ここからサイトの主なメニューです

「第6次火山噴火予知計画」の実施状況等に関する外部評価報告書

2002/10/22
科学技術・学術審議会測地学分科会地震部会

審議会情報へ

「第6次火山噴火予知計画」の実施状況等に関する外部評価報告書

1. 第6次火山噴火予知計画について
1) 目標の達成度
  第6次計画では,「火山の地下の状態を的確に把握し,噴火の物理化学モデルを用いて,噴火の開始や推移を定量的に予測する段階」にまで噴火予知のレベルを上げることを長期的目標としつつ,1火山観測研究の強化,2火山噴火予知高度化のための基礎研究の推進,3火山噴火予知体制の整備,の三つの基本方針の下で,計画を推進することとしている。
 
  火山噴火予知に関する観測点の多点化が図られたが,観測・監視体制はなお不十分である。また,レビューでも指摘されているように,年次計画による観測網の整備と実験観測の推進により,噴火の前兆現象の検知及びそれらに基づく噴火予知に関しては着実な成果が得られた。ただし,現段階では,噴火開始前に噴火様式や活動推移を予測することや,噴火開始当初に活動推移及び活動終息時期を予測することは困難である。
 
  基礎研究に関しては,マグマ供給系の構造把握や,噴火の発生機構の解明において,一段の進展が見られた。火山の構造探査では,浅部構造が明らかになり,震源決定精度の格段の改善が得られるようになった火山も増えたが,マグマ溜まりの深度までは到達していない。また,噴火発生機構の解明についても,火山性地震や微動とマグマなどの火山流体の運動との関連が明らかになってきた点などは評価できるものの,噴火の物理化学モデルを構築できるまでには至っていない。このように長期的な目標に照らして不十分な点もあった。
 
2) 実施体制の妥当性
  大学においては,全国共同利用の大学附置研究所のほかに,4大学に「地域センター」としての研究観測センターの整備が完了し,火山噴火予知研究協議会の設置など全国ネットワークの形成により,観測研究体制の強化が図られた。また,気象庁においては,本庁及び管区気象台に火山監視・情報センターが設置され,火山活動に関する監視及び情報発信のための体制が整えられるなど組織整備が進展した。さらに,有珠山噴火では,大学及び地質調査所(現 産業技術総合研究所)の研究者,気象庁職員などが共同して観測研究を進めた。また,三宅島噴火では,大学・産業技術総合研究所が火山ガスの観測手法を気象庁に技術移転して,相互協力体制を確立するなど,研究者と監視観測に当たる技術者間の連携強化が進んだことも評価できる。一方,観測・監視活動に関して,大学の研究者に負担が掛かっている点は問題である。
 
3) 学術的意義
  噴火予知計画に基づき,関連する大学が中心となって活動的火山の火山体構造探査,集中総合観測などに関して,全国の火山研究者等との共同観測研究が行われ,火山の構造解析,火山の活動評価などにおいて大きな成果を挙げてきた。火山体構造探査に関しては,例えば,岩手山では,過去のマグマ貫入に対応し,今回の火山活動とも関連すると思われる地震波の高速度域が見いだされた。集中総合観測においては,観測結果が,平成12年の有珠山や三宅島の噴火に活用され,活動開始直後から実施された総合的な観測調査と併せて,マグマ活動の時間推移を把握し活動予測に貢献した。また,岩手山では,集中総合観測などにより地下深部から地表面に至るマグマ,熱水,火山ガスなど火山流体の移動・上昇に伴う現象が捕捉された。これらによって得られた研究成果は,噴火様式がどう推移するか,どの程度の噴火規模が見込まれるかなど,今後,火山活動を理解する上での基礎データを与えることからも意義がある。
 
4) 社会的貢献
  有珠山噴火では噴火前兆現象の推移を着実にとらえ,防災の視点から適切な情報発信が行われた結果,噴火前の住民避難につながるとともに,段階的に避難を解除する過程でも火山観測の成果を十分活用することができた。また,三宅島噴火でも,噴火前兆を捉えるとともに,当初のマグマの移動については確実に把握し,適切な防災情報を提供することができた。これらの成果は計画発足以来,観測網の整備や予知手法の開発等を推進してきたことによるものであり,評価できる。一方,現在の科学技術水準では噴火後の推移の的確な予測が困難なため,三宅島噴火では,避難の実施や解除に関する社会的要請に十分には応えられない面もあった。
 
2. 今後の計画の在り方に関する提言
1) 今後の観測・監視体制の在り方
  86の活火山の中で,地震観測点が1点あるいは全くない火山も少なくないなど,現在の観測・監視体制は十分とは言えない。今後は,それぞれの火山の活動に関するデータ,現状の観測体制等を整理分類した上で,戦略を検討する必要がある。その場合,現在,火山噴火予知連絡会で検討されている活火山の見直しやランク分けの結果を踏まえつつ,理学的な観点に加えて防災の観点も考慮し,火山観測・監視システムの全体計画を作成すべきである。その上で,重点的に観測すべき火山など優先順位を設定し,具体的かつ定量的な目標の下で機動的に整備を行っていくべきである。また,リモートセンシング技術の活用なども含めた観測手法の検討や改善を進めることが求められる。ただし,現在の観測体制だけでは,十分な観測・監視及び活動評価ができない活火山もあることから,気象庁や大学等関係機関の連携を強化し,情報の共有化を図ることが必要である。
 
  的確な活動評価と情報発信のためには,噴火時の悪条件下でも,監視観測及び研究観測の双方においてデータを途絶えさせないことが重要である。そのための観測施設・設備の整備や関係機関の連携の強化を図る必要がある。同時に,規制区域内での観測研究体制の在り方について,研究観測者の自己責任や安全確保のためのガイドライン作成などを含め検討することが重要である。
 
