高精度リアルタイム津波予測システムの開発

課題番号:1221

(1)実施機関名:

東北大学大学院理学研究科

研究課題(または観測項目)名:

高精度リアルタイム津波予測システムの開発

(2)研究執行の形態

1. 新規に研究課題を立ち上げる
2. 従来ある研究課題の研究計画に修正を加えて実施する
(現研究課題番号:1212)

(3)もっとも関連の深い建議の項目

5 超巨大地震に関する当面実施すべき観測研究の推進

(2)超巨大地震とそれに起因する現象の予測のための観測研究

ウ.超巨大地震から発生する津波の予測

(4)その他関連する建議の項目:

見直し前の建議の項目番号

2.地震・火山現象解明のための観測研究の推進

(3)地震発生先行・破壊過程と火山噴火過程
(3-2)地震破壊過程と強震動
  イ 強震動・津波の生成過程

(5)これまでの関連する研究成果(または観測実績)の概要(もしも継続課題ならば):

 2011年東北地方太平洋沖地震では、東北地方沿岸各地に10mを大きく超える津波が襲来し、甚大な被害をもたらした。残念ながら、提案者グループにより開発してきたtFISHはリアルタイムに稼働できるような実装の段階に至っておらず、実際の津波予測には貢献することができなかったが、釜石沖海底ケーブル観測システムやGPS波浪計のデータを利用してリアルタイムな実運用の段階に至っていたなら、沖合の津波観測データから巨大津波が沿岸に襲来する時刻と規模を、津波被害が特に甚大であった三陸海岸に対して、事前に高い精度で予測可能であることが確かめられている。tFISHでは観測された津波波形から波源推定を行うが、超巨大地震の広大な震源域で発生した長波長の津波は10分以上の長周期の変動として観測されるため、津波波形のみから波源モデルを地震発生後短時間のうちに正確に把握するのは困難である。一方、本学の別課題(1218)で開発が進められてきたリアルタイムGPS時系列処理・解析(RAPiD)を東北地方太平洋沖地震の際に得られた陸上観測網で得られた1秒サンプリングデータに適用した結果、地震発生後およそ5分後にMw=8.7に相当する断層モデルが得られることが確かめられた。これを地震発生直後における津波波源の暫定解としてtFISHにおける津波予測シミュレーションに使用すると、沿岸検潮所で記録された津波波形の特徴をよく再現できることが確認された。tFISHによる津波波形合成にかかる時間をあわせても、地震発生のおよそ6分後に従来より高い信頼度の津波波形予測情報を提供しうる。以上のことから、tFISHにおける波源推定逆解析のデータに、津波観測波形とともに高速サンプリングリアルタイムGPSデータを加えることにより、早期・高信頼度の津波予測システムが構築可能であることが明らかとなった。

(6)本課題の平成25年度までの到達目標:

 リアルタイム測地データによる地殻変動場の即時推定(RAPiD)と津波データを用いた津波波源逆解析とそれに基づく津波波形計算(tFISH)について、それぞれの性能評価と改善点の洗い出しを行うとともに、これらを統合した津波予測手法(tFISH/ RAPiD)の迅速性と信頼度の向上を図る。さらに、RAPiDの高度化・信頼性向上をめざして、巨大地震が発生した際のリアルタイム測地データ流通経路の確保の手法を確保する。

(7)本課題の計画の概要:

・巨大地震発生時におけるRAPiDの可用性評価
  迅速な津波予測を必要とするような巨大地震が発生した直後には、広域にわたって通信網が寸断される可能性がある。そこで、観測点-データセンター間の代替通信手段として衛星通信を使用することによるリアルタイム測地データ流通のための基礎研究を実施する。
・RTK-GPSデータを取り入れたtFISH(tFISH/RAPiD)の開発
  RTK-GPSのデータ解析から得られる断層モデルから津波を予測した場合の予測精度評価はすでに行ったが、津波観測波形データと併合して波源推定を行うことにより、予測精度を向上できると期待できる。ただし、津波観測データはRTK-GPSに比べて遅れて入手されるものであるため、モデルの逐次改善という方向となる。さらに、そうした逐次改善が予測精度にどのような影響を及ぼすかを評価することにより、地震発生後に津波予測情報はどのように更新しうるかを明らかにする。
・RTK-GPSデータによる震源断層モデル推定手法の高度化
 巨大な震源断層上でのすべり分布が不均質である場合、沿岸の津波波高の地域分布も大きな影響をうけることが想定される。そこで、津波データが十分に波源推定に寄与できない地震発生直後に、RTK-GPSデータだけから波源の空間的な不均質性についてどの程度の情報を抽出できるかの検討を進める。これはtFISH/RAPiD開発の要素技術を発展させるものであり、目途が立ち次第、上記で開発するシステムに取り込む。
・tFISH/RAPiDの性能評価
上記の開発では予測津波の再現性を通した性能評価が不可欠である。そのために、東北地方太平洋沖地震の際に得られた実データ(これまでに使用したデータに加えて、最近回収された自己浮上式のオフライン海底水圧計のデータが使用可能)を用いたretrospectiveな解析を行う。
さらに、今後発生が危惧される、隣接域(千島海溝と日本海溝北部、あるいは日本海溝南部)でのプレート境界型巨大地震(津波地震を含む)やアウターライズ巨大地震について、シナリオを設定して、GPSおよび津波波形データを合成した上で、これにtFISH/RAPiDを適用した場合の予測性能評価シミュレーションを行う。これまでに蓄積された観測データによりGPSや津波観測データに含まれるノイズ特性の解明が進んでいることから、こうした影響を考慮に入れた現実的な評価を実施する。

(8)実施機関の参加者氏名または部署等名:

日野亮太・太田雄策・藤本博己・他計6名程度

他機関との共同研究の有無:有(北海道大学・気象研究所)

(9)公開時にホームページに掲載する問い合わせ先

部署等名:東北大学大学院理学研究科 地震・噴火予知研究観測センター
電話:022-225-1950
e-mail:zisin-yoti@aob.geophys.tohoku.ac.jp

(10)この研究課題(または観測項目)の連絡担当者

氏名:日野亮太
所属:東北大学大学院理学研究科
電話:022-225-1950
FAX:022-264-3292
e-mail:hino@aob.gp.tohoku.ac.jp

お問合せ先

研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)

-- 登録:平成25年04月 --