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南アフリカ大深度金鉱山における断層破壊面極近傍の精細な動力学的破壊過程の推定

課題番号:1423

(1)実施機関名:

東京大学地震研究所

(2)研究課題(または観測項目)名:

南アフリカ大深度金鉱山における断層破壊面極近傍の精細な動力学的破壊過程の推定

(3)最も関連の深い建議の項目:

2 地震・火山現象解明のための観測研究の推進
(3‐2)地震破壊過程と強震動
 ア.断層面の不均質性と動的破壊特性

(4)その他関連する建議の項目:

2 地震・火山現象解明のための観測研究の推進
(3‐1)地震発生先行過程
 ア.観測データによる先行現象の評価
 イ.先行現象の発生機構の解明
(4)地震発生・火山噴火素過程
 ウ.摩擦・破壊現象の規模依存性

(5)平成20年度までの関連する研究成果(または観測実績)の概要:

 日本から遠く離れた南アフリカでの観測を効率的に推進するため,1992年に日本の地震研究者有志により南アフリカ半制御地震発生実験グループ(以下南アG) が組織された.以後,現地の研究機関の協力の下,震源至近距離観測のノウハウを蓄えてきた.
 南ア金鉱山以外でも,地震の起こった断層の真上に地震計があったという例はあるが,それは,断層面の地表トレース上にあったというにすぎない.断層破壊面極近傍の精細な動力学的破壊過程を推定するためには,地震破壊のおこる弱面そのものが地震計アレイで覆われ,その中を破壊フロントがすりぬけていく必要がある.
 このようなアレイを構築するためには,採掘計画や地質弱面の分布,現場へのアクセス,地震計設置の可否などを,鉱山会社等との協議を経て判断した上で,弱面の位置を精細に同定し,適切な深度に地震計を設置する必要がある.南アGはこれまでの経験により,掘削坑道から確認される岩種や地質弱面のトレースと,埋設用の孔から回収されるコアを照らし合わせることにより,孔内を通過する断層の位置を正確に知る手法を確立した.また,孔口から50m以上の深さに地震計を埋設しなければならない場合においても,適正な粘度のセメントを適量流し込み,地震計を設置する手法も,パイロットサイトでの経験を通じて確立しつつある.このように,南アGのこれまでの活動を通じて,作業時間や作業スペース,物資の搬入など,多くの制約がある鉱山内での計器埋設作業を円滑かつ確実に実行できる土壌を培ってきた.
 地震計アレイの設置場所については,何度も現地調査を行い,地質構造と過去の地震活動,採掘スケジュール,データ伝送インフラの状況,掘削リグの設置スペースといった条件を把握・勘案した上で決定される.南アGは,このような高度な条件が要求される観測に対して,南ア金鉱山で観測実績を積み,現地での準備をおこなってきた.

(6)本課題の5ヶ年の到達目標:

 大きな地震ほど破壊成長抵抗(Gc)が大きいことが震源インバージョンなどから示唆されているが,室内実験からはGcはスケールに依存しない物性値であることが示されている.自然地震から示唆されているGcのスケール依存性が,マルチスケールな不均質場の中で破壊が動的に成長することで現れるのか,あるいは,既存断層中のダメージゾーン等の成熟度の差によって場の固定的な性質として現れるのかは,地震のサイズ予見性にも関わる根本的な問題である.前者では地震破壊は常に停まるか停まらないかのぎりぎりのところで進行していることになり,後者では地震はその地震にとっての断層全面を壊すまで途中で停まることはないということになる.
 本課題では,‐3 < M < 3までの活発な地震活動が起こっている南アフリカ大深度金鉱山(以下,南ア金鉱山)において,M3クラスのラプチャーが予想される大規模な地質弱面(ダイク境界面や地質断層)の超至近距離に地震計アレイ(以下,on‐fault地震観測網)を構築し,100‐200m級のラプチャーを破壊面から数メートル以内の複数点で観測し,地震破壊の動的成長過程を直接観測することを一つの目標とする.
 断層至近距離で観測される地動の長周期成分からは断層滑りの時間履歴が高い確度で得られ,地震の成長途上での断層構成則や破壊成長抵抗が得られる.また,媒質の影響をほとんど受けずに観測される短周期地震波からは,その成長過程における破壊の複雑さの程度と素性がわかるだろう.これらの情報からより大きな地震の破壊過程に内包されるより小スケールの部分破壊の役割を明らかにし,冒頭でのべた破壊のスケーリングの問題に対して実証的な立場からのモデルを提示することが本課題の最大の到達目標である.
 また,計画しているon‐fault地震観測網は予想される最大級の地震ラプチャーの数割を覆う程度の大きさであるが,これによって最大級の地震ラプチャーの最中を観察するだけでなく,同じ場所でおこるより小規模な地震の開始や停止を間近で観察することも期待でき,‐3 < M < 3までの幅広いスケールの破壊を,高い分解能で観察することができる.
 本課題は,南ア金鉱山で展開される関連課題と有機的に最大限連携し,同一サイトで多項目の観測をおこない,観測網,計器設置作業,データなどを共有することで,費用対効果の向上を目指す.各関連課題の主たる観測目的は異なるが,現地調査や計器の設置などで効率化が図れる上,互いに異なる周波数帯を対象とした観測が同一サイトで展開されるため,地震発生場の理解に対して相補的な役割を果たすことが期待される.

(7)本課題の5ヵ年計画の概要:

 平成21年度は,現行観測の維持,現行観測で得られたデータの初期解析,および多項目の観測をおこなうための観測網の構築準備の期間と位置づける.現在観測が実施されているサイトの維持につとめるとともに,得られた波形データの初期解析を行い,比較的遠方で発生した地震記録を用いて解析に使用する全地震計の方位・極性の確認,較正を行う.また,新規に展開する観測サイトの候補地を現地調査し,サイトの構築に向けての準備を始める.
 平成22年度は,波形データの初期解析および方位補正を継続的に行うとともに、新規に展開する観測サイトの構築を開始する.
 平成23年度は,前半に新規に展開する観測サイトの構築を完了し,後半にデータの解析に着手する.
 平成24年度は,新規サイトにおけるデータの解析を実施し,幅広いスケールの震源過程を高分解能で抽出する.
 平成25年度は,地震発生場の理解に向けて,断層破壊面極近傍の精細な動力学的破壊過程の推定の観点から,研究課題のとりまとめを行う.

(8)実施機関の参加者氏名または部署等名:

東京大学地震研究所 三宅弘恵・中谷正生・五十嵐俊博
東京大学大学院理学系研究科 井出哲
立命館大学総合理工学研究機構 川方裕則・小笠原宏
東北大学大学院理学研究科 矢部康男・大槻憲四郎
京都大学防災研究所 飯尾能久

(9)公開時にホームページに掲載する問い合わせ先

部署等名:東京大学地震研究所地震・火山噴火予知協議会
電話:03‐5841‐5712
e‐mail:yotikikaku@eri.u‐tokyo.ac.jp
URL:http://www.eri.u‐tokyo.ac.jp/YOTIKYO/

お問合せ先

研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)

-- 登録:平成22年02月 --