  気象庁における火山活動の的確な評価と適切な情報の公表・解説の機能を高めるためには,気象庁において研究機関等との人的交流により,高い専門的な能力を持った人材を確保すべきである。業務的な監視においては,現場での評価の能力を向上させるための研修が重要となる。
 
  火山噴火予知研究の現状と防災面からの要請を考え合わせると,今後,火山学の基礎的な研究活動と防災業務との交流を図り,基礎研究の成果の防災面での実用化を推進することが重要である。火山研究の範囲は多岐にわたっていることから,1学際的に様々な手法を取り込んだ基礎研究,2長期予測を含めた噴火予知技術の体系化・実用化に関する研究,3噴火予知技術の防災活動への適用と観測・監視活動について,関係機関の機能の充実及び各機関の役割分担の明確化と連携が必要である。
 
2) 大学等における今後の火山研究の在り方
  大学の基本的な使命は,高度な人材の育成と学術研究の推進であり,大学の火山研究においても基礎的な研究が重要であることは当然である。同時に,大学に所属する火山研究者は,火山研究に対しては,学術的な観点からのみならず,防災という観点から社会的要請があることも十分認識する必要がある。例えば,住民への火山知識の普及,自治体におけるハザードマップ作成への協力,火山周辺地域の防災町作りへの協力などが考えられ,このような貢献を研究者の活動に関する評価の一つとして考慮する必要がある。また,大学の活動に関する評価は,画一的なものではなく火山防災の重要性を踏まえるなど,個々の大学の特色や地域性に応じた多様なものでなければならず,評価関係機関の理解を得る必要がある。
 
  火山噴火予知高度化のためには,基礎的な研究の推進が不可欠である。火山研究の範囲が多岐にわたっていることを考えると直接観測に関係する業務的なもの以外に幅広い観点から裾野を広げて基礎研究を進める必要がある。さらに,大学の全国共同利用附置研究所の機能を活用して,工学や社会科学など他の分野との連携を図る必要がある。
 
  防災科学技術研究所,通信総合研究所及び地質調査所(現 産業技術総合研究所)が独立行政法人化され,また,大学の法人化が平成16年度にも実施される見込みとなっているが,火山研究者がそれぞれの機関に少数しかいない中で,法人化による各機関の研究体制の弱体化を避けねばならない。総合的に観測研究を推進していくためには,大学について言えば,全国的なネットワークの維持が必要であり,大学の全国共同利用附置研究所の機能を強化すべきである。将来は,一つの組織にまとまることも視野に置くことが適当である。また,法人化後においても,火山噴火予知計画により整備され,現地に根ざした観測を担ってきた各大学の観測研究施設等の存続は必要不可欠である。特に,現状での火山活動の活発化への対応や富士山,三宅島等の火山災害が国民の関心事になっていることを考慮すると,関係大学の連携の下,基礎的分野から防災を視野に入れた応用分野まで,幅広い観測研究を推進することが社会的にも要求されている。それらを着実に実行するためには,従来にも増して関係大学の連携を強化した体制で観測研究を推進するための予算の確保が必要である。
 
3) 火山情報と社会とのかかわり(有珠山や三宅島の事例を踏まえて)
  火山災害を防止・軽減するためには,火山に関する知識や火山活動の現状を一般国民に周知することが重要である。特に,住民が避難した際に最も必要な情報は,活動中の火山がこの先どうなるかということである。気象庁は,噴火や活動の高まりに応じて火山情報を発信してきたが,火山噴火予知研究の進展,社会の防災に対する要請を踏まえ,社会の防災対応に的確に利用できるよう,防災関係者や情報研究者の意見も参考にし,火山情報の一層の充実を図る必要がある。レビューでも指摘されているように,気象庁において,現在,部内で試行している火山活動のレベル化については,早急に本格的試行に移行するとともに,対象火山を増やしていくべきである。また,火山情報を社会に効果的に活かすには,気象庁は,関係地方公共団体等防災関連機関に対して火山情報や火山噴火予知連絡会の活動評価結果を解説するとともに,行政機関の防災対応に適切な助言を行う必要がある。さらに,情報の公表・発信に際しては,きめ細やかに,かつ,一般住民に分かりやすい表現で行うことが重要である。
 
  近年の情報・通信技術の進展に伴い,研究者がインターネットを活用し情報を発信する例がしばしば見られるが,その内容を評価する仕組みはできていない。火山災害は活動が長引くことから,研究者の情報の社会的な影響も大きいので,研究者個人による火山情報発信への評価や対応の在り方に関する検討が必要である。
 
4) その他
  火山噴火予知研究には,過去長期間にわたり蓄積された調査データを十分活用することが重要である。このため,これまでの蓄積データの保管・整理・データベース化を進める必要がある。さらに,蓄積された基礎データの有効活用を図るため,一元化やネットワーク化を促進する方策について検討を進める必要がある。


科学技術・学術審議会測地学分科会外部評価委員会
(「第6次火山噴火予知計画」関係)

1. 構 成 員

池  谷      浩   (財)砂防・地すべり技術センター専務理事
江  原  幸  雄 九州大学工学研究院教授
小屋口  剛  博 東京大学新領域創成科学研究科助教授
津  村  建四朗 (財)日本気象協会顧問
廣  井      脩 東京大学社会情報研究所長


2. 開催日程

第1回   平成14年7月9日(火) 13:30〜15:30
第2回 平成14年8月12日(月) 13:30〜15:30
第3回 平成14年9月18日(水) 13:00〜15:00


-- 登録:平成21年以前 --