水蒸気爆発場の物理・化学状態の把握と火山流体の挙動

課題番号1601

(1)実施機関名:

東京工業大学

(2)研究課題(または観測項目)名:

水蒸気爆発場の物理・化学状態の把握と火山流体の挙動

(3)関連の深い建議の項目:

1.(5)イ.熱水系の卓越する火山

(4)その他関連する建議の項目:

1.(3)ウ.内陸地震と火山噴火

(5)優先度の高い地震・火山噴火との関連:

(6)平成25年度までの関連する研究成果(または観測実績)の概要:

 平成21年度から25年度まで実施された観測研究計画では、水蒸気爆発を繰り返してきた草津白根山において,火山性流体の組成観測と地磁気連続観測を行った。その結果、火口湖水の陰イオン成分が地下深部から供給される火山ガスの性質を反映しており、その組成変化が水蒸気爆破場における火山活動のモニタリング指標になりうること、更に、ガスをトラップする低透水性の粘土キャップの形状の時間変化について、人工電流場を用いる電磁誘導を用いて深度400m程度まで高精度に比抵抗を決定できることが分かった。

(7)本課題の5か年の到達目標:

 水蒸気爆発は、地下浅所に形成された火山ガス溜まりがガス圧に抗しきれなくなった時に発生するものであり,マグマの直接的な関与は必ずしも必要ではない。水蒸気爆発の準備領域では、熱水変質した難透水性の蓋と、その直下に蒸気の卓越した気液二相が共存する熱水流体溜りが存在することが明らかになりつつある。この熱水流体溜りの気相は噴気ガスとして、液相は温泉水や火口湖水として火山体から常時放出されている。熱水流体溜りを構成する変質岩石は、火山体を構成する岩石が噴気ガスや酸性熱水との反応によって生成し、その変質プロセスは物理的・化学的条件に大きく依存する。また、その形状は電磁気観測によってモニターできることから、水蒸気爆発の予測の高度化のためには、爆発場を形成する活動火口下浅部の物理・化学状態の変動を火山性流体の挙動とリンクさせて捉えることが不可欠である。本研究では、火山ガスや湖水・温泉水の地球化学的観測と地震・地殻変動観測による力学的状態や地磁気観測に火口湖の水温や水位の精密観測を加えて、熱的状態を総合的に解釈し、草津白根山での活動火口下浅部の物理・化学状態の変動を捉えることを目指す。本課題は、課題番号1003「多項目観測に基づく火山熱水系の構造の時空間変化の把握と異常現象の検知(代表機関:北海道大学)」と関連しており、1003で対象となる火山(十勝岳,吾妻山,阿蘇および口永良部島)についても、本課題1602と同様に地球化学的観測、地磁気観測及び熱観測等を実施する。

(8)本課題の5か年計画の概要:

 本研究では、研究期間の5年間にわたり、草津白根山湯釜火口周辺に整備された活動火口観測システムによる微小地震、GPS及び傾斜変動の連続観測および火山ガス、湖水・温泉水などの化学組成などの繰り返し観測を実施する
 平成26年度においては、草津・湯釜火口湖の水温データを取得し、既存のボーリングコアの変質部分の二次生成鉱物組成について記載する。
 平成27年度においては、草津・湯釜火口湖の水位データの分解能を向上させ、
変質部分の化学組成分析を実施する。
 平成28年度においては、三次元地下比抵抗構造解析を行い、活動火口周辺の詳細な三次元地下構造モデルを構築する。
 平成29年度においては、空中赤外観測を実施して地表面放熱量を測定し、平成24年度からの増減を明らかにする。得られた地球化学・地球電磁気データから熱水系全体の物質・熱収支の推定を行う。
 平成30年度には火山性流体の挙動と火山体浅部で発生する諸現象との関係性を解明する。十勝岳などでも空中赤外観測や噴煙画像解析・等を行い、各火山からの地表面放熱量を計測する。

(9)実施機関の参加者氏名または部署等名:

東京工業大学 野上健治
東京工業大学 小川康雄
東京工業大学 神田 径
東京工業大学 寺田暁彦

他機関との共同研究の有無:無

(10)公開時にホームページに掲載する問い合わせ先

部署等名:東京工業大学火山流体研究センター
電話:0279-88-7715
e-mail:knogami@ksvo.titech.ac.jp
URL:http://www.ksvo.titech.ac.jp/

(11)この研究課題(または観測項目)の連絡担当者

氏名:野上健治
所属:東京工業大学火山流体研究センター

お問合せ先

研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)

-- 登録:平成26年07月 --