課題番号:1203
東北大学大学院理学研究科
沈み込み帯の水循環の全容解明
2(1)イ.上部マントルとマグマの発生場
2(1)ア.列島及び周辺域のプレート運動、広域応力場
2(1)ウ.広域の地殻構造と地殻流体の分布
2(2)(2‐1)ウ.ひずみ集中帯の成因と内陸地震発生の準備過程
日本列島下の上部マントルの詳細な三次元地震波速度構造および異方性構造から、マントル上昇流の形状やその内部の部分融解度を推定し、地震学的観測事実に基づくマグマ生成・上昇過程のモデルを提唱した。また、東北地方において、太平洋スラブの地殻部分が深さ90km程度まで低速度であること、太平洋スラブ直上の深さ80‐110km程度に低速度領域が存在することを明らかにし、スラブ周辺の水輸送過程に関する知見を得た。さらに、東北及び北海道においてP波異方性構造をインバージョンにより推定し、前弧と背弧のマントルウエッジで異なる異方性構造があることを明らかにした。一方、近地と遠地地震データの同時インバージョンにより、フィリピン海スラブは深さ500kmまで沈み込んでいること、中国北東部の活火山である長白山の起源が太平洋スラブの深い沈み込み及びスラブ直上のBig Mantle Wedgeに関係することなどを明らかにした。
沈み込み帯の水循環について、地震波速度構造や減衰構造などの地震学的観測事実と電気伝導度構造などの地球電磁気学的観測事実に基づき、スラブ内で脱水反応が起こる深さ、脱水反応により生じた水の移動経路、マントル上昇流の微細構造などを明らかにし、スラブから地表に至る流体の移動経路の全容を解明する。さらに、5ヶ年の計画で得られる新たな観測事実に基づき、これまでに提案されている東北日本弧におけるマグマ生成・上昇モデルを高度化する。
平成21年度は、地震波速度・減衰トモグラフィのための地震波形の読み取りを行うとともに、得られたデータを用いて、北海道および紀伊半島下の速度構造の予備的な解析を行う。また、中国北東部におけるトモグラフィを行い、太平洋停滞スラブと活火山の関係を明らかにする。減衰構造推定のためのインバージョンプログラムを開発する。
平成22年度は、紀伊半島下の減衰構造の推定し、西南日本下のマントル上昇流について、速度異常と減衰異常からその原因の考察を行う。また、North
China Cratonの活発化と太平洋停滞スラブとの関係の考察を行う。
平成23年度は、遠地地震を用いた解析を行い、日本列島下のマントル構造を明らかにする。
平成24年度は、これまで進められてきた波形の読み取り値を用いて、日本列島下の速度トモグラフィを行い、特にスラブ直上およびマントルウエッジの構造を高分解能で推定する。東北地方に関しては3次元最上部マントル電気伝導度構造も推定し、地震学的構造と電磁気学的構造の両者を詳細に比較検討する。
平成25年度は、それまでに得られた結果から、沈み込む太平洋スラブに関わる水や物質の循環を、日本列島から中国北東部に至る広い領域で考察し、Big
Mantle Wedgeにおける流体の移動経路の全容を解明する。
趙大鵬・中島淳一・海野徳仁・松澤 暢・岡田知己・市來雅啓・他
他機関との共同研究の有無:有
(愛媛大学:山田朗 東京工業大学火山流体研究センター:小川康雄)
部署等名:理学研究科附属地震・噴火予知研究観測センター
電話:022‐225‐1950
e‐mail:zisin‐yoti@aob.geophys.tohoku.ac.jp
URL:http://www.aob.geophys.tohoku.ac.jp/
研究開発局地震・防災研究課
-- 登録:平成24年08月 --