衛星赤外画像による噴火推移の観測と類型化に関する研究

課題番号1520

(1)実施機関名:

東京大学地震研究所(協力:ロンドン大学キングスカレッジ,JAXA/EORC)

(2)研究課題(または観測項目)名:

衛星赤外画像による噴火推移の観測と類型化に関する研究

(3)関連の深い建議の項目:

4.(2)ウ.観測・解析技術の開発

(4)その他関連する建議の項目:

1.(1)ウ.地質データ等の収集と整理,
2.(4).事象系統樹の高度化による火山噴火予測
4.(6).国際共同研究・国際協力

(5)優先度の高い地震・火山噴火との関連:

(6)平成25年度までの関連する研究成果(または観測実績)の概要:

 「衛星赤外画像による噴火推移の観測と類型化に関する研究」
 MODIS,ひまわり(MTSAT)画像によるリアルタイム観測システムを開発し,準備期間も含め7年間に渡って東アジア147活火山の観測を行い,噴火データを収集した.この中で噴火推移はマグマの性質や活動タイプに応じて何らかの類似性をもつことがあり,これが衛星赤外データに基づくインデックス上でも特徴的パターンとなって捉えられていることを見出した.噴火推移のより詳しい解析を行うためパラレルタイムラインチャートを利用する方法を考案した. 一方,平成21-24年の間,JAXAと共同でGCOM-C1の SGLIの火山観測への応用研究を行い,溶岩ドーム成長に伴う火砕流発生状況の観測に有効であることを確かめた.現在さらにJAXAとの間で,GCOM-C1に関する新しい共同研究をスタートさせている(GCOM 4th RA/2013-2015).

(7)本課題の5か年の到達目標:

 噴火推移の体系的分析は,噴火事象系統樹の全体像―多様性・タイプ等―の把握に密接に関係すると共に,推移の違いを生む原因を探る上でも重要な鍵となるが,これまで基盤となる適当なデータセットがなく困難であった.衛星を用いた広域観測により噴火推移データの効率的収集ができ,これらを基にすることにより噴火推移の系統的な整理・検討が可能となる.本計画は,この衛星赤外画像データに基づく噴火推移解析を,次世代衛星データの導入と複合的解析方法の開発の両面から高度化し,その多様性の把握と類型化に関する研究を進めることを目的とする.このような研究が進めば,リアルタイム観測の変化から類型を推定し,イベント発生に先行して現れる特徴的な変化パターン-例えば単純には,爆発的噴火に先行して現れる熱異常の低下等-を捉えることにより,噴火推移の予測に繋げられる可能性もある.
 噴火は,極論すればマグマや高温ガスが地表に噴出する現象と見做すことができ,この熱が地上にもたらす温度変化やその空間的拡がりに関係する情報を高頻度型衛星赤外画像で観測することにより,間接的にマグマやガスの放出状況とその時間変化パターンを捉えることができる.他方,静止衛星による超高頻度観測により爆発的噴火の発生に関係する噴煙の発生状況等に関する詳しい情報を得ることができる.両者を組合せることにより,マグマやガス放出状況の時間変化に対して,どの様なタイプ・規模の爆発的噴火がどのようなタイミングで発生しているのか―あるいはしていないのか―等を比較分析し,噴火推移の特徴を抽出することが可能となる.これをベースに,独自の複数指標によるパラレルタイムラインチャートによる複合的解析手法の開発と高度化を進め,噴火推移のデータベース化と類型化を行う.観測の結果はリアルタイムで公開し,観測網が乏しい東アジアの基盤的観測の一翼を担えるようにする.
 計画期間内の平成27-28年度に我が国の2つの新衛星―GCOM-C1と次世代「ひまわり」―の運用が開始される予定であり,これらを現在の衛星観測システムに導入することにより,観測能力の各段の向上を図る.GCOM-C1はJAXAの気候変動観測衛星で,新センサーSGLIが搭載されており,分解能が現在主力のMODISの1㎞から250mに向上する.SGLIデータを観測システムに組込むことで,リアルタイムで火口位置や噴出物分布域等を知ることが可能となる. 同時に,Webベースのシミュレーションツール(溶岩流,火砕流等)を開発し,SGLIの観測結果と同サイトに置くことで,現地―東アジア各地を含む―で,噴火状況に応じて災害域の予測を,直接かつ即時できるようにする.次世代「ひまわり」も赤外バンドが分解能2㎞,観測頻度10分毎となり,噴煙や爆発的噴火の発生状況等に関する観測精度が格段に向上する.さらに,ALOS-2等に小型赤外カメラ(CIRC等)が搭載され,これらの火山観測への応用についてJAXA/EORCと共同で検討を進める.

(8)本課題の5か年計画の概要:

  衛星赤外画像による東アジア活火山リアルタイム観測・情報発信システムを引き続き運用し,噴火データの収集と解析を進めると共に,観測システムの高度化を図る.
 研究は以下のように進める.平成26-27年度: 新衛星GCOM-C1/SGLI,次世代「ひまわり」画像解析ルーチンを開発し,システムへの組み込みを実施する.これにより,リアルタイムで細かな噴火情報の収集が可能となる.得られたデータはアーカイブシステムに蓄積する.また,衛星搭載赤外カメラの利用検討を行う.平成28年度: 性質の異なる複数のインデックス-熱異常の強さや規模,噴煙の状況-をパラレルタイムラインチャートとしてプロットし,時間変化パターンや相互関係から噴火推移を多元的に推定する方法の開発を進める.平成29-30年度: Webベースの火砕流・溶岩流のシミュレーションツールを作成しシステムに組込む.また,アーカイブを含め噴火データをパラレルタイムラインチャート等により解析すると共に,噴火推移の類型化研究を進める.結果は関連データと併せデータベース化し,Web上で公開する.国内噴火等観測データが豊富な事例を使って,マグマシステムとの関係など推移の違いを生む原因の検討を行う.なお,噴火が発生した場合はデータ収集のため,必要に応じて現地調査を実施する.

(9)実施機関の参加者氏名または部署等名:

担当者:東京大学地震研究所 金子隆之
分担者:東京大学地震研究所 安田 敦

他機関との共同研究の有無:有
JAXA/EORC (GCOM-C/SGLI,ALOS-2/CIRCデータの利用について)
ロンドン大学キングスカレッジ(データ解析について)

(10)公開時にホームページに掲載する問い合わせ先

部署等名:東京大学地震研究所
電話:03-5841-5712
e-mail:yotikikaku@eri.u-tokyo.ac.jp
URL:

(11)この研究課題(または観測項目)の連絡担当者

氏名:金子隆之
所属:東京大学地震研究所

お問合せ先

研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)

-- 登録:平成26年07月 --