km程度ながら1cm以下の距離変化の検出能力があることが分かっており、熊野灘の分岐断層や東北地方太平洋沖地震後の日本海溝沿いの挙動のモニタリングへ向け実践観測に移っている。

(6)本課題の平成25年度までの到達目標:

 東北地方太平洋沖地震を経験し海溝軸近傍の挙動の把握の重要性が明らかになった。しかし、これまでは観測機器の耐圧性能や音響信号の到達距離の制限から、海底地殻変動観測の空白域となっていた。本課題では、水深7000m級の大深度で海底地殻変動観測ができる音響装置および圧力計を開発し、実証実験を行いつつ、日本海溝の海溝軸近傍での観測を可能にする技術を確立する。

(7)本課題の計画の概要:

 これまで東京大学地震研究所において開発が進められてきた海底地震計の超深海化の技術を応用した超深海型水圧計を試作し、水深7,000mの海底において試験観測を開始する。回収したデータを解析することによって、所定の性能が得られているか確認する。その結果をフィードバックして、日本海溝における水圧観測を継続する。水圧計では自由落下による設置と自己浮上による回収が1年以上の時間をおいて確実に動作できるようにできるか、がチャレンジである。
 また、海底間音響測距およびGPS/A観測兼用の海底局も超深海底に対応させるため、使用する要素部品・資材の耐水圧性能の評価を行う。これと並行して、海水面と超深海底との間を結んだ長距離での音響測距の実現可能性に関する水槽試験および理論的な評価を行う。実証試験として、試作機を大深度実海域に試験的に設置し音響測距を繰り返すことにより、測距に用いる音響信号の品質(信号強度・雑音比など)に関する基礎的データの収集を行うとともに、往復走時計測を行い計測精度の評価を行う。こうしたデータを実績のある通常型の観測システムによる中深度までのものと比較し、超深海海域におけるGPS/A観測に固有な問題点の有無、あるとした場合にその対応策を検討することにより、GPS/A観測網を全海域へ展開するための基礎開発を完了する。海底地殻変動観測装置を超深海化するにあたっては、1年間以上の長期間にわたって高い海水圧に要素部品のすべてが耐えなくてはならないが、実海域試験でなくてはこれを実証できない。

(8)実施機関の参加者氏名または部署等名:

木戸元之・藤本博己・日野亮太・伊藤喜宏・太田雄策・長田幸仁・他計5名程度
他機関との共同研究の有無:有
名古屋大学・東京大学生産技術研究所・東京大学地震研究所・海上保安庁

(9)公開時にホームページに掲載する問い合わせ先

部署等名:東北大学大学院理学研究科 地震・噴火予知研究観測センター
電話:022-225-1950
e-mail:zisin-yoti@aob.gp.tohoku.ac.jp

(10)この研究課題(または観測項目)の連絡担当者

氏名:木戸元之
所属:東北大学大学院理学研究科
電話:022-225-1950
FAX:022-264-3292
e-mail:kido@aob.gp.tohoku.ac.jp

お問合せ先

研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)

-- 登録:平成25年04月 --