火山性流体と噴出物の解析に基づく噴火推移過程のモデル化

課題番号5006

(1)実施機関名:

独立行政法人産業技術総合研究所

(2)研究課題(または観測項目)名:

火山性流体と噴出物の解析に基づく噴火推移過程のモデル化

(3)関連の深い建議の項目:

1.(5)ア.マグマ噴火を主体とする火山
1.(5)イ.熱水系の卓越するする火山

(4)その他関連する建議の項目:

2.(4)事象系統樹の高度化による火山噴火予測

(5)優先度の高い地震・火山噴火との関連:

桜島

(6)平成25年度までの関連する研究成果(または観測実績)の概要:

 伊豆大島における自然電位の連続観測を継続し、火山活動の変動に備え、連続記録の速報値をweb公開するためのシステムを整えた。活動推移予測へ向けて熱水系の3次元数値シミュレーションを実施し、大量の火山ガスが深部より上昇し始めた場合の自然電位変動を計算した。観測点での変化を予測し、火山ガスの地表からの放出に先行して自然電位変動が現れる可能性を確認した。連続記録のうち火山活動とは関係のない年周変化について成因の検討を行い、地表面からの蒸発を考慮した雨水浸透過程で説明した。
 Multi-GASの水素センサーの定量手法の開発を行い、国内外の火山ガス組成の定量化を行い、脱ガス過程のモデル化を実施した。また、浅間火山、阿蘇火山、桜島火山においてMulti-GASを用いた火山ガス組成の連続観測を実施し、浅間山における火山ガス高放出期と低放出期の火山ガス組成に顕著な変化がないことを明らかにした。メルト包有物や斑晶の組成やその分布の解析を行い、2000年三宅島噴火のマグマ上昇過程のモデル化を行うとともに、 2011年新燃岳の噴火直前のマグマ混合過程の発生時期の推定を行った。
 雌阿寒岳、口永良部島、阿蘇火山において、火山ガスの繰り返し観測に基づく、浅部熱水系における火山ガス供給過程とその変化に関してモデル化を実施した。薩摩硫黄島火山では放熱量、自然電位、AMT法による電磁探査の観測を行い、数値シミュレーションを実施して、地下浅部で脱ガス活動が活発に行われている場での熱水系の形成過程と自然電位発生のモデリングを行った。口永良部島火山では自然電位を、雌阿寒岳火山で自然電位およびAMT法による電磁探査の観測を実施し、数値シミュレーションによって低比抵抗を示す変質帯の分布と自然電位の発現様式の関係を明らかにした。口永良部島火山においてGPS観測、干渉SARにより山頂浅部の膨脹の繰り返しを定量的に評価するとともに、その空間分解能の向上のためにGPS観測網の拡充を行った。

(7)本課題の5か年の到達目標:

 マグマ噴火を繰り返す火山において、噴火発生や活動推移に伴う火山ガス放出量・組成の特徴と時間変化を把握することにより、火山ガス供給過程の変化の視点からの噴火発生や活動推移のモデル化を行う。地殻へのマグマの貫入や火山ガスの供給による火山体浅部の熱水系の応答について、熱水系シミュレーションにより定量化する手法を、伊豆大島など活動的な火山に適用する。
 熱水系の卓越する火山において、熱水系の構造及び火山ガス供給系を明らかにし、水蒸気爆発発生に関与する熱水系の実体をモデル化する。
 火山噴出物の岩石学的・地球化学的解析に基づき、マグマ溜まりにおける噴火準備過程および直前過程の定量化を行うとともに、火山灰の解析に基づく噴火特徴把握手法の確立を行う。

(8)本課題の5か年計画の概要:

 桜島、浅間山などマグマ噴火を主体とし活発な噴煙活動を継続している火山において、Multi-GASによる火山ガス組成の連続観測および繰り返し観測を実施し、噴火発生や火山活動推移に伴う火山ガス組成の特徴と変化を把握し、火山ガス供給過程のモデル化を行う。特に桜島においては、航空機等を用いた観測も併用することにより、噴火により放出される火山ガス組成の特徴把握を目指す。また、噴煙活動を継続している火山において高時間分解能のSO2放出量変動観測を実施し、噴火発生前後における火山ガス放出量変動を定量化し、噴火発生過程のモデル化を行う。伊豆大島において自然電位の連続観測を実施し、火山活動静穏時における降雨などに対する地下水系の応答をモデル化し、火山活動に伴う変動を抽出する。さらに、想定されるマグマの貫入および火山ガスの供給に対する熱水系の応答を、シミュレーションを用いてモデル化し、発現する地表変動の多様性を評価する。
 雌阿寒岳、口永良部島などにおいて、火山ガスの繰り返し観測および放熱分布の把握、自然電位分布測定などを実施し、熱水系の分布および火山ガスの起源を明らかにすると共に、熱水系シミュレーションによるモデル化を実施し、水蒸気爆発の発生に関与している熱水系の実体を明らかにする。
 有珠、伊豆大島等マグマ噴火を繰り返す火山において、斑晶の累帯構造、マグマ溜まりの岩石学的特徴、揮発性成分濃度や圧力条件を把握し、噴火直前過程や噴火に至るまでのマグマ供給系の発展を明らかにするとともに、噴火を繰り返すメカニズムを解明する。桜島火山など活発に噴火している火山について、火山灰構成粒子の観察・分析等に基づき噴出物の特徴を把握するとともに、他の観測量や岩石学的解析と比較に基づきマグマ上昇・脱ガス過程をモデル化する。

(9)実施機関の参加者氏名または部署等名:

活断層・火山研究部門 マグマ活動研究グループ

他機関との共同研究の有無:有
東京大学地震研究所(武尾実、他数名)、京都大学防災研究所(井口正人、他数名)、
京都大学理学部(鍵山恒臣、他数名)

(10)公開時にホームページに掲載する問い合わせ先

部署等名:活断層・火山研究部門 マグマ活動研究グループ
URL:https://unit.aist.go.jp/ievg/group/magma/index.html

(11)この研究課題(または観測項目)の連絡担当者

氏名:篠原宏志
所属:活断層・火山研究部門 マグマ活動研究グループ

お問合せ先

研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)

-- 登録:平成26年07月 --