2(2)(2‐1)地震準備過程

「地震準備過程」計画推進部会長 飯尾能久
(京都大学防災研究所)

 地震発生の準備過程を解明するために、地殻とマントルで応力が特定の領域に集中し地震発生に至る過程を明らかにする観測研究を実施する。プレート境界地震に関しては、アスペリティ分布の推定精度を向上させるとともに、アスペリティ域に固有な地殻やマントルの性質の研究を進めることにより、アスペリティモデルの高度化を図ることが重要である。さらに、プレート境界面上で進行する非地震性滑りの時空間変化を高精度に把握するとともに、アスペリティ間の相互作用について理解を進める必要がある。内陸地震に関しては、広域の応力によって非弾性的な変形が進行して、特定の震源断層に応力が集中する過程を定量的にモデル化することが必要不可欠である。地震発生層である上部地殻と下部地殻・最上部マントルの不均質とその変形の空間分布を把握し、ひずみ集中帯の形成・発達と地震発生に至る過程に関する定量的なモデルの構築を行うことが重要である。また、スラブ内地震の発生機構を解明するため、スラブ内の震源分布や地震波速度構造を詳細に明らかにすることにより、スラブ内に取り込まれた流体の地下深部における分布と挙動の解明を図ることが重要である。

ア.アスペリティの実体

 沈み込むプレート境界におけるアスペリティの実体については、これまで、断層の反射係数(間隙水圧等プレート境界の物理特性を反映しているものと考えられる)、断層面の形状、上盤側の物質の特性などに関して、色々な考えが出されている。非地震性すべりをおこしている領域では反射係数が大きく間隙水圧が高いと推定されること、断層面の折れ曲がりがアスペリティを分けていること、非アスペリティ領域の上盤側のマントルウェッジが高Vp/Vsであり蛇紋岩化していると推定されることなどの注目すべき結果が多数得られている。しかしながら、それらと必ずしも調和的でない結果も得られているため、最初にこれまでに得られた結果を整理する。
 断層の反射係数に関して、根室半島沖~釧路沖の海域での調査によって、2003年(平成15年)十勝沖地震(マグニチュード8.0)の余効滑りの大きかった領域で反射係数が大きくなっていることが報告された(北海道大学[前計画 課題番号:1004]、東,2007)。また、その付近では、プレート境界に沿って大きなVp/Vsが分布するという報告もある(Machida et al., 2009)。
 断層面の形状については、宮城県沖における構造探査実験より、推定された太平洋プレートの形状とこれまでに知られているアスペリティの分布とを比較したところ、プレートが折れ曲がる領域を避けてアスペリティが分布していることが示された(東京大学地震研究所[前計画 課題番号:1403])。ちなみに、この折れ曲がり付近は、海洋性プレートが陸の地殻に接する部分とマントルに接する部分の境界に位置していると考えられている。一方、1944年(昭和19年)東南海地震(M7.9)時の滑りが大きいと推定される領域では、海洋地殻の凸構造を示唆するイメージが得られているが(海洋研究開発機構[前計画 課題番号:4001]、 Nakanishi et al., 2008)、逆に、根室半島沖地震の震源域周辺では、海域での構造探査からプレート形状がなめらかであると言われている(北海道大学[課題番号:1004])。また、茨城県沖のM7級地震が繰り返し発生している場所付近では、海山とアスペリティの位置が一致しないことが分かり、海山ではプレート間の摩擦がむしろ小さいと考えられると報告されている(Mochizuki et al., 2008)(東京大学地震研究所[前計画 課題番号:1403])。
 上盤側の物質の特性については、青森県沖から福島県沖にかけて、アスペリティでは直上のマントルウェッジが高速度になること、三陸沖では海洋性地殻と島弧下部地殻が接している部分がアスペリティに対応することが推定された(東北大学[前計画 課題番号:1201])。また、日向灘北部の海岸線の下、深さ25~35キロメートル程度に高ポアソン比の領域が推定されたが、これは、Yagi and Kikuchi(2003)が求めた非地震性滑り領域と対応している(九州大学[前計画 課題番号:2101]、Tahara et al., 2008)。釧路沖~十勝沖~えりも岬沖で実施してきた地殻構造探査の結果では、2003年十勝沖地震のアスペリティ直上の島弧地殻にP波速度とS波速度の比(Vp/Vs)が大きい場所があることが報告された(北海道大学[前計画 課題番号:1004]、 Machida et al., 2009)。
 平成21年度においては、以下に述べるような成果が得られた。これまでに北海道・東北日本の前弧域において実施された海底地震観測データをコンパイルし、東北日本‐千島弧会合部周辺の海陸プレート境界域の地震波速度構造の推定を行い巨大地震発生域と発生しない領域において明瞭な違いを見出すことができた。過去にプレート境界型巨大地震の発生したことが知られていない島弧会合部のプレート境界上盤側は、深さ約60 kmに至るまでVpが7 km/s程度の低速度物質で占められているのに対して、隣接する2003年あるいは1968年の十勝沖地震の震源域の上盤側はVpが8 km/sを超える物質で占められており、ほぼ無水のかんらん岩で構成されたマントルと解釈される (図1)。ただし、図1を見ると、2003年の十勝沖地震の震源域の西北側は低速度に見える。島弧会合部にみられるこの低速度物質は、日高衝突帯から剥落した千島前弧の地殻下部に相当すると考えられ、プレート境界上盤側を構成する物質の変化が、プレート境界におけるカップリング強度に影響を与えていることを示唆するものである(東北大学[課題番号:1205]、Kita et al., 2010)。
