課題番号:1005
北海道大学理学研究院
地震に関連する電磁気現象の観測研究
2.(3‐1)ア
2.(3‐1).イ,2.(2‐1)ウ
本研究の内容の多くは、平成20年度までは“1006:地震に関連した電磁気シグナルの発生・伝播メカニズムの解明”として実施してきた.その課題の中での各研究項目について成果を述べる。
1.低周波電磁波観測
地磁気、地電位の変動観測を継続してきたが、2003年十勝沖地震の変化以外、特に顕著な変動は観測されていない。2003十勝沖地震の際、えりも観測所の地磁気、地電位観測をもとに求めた見かけ比抵抗が変化したが、最近までの見かけ比抵抗値を計算したところ顕著変化は見られなかった。
えりも地域のMT観測では、3次元比抵抗構造を求める前段階として、2つの北西―南東断面とそれらと直交する北東―南西断面において2次元比抵抗構造を求めた。データは320Hzから0.000083Hz(12000秒)まで用い、深度100kmまでの比抵抗構造を求めた。その結果、えりも岬付近のプレート上面付近にあると考えられているアスペリティ領域は、高比抵抗構造であることが示された。引き続き3次元解析を進めることにより範囲や構造が明らかにすることにしている。
2.VHF帯電波伝搬異常の観測
2003年十勝沖地震、2004年留萌支庁南部地震等の道内および周辺で起きた大地震の前に異常が観測された。また、日高山脈南部では深さ約50kmに集中した地震活動があり十勝沖地震の余震域にもなっているために活発である。散乱波の総継続時間(Te)の常用対数は関係した地震のMと良い直線性が見いだされている。北海道東部でも同じような関係が得られるたが、観測された地震は、マグニチュードの範囲が狭いのでややばらつくが日高山脈の場合と同じ傾向がある。散乱波の到来方向を調べるために、位相差を利用した方位探知や密に複数の観測点を並べる試みを行った。
3.地磁気による地殻応力モニター
まず、2003年十勝沖地震の断層モデルや今後発生が予想される根室半島沖地震や十勝沖から根室沖までが同時に破壊される巨大地震のモデルに対して、道東地域でどのような地磁気変化が予想されるかをピエゾ磁気のモデル計算でシミュレートした。この結果、地殻の磁気構造の境界にある厚岸北部地域や別海地域で大きな変化が予想されるので、本年度、厚岸北部地域および根室市西部地域に観測点を増設した。
4.電磁波伝播のシミュレーション
不均質媒質中の電磁場伝搬を調べるために、3次元比抵抗構造を設定して、地下の任意の場所で電流源が発生した場合、地表の電磁場を計算できるシミュレーションプログラムを作成した。
地震発生時やそれに先行する電磁気現象が世界各地で観測されているが、そのメカニズムを説明する物理的なモデルは、いろいろ提案はされてはいるが、検証されたものはほとんどない。本研究では、北海道地域を中心に以下の観測研究を行い、それぞれの電磁気現象発生のメカニズムを説明するモデルの構築をめざした観測研究を行う。これまでの観測実績を考慮して、以下の4項目について観測研究を進める。
1.ULF帯で電磁気現象
この現象は、地表で地磁気や地電位の変動を観測することにより行うが、その発生メカニズムとしては、震源域での流体の移動による比抵抗変化または流動電位や結晶破壊による異常電界の発生が考えられている。どちらにしても震源のある地下数km‐数十kmで起こる異常が地表で観測可能な変化として検出されるかが最大の問題である。特殊な比抵抗構造に対しては、地表に大きな変動が引き出される可能性もあるので、震源域の比抵抗構造も観測して、その特徴を明らかにするとともに異常の伝播モデルの解明をめざす。
2.電波伝播異常
VHF帯の電波が見通し外に伝播する現象が地震に先行して起こることが内外で観測されている。北海道大学でも2002年から道内の地震頻発地域で観測開始している。これまでは、異常の検出の有無を統計的に見てきたが、次期計画では見通し外に伝播させる散乱体の検出、その直下の地表での地電位変動観測、大気電場観測により、地表の変動が空間の電波伝播に与えている影響を重点的に観測することにより、伝播異常と地震との関連を説明するモデルの提案をめざす。
3.電離圏との相互作用
地震時あるいはその先行現象として、電離圏にも異常が生じることが観測されている。電離圏の変動過程は非常に複雑で安易に地表の現象とのカップリングがあるかどうかを議論することは難しいが、GPS衛星を使ったTEC(総電子数)観測等電離層の状況をモニタリングする観測も可能となったので、このような観測により大地震と電離層の変化との相互作用について調べる。
4.応力変動による地磁気変化
いわゆる圧磁気効果により、地下の応力変化が地磁気の変化となって観測される可能性が指摘され、その観測可能性についてモデルシミュレーションも行われている。その結果によると、地下の磁化強度分布が観測変化量を左右していることがわかってきた。従って、構造を知った上で、震源付近での応力変化どのようなパターンで観測されるのかモデル計算を中心に研究を進める。
平成21年度においては、
平成22年度においては、
平成23年度においては、
平成24年度においては、
平成25年度においては、
北海道大学理学研究院 6名
総括 茂木透
ULF電磁場観測;茂木透、高田真秀
VHF電波伝播観測:森谷武男、茂木透、渡部重十、高田真秀
電離層変化観測:日置幸介、渡部重十
地磁気変動観測:橋本武志、茂木透、高田真秀
共同研究:東京大学地震研究所:上嶋誠、京都大学防災研究所:大志万直人、九州大学理学研究院:湯元清文、東海大学海洋学部:長尾年恭、千葉大学理学研究科:服部克己
部署等名:北海道大学大学院理学研究院附属地震火山研究観測センター
電話:011‐706‐4679
e‐mail::
mogitisv@mail.sci.hokudai.ac.jp
URL:http://www.sci.hokudai.ac.jp/grp/isv/isv‐web/
研究開発局地震・防災研究課
-- 登録:平成24年08月 --