地球物理・地球化学統合多項目観測および比較研究によるマグマ噴火を主体とする火山の定量化とモデル化

課題番号1508

(1) 実施機関名:

東京大学地震研究所

(2) 研究課題(または観測項目)名:

地球物理・地球化学統合多項目観測および比較研究によるマグマ噴火を主体とする火山の定量化とモデル化

(3)関連の深い建議の項目:

1.(5)ア.マグマ噴火を主体とする火山
1.(5)イ.熱水系の卓越する火山

(4)その他関連する建議の項目:

2.(4)事象系統樹の高度化による火山噴火予測

(5)優先度の高い地震・火山噴火との関連:

マグマ噴火を主体とする火山を対象とする本研究は、桜島火山噴火の研究と相補い合う関係である。

(6)平成25年度までの関連する研究成果(または観測実績)の概要:

 データの蓄積が進んだ火山では地下構造 や応力場とマグマ蓄積の関係が明らかになり,マグマ供給系や熱水系のモデル化が行われ,噴火に先立つマグマ移動の把握が可能になった。また,宇宙線や人工衛星・航空機などによる新たな観測技術が,噴火現象の理解や活動評 価に有効であることが実証された。さらに,物質科学的研究の進展により,マグマ上昇や脱ガスなどの噴火過程に関する理解が進んだ。 火口近傍での地球物理・地球化学的な多項目観測が可能となり,火山噴火をマグマや揮発性成分の運動と関連させて議論できる ようになった。近年,マグマ物性とマグマ上昇速度などと噴火規模・様式の関連 が見られる例も見つかり,火山噴火予知のために重要な知見が蓄積された。
 「地震及び火山噴火予知のための観測研究計画」の様々な項目が上記研究成果に関係するが、特に関係の深い項目は以下のとおり.
2(2)(2-2)ア.マグマ上昇・蓄積過程
2(3)(3-3)ア.噴火機構の解明とモデル化
2(3)(3-3)イ.噴火の推移と多様性の把握
2(4)エ.マグマの分化・発泡・脱ガス過程
3(2)イ.リモートセンシング技術
3(3)イ.地震活動や噴火活動の活発な地域における観測技術

(7)本課題の5か年の到達目標:

 本研究では、国内外の火山の比較研究を行う.1)浅間山の研究に基づきマグマ供給系の深部から浅部に渡る詳細なモデルを提案し、他のマグマ噴火を主体とする国内外の火山で提案されているマグマ供給系モデルとの比較を行う。2)伊豆大島のデータから応力変化と地震発生の関係を表すモデルを提案し、地震学の分野での先行研究と比較し、火山に適用できるモデルの確立を目指す。3)諏訪之瀬島では火口近傍観測で観測された噴火直前の加速度的な傾斜変化が、火道内マグマ上昇モデルにより説明されている。諏訪瀬島において傾斜計を含む火口近傍多項目観測網を強化してモデルの精密化を図るとともに、国内外の火山における観測データおよびモデルと比較する。
 これらの比較研究を通じて、マグマ噴火を主体とする火山に共通する要素を抽出し、モデルの高度化を進める。これまでの噴火事象の分岐判断は経験的要素が強かったが、モデルの高度化により、分岐判断に物理的な根拠を与えることができる。それにより、噴火事象系統樹は経験則の段階から科学的理解を基礎に置いた予測手法へ進化し、経験則に近い現状に比べて予測精度が大きく向上する。

(8)本課題の5か年計画の概要:

 本課題は実施機関及び共同研究機関の運営費交付金に支えられる計画である。
平成26年度:浅間山、諏訪瀬島において観測網の高度化を開始する。また、伊豆大島においてはガス観測準備のため、1000m孔からのケーブル引上げを行う。桜島において空中時期観測および火口近傍への観測装置設置を行う。
平成27年度:浅間山、諏訪瀬島においては高度化された観測を継続する。伊豆大島においてはガス観測機器の開発を進めるとともに、地震・地殻変動観測網の高度化を進める。樽前山で空中時期観測を行う。比較研究のための海外火山調査を行う。
平成28年度:浅間山、諏訪瀬島、伊豆大島においては高度化された観測を継続する。伊豆大島においてはガス観測機器の開発も継続する。桜島において空中時期観測および火口近傍への観測装置設置を行う。観測対象火山においてモデルを構築し、国内外火山との比較を進める。
平成29年度:浅間山、諏訪瀬島、伊豆大島においては高度化された観測を継続する。伊豆大島においてはガス観測機器の運用テストも行う。樽前山において空中時期観測を行う。比較研究のため、海外調査を行う。観測対象火山においてモデルを構築し、国内外火山との比較を進める。
平成30年度:浅間山、諏訪瀬島、伊豆大島での観測を継続するとともに、比較研究に基づくモデルの高度化を進める。桜島において空中時期観測および火口近傍への観測装置設置を行う。海外調査を行い、観測対象火山と国内外火山とでモデルの比較をさらに進め、噴火事象系統樹の分岐判断へ応用する。

(9)実施機関の参加者氏名または部署等名:

武尾実、森田裕一、大湊隆雄、上嶋誠、市原美恵、及川純、金子隆之、青木陽介、小山崇夫(以上 地震研究所)、橋本武志(北大)、本多嘉明(千葉大)、井口正人、中道治久、為栗健(以上 京大防災研)、西村太志、三浦哲(以上 東北大)、野上健治(東工大)、松本聡、寅丸敦志(以上 九大)、森俊哉(東大院理)、八木原寛(鹿児島大)

他機関との共同研究の有無:有
浅間山:森俊哉(東大院理)
伊豆大島:松本聡(九大)、野上健治(東工大)、三浦哲(東北大)
諏訪瀬島:井口正人、中道治久、為栗健(以上 京大防災研)、西村太志(東北大)、八木原寛(鹿児島大)
樽前山:橋本武志(北大)、本多嘉明(千葉大)
桜島:井口正人、中道治久、為栗健(京大防災研)、本多嘉明(千葉大)
モデル化:寅丸敦志(九大)

(10)公開時にホームページに掲載する問い合わせ先

部署等名:東京大学地震研究所
電話:03-5841-5712
e-mail:yotikikaku@eri.u-tokyo.ac.jp
URL:

(11)この研究課題(または観測項目)の連絡担当者

氏名:大湊隆雄
所属:東京大学地震研究所

お問合せ先

研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)

-- 登録:平成26年07月 --