 宮城県沖地震の震源域においては、自然地震観測と人工地震探査のデータを併合した地震波トモグラフィを行うことにより、プレート境界上盤側の高Vp/Vs領域と宮城県沖地震アスペリティとの空間的な相補性がより明瞭に示され、マントルウエッジ内の部分的な含水化が、その直下でのプレート境界における地震性すべりを抑制していることを示唆している(東北大学[課題番号:1205])。
 フィリピン海プレートが太平洋プレートと北米プレートとの間に入り込むように沈み込んでいる東北日本弧の最南部にあたる房総三重会合点周辺において、太平洋プレートが北米プレートと接する境界面と、太平洋プレートがフィリピン海プレートと接する境界面とでは、カップリング状態が異なることが示された(図2)。太平洋プレート‐北米プレート間および太平洋プレート‐フィリピン海プレート間の相対運動の方向は異なるため、太平洋プレートの上面に沿って発生する地震の発震機構の違いに着目することにより沈み込んだフィリピン海プレートの先端の位置が推定された。相似地震活動からこの領域におけるカップリング率(プレート間すべりレートとプレート間相対速度の比)の空間変化を推定すると、フィリピン海プレートの先端を境にしてカップリング率が顕著に変化することが分かった。これは、プレート境界面の上盤側を占める物質の違いが、プレート間の固着状態に大きな影響を及ぼすことを示す重要な結果である(東北大学[課題番号:1205])。
 深部低周波微動の検出・微動源決定手法として、振幅の空間分布を考慮したハイブリッド法(Maeda and Obara, 2009)とクラスタリング処理により、四国西部や紀伊半島北東部などの地域では、プレート形状に沿った帯状分布の浅部側及び深部側に2列の微動活動集中域が存在することが明らかになった(Obara et al., 2010)(図5)。このうち、浅部側は半年毎に発生する短期的スロースリップイベントを伴うような大規模な微動エピソードの際に活動するのに対して、深部側の活動は定常的であり、短い間隔で小規模な微動が頻繁に発生する。また、豊後水道では2003年後半にMw6.8の長期的スロースリップイベント(Hirose and Obara, 2005)が発生しているが、その期間中に2列分布の浅部側のみで微動が活性化し、その深部側では微動活動は一定レートのまま変化は無いことが見出された(図5)。さらに、浅部側の微動列は、1996‐7年に発生した長期的スロースリップイベントのすべり域(Yagi and Kikuchi, 2003)の北縁部に一致する。これらの観測結果は、深部低周波微動2列分布は短期的スロースリップイベントの発生域を規定し、その下端部は安定すべり域との境界、上端部は長期的スロースリップイベント域との境界を反映するものと考えられた。
 四国西部における短期的スロースリップイベントのすべり時間発展解析により、すべり域の移動は微動の移動と極めてよく一致し、またすべり速度が大きくなるところで、微動が特に活発化することが見出された(Hirose and Obara, 2010)。
 プレート境界面上のすべり特性と地下構造との関連を明らかにするため東海地域で人工地震探査を行い、浜名湖から北に延びる測線では、深さ30‐40kmのフィリピン海プレート最上部からと推定される明瞭な反射波を観測した。反射波の反射効率は、短期的スロースリップイベント・深部低周波微動発生域では、長期的スロースリップイベント域や東海地震想定震源域に比べて大きいことから、反射効率の違いがプレート境界面に発生するすべり現象を規定している可能性が指摘された。
 さらに、四国西部を南北に縦断する測線での広帯域MT法探査により、地下約10kmの深さは低比抵抗であるが、深部低周波微動の発生領域は必ずしも比抵抗値が低くないことが推定された。地震波トモグラフィーの結果では顕著な高Vp/Vsとなっていることから、流体が連結せずに孤立的に多数存在する可能性が指摘された。
 宮城沖の海溝陸側斜面で海底地震計および圧力計を用いた広帯域地殻変動観測が行われ、回収した地震計および圧力計の記録から、プレート境界型地震に先行する非地震性の地殻変動と考えられる相対水深変化が検出された(東北大学[課題番号:1206]、図6)。近接する2観測点の差を調べることで潮汐等の影響を除去した結果、11月中頃に約5日間かけて約2cmの変動が観測された。この変動に伴う地震動は、同一地点に設置された短周期および広帯域地震計では、ほとんど観測されていない。観測された相対水深変化は、観測点直下のプレート境界上で生じた約8cmの非地震性のすべりとして説明可能である。地殻変動が観測された後、陸側のプレート境界でマグニチュード6程度の地震が発生したことから、観測された相対水深変化は、プレート境界型地震を誘発する非地震性のすべりが震源域よりも浅部で発生していた可能性を示唆している。

