蔵王山周辺の総合観測

課題番号1202

(1)実施機関名:

東北大学大学院 理学研究科

(2)研究課題(または観測項目)名:

蔵王山周辺の総合観測

(3)関連の深い建議の項目:

1.(3)ウ.内陸地震と火山噴火

(4)その他関連する建議の項目:

1.(2)イ.プレート境界巨大地震
1.(5)イ.熱水系の卓越する火山
2.(2)ア.プレート境界滑りの時空間発展

(5)優先度の高い地震・火山噴火との関連:

東北地方太平洋沖地震

(6)平成25年度までの関連する研究成果(または観測実績)の概要:

 1998年の岩手山の噴火未遂事件において、GPS観測データを用いて圧力源の時空間分布を推定し、それらが地震活動の移動現象と対応していることなどを示した。また、2000年有珠山噴火の際には、広帯域地震観測により、深さ約5kmのマグマ溜まりからのマグマ移動に伴う長周期地震動を検出し、地殻変動の時間変動と対応していることを示した。栗駒山・鳴子火山周辺の地殻構造を推定し、マグマ分岐過程を明らかにするとともに、近傍で発生した2008年岩手・宮城内陸地震の発生過程と密接に関わることを明らかにした。
 蔵王周辺の広域地殻電気伝導度構造を推定し、上部マントル・下部地殻付近を起源とするマグマ・地殻流体とみられる高電気伝導体が蔵王直下に ほぼ鉛直に延伸しているイメージを明らかにした。また、諏訪之瀬島やスメル山では、火口から500m程度の距離に傾斜計を埋設することにより、噴火に先行する数十nano radian 程度の山上がりを示す微小な山体変形を捉えることに成功している。噴火に先行した山体変形・傾斜は、同様に阿蘇山における水蒸気爆発・噴火の際にも火口近傍における広帯域地震観測によって観測されている。
桜島火山の絶対重力観測データにもとづき、火道内マグマの頭位推定を行い、火山活動との相関を示した。2013年霧島火山の噴火に際してハイブリッド重力観測を実施し、GPS及び傾斜データと統合した解析から、ブルカノ式噴火のモデルを提示した。

(7)本課題の5か年の到達目標:

 蔵王山周辺域において、稠密な地震及び電磁気観測、制御震源による地震波速度構造探査等を実施し、火山体直下の詳細な地震波速度構造や減衰構造、比抵抗構造等を推定することにより地殻深部から火山体浅部における流体分布を明らかにする。また、傾斜観測、GNSS観測、InSAR解析、重力観測などにより、火山体変形の時空間的特徴を明らかにするとともに、火山性微動の解析などを通じて火山性流体系の時間発展を検出する。休止期から活動期に入ったと考えられる同火山の活動の推移を精確にモニターすることを通じてマグマ溜まりや火道などの物理的特性、また、その周辺の応力・ひずみの時空間分布を明らかにする。
 有史以来の蔵王山の活動は、御釜火口における水蒸気爆発を主たる活動としているが、火口域近傍まで観光客が容易に近づけることから、小規模な水蒸気爆発であっても被害が発生する可能性も高い。また冬季の積雪も多いことから、過去にも融雪雪崩などの災害も引き起こしている。火山流体系の状態を把握するとともに、その情報を行政・地元防災機関と共有し、有効な防災・減災対策に結びつけることを目指す。

(8)本課題の5か年計画の概要:

 制御震源による地下構造探査実験(平成27年度実施予定)や自然地震の観測により、山体及び周辺域のマグマ供給系の構造を推定し、震源決定精度の向上などに資する基礎データの拡充を図るとともに、火山体構造と山体及び周辺域で発生する地震や火山性微動(深部低周波微動・浅部低周波微動・長周期地震)との関連を明らかにする。また、マグマ供給系近傍のメカニズム解(応力場)分布、地震波干渉法(常時微動トモグラフィ法)、プレート境界地震や火山性地震の中に含まれる相似地震を利用した実体波による解析を実施し、微動等の火山活動に関わるマグマ等の流体の圧力変化や移動等に伴う構造や場の変化の有無に関する検討を行う。
 蔵王山は水蒸気爆発を活動の主体としており、火山浅部の熱水系を明らかにするため、AMT探査による電気伝導度構造推定と全磁力観測を行う。一般に熱水系が卓越し水蒸気爆発を起こす火山では爆発前の深部・広域の地盤変動に乏しい傾向がある。電気伝導度構造と全磁力観測を組み合わせることで浅部での熱水だまりの形態や容量と熱変動の時間変化を把握することは災害予測と噴火準備過程把握する上で重要な判断材料となる。測地観測では、平成25年度に蔵王山馬の背に設置予定の傾斜観測を継続し、御釜火口において水蒸気爆発等の火山噴火が発生した際に、その活動に伴う山体変形の基礎的なデータを得る。また、簡単な圧力源モデルを用いて、噴火発生源の定量化を行う。また、 GNSS観測、InSAR解析、重力観測などにより、より広域の火山体変形の時空間的特徴を明らかにする。
 このようにして得られる結果から、火口流体系の構造および流体移動モデルを構築するとともに、それらの情報を気象庁や地元防災機関などとの共有を行う。また、諏訪瀬島や阿蘇山における先行研究のように噴火前兆現象として数分前からの地盤変動が観測される可能性があるため、このような観測結果を即時的かつ有効な防災・減災対策に結びつける方策を各機関と検討する。

(9)実施機関の参加者氏名または部署等名:

三浦 哲,西村太志,山本 希,岡田知己,中島淳一,太田雄策,
内田直希,市來雅啓

他機関との共同研究の有無:有
東京大学地震研究所:大久保修平,今西祐一,田中愛幸
東京工業大学:小川康雄,神田 径

(10)公開時にホームページに掲載する問い合わせ先

部署等名:東北大学大学院理学研究科地震・噴火予知研究観測センター
電話:022-225-1950
e-mail:zisin-yoti@aob.gp.tohoku.ac.jp
URL:http://www.aob.gp.tohoku.ac.jp/

(11)この研究課題(または観測項目)の連絡担当者

氏名:三浦 哲
所属:東北大学大学院理学研究科地震・噴火予知研究観測センター

お問合せ先

研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)

-- 登録:平成26年07月 --