課題番号1208
東北大学
観測事例及び理論予測に基づく噴火事象系統樹の分岐条件の検討
2.(4)事象系統樹の高度化による火山噴火予測
1.(5)火山現象のモデル化
3.(3)地震・火山噴火の災害誘因の事前評価手法の高度化
(4)地震・火山噴火の災害誘因の即時予測手法の高度化
桜島火山噴火
火山防災担当者や地域住民、また、地方自治体や政府が、火山活動や噴火現象の推移の全体像を把握し、適切な判断ができるようにするために、高度な噴火事象系統樹の作成を平成21年度から25年度まで実施された観測研究計画で行った。その結果、近い将来おこる火山活動や噴火事象の発生をツリー状にまとめ、過去の噴火事象を例にして分岐の確率を付した噴火事象系統樹は今後の火山活動を俯瞰的に理解するのに役立つこと、防災担当者にとっても事前の対策に十分役立てられることがわかった。
逐次変化する火山活動に対応した予測は、火山噴火予知連絡会などによる専門家会合を開き、地球物理学的観測や物質科学的分析による結果を総合的・多面的に理解することによってなされてきた。今後、より迅速な対応をとれるように、このような専門家による判断をより客観化・一般化することにより、科学的知見として将来に蓄積する必要がある。本研究では、リアルタイムで得られる各種の観測データと火山活動や噴火現象の分岐との関係を具体的に記述し、噴火事象系統樹をより高度なものに発展させることを目的に、現在の火山学的知見および本研究計画により明らかとなる法則をまとめ、噴火事象の分岐判断の基準の作成を進める。具体的には、以下の目標を掲げる。
このような判断基準の作成はこれまで試みられていない。5年間でプロトタイプを作成することを目指す。
上記目標にある3項目をほぼ番号順に進める。活発な火山活動を示す火山(桜島等)や防災上重要な火山(富士山等)については、それぞれの火山における噴火シナリオの分岐判断条件を検討する。
平成26年度においては、主に項目1について実施するとともに、項目2に着手する。マグマの特性やテクトニクス的な背景、これまで提案されている噴火事象系統樹を参考にしながら、火山活動および噴火活動の事象分岐点を網羅的に調べる。さらに、災害軽減の観点から、とくに重要な事象分岐点を抽出する。重要な事象分岐点について、地震学、測地学、電磁気学、火山ガス・噴出物分析学などの、現在までの火山学的知見をもとに、先行現象と噴火現象に関する経験則や理論的な予見の調査を開始する。
平成27年度においては、項目2を継続し、事象分岐の判断基準の表を試作する。経験則には、観測事例数、適用範囲、再現性などを、理論的な予測法については、観測による検証、条件などをもとにして、いくつかのランクを設定し、分岐条件の判断基準の確からしさを加えることを検討する。
平成28年度においては、外部資金等を利用し、国内外の火山研究者とセミナーを開催し、国内外の火山の事例の比較研究を行う。これをもとに平成27年度に作成した事象分岐の判断基準の問題点を明らかにし、分岐条件の判断基準の再作成を行う。
平成29年度には、まとめられた事象分岐の判断基準をもとに、現在の火山観測体制での利用可能性を検討する。また、必要な観測体制や研究の方向性をまとめる。
平成30年度には、5年間を総括し、本課題から提案する事象分岐の判断基準と今後の課題を総括し、文書にまとめる。
研究課題実施中には、他の研究課題とつねに連携を取り、それらの研究成果を取り入れるだけでなく、特に重要な研究内容を提言する。また、事象分岐の判断基準のもととなる論文、観測報告等を電子媒体等によりまとめ、常に検証・再構築できるようにする。
東北大学 西村太志、中村美千彦
他機関との共同研究の有無:有
北海道大学 中川光弘、橋本武志
東京大学 中田節也、森田裕一
東京工業大学 野上健治
京都大学 鍵山恒臣、井口正人
九州大学 清水 洋
気象庁 松森敏幸
気象研究所 高木朗充
産業総合研究所 篠原 宏志
防災科学技術研究所 藤田英輔
部署等名:東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻
電話:022-796-6531
e-mail:zisin-yoti@aob.geophys.tohoku.ac.jp
URL:http://www.zisin.gp.tohoku.ac.jp/
氏名:西村太志
所属:東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻
研究開発局地震・防災研究課
-- 登録:平成26年07月 --