ウ.ひずみ集中帯の成因と内陸地震発生の準備過程

 これまで、内陸地震の断層直下等に存在する不均質構造や、その変形に起因すると考えられるひずみ速度の集中や応力集中が見出されてきたが、平成21年度においても、これまで発生した内陸大地震の震源域において、いくつかの重要な成果が得られた。
 2008年岩手・宮城内陸地震(M7.2)の本震後約1年間にわたる長期的なGPS観測点により、長期的な余効変動が検出された(東北大学[課題番号:1207]、図7)。Iinuma et al. (2009)により、主要な余効すべりは本震後1ヶ月以内に終息していることが指摘されている。このことから、本震後1ヶ月以降のデータのみを対象とすることで、粘性緩和が支配的であると仮定し、最表層を弾性層、その下を粘弾性層と仮定し、Pollitz (1997) の手法を用いて弾性層の厚さと粘性係数をグリッドサーチで推定した結果、前者は17~31 km、後者が0.7~0.8E+18 Pa secと推定された。粘性係数については、既往研究と比較して1桁程度小さい値に求められているが、解析期間が短いことが原因となっている可能性もあり、より長期のデータを用いて信頼性を向上させる必要がある(Ohzono et al., 2009)。また、稠密余震観測データによるトモグラフィにより、流体の存在を示唆すると考えられる低速度域を震源域直下および火山(栗駒山・焼石岳鳴子・鬼首)周辺に確認した(岡田・他,2009;東北大学[課題番号:1207]、図8)。
 長野県西部地震の断層近傍で得られた10kHzサンプリングの地震観測データを用いてメカニズム解を多数決定し、精度が良い約6000個のメカニズム解と推定断層面との関係を調べ、推定断層面の極近傍でも断層面と調和的な断層面を持つ微小地震は非常に少ないが、応力場には局所的な異常が見られることが見出された(京都大学防災研究所[課題番号:1808])。さらに、Horiuchi et al.(1995)の方法による応力インバージョンにより、推定断層面近傍のみで、最小圧縮応力軸が水平に近いことが推定された(Yukutake et al, 2010, 図9)。推定された応力場は、断層の深部延長のすべりによると考えられる。断層面近傍のみにおいて応力場の局所的な異常が見出されたことから、応力場の空間変化を明らかにすることにより地震の観測データから断層を検出出来る可能性が示された。差応力の絶対値を推定することができれば、地震の長期的な発生予測にも役立つことが期待される。
 前計画で実施してきた跡津川断層周辺のGPS観測データを整理して、跡津川断層周辺の詳細な地殻変動分布を得た(名古屋大学[課題番号:1705]、図10)。断層帯の中央部では互いに右横ずれ運動するブロック境界断層の上部10‐15km程度が固着した時に生じる逆正接関数型の分布が見られる一方で、断層端付近では断層に直交方向成分の変位が顕著に見られるなど、断層端では特徴的な変形が生じていることが見出された。地震発生域の下限より深部で非弾性的な変形によって広域変形が解消されているのと同様に、断層端においても非弾性変形が進行し、将来の地震発生域だけに応力蓄積が進行していると考えられた。また、比抵抗構造の詳細な解析から断層と地殻内流体の関係がより明確になりつつある(Yoshimura et al., 2009).
