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「地震予知のための新たな観測研究計画(第2次)の推進について」(中間報告)の概要

2003/06/02
科学技術・学術審議会測地学分科会


地震予知のための新たな観測研究計画(第2次)の推進について(中間報告)の概要


1.「地震予知のための新たな観測研究計画」の成果と今後の展望

1.地震予知のための新たな観測研究計画の成果

    ○沈み込み型プレート境界で発生する大地震に関しては,同一のアスペリティ(固着領域)が繰り返し破壊することが分かってきた。また,非地震性の間欠的滑りや地震後のゆっくりとした滑りが発生する場合など,様々な応力の蓄積や解放の形態の存在することが見いだされ,地震発生に至る準備過程の多様性が明らかになった。
○一方,内陸での地震発生の準備過程については,地殻の不均質構造に関する知見が蓄積し,幾つかの地域については,広域応力が特定の断層域へ集中していく機構の理解が進んだ。
○モデル化及びシミュレーションにおいても,地震発生サイクルを構成する要素モデルの構築や,横ずれ型プレート境界での地震発生サイクルのシミュレーションが行われるなど,日本列島域の地殻活動予測のためのシミュレーションモデル構築の準備が進んだ。

2.今後の展望

    ○沈み込み境界におけるプレートの結合状態の時空間変化に関する研究が進み,地震発生予測に向けて現在の応力蓄積状態を迅速に把握できる見通しがついた。今後は,地殻活動の推移を把握し,さらに,その定量的予測へと踏み出すべき段階。
○観測研究の成果に基づいて地殻活動の物理モデルを構築し,それに基づいて予測のためのシミュレーションを実現していくことが必要。
○プレート境界での地殻活動の予測シミュレーションを高度化するためには,アスペリティの実体解明に向けた研究を更に進めることが必要。
○地殻の不均質構造に関する基礎的な知見が蓄積した。これらの知見を総合し,列島規模の広域応力が内陸の特定の断層域に集中して地震発生に至る過程を解明することが重要。そのためには組織的な観測研究を一層進めることが必要。


2.本計画策定の方針

1.計画推進の基本的考え方

    ○地殻活動の理解,モデル化,モニタリングを総合化したものとして,「総合予測システム」を構築し, 「地震がいつ,どこで,どの程度の規模で発生するか」の定量的な予測を可能とすることが,地震予知研究の目標。
○現在の地震予知研究は上記目標への途上にあり,時期の予測に関しては一般に長期予測の段階。この段階においても,地震に至る地殻の状態を常時観測により把握し,地殻活動の推移をシミュレーションすることによって,予測誤差を段階的に小さくすることを試みる。さらに,予想される地震により「地表がどの程度揺れるか」を予測し,地震災害軽減に寄与することを目指す。そのためには,到達度の評価が可能な具体的目標を設定し,その目標に向かって段階的に計画を推進することが必要。

2.本計画の基本的方針

今回策定する計画は,「地震予知のための新たな観測研究計画」の成果を引き継ぎ,更に発展させるためのものとして位置付けられる。このために,以下の4項目について計画を推進。
(1)地震発生に至る地殻活動解明のための観測研究の推進
(2)地殻活動の予測シミュレーションとモニタリングのための観測研究の推進
(3)新たな観測・実験技術の開発
(4)計画推進のための体制の整備


3.計画の実施内容

1.地震発生に至る地殻活動解明のための観測研究の推進

(1) 日本列島及び周辺域の長期広域地殻活動
       日本列島とその周辺を構成するプレートの境界の形状・位置及び相対運動を精密に求めるために,広域GPS観測及び広帯域地震観測を実施。同時に,列島規模での応力場の形成機構と島弧地殻内部にみられる歪集中帯の変形機構を解明。
ア. 日本列島及び周辺域のプレート運動
イ. 列島規模のプレート内の構造と変形
(2) 地震発生に至る準備・直前過程における地殻活動
       地震発生に至る準備過程から直前過程までの地殻活動を一連の過程として研究。歪及び応力の集中機構の関係の解明。地震発生の直前に生じる不可逆的な物理・化学過程の検出と,その発現機構を明らかにするための実験的・観測的研究の推進。地震発生サイクルの特徴やその揺らぎの程度を解明。史料地震学的成果のデータベース化。
ア. プレート境界域における歪・応力集中機構
イ. 内陸地震発生域の不均質構造と歪・応力集中機構
ウ. 地震発生直前の物理・化学過程
エ. 地震発生サイクル
(3) 地震破壊過程と強震動
     強震動の解析によって大地震の破壊過程,特に,断層面上のアスペリティ分布やその周辺の応力変化の情報を抽出。震源過程の複雑さとともに,地下構造の影響を的確に評価することによって,予想される大地震の強震動予測の高度化を図る。
ア. 断層面上の不均質性
イ. 地震波動伝播と強震動予測
(4) 地震発生の素過程
     観測可能なP波速度,S波速度,比抵抗などから,物質とその状態,摩擦・破壊構成則パラメータを推定するための実験的・理論的研究を推進。
ア. 摩擦・破壊現象の物理・化学的素過程
イ. 地殻・上部マントルの物質・物性と摩擦・破壊構成則パラメータ

