注水実験による内陸地震の震源断層の詳細な構造と回復過程の研究

課題番号1906

(1)実施機関名:

京都大学防災研究所

(2)研究課題(または観測項目)名: 

注水実験による内陸地震の震源断層の詳細な構造と回復過程の研究

(3)関連の深い建議の項目:

1.(3)ウ.内陸地震と火山噴火

(4)その他関連する建議の項目:

1.(4)イ.断層滑りと破壊の物理モデルの構築
2.(2)イ.地殻ひずみ・応力の変動

(5)優先度の高い地震・火山噴火との関連:

(6)平成25年度までの関連する研究成果(または観測実績)の概要:

 「地震及び火山噴火予知のための観測研究計画」の課題「注水実験による内陸地震の震源断層の微細構造と回復過程の研究」において、野島断層(震源断層)への第1回目の1800m深度注水実験を2013 年9 月に実施した。注水に伴う800m 孔での歪み変動および地表での自然電位の変動について暫定的な解析・モデリングを行った。注水に伴う極微小地震の活動変化および高速サンプリング波形データの暫定的な解析を行った。アクロス連続運転を実施し、地表と800m孔底間のP波、S波速度が1999年~2013年にかけて約0.4%速くなったことを見いだした。なお、上記課題以前の540m深度注水実験(1997年~2009年)においては、野島断層近傍岩盤の透水係数が約60%低下したことを複数項目(800m孔地下水・歪、地表自然電位)の観測・モデリングにより検出した。また、540m深度注水に伴う誘発地震と考えられる極微小地震の活発化を検出し、それらの震源パラメータの特性、クラスター活動特性等を推定した。

(7)本課題の5か年の到達目標:

 野島断層において第2回目の1800m深度注水実験を実施する。第1回注水実験(2013年実施)と合わせて、震源断層の透水性構造、および震源断層から分岐断層にいたる詳細な破砕帯(透水性)構造を推定する。震源断層における透水性の経年変化を検出し、野島断層(震源断層)の強度回復過程について検討する。1800m深度注水に伴う誘発地震を検出し、誘発地震の発生過程および詳細な断層構造と地震発生特性について解明する。野島断層および他の活断層(震源断層)について、断層深部構造(特に走向方向の構造不均質性)と本震時の破壊過程および回復過程に関する特性を抽出する。

(8)本課題の5か年計画の概要:

 野島断層での第1回目の1800m深度注水実験(2013年9月)について、観測データの解析・モデリングを深化させる。まず、震源断層を深さ約400mにおいて貫通する500m孔での地下水位データについて、注水に伴う微小な変動を抽出し、拡散過程モデリングにより震源断層の透水係数を推定する。800m孔底における歪み変動、地下水位変動、地表で測定された自然電位データについてもさらにモデル化を進め、野島断層の震源断層から分岐断層にいたる断層帯全体の透水性構造、および注入水の挙動を推定する。これにより、従来の540m深度注水に対して行った800m孔歪変動および地下水位変動のモデリング解析(拡散過程モデル)の改善・高度化へのフィードバックを行う。
 第2回目の1800m深度注水実験を5年度目(平成30年度)に実施する。野島断層の震源断層(最上部)の透水性構造の時間変化を検出し、強度回復過程について検討する。
 野島断層上盤側の地表岩盤に設置されたアクロス震源の連続運転を実施する(各年度約2ヶ月間)。これにより、従来検出されていたアクロス震源~800m孔底地震計間の地震波の走時・振幅の経年変化についてさらに検証する。S波偏向異方性の測定も合わせて行い、地震波の走時や振幅変動の要因となる野島断層近傍の構造特性について検討する。
 1800m深度注水に伴う誘発地震(極微小地震)の発生を検出する。1800m孔地震計の高速(10kHz)サンプリング波形の解析により、誘発地震の震源過程(震源パラメータおよびそのスケーリング、初期破壊過程、等)を推定する。地表に設置する地震観測点も含めて高精度の震源決定を行い、断層トラップ波の解析とも合わせて、断層破砕帯と誘発地震の位置関係を明らかにする。誘発地震および定常地震活動について、800m孔地震波形の相互相関係数等にもとづいて震源精度以上に高い精度の震源分布特性(震源クラスター構造)を明らかにする。これらの結果に基づき、注水誘発地震および定常地震活動について、震源過程および発生特性の違い、およびそれらと断層微細構造との関係を明らかにする。
 注水実験によらない地震学的な手法(地震波散乱係数やS波偏向異方性の経年変化)からも地震発生後の震源断層の回復過程を検出できる可能性がある。野島断層および最近発生した内陸地震の震源断層を対象として、断層深部構造(特に走向方向の構造不均質性)、本震時の破壊過程と回復過程の関係を系統的に調べる。
 年度毎の計画概要は以下のとおり。
 26・27年度:1800m深度注水実験(第1回)データの解析・モデル化、ボアホール連続観測・データ解析(地震、地殻変動、地下水)、アクロス連続運転、野島断層等の深部不均質構造および回復過程の地震学的解析
 28・29年度:ボアホール連続観測・データ解析(地震、地殻変動、地下水)、アクロス連続運転、野島断層等の深部不均質構造および回復過程の地震学的解析
 30年度:1800m深度注水実験(第2回)の実施および解析・モデル化、地震臨時観測・自然電位観測、アクロス連続運転、ボアホール連続観測・データ解析(地震、地殻変動、地下水)、野島断層等の深部不均質構造・回復過程の取りまとめ

(9)実施機関の参加者氏名または部署等名:

西上欽也・大志万直人・吉村令慧・加納靖之(京都大学防災研究所)
他機関との共同研究の有無:有
東京大学地震研究所(山野 誠)、名古屋大学環境学研究科(山岡耕春・田所敬一)、静岡大学理学部(生田領野)、金沢大学理工研究域自然システム学系(平松良浩)、高知大学理学部(村上英記)、大阪市立大学理学部(山口 覚)、奈良産業大学情報学部(向井厚志)、産業技術総合研究所(北川有一・小泉尚嗣)。

(10)公開時にホームページに掲載する問い合わせ先

部署等名:京都大学防災研究所地震予知研究センター
電話:0774-38-4195
e-mail:nishigami.kinya.3r@kyoto-u.ac.jp
URL:http://www.rcep.dpri.kyoto-u.ac.jp/idoi/kaibo/

(11)この研究課題(または観測項目)の連絡担当者

氏名:西上欽也 
所属:京都大学防災研究所地震予知研究センター

お問合せ先

研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)

-- 登録:平成26年07月 --