 福岡県西方沖地震の稠密余震観測のデータを用いて、Lin and Shearer(2007)の方法により、余震域のVp/Vsを直接推定した(九州大学[課題番号:2203])。得られた値は1.6‐2.0程度を示し、Asano and Iwata (2006)の滑り分布と比較すると、浅部にみられる滑りの大きな領域でVp/Vs値が顕著に小さいことが見て取れる(図11)。これはアスペリティが破壊強度の大きい領域であった可能性を示しているが、プレート境界地震との比較が重要であろう。また、断層端部でVp/Vsが大きい傾向も見られ、断層の両端部における非弾性変形を解明する上で重要な知見である。

エ.スラブ内地震の発生機構

 スラブ内地震の発生には、沈み込む海洋性プレートとともに深部へ持ち込まれる水が深く関与していることが明らかになってきたが、スラブ内の岩石の脱水が地震発生に及ぼす影響は二通り考えられる(東北大学[課題番号:1208])。一つは間隙水圧を上げる(有効法線応力を下げる)ことによりクーロン破壊応力を増加させる効果、もう一つは蛇紋岩が脱水しても脆性破壊が生じずにクリープが生じ、それが周囲の岩石への応力集中をもたらすという可能性である。スラブの構造および、スラブ内地震の詳細な震源分布・震源過程を調べ、地震時すべり分布と余震活動・先駆的地震活動との関係や地震波速度構造との関係から、スラブ内地震の発生に至る過程をモデル化し、さらにスラブ内大地震が発生する可能性の高い領域の同定を行うことが重要である。
 太平洋スラブ内の起震応力場は、上面がDC (Down‐dip Compression) 型、下面がDE (Down‐dip Extension) 型(海野・長谷川, 1975; Hasegawa et al., 1978)であることが示されている。そうであれば、その間に応力の中立面が存在するはずであるので、スラブ内地震の発震機構解データに応力テンソルインバージョン法を適用し、スラブ内における応力の中立面の位置の推定を行った(東北大学[課題番号:1208]、図12)。東北日本ではプレート表面より約23km、北海道では11kmを境に応力場がDC型からDE型に変化していることが分かった。得られた中立面の位置(プレート表面からの距離)と、過去に発生したスラブ内大地震の震源断層とを比較すると、東北日本ではDC型のメカニズム解をもつ2003年宮城沖地震の余震域が中立面を乗り越えてDE型の領域まで広がらずにDC領域に留まるように分布していた。北海道東部では、DE型のメカニズム解をもつ1993年の釧路沖地震の震源断層は、DC型の傾向を持つ混合型領域まで広がらず、DE型領域に留まるように分布している。これらの結果は、スラブ内地震の破壊域の広がりが、スラブ内の応力場により規定されていることを示唆している。
 スラブ内の地震活動を理解するためには、スラブの位置・形状の情報が極めて重要であるので、変換波のデータをもとに、関東地方のフィリピン海プレートの形状の推定を行った(東北大学[課題番号:1208])。プレート境界の位置を示すフィリピン海プレート上面、下面の小繰り返し地震(約200個)に加え、下面の小繰り返し地震からの変換波(約1000個)を見出したことにより、フィリピン海プレートの上面深度のみならず、厚さを精度よく求めることができた(Uchida et al., 2010)(図13)。フィリピン海プレートの厚さは東京の下で約50kmで北東限に向かって薄くなるくさび形をしていること、関東地方の東部ではフィリピン海プレートの沈み込み角度がゆるく、北東限の近くでは上向きの変形があることが分かった。

