桜島火山におけるマグマ活動発展過程の研究

課題番号1908

(1) 実施機関名:

京都大学防災研究所

(2) 研究課題(または観測項目)名:

桜島火山におけるマグマ活動発展過程の研究

(3)関連の深い建議の項目:

1.(5)ア.マグマ噴火を主体とする火山

(4)その他関連する建議の項目:

2.(4)事象系統樹の高度化による火山噴火予測
3.(4)地震・火山噴火の災害誘因の即時予測手法の高度化
3.(5)地震・火山噴火の災害軽減のための情報の高度化

(5)優先度の高い地震・火山噴火との関連:

桜島火山噴火

(6)平成25年度までの関連する研究成果(または観測実績)の概要:

 2006年6月に噴火活動が再開した桜島の昭和火口における噴火活動は年々爆発回数が増加し、長期的な活発化の傾向にある。1)桜島の主マグマ溜りがあるとされる姶良カルデラ下におけるマグマの蓄積は、昭和火口における爆発的噴火の継続にもかかわらず、依然として進行している。2)2006年に始まった昭和火口の噴火活動の大きな変化があったのは2009年であり、これに前駆または同期して、地盤変動、温泉ガス、噴出物、地下構造などの多くの観測項目において顕著な変化が観測された。3) 北岳下のマグマ溜まりの存在を示唆する研究結果が得られ、姶良カルデラ下のマグマ溜まりから北岳下へのマグマの貫入を検知することが火山活動予測の上で重要であることが示された。一方、火口浅部においては2009年以降、徐々に火道が拡大してきたことを示すデータが得られてきた。

(7)本課題の5か年の到達目標:

 昭和火口における噴火活動過程において、多項目の5年にわたる長期観測に基づいてカルデラ下におけるマグマの蓄積に伴うその量の推移および桜島中央火口丘下へのマグマの移動の過程を把握した上で、火山体構造とその時間変化をあわせ考慮して、桜島のマグマ蓄積・移動・上昇の変化を定量的・定性的に把握することにより、地下のマグマの動態がどのように変化し、今後の活動の活発化に繋がっていくのかをモデル化する。

(8)本課題の5か年計画の概要:

 本課題は、「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」事業に基づいた計画である。本研究計画では、爆発が多発し、将来、噴火活動が更に活発化する桜島を対象として、個々の爆発および一連の活動期とそれらに前駆する諸現象を物質科学も取り込んだ最大限の多項目・長期観測により定量化し、両者の間の経験則を確立するとともに、その理論的背景について考察する。さらに、上記(4)その他関連する建議の項目記述した上位項目において直接的に成果を活用する。具体的には、次の5つのテーマに基づいて研究をすすめる。
[1] 爆発現象に前駆する短期的マグマの蓄積過程及びマグマ放出過程の解明
[2] 長期的マグマ蓄積過程・放出過程の解明
[3] 火山体構造の時間変化に基づくマグマ供給系の発展過程の解明
[4] 先行マグマ物質の分析によるマグマ供給系の発展過程の解明
[5] マグマ挙動のモデリング
 [1]では、個々の爆発について火山性地震、地盤変動、絶対重力、二酸化硫黄放出量観測、空気振動、火山灰放出量に基づいて、前駆現象と噴火規模を定量化し、噴火に前駆する発生様式や変動パターンと後続する噴火の規模・様式を関連付けて噴火予測の基礎データを構築するとともに、蓄積および放出過程を明らかにする。
 [2]では、火山活動の1~2年周期の活発化と縮退のサイクルに注目し、長期的なサイクルを定量化したうえで、浅部および深部の地震活動や地盤変動との関係を明らかにし、長期的な予測の基礎データとする。
 [3]では、長期的なサイクルと深部および浅部の地下構造の変化の関係を明らかにする。地下構造の時間変化把握にはMT、人工地震探査、地震波干渉法、地震波トモグラフィー、重力など多様な手法を駆使し、マグマ供給系の発展過程を明らかにする。26年度および28年度に人工地震探査を実施し、「地震及び火山噴火予知のための観測研究計画」実施時からの時間変化を抽出する。
 [4]では、火山灰水溶性成分、火山灰・レキ等の噴出物の岩石学的分析、温泉ガス濃度などのマグマ発散物の分析に基づいて、質的変化と長期サイクルとの関係を明らかにし、火道の拡大や開口率などのマグマ供給系の発展過程を明らかにする。
 [5]では、上記[1]~[4]で得られる観測量の変化に対してマグマ溜まりや火道内のマグマ挙動を、混相流の基礎方程式や実験などから得られる構成方程式をもとにして、数値計算を行い、マグマ挙動の数値モデルを構築する。

(9)実施機関の参加者氏名または部署等名:

井口正人、中道治久、山本圭吾、為栗健、大見士朗

他機関との共同研究の有無:有
北海道大学大学院理学研究科(大島弘光、中川光弘)
秋田大学工学資源学部(筒井智樹)
東北大学大学院理学研究科(西村太志、太田雄策、小園誠史)
東京大学地震研究所(大久保修平、及川純)
東京大学大学院理学系研究科(森俊哉)
東京工業大学火山流体研究センター(野上健治、神田径)
常葉大学環境防災学部(嶋野岳人)
名古屋大学大学院環境学研究科(山中佳子)
京都大学大学院理学研究科(大倉敬宏、横尾亮彦、宇津木充)
九州大学大学院理学研究院(清水洋、松島健、相澤広記)
鹿児島大学理学部(宮町宏樹、中尾茂、八木原寛)

(10)公開時にホームページに掲載する問い合わせ先

部署等名:京都大学防災研究所火山活動研究センター
電話:099-293-2058
e-mail:iguchi.masato.8m@kyoto-u.ac.jp
URL:http://www.svo.dpri.kyoto-u.ac.jp/default.html

(11)この研究課題(または観測項目)の連絡担当者

氏名:井口正人
所属:京都大学防災研究所

お問合せ先

研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)

-- 登録:平成26年07月 --