2.地殻活動の予測シミュレーションとモニタリングのための観測研究の推進

(1) 地殻活動予測シミュレーションモデルの構築
       地殻活動データとシミュレーションを結び付け,日本列島域の地殻活動の定量的な現状把握と推移予測が可能なシステムを構築。また,稠密な観測が行われている特定の地域を対象にして,地震発生に至る地殻の準備過程が地震発生サイクルのどの段階にあるかを定量的に示すシミュレーションを試行。シミュレーションモデルを継続的に高度化していくための地震発生過程に関する基礎的なシミュレーション研究の推進。
ア. 日本列島域
イ. 特定の地域
ウ. 予測シミュレーションモデルの高度化
(2) 地殻活動モニタリングシステムの高度化
       列島規模のモニタリングシステムに加え,大地震発生が想定される特定の地域における地殻活動モニタリングの高度化も重要で,高密度諸観測を一層整備。特に,想定東海地震震源域及びその周辺,想定東南海・南海地震震源域及びその周辺は重要。
ア. 日本列島域
イ. 東海地域
ウ. 東南海・南海地域
エ. その他特定の地域
(3) 地殻活動情報総合データベースの開発
       日本列島域を対象として,これまで蓄積されてきた地形,重力,地殻構造,地殻変動,地震活動等の基礎データを整理・統合し,地殻活動予測シミュレーションモデル開発の基礎となるデータベースを開発。
ア. 日本列島地殻活動情報データベースの構築
イ. 地殻活動データ解析システムの開発


3.新たな観測・実験技術の開発

   地震発生に至る一連の過程に伴う地殻現象を高精度で検出するための新たな観測・実験技術の開発研究。
(1) 海底諸観測技術の開発と高度化
(2) ボアホールによる地下深部計測技術の開発と高度化
(3) 地下構造と状態変化をモニターするための技術の開発と高度化
(4) 宇宙技術等の利用の高度化


4.計画推進のための体制の整備

(1) 計画を一層効果的に推進する体制の整備
       今後も推進本部の下で進められている基盤的調査観測等のデータを活用しつつ,計画遂行を担う各大学や関係機関が,それぞれの機能に応じた役割分担と密接な協力・連携の下に計画全体を組織的に推進する体制の確立。
(2) 地震調査研究推進本部との役割分担
     今後も,推進本部との役割分担を一層明確にしつつ,地震予知のための観測研究を推進。
(3) 情報交換等の場としての地震予知連絡会の充実
     関係機関を中心とする関係者が定期的に会合を持ち,観測データに基づく地震予知研究に関する情報交換を行う場を引き続き確保するとともに,その充実を図る。
(4) 人材の養成と確保
     本計画を推進するためには,研究者をはじめ地震予知関連の観測研究に従事する人材の養成・確保はますます重要。大学等は人材の養成に一層努力。
(5) 火山噴火予知研究等との連携
     地殻活動を総合的に把握し予測の確度を高める上で,地震予知研究と火山噴火予知研究の連携が不可欠。今後も一層緊密な連携を図る。さらに,工学や社会科学など関連学問分野との連携を進め,防災対策など社会的要請に応じていく。
(6) 国際協力の推進
     地震予知研究を推進する上で,日本列島周辺のテクトニクスを解明することが重要。近隣諸国と協力して共同研究の推進を図る。さらに,地震に関する観測データなどの情報の交換,シンポジウム,研究交流,共同研究,人材養成の協力等,多面的な国際協力を行うことが重要であり,一層の推進を図る。
(7) 研究成果の社会への効果的伝達
     国民に対して,地震予知研究の成果を分かりやすい形で継続的に説明する必要があり,科学的な知見や情報を積極的に発信するなど効果的伝達を図る。さらに,講演会開催などに加え,マスメディアへの情報提供により研究情報を積極的に社会へ紹介。

(研究開発局地震・防災研究課)