課題と展望

 前計画に引き続き、平成21年度においても、重要な成果が数多く得られた。それらをまとめるとともに、今後の展望を述べる。

・プレート境界のアスペリティと非アスペリティ領域の構造・状態の違い

 沈み込むプレート境界において、断層の反射係数、断層面のマクロな形状、および断層の上盤の物性という3つの要因がこの問題に関係していることを示唆する観測結果が得られている。
 断層の反射係数が大きいほど、固着の程度が弱くなり、より定常的な非地震性すべりとなる傾向が見られる。岩石摩擦実験における固着の程度と透過波の振幅変化の関係から見ても十分にあり得ることであると考えられるが、これまでに得られたデータは限られており、断層の反射係数の違いが何を反映しているのか? そもそも観測データが断層の反射係数の違い反映しているのか?などの課題がある。さらに精度の高い知見を増やすことが重要であろう。
 断層面のマクロな形状については、興味深い知見が多数得られているが、これまで得られた観測結果の解釈には、互いに矛盾するものがある。アスペリティ=突起というイメージから、断層面の凸部において固着が強く、そこがアスペリティになると直感的には思えるが、四国沖以外では、根室半島沖のアスペリティでは断層面はなめらかであるという報告があるし、茨城沖では沈み込んだ海山は、その地域でこれまで発生した大地震のアスペリティにはなっていないという結果が得られている。アスペリティが断層の折れ曲がりにより分けられることは力学的にも良く理解できるが、これも凸部において固着が強いということとは必ずしも調和的でないように思える。岩石摩擦実験では、断層面が粗いほど定常的なすべりになる傾向が知られており、固着が強いからといって地震すべり量が大きいとは限らないのかも知れない。断層面の形状とアスペリティの関係について、南海トラフの巨大地震から海山まで色々な空間的なスケールにおける結果が得られつつあるが、さらに知見を増やすとともに、空間スケールの違いや最初に挙げた3つの要因以外の要因に注意しながら整理する必要がある。
 断層の上盤の物性に関しては、蛇紋岩化していると推定されるマントルウエッジでは固着が弱いことが系統的に見つかっており、今後の調査結果が期待される。

・プレート境界のアスペリティ周辺の応力状態の空間変化

 日向灘における応力インバージョンや相似地震の解析により、アスペリティでは固着が強いことを示唆する結果が得られているが、他地域においても解析を進める必要がある。アスペリティと非アスペリティ領域の構造・状態の違いについての解釈を整理するためにも、アスペリティで本当に固着が強いかどうかを明らかにすることは大変重要である。

・プレート境界における非地震性すべりの時空間変化

 プレート境界における滑り速度分布の推定精度及び分解能の向上が計られ、プレート境界におけるゆっくり滑りの時空間的推移の解明は順調に進んでいる。さらに、電磁気学的観測等により、ゆっくり地震の発生過程に関する知見も得られ始めている。今後の進展が大いに期待される。

