海溝軸近傍で観測可能な海底地殻変動観測技術の開発

課題番号1210

(1)実施機関名:

東北大学

(2)研究課題(または観測項目)名:

海溝軸近傍で観測可能な海底地殻変動観測技術の開発

(3)関連の深い建議の項目:

4.(2)ウ. 観測・解析技術の開発

(4)その他関連する建議の項目:

1.(2)イ.プレート境界巨大地震
2.(2)ア.プレート境界滑りの時空間発展

(5)優先度の高い地震・火山噴火との関連:

東北地方太平洋沖地震

(6)平成25年度までの関連する研究成果(または観測実績)の概要:

 課題番号1222の「海底地殻変動観測システムの高度化」において、水深7000mを超える日本海溝の海溝軸での地殻変動観測が可能な、圧力計および海底間音響測距装置を作成し、試験観測を実施した。それぞれ耐圧性能等には問題なく、正常にデータを取得できた。さらに実運用を見越した必要な改良点を洗い出すことができた。

(7)本課題の5か年の到達目標:

 大きな津波を伴う海溝型の低頻度超巨大地震の発生過程において、海溝軸近傍の固着状態が非常に重要な役割を果たしていることが明らかにされつつある。東北地方太平洋沖地震後に整備された大学と海上保安庁の海底GPSによる地殻変動観測点網は、この事実を重視し、従来の観測点よりも海溝に近い大深度海域に重点的に展開されている。しかし、特に日本海溝における海溝軸直上付近での観測は、 水深の倍程度の長い距離の測距の技術的困難さや、観測点を構成する海底局間の距離が、もはや剛体とは見なせない大きさになる原理的な限界から、未着手のまま残されている。これに対し海底間音響測距観測は、海底間同士の音響測距であるため距離的にも音響ノイズ的にも有利であり、また、海底の歪そのものを計るため、剛体的振る舞いが保障されない場所での観測に適することから、実現の可能性が高いと判断できる。一方、海底圧力観測では、海溝軸直近での観測を開始したものの、超深海対応の圧力センサーの大きなドリフトの低減、あるいは解析による除去などの課題が残る。本研究課題では、超深海用に開発された海底間音響測距装置と海底圧力計での実海域での観測を繰り返して、機器と解析方法の改良に関する知見を蓄積し、実用技術として確立することにより、低頻度超巨大地震の発生メカニズムの解明や想定される津波の規模の推定に役立つ、海溝軸近傍の固着状態のモニタリング観測実現に資することを目的とする。


(8)本課題の5か年計画の概要:

 上記の超深海型の圧力計および海底間音響測距装置には、試験観測の結果をフィードバックさせながら機器と解析方法の改良を重ねていく必要がある。これらをおよそ1年サイクルで繰り返していくことにより、超深海での海底地殻変動観測技術を確立する。別予算で措置した超深海型の海底圧力計、海底間音響測距装置をプロトタイプとして使用し、各年度の機器の改良も別予算で実施する。その試験観測時に必要な消耗品としての電池の一部を本研究課題の予算でまかない、全体として年1回の観測機会を確保し、技術確立までの過程を強化する。平成26-27年度は、観測機器の基本性能の確認および改良部分の洗い出しを行う。具体的には、超深海型の圧力計センサーのドリフトの性質の把握を行い、海底間音響測距装置に関しては測距限界距離および温度計測による長距離の音速補正の知見を得る。平成28-29年度は、過年度で得た知見をもとに必要な装置の同志の設置配置を変え、圧力計では海洋の影響を取り除いた相対上下変位検出の精度評価、海底間音響測距では精度を確保できる距離で、かつ海溝をまたぐ位置へ、潜航艇の利用も想定しつつ設置し、データを得る。平成30年度には、それまでのデータをもとに最終的な改良、設置方法を提案し、実測により技術の確立を実証する。

(9)実施機関の参加者氏名または部署等名:

木戸元之・日野亮太・太田雄策・飯沼卓司・東龍介・和田育子(東北大学)

他機関との共同研究の有無:
伊藤喜宏(京都大学)

(10)公開時にホームページに掲載する問い合わせ先

部署等名:東北大学大学院理学研究科
電話:022-225-1950
e-mail:zisin-yoti@aob.gp.tohoku.ac.jp
URL:http://www.aob.gp.tohoku.ac.jp

(11)この研究課題(または観測項目)の連絡担当者

氏名:木戸元之
所属:東北大学 災害科学国際研究所

お問合せ先

研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)

-- 登録:平成26年07月 --