電磁気的地震先行現象の観測と統計評価による他種の先行現象との比較

課題番号2501

(1)実施機関名:

東海大学

(2)研究課題(または観測項目)名:

電磁気的地震先行現象の観測と統計評価による他種の先行現象との比較

(3)関連の深い建議の項目:

2.(3)先行現象に基づく地震活動予測

(4)その他関連する建議の項目:

2.(2)ウ,地震活動評価に基づく地震発生予測・検証実験
4.(2)ウ,観測・解析技術の開発
4.(5)社会との共通理解の醸成と災害教育
4.(6)国際共同研究・国際協力

(5)優先度の高い地震・火山噴火との関連:

(6)平成25年度までの関連する研究成果(または観測実績)の概要:

 東海大学「電磁気学的広帯域先行現象の観測的検証とその発現メカニズムに関する研究」では、伊豆諸島において先行的な地電位差変動が存在し、統計的有意性を示す事に成功した(Orihara et al., PNAS, Vol. 109, 2012)。また岩石の微小破壊を必要としない岩石変形だけで電流を発生する電磁現象発現メカニズムが存在する事を示した(Takeuchi and Nagao, J. Geophys. Res., 118, 2013)。
 北海道大学「地震に関連する電磁気現象の観測研究」では、地震に伴うVHF帯電波伝播異常の基本的な性質を明らかにした(Moriya, et al, Geophys. J. Intl, 180, No.2, 858-872. 2010)。さらに巨大地震の直前にGPS-TECが変化する可能性のあることを指摘した(Heki, Geophys. Res. Lett., 38, 2011)。

(7)本課題の5か年の到達目標:

 観測研究では、時間的・空間的相関が極めて高い結果が得られていたが、当時のデジタル計測技術の限界で中断していたVLF帯パルス電磁波の新たな観測システムを構築し、VLF帯における先行現象の有無について一定の結論を得る。VHF帯の観測研究では、既存の観測網を良好に維持し、ケーススタディを積み重ねる。それ以外のDC-ULF帯等の観測についてもシステムを良好に維持し、先行現象の抽出を試みる。必要に応じて観測点周辺の比抵抗構造を測定し、現象発現の発現・伝搬メカニズムの理解を進める。
 先行現象の統計評価に関する研究では、従来の研究で地震発生との時間・空間的相関が示唆されている力学的現象(GPS地殻変動、地震活動度変化)、電磁気学的現象(電離層全電子数(GPS-TEC)、地磁気・地電位差変化)などについて、統計的評価を強化し、それぞれの先行現象の地震との相関を定量的に評価する。さらに,各々の現象を利用した地震発生予測法の予測能力を定量的に表現・比較できるような指標を開発する。また,異常の抽出や地震発生の予測の手法において客観性を確保し、第三者が評価可能なデータベースのプロトタイプを作成する。このため、先行現象研究が行われているロシア、キルギス、フランス、中国、台湾、ギリシャ等の研究者と連携し、既存のデータの発掘・再解析を実施する。

(8)本課題の5か年計画の概要:

 平成26年度は、VLF帯パルス電磁波の新たな観測装置の試作を行ない、予備観測を開始し最初のデータの取得を行なう。さらに既存のDC-ULF帯およびVHF帯の観測網を良好な状態で維持する。またこれまで電磁気観測の空白域となっている南海トラフ沿いの地域に、新規複合的電磁気観測点構築を開始する。統計評価に関する研究では、予測マップの形式を定義することから開始し、それを地震カタログと比較して算出される種々の統計量を算出するシステムの構築を開始する。一方で、いくつかの先行現象と目されるものを選定し、試行評価のための予測マップ作成に必要な基礎データとプログラム群を用意する。
 平成27年度はVLF帯パルス電磁波の本観測を開始するとともに、それ以外の観測網を良好な状態で維持する。VLF帯パルス電磁波観測については、先行現象候補と雷放電を判別するためのソフトウエアの開発を開始する。統計評価に関する研究では、試行評価のための予測マップを作成し、さまざまな評価指標を算出する。また東北地方太平洋沖地震の前に観測されたGPS-TECの変動について、観測データの存在する世界中の巨大地震についての解析を終了し、本現象に関する知見をまとめる。
 平成28年度はすべての観測網を引き続き良好な状態で維持する。VLF帯パルス電磁波観測については、先行現象候補と雷放電との判別ソフトウエアを完成させる。統計評価に関する研究では、試行評価を複数の現象に対して行い、さまざまな指標の長所・短所を検討する。
 平成29年度も引き続き観測網を良好な状態で維持するとともに、各々の先行現象から予測マップに変換する作業におけるチューニングによって、さまざまな指標による成績がどのような影響を受けるかを検討する。また、指標値の計算において、地震カタログのデクラスタ等の影響を検討する。
 平成30年度も引き続き観測網を良好な状態で維持するとともに、本研究で観測・収集・コンパイルされた先行現象のデータベースを作成する。統計評価に関する研究では、統計モデルによる予測との性能比較を行い、成果をとりまとめる。

(9)実施機関の参加者氏名または部署等名:

長尾年恭、馬塲久紀、佐柳敬造、原田 靖
他機関との共同研究の有無: 有
北海道大学(茂木透、橋本武志、日置幸介、勝俣啓)
東京大学地震研究所(中谷正生,鶴岡弘)
京都大学防災研究所(西村卓也)
九州大学(松島健、相澤広記)
東京学芸大学(鴨川仁)
千葉大学(服部克巳)
中部大学(井筒潤)
東京海洋大学(末廣潔)
京都産業大学(筒井稔)

(10)公開時にホームページに掲載する問い合わせ先

部署等名:東海大学海洋研究所地震予知研究センター
電話:054-334-0411
e-mail:nagao@scc.u-tokai.ac.jp
URL:http://www.sems-tokaiuniv.jp/

(11)この研究課題(または観測項目)の連絡担当者

氏名:長尾年恭
所属:東海大学海洋研究所地震予知研究センター

 

お問合せ先

研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)

-- 登録:平成26年07月 --