・ゆっくり滑りとアスペリティの相互作用

 三陸沖において、海溝近くから始まった非地震性すべりが加速して、アスペリティ破壊と相互作用しながら大地震発生に至るというシナリオが提出されているが、海底観測により、相似地震解析とは独立に、そのシナリオと調和的な知見が得られた。観測をさらに強化することを含めて、今後の進展が期待される。

・内陸の不均質構造

 内陸地震の断層周辺の不均質構造に関しては、前計画において系統的な知見が得られていたが、岩手・宮城内陸地震に関して、深部の低速度異常が見出された。さらに、長期にわたる余効変動の解析により、地殻・マントルの粘弾性構造の推定が試みられた。これは内陸地震の発生過程の定量的なモデル化のために重要な試みである。
 長野県西部地域では、応力インバージョン解析により、高精度・高分解能で応力場の空間分布が推定され、深部延長のすべりによると考えられる応力集中が検出された。跡津川断層周辺では、GPS稠密観測により、深部の不均質構造による変形、および断層の両端部における非弾性変形と考えられる変形が捉えられた。福岡県西方沖地震の余震域において、断層両端でVp/Vsが大きいことが推定された。これらの地域において、深部および両端部の不均質構造の非弾性変形に関する定量的なモデリングを行うことが今後の課題である。

・スラブ内地震

 スラブ内地震の発生には、沈み込む海洋性プレートとともに深部へ持ち込まれる水が深く関与していることが明らかになってきたが、スラブ内の応力場の解析により、大地震の断層の範囲を特定できる可能性が示された。詳細な構造の把握と合わせて、スラブ内地震の発生予測に役立つ知見であると考えられる。今後の進展が大いに期待される。

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図1.プレート境界面直上5 kmにおけるVpの分布(東北大学[課題番号:1205])。山中・菊池(2002)、Yamanaka and Kikuchi (2004)によるプレート境界型大地震の破壊域をコンターで示し、相似地震の震央を白丸で示した。赤線はプレート境界面の60 kmの等深線。

図1.プレート境界面直上5 kmにおけるVpの分布(東北大学[課題番号:1205])。
山中・菊池(2002)、Yamanaka and Kikuchi (2004)によるプレート境界型大地震の破壊域をコンターで示し、相似地震の震央を白丸で示した。赤線はプレート境界面の60 kmの等深線。

図2.房総三重会合点周辺で発生するプレート境界地震のスリップベクトル(a)と相似地震から推定したカップリング率(b) (東北大学[課題番号:1205])。すべりベクトルは、方位角によって3種類に分類し、異なる色で示した。赤/橙:方位角75 ~ 100°、青/水色:100 ~ 130°、緑:130 ~ 160°。フィリピン海プレート‐太平洋プレート(PH‐PA)、フィリピン海プレート‐北米プレート(PH‐NA)、太平洋プレート‐北米プレート(PA‐NA)それぞれの間の相対運動の方向と速さを、緑、赤、青の矢印で示した。領域1.ではプレート境界を境にフィリピン海プレートと太平洋プレートが接し、領域IIではプレート境界を境に北米と太平洋プレートが接する。

図2.房総三重会合点周辺で発生するプレート境界地震のスリップベクトル(a)と相似地震から推定したカップリング率(b) (東北大学[課題番号:1205])。
すべりベクトルは、方位角によって3種類に分類し、異なる色で示した。赤/橙:方位角75 ~ 100°、青/水色:100 ~ 130°、緑:130 ~ 160°。フィリピン海プレート‐太平洋プレート(PH‐PA)、フィリピン海プレート‐北米プレート(PH‐NA)、太平洋プレート‐北米プレート(PA‐NA)それぞれの間の相対運動の方向と速さを、緑、赤、青の矢印で示した。領域1.ではプレート境界を境にフィリピン海プレートと太平洋プレートが接し、領域IIではプレート境界を境に北米と太平洋プレートが接する。

