地質および物質科学的データに基づく低頻度大規模火山現象およびその準備過程の研究

課題番号:1001

(1)実施機関名:

北海道大学

(2)研究課題(または観測項目)名:

地質および物質科学的データに基づく低頻度大規模火山現象およびその準備過程の研究

(3)関連の深い建議の項目:

1.(2)ア.史料,考古データ,地質データ及び近代的観測データ等に基づく低頻度大規模地震・火山現象の解明

(4)その他関連する建議の項目:

1.(1)ア.史料の収集とデータベース化
1.(1)ウ.地質データ等の収集と整理
1.(5)ア.マグマ噴火を主体とする火山
1.(5)イ.熱水系の卓越する火山

(5)優先度の高い地震・火山噴火との関連:

(6)平成25年度までの関連する研究成果(または観測実績)の概要:

 新規研究

(7)本課題の5か年の到達目標:

 低頻度大規模火山現象としてカルデラ形成噴火と、大規模山体崩壊現象を研究対象とする。まず過去に発生した大規模カルデラ形成噴火を対象として、主として地質学的手法により、先行する噴火の有無を確認し、その時期と規模・様式・推移等について明らかにする。またカルデラ形成噴火についても、噴火開始から終了までの推移を詳細に復元する。そして物質科学的手法により、マグマ供給系の実体と時間変化を明らかにする。とくに、大規模噴火に至るまでのマグマ蓄積過程や周期性を定量的に理解し、マグマプロセスやその変化について時間軸を明確にして議論する。そして先行噴火からカルデラ形成噴火にかけてのマグマ供給系の生成・移動・蓄積という準備過程、そしてカルデラ形成噴火過程について明らかにすることを目的とする。そのことによりカルデラ形成噴火における、観測可能な前兆現象の種類と規模について議論できる材料を提供することを目指す。大規模山体崩壊現象では、記録の残る国内の過去の山体崩壊事例について、前兆現象および崩壊の推移について再検討する。また火山活動とは関係なく大地震によって誘発される火山体崩壊事例も、それらの分布と発生頻度について検討する。

(8)本課題の5か年計画の概要:

〇カルデラ形成噴火:基礎的な火山地質学的研究が行われており、形成年代が比較的新しく、異なる規模という観点から、VEI=7として姶良および支笏、VEI=6~7として鬼界および摩周を対象とする。これらについて表層地質調査およびボーリング・トレンチにより、カルデラ噴火の推移について、特に最初期の噴火に注目して、層序を確立する。さらにカルデラ形成噴火前の噴火活動について、特に中小規模の噴火の有無を明らかにする。これらに加えて必要に応じてK-Arおよび炭素同位体による年代測定も実施する。また海外の事例を文献、あるいは必要に応じて現地調査から再検討する。さらに、規模は小さいがVEI=5クラスの国内の歴史時代の噴火事例についても先行・前兆現象を中心に検討する。本研究で得られた高精度・高分解能の噴火層序に基づき、分析試料を採取する。噴出物は通常の記載を経た後、XRFにより大量の試料について、高精度の主・微量成分組成を求める。さらにその中から選んだ代表的試料についてICP-MSにより希土類元素などの微量成分、そして質量分析計によりSr、NdおよびPb同位体組成を求める。またU-Th放射非平衡のシステマテイクスの検討も行う。また噴出物中の火山ガラスや鉱物組成をEPMAによって求め、FE-SEMにより鉱物の組成累帯構造を検討する。これらにより大規模珪長質マグマ系の生成・噴火過程、特に噴火直前のプロセスを、時間軸をもとに明らかにする。 
〇大規模山体崩壊:研究対象は記録が豊富に残る磐梯山1888年と雲仙眉山1792年および十勝岳1926年である。この中で十勝岳は別課題でも主研究対象であるが、前兆現象の解析は本課題でも実施する。これらの事例について古記録の再検討を行い、崩壊の前兆・先行現象の種類と発生時期、そして崩壊現象の経緯を再検討する。これらは地形解析および現地調査で検証する。また火山噴火とは関係ないが日本海東縁の古い火山体には大規模崩壊地形が多数認められ、これらは日本海東縁を震源とする地震との関連が疑われる。これらは地形解析や現地調査により、崩壊地形の分布・規模を明らかにし、発生頻度も検討を試みる。

平成26年度では、まず研究集会を行い現状認識と5年間の研究計画について議論する。カルデラ火山については表層地質調査と噴出物採取を行い、ボーリング地点やトレンチ地点の選定を行う。また物質科学的解析を進める。山体崩壊については地形解析を行い、眉山については古記録調査を行う。平成27年度では、カルデラ火山については表層地質調査と噴出物採取を継続するとともに、トレンチ調査(姶良および鬼界)とボーリング(姶良または鬼界)を実施する。噴出物の物質科学的解析は継続し、特に同位体比分析も開始する。山体崩壊について地形解析を続け、眉山では古記録調査に加え現地調査を実施し、磐梯山については古記録調査を開始する。平成28年度では、カルデラ火山の表層地質調査と噴出物採取は継続し、ボーリング地点の選定(各カルデラ)を行う。また北海道ではトレンチを実施する。物質科学的解析は継続し、同位体比分析と鉱物の組成累帯構造解析を重点に行う。山体崩壊では磐梯山・眉山の古記録調査のまとめと地質調査を実施し、日本海東縁の火山については地質調査を実施する。また研究集会を開き研究進捗状況を確認する。平成29年度は、カルデラ火山においてボーリングおよびトレンチを実施する(対象は研究進捗状況で決定する)。噴出物の物質科学的解析は継続し、同位体比分析と鉱物の組成累帯構造解析を重点に行う。山体崩壊について補充調査を行う。平成30年度は両方の課題について補充地質調査および噴出物解析を行う。研究集会を開催し研究のとりまとめを行う。

(9)実施機関の参加者氏名または部署等名:

北海道大学大学院理学研究院 中川光弘・栗谷 豪・松本亜希子
秋田大学大学院工学資源学研究科 大場 司
東京大学地震研究所     前野 深・中田節也
東京工業大学理工学研究科 横山哲也
京都大学総合人間学部  金子克哉
鹿児島大学理工学研究科     小林哲夫

他機関との共同研究の有無:有
山形大学理学部   伴 雅雄
茨城大学理学部   長谷川健
千葉大学大学院理学研究科 津久井雅志
神戸大学大学院理学研究科 鈴木桂子
福岡大学理学部   奥野 充
熊本大学   宮縁育夫(教育学部)・長谷中利昭(自然科学研究科)
産総研    古川竜太

(10)公開時にホームページに掲載する問い合わせ先

部署等名:北海道大学大学院理学研究院
電話:011-716-2111
e-mail:mnakagawa@mail.sci.hokudai.ac.jp
URL:http://www.sci.hokudai.ac.jp/eps/

(11)この研究課題(または観測項目)の連絡担当者

氏名:中川光弘
所属:北海道大学大学院理学研究院

お問合せ先

研究開発局地震・防災研究

-- 登録:平成26年07月 --