揮発性成分定量による活火山爆発力ポテンシャル評価とマグマ溜まり深度の再決定

課題番号1502

(1)実施機関名:

東京大学地震研究所

(2)研究課題(または観測項目)名:

揮発性成分定量による活火山爆発力ポテンシャル評価とマグマ溜まり深度の再決定

(3)関連の深い建議の項目:

1.(1)ウ.地質データ等の収集と整理

(4)その他関連する建議の項目:

1.(2)ア.史料,考古データ,地質データ及び近代的観測データ等に基づく低頻度大規模地震・火山現象の解明
2.(4)事象系統樹の高度化による火山噴火予測

(5)優先度の高い地震・火山噴火との関連:

 

(6)平成25年度までの関連する研究成果(または観測実績)の概要:

 旧項目2-4-エ 「マグマの分化・発泡・脱ガス過程」に関連して,火山ガラス中の揮発性成分量を簡便に測定する方法の開発と応用研究をおこなった.本研究では,この研究で開発した手法をつかって,活動的火山の噴出物を多数分析し,基礎データの収集を行う.

(7)本課題の5か年の到達目標:

 本研究では,噴火確率の高い火山や,大規模災害を引き起こす可能性のある火山の火山噴出物について,顕微赤外反射法を用いて,効率良く多数の試料の揮発性成分量定量分析を実施し,火山噴火研究の基礎資料を作成する.
マグマ中の揮発性成分量(特に水の量)は,個々の火山の「爆発力ポテンシャル」として重要であるばかりでなく,熱力学平衡をとおしてマグマおかれた温度圧力条件の評価にも大きな影響を与える.このため,過去の噴火のマグマプロセスを物質科学的に評価するためには,マグマの含水量の決定が不可欠である.しかし,これまでは測定自体の難易度が高かったため,研究対象になった火山噴火が限られており,非常に少ない含水量データしか蓄積されていない.また,分析可能な大きさ試料に限られていたため,分析試料のバイアスによる含水量評価の偏向の恐れもあった.本研究では,多数の試料の分析によって,これまで欠けていたデータの提供を行う.加えて,マグマ溜まり深度の再決定を行う.従来の物質科学的研究によるマグマ溜まり深度の見積もりは含水量データの不足によって1kb (4km) 程度の不確定性があったが,多数の揮発性成分量のデータを加えることによって,これを従来の半分以下(1〜2km)で再決定することを目指す.
本研究によって,目的とする火山の爆発ポテンシャルや深度等のマグマ溜まりの状態の時間変化についての知見を積み上げることができれば,その火山の噴火シナリオの作成等の研究にも貢献することができよう.

(8)本課題の5か年計画の概要:

 研究の根幹となる顕微赤外反射法については,すでに基礎的部分の開発が終了している.この方法を実際の火山噴出物に応用して,火山噴火についての基礎試料として噴火前のマグマ中の揮発性成分量を決定する計画である.この方法ならば,20〜30ミクロンサイズの斑晶ガラス包有物試料について,比較的容易に実用的な精度で水の定量分析することができる.毎年200個以上の班晶メルト包有物を分析し(5年間で1000個),地質基礎データの整備に貢献する計画である.
より具体的には,以下の2項目についての研究を実施する.
 (1)マグマ噴火の頻度の高い火山を対象として,多数の揮発性成分データを収集し,データベース化する.また,他の岩石鉱物学的情報とあわせて,マグマ溜まり深度の再決定を行う.一つの噴火あたり40〜50試料のデータを得られれば,その噴火のマグマの特徴をかなり正確に把握可能であろう.一つの火山あたり連続する数回の噴火試料を分析すれば,マグマ溜まり環境の時間変化を捉えられる可能性がある.そこで,現在から過去にさかのぼって4〜5回の連続する噴火の噴出物を分析対象とする.対象とする火山としては,富士山,伊豆大島,三宅島,浅間山を予定している.
 (2) 大規模災害を引き起こす可能性のある火山を対象にして,過去に発生した大規模噴火とそれに先行する複数の小規模噴火時の試料解析から,大規模噴火に到るまでのマグマ溜まりにおける揮発性成分量変化と不均質の程度を読み出す.対象とする大規模噴火としては姶良カルデラ噴火を予定している.
研究は,各年度に2〜3火山を対象としてとりあげ,1火山について2〜3年かけて,化学分析とデータ解析をおこなう.平成26年度においては,富士山と姶良カルデラ噴火についての研究に着手する.

(9)実施機関の参加者氏名または部署等名:

東京大学地震研究所 安田 敦

他機関との共同研究の有無:無

(10)公開時にホームページに掲載する問い合わせ先

部署等名:東京大学地震研究所
電話:03-5841-5712
e-mail:yotikikaku@eri.u-tokyo.ac.jp
URL:

(11)この研究課題(または観測項目)の連絡担当者

氏名:安田 敦
所属:東京大学地震研究所

お問合せ先

研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)

-- 登録:平成26年07月 --