図3.σ1 軸の方向とプレート境界面の法線ベクトルのなす角θ の値[植平(2007)]と準静的すべりレート分布の比較(九州大学[課題番号:2202])。

図3.σ1 軸の方向とプレート境界面の法線ベクトルのなす角θ の値[植平(2007)]と準静的すべりレート分布の比較(九州大学[課題番号:2202])。

図4.相似地震活動から推定された準静的すべり速度の分布(鹿児島大学[課題番号:2301])。

図4.相似地震活動から推定された準静的すべり速度の分布(鹿児島大学[課題番号:2301])。

図5.ハイブリッド法・クラスタリング処理に基づく深部低周波微動分布(上段)と豊後水道域における領域毎微動活動積算頻度分布(下段)(防災科学技術研究所[課題番号:3011])。

図5.ハイブリッド法・クラスタリング処理に基づく深部低周波微動分布(上段)と豊後水道域における領域毎微動活動積算頻度分布(下段)(防災科学技術研究所[課題番号:3011])。

図6.2観測点間の相対水深変化と観測点周辺の地震活動(東北大学[課題番号:1206])。a. 2観測点間の相対水深変化。矢印で示す180日から190日の期間で相対水深が変化している。赤線は180日以前のデータから求めた圧力計の機器ドリフトによるみかけの水深変化を示す。b. Site2から半径500km以内の地震(灰色)と半径75km以内の地震(黒)を示す。観測された顕著な水深変化のあとに、観測点よりも陸側の地震活動が活発化した。

図6.2観測点間の相対水深変化と観測点周辺の地震活動(東北大学[課題番号:1206])。
a. 2観測点間の相対水深変化。矢印で示す180日から190日の期間で相対水深が変化している。赤線は180日以前のデータから求めた圧力計の機器ドリフトによるみかけの水深変化を示す。b. Site2から半径500km以内の地震(灰色)と半径75km以内の地震(黒)を示す。観測された顕著な水深変化のあとに、観測点よりも陸側の地震活動が活発化した。

図7.観測された長期余効変動と推定された粘弾性構造モデルによる計算結果との比較(東北大学[課題番号:1207])。(a)本震発生後1ヶ月後から半年間に観測された変位の水平成分(黒矢印)と計算値(白矢印)と、(b)上下成分の観測値(薄青色)と計算値(濃青色)。カラーコンターは計算された上下変動分布を示す。計算に用いた弾性層の厚さとその直下の粘性係数はグリッドサーチにより求められた最適値で、それぞれ、17 km、 8.0E+18 Pa secである。(c)、 (d) 本震発生後1ヶ月後から1年間の場合。計算に用いた弾性層の厚さとその直下の粘性係数の最適値は、それぞれ、31 km、 7.0E+17 Pa secである。

図7.観測された長期余効変動と推定された粘弾性構造モデルによる計算結果との比較(東北大学[課題番号:1207])。
(a)本震発生後1ヶ月後から半年間に観測された変位の水平成分(黒矢印)と計算値(白矢印)と、(b)上下成分の観測値(薄青色)と計算値(濃青色)。カラーコンターは計算された上下変動分布を示す。計算に用いた弾性層の厚さとその直下の粘性係数はグリッドサーチにより求められた最適値で、それぞれ、17 km、 8.0E+18 Pa secである。(c)、 (d) 本震発生後1ヶ月後から1年間の場合。計算に用いた弾性層の厚さとその直下の粘性係数の最適値は、それぞれ、31 km、 7.0E+17 Pa secである。

図8.2008年岩手・宮城内陸地震およびその周辺域におけるS波速度偏差分布の東西鉛直断面図(東北大学[課題番号:1207])。白丸は岩手宮城内陸地震(☆)発生前の地震、黒丸は岩手宮城内陸地震発生後の地震を示す。▲は第四紀火山、破線はモホ面を示す。

図8.2008年岩手・宮城内陸地震およびその周辺域におけるS波速度偏差分布の東西鉛直断面図(東北大学[課題番号:1207])。
白丸は岩手宮城内陸地震(☆)発生前の地震、黒丸は岩手宮城内陸地震発生後の地震を示す。▲は第四紀火山、破線はモホ面を示す。

