課題番号1205
東北大学
岩石組織に基づく火道浅部プロセスの推定手法の開発
1.(5)ア.マグマ噴火を主体とする火山
2.(4)事象系統樹の高度化による火山噴火予測
3.(4)地震・火山噴火の災害誘因の即時予測手法の高度化
桜島火山噴火
「浅部火山性流体挙動の理論的・実験的研究」(課題番号1216)における、特に物質科学的研究において、以下の成果を得た。
マグマ内揮発成分の挙動,特に火山浅部におけるマグマからの脱ガスは,噴火様式・噴火推移の多様性を生み出す重要な素過程の一つである。そのため,本研究課題では,流紋岩質マグマの高温封圧下における塑性変形実験・高変形速度下における脆性変形実験といった塑性・脆性変形のその場観察を世界に先駆けて行い,脱ガスの効率を支配するマグマ中の空隙・破砕面の生成/癒着過程および流動による気泡組織の変形過程を明らかにし,マグマ変形とガス浸透率の関係の定量化を行った。また,同時に,深部の苦鉄質マグマから浅部マグマ溜まりへの二酸化炭素の反応輸送(CO2 fluxing) のモデルを構築し,浅部への流体の供給率や移動様式を観測から明らかにする手法を提案するなど,5か年の計画に沿ったマグマ内揮発性成分の挙動およびそのマグマ全体の動態への影響を明らかにした。
平成25年度には,剪断破壊を模擬したマグマの浸透率の測定を引き続き行い,破壊領域を介した脱ガスが極めて効率的な脱ガスを引き起こす可能性が示した。さらに,従来より高温条件下 (1200℃まで)におけるマグマ剪断変形が可能な装置を作成し,アルカリ岩質マグマの流動場での結晶化実験を行い,流理構造の部分的な再現に成功した。また,霧島火山新燃岳の2011年噴火における噴出物の解析において、マイクロライトよりさらに結晶数密度の高いサブミクロンスケールの結晶“ナノライト”の鉱物組み合わせの違いとサブプリニー式・ブルカノ式・溶岩噴火といった噴火様式とが相関することを明らかにし,ナノライト結晶化のカイネティクスを実験で決定することにより,マグマの上昇速度・地表付近でのマグマ滞留時間といった浅部マグマプロセスを定量的に明らかにできる見通しを示した。
平成26年度においては、項目1について、2011年新燃岳噴火噴出物の記載的研究を実施する。噴火様式(サブプリニー式軽石、ブルカノ式軽石・本質石質岩片)ごと、石基結晶の鉱物種ごとに、結晶サイズ分布(CSD)を調べる。噴火様式の違いに着目したナノライトのCSDデータはこれまでに報告例がない。
平成27年度においては、項目1について、噴火事例についての岩石記載的研究についての成果をまとめるとともに、過冷却メルトの結晶化実験を実施する。また項目3について、メルトフォームの組織緩和実験を行う。火道浅部を再現した低圧高温実験を行うことにより、CSDと結晶化時間などの関係を、定量的に把握することができる。再現実験については予備実験を行っており技術的な問題はない。
平成28年度においては、平成27年度の計画を継続し、それぞれの実験について、温度・結晶化時間・水蒸気圧・メルト組成などの条件を変えた対照実験を追加する。これにより、幅広い噴火事例に応用が可能とする。メルトフォームの組織緩和実験については、組織緩和の程度と、ガス浸透率の関係を調べるとともに、緩和速度とブルカノ式噴火の発生頻度との関係について検討を行い、実際の爆発的噴火における火道浅部条件を推定できるようにする。
平成29年度においては、項目2の研究として、噴火活動時に、噴出物に含まれる結晶量を短時間で簡便に測定するため、マイクロライト・ナノライトを含む試料の可視分光あるいはX線回折分析を行う。平成28年度までに得られた実験をもとに、項目1、3について、実験的研究によって得られた成果をまとめる。
平成30年度においては、最終年度は、5年間を総括し、本課題から提案する、火道浅部での噴火様式の分岐条件を「2(4)事象系統樹の高度化による火山噴火予測」にフィードバックするとともに、今後の課題を総括し、文書にまとめる。
東北大学大学院理学研究科地学専攻 中村美千彦、奥村聡
他機関との共同研究の有無:有
山形大学理学部地球環境学科 吉村俊平
部署等名:東北大学大学院理学研究科地学専攻
電話:022-795-6673
e-mail:zisin-yoti@aob.gp.tohoku.ac.jp
URL:http://www.es.tohoku.ac.jp/JP/index.html
氏名:中村美千彦
所属:東北大学大学院理学研究科地学専攻
研究開発局地震・防災研究課
-- 登録:平成26年07月 --