試掘探査を基軸とした有珠山における浅部噴火発生場の検証研究

課題番号:1007

(1)実施機関名:

北海道大学大学院理学研究院

(2)研究課題名:

試掘探査を基軸とした有珠山における浅部噴火発生場の検証研究

(3)最も関連の深い建議の項目:

2.地震・火山現象解明のための観測研究の推進

(3)地震発生先行・破壊過程と火山噴火過程

(3‐3)火山噴火過程
イ.噴火の推移と多様性の把握

(4)その他関連する建議の項目:

1.地震・火山現象予測のための観測研究の推進
(2)地震・火山現象に関する予測システムの構築
(2‐2)火山噴火予測システム
ア.噴火シナリオの作成

(5)平成20年度までの関連する研究成果(または観測実績)の概要:

 有珠山の2000年噴火は,過去の噴火活動と同様に,激しい群発地震活動で始まり,水蒸気爆発の頻発を伴い,西から北西麓に多くの火口が開き,この地域に 2000年新山を形成して約6ヶ月にわたる活動を停止した.この活動は各種観測によって追跡され,噴出物に含まれる岩片と基盤を構成する地質との比較解析から,マグマ水蒸気爆発や水蒸気爆発の発生深度の時間的な推移が推定された.また,地形変動の詳細な解析を通して,2000年新山はマグマのダイク状貫入とその後の水平方向への膨張・拡大によって生じたとする2段階成長モデルが提案された.このモデルは測角で得られた比高の時間変化から支持された.一方,活動終息後は,2000年新山を横断して人工地震探査や電磁気的手法によるマグマ探査が行なわれ,いずれの探査でも新山中央部の深度500m付近にマグマ貫入を示唆する背斜構造を認めた.また,2000年新山を横断する水準路線の測量から,圧力源の位置が推定された.さらに地熱異常域の拡大とともに貫入マグマの冷却を示唆する全磁力変化も検出され,帯磁源の位置が推定された.これらの研究はいずれも2000年新山直下に貫入マグマの存在を示唆しているが,過去2度の活動で生じた潜在ドームと同様に,その実体が解明されているわけではない.

(6)本課題の5ヶ年の到達目標:

 本計画の目標は,有珠2000年新山域を対象に,ボーリング探査を基軸として低高度稠密空中磁気測量や地盤変動などの多項目観測を行い,貫入マグマを示唆する構造や変動源,水蒸気爆発の発生場や噴火活動後に発達した熱水系の実体を検証し,デイサイト質マグマによるドーム形成噴火の理解を深め,その活動予測の高度化を進めることにある.

(7)本課題の5ヵ年計画の概要:

2009年度の計画概要:
 次年度の各種観測・探査に先行して2000年新山横断水準測量を行い, 2000年新山で進行している沈降の現況把握を行う.また事前調査として,ボーリング探査データの解析に必要とされる基盤地質,地下温度,浅部の水環境などを知ることのできる孔井地質柱状図や検層データの収集を行う.さらにボーリング探査の成否を左右する2000年新山地域の地下浅部の温度を推定するために噴気温度など噴気諸量を測定する.
2010年度の計画概要:
 これまでの観測研究や物理探査結果を参考に,低高度稠密空中磁気測量,地上全磁力観測,地盤変動観測(水準測量,精密重力測量,In‐SAR解析)を行い,2000年新山直下の貫入マグマと考えられる帯磁源や圧力源の位置を再解析する.熱観測を実施し地下の温度分布を推定する.2000年新山地域で実施されたMT探査・地震探査を参考にしながら,人工地震の補完探査を行い,反射面の水平方向への広がりを把握する.2年間にわたって実施した観測・探査の解析結果を総合し,法的な規制などを考慮して,掘削地点を選定する.
2011年度の計画概要:
 火山噴出物の分布と熱水系の発達が想定される地表から深度200mまでワイヤーライン工法により掘削する.その後,拡孔して検層を行い,その解析を実施する.また,ボーリングコアの火山地質学的・岩石学的解析から噴火履歴や噴火様式の時間変化について検討する.コア物性試験を実施し,必要に応じて観測から推定された構造の再解析を行う.
2012年度の計画概要:
 掘削データやカッティングスの地質学的・岩石学的な鑑定に基づいてスポットコアを採取しながら、地表から500mまで掘削し,掘削データや検層結果などに基づいて孔井仕上げを行う.検層と解析,コア・カッティングスの地質学・岩石学的分析,コア物性試験を実施する.特に深度200m以浅のコアについては噴火履歴や噴火様式の時間変化を念頭に火山地質学的・岩石学的解析を進める.また、必要に応じて観測から推定された構造の再解析を行う.
2013年度の計画概要:
 揚水試験などの孔井内計測と,地層水・ガスの採取・分析を行う.多層同時仕上げを試行し,水位・水温観測を開始する.掘削データ,孔井地質,検層解析結果,揚水試験,地層水・ガスの分析結果を総合し,既存の孔井資料と合わせ,水蒸気爆発の発生や熱水系の発達に関係する浅部水環境(透水層分布や透水係数等の水理定数)を把握し,噴火発生場の特性や貫入マグマの冷却過程を検討する.また,現地検討会による総括と取りまとめを行う.

(8)実施機関の参加者氏名または部署等名:

北海道大学大学院理学研究院
 大島弘光・橋本武志・青山裕・森済・村上亮・池田隆司・中川光弘・吉本充宏

他機関との共同研究の有無:有
秋田大学工学資源学部 筒井智樹(代表者)
東北大学大学院理学研究科 植木貞人(代表者)
東京大学地震研究所 中田節也(代表者)
東京工業大学火山流体研究センター 野上健治(代表者)
京都大学大学院理学研究科 鍵山恒臣(代表者)
九州大学大学院理学研究院 松本 聡(代表者)
京都大学防災研究所 井口正人(代表者)
鹿児島大学大学院理工学研究科 小林哲夫(代表者)
研究協力機関
室蘭工業大学大学院工学研究科 後藤芳彦(代表者)
産業技術総合研究所 松島喜雄(代表者)
北海道立地質研究所 岡崎紀俊(代表者)

(9)公開時にホームページに掲載する問い合わせ先

部署等名:北海道大学大学院理学研究院附属地震火山研究観測センター
電話:0142‐66‐4011/011‐706‐4677
e‐mail:oshima@uvo.hokudai.ac.jp / hasimoto@mail.sci.hokudai.ac.jp
URL:

お問合せ先

研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)

-- 登録:平成24年08月 --