図9.応力インバージョンにより推定された応力場 (Yukutake et al., 2010;京都大学防災研究所[課題番号:1808])。左側:応力比Rで色分けした線分で最大圧縮応力軸の方位を、青色の線分で中間主応力軸の方位と傾斜角(鉛直に近い場合は短い)を示す。右側はブートストラップ法による最大圧縮応力軸の方位の誤差。

図9.応力インバージョンにより推定された応力場 (Yukutake et al., 2010;京都大学防災研究所[課題番号:1808])。
左側:応力比Rで色分けした線分で最大圧縮応力軸の方位を、青色の線分で中間主応力軸の方位と傾斜角(鉛直に近い場合は短い)を示す。右側はブートストラップ法による最大圧縮応力軸の方位の誤差。

図10.跡津川断層に対する相対速度の分布(名古屋大学[課題番号:1705])。跡津川断層上の牧(MAKI)観測点に対する地殻変動速度の大きさの分布。相対速度が1mm/年以下の場所の広がりは跡津川断層の範囲とほぼ一致している。

図10.跡津川断層に対する相対速度の分布(名古屋大学[課題番号:1705])。
跡津川断層上の牧(MAKI)観測点に対する地殻変動速度の大きさの分布。相対速度が1mm/年以下の場所の広がりは跡津川断層の範囲とほぼ一致している。

図11.福岡県西方沖地震の余震域におけるVp/Vsの分布(九州大学[課題番号:2203])。☆は本震、★は最大余震の震源を、コンターはAsano and Iwata (2006)によるすべり量分布(0.8m間隔)。

図11.福岡県西方沖地震の余震域におけるVp/Vsの分布(九州大学[課題番号:2203])。
☆は本震、★は最大余震の震源を、コンターはAsano and Iwata (2006)によるすべり量分布(0.8m間隔)。

図12.スラブ内の主応力軸の向きの分布(東北大学[課題番号:1208])。横軸はプレート表面からの距離、縦軸は最大主応力軸、最小主応力軸方向とその地域でのプレート表面の最大傾斜方向がそれぞれなす角を示す。水平方向に取った範囲は、その地域で過去に発生した大地震の余震域を表す。矢印は、推定された各地域の中立面の位置を示す。

図12.スラブ内の主応力軸の向きの分布(東北大学[課題番号:1208])。
横軸はプレート表面からの距離、縦軸は最大主応力軸、最小主応力軸方向とその地域でのプレート表面の最大傾斜方向がそれぞれなす角を示す。水平方向に取った範囲は、その地域で過去に発生した大地震の余震域を表す。矢印は、推定された各地域の中立面の位置を示す。

図13.変換波データより推定したフィリピン海プレートの厚さ分布(カラー)と上面形状(太線)(Uchida et al., 2010)(東北大学[課題番号:1208])。黒と灰色の破線はPHS‐PAC接触領域の北東(Uchida et al., 2009) および南西限(Nakajima et al., 2009)を示す。ピンクの線で囲まれた領域は、Wald and Somerville (1995) による1923年関東地震の震源域。赤星はフィリピン海プレート上の小繰り返し地震、細いコンターは、太平洋プレート上面深度 (Nakajima and Hasegawa (2006) を小繰り返し地震の深度をもとに修正)。

図13.変換波データより推定したフィリピン海プレートの厚さ分布(カラー)と上面形状(太線)(Uchida et al., 2010)(東北大学[課題番号:1208])。
黒と灰色の破線はPHS‐PAC接触領域の北東(Uchida et al., 2009) および南西限(Nakajima et al., 2009)を示す。ピンクの線で囲まれた領域は、Wald and Somerville (1995) による1923年関東地震の震源域。赤星はフィリピン海プレート上の小繰り返し地震、細いコンターは、太平洋プレート上面深度 (Nakajima and Hasegawa (2006) を小繰り返し地震の深度をもとに修正)。

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