予測シミュレーションモデル高度化のための手法開発

課題番号:1405

(1)実施機関名:

東京大学地震研究所,京都大学防災研究所,京都大学理学研究科

(2)研究課題(または観測項目)名:

予測シミュレーションモデル高度化のための手法開発

(3)最も関連の深い建議の項目:

1.地震・火山現象予測のための観測研究の推進
(2)地震・火山現象に関する予測システムの構築
(2‐1) 地震発生予測システム
イ.地殻活動予測シミュレーションの高度化

(4)その他関連する建議の項目:

1.地震・火山現象予測のための観測研究の推進
(2)地震・火山現象に関する予測システムの構築
(2‐1) 地震発生予測システム
ア.地殻活動予測シミュレーションとデータ同化

2.地震・火山現象解明のための観測研究の推進
(3) 地震発生先行・破壊過程と火山噴火過程
(3‐1)地震発生先行過程
ア.観測データによる先行現象の評価
イ.先行現象の発生機構の解明
(4) 地震発生・火山噴火素過程
ア.岩石の変形・破壊の物理的・化学的素過程
ウ.摩擦・破壊現象の規模依存性

(5)平成20年度までの関連する研究成果(または観測実績)の概要:

 「地震予知のための新たな観測研究計画(第2次)」の課題「予測シミュレーションモデル高度化のための手法開発」では,従来の地殻活動予測シミュレーションでは考慮されていない物理過程を新たにモデルに組み込む手法を開発し,また,現在モデルパラメータ推定に用いられていないデータを利用する手法を開発して,シミュレーションモデル高度化を実現するための研究を進めてきた.流体の移動および空隙の非弾性的生成を考慮した破壊伝播のシミュレーションや,粉体のシミュレーションも行われ,微視的なものも含め,破壊や摩擦の物理過程に関する理解は深まった.また,不均質媒質中での破壊伝播を扱う新たな数値解析手法が開発された.地殻活動予測シミュレーションでは,主としてプレート境界型地震を対象としているが,有限要素法による内陸地震発生機構のためのモデルも開発された.

(6)本課題の5ヶ年の到達目標:

 これまで地殻活動予測シミュレーションモデル構築のための研究が進められてきた.現在のモデルはかなり単純なものであるが,将来へ向けての第一段階のモデルと位置づけられる.本研究ではより現実的なモデル構築を目指して,現在考慮されていない破壊/変形の物理過程のモデリング研究,それらをモデルに組み込むために必要となる数値計算手法開発の研究をすすめる.間隙流体/摩擦熱の効果に関する研究においては,間隙流体や摩擦熱の効果を考慮にいれることにより,ゆっくりとした流体移動と高速な断層滑りまでの一見多様に見える動的地震破壊を包括的に理解するモデリング研究をおこなう.また,間隙流体/摩擦熱の効果による有効法線応力変化を考慮して,簡単化したシステムを用いて地震発生サイクルのシミュレーションを行い,再来間隔などの長期的な影響の評価を行う.間隙流体を含む多孔質弾性媒質中における余効変動シミュレーションにおいては,物理的/地学的にもっともらしい境界条件を考慮に入れた余効変動シミュレーションの改良を行う.摩擦構成則の研究においては,地震発生環境を模した高温室内実験において見いだされた断層摩擦における特徴的すべり弱化距離dcが大きくなる強度回復過程を対象とし,dcが大きくなる強度回復過程の物理/化学機構のモデリング(支配方程式の導出)を行う.破壊現象の時空統計性に関するシミュレーション研究においては,破壊現象まで扱える粘弾性体の離散モデルを用いて,地震の時空相関の統計性および変形集中の動的過程を明らかにする.並行して,地質学的不均一構造をモデル化し,プレート駆動によって発生する応力場の3次元空間構造,および地震発生の時空統計性を明らかにすることを目指す.不均質媒質中の破壊伝播/地震発生サイクルシミュレーションにおいては,不均質媒質中の地震破壊伝播計算手法の開発を行い,不均質構造の断層破壊への力学的効果の解明を目指す.弾性/粘弾性不均質構造を考慮したシミュレーション研究においては,特に西南日本についてトモグラフィーにより得られた地殻・上部マントル構造の3次元地震波速度構造,モホ面,プレート境界面の形状のコンパイルを行い,それをモデル化したFEMシミュレーションを行い不均質媒質の影響評価を目指す.

(7)本課題の5ヵ年計画の概要:

 平成21年度においては,従来の地殻活動予測シミュレーションでは考慮されていない物理過程,および,それらをモデルに組み込むために必要となる数値計算手法について現在の状況/問題点を整理し,今後5年間の研究で目指す方向性を検討する.これにより重点的に行うシミュレーションモデル高度化の局面について明確に意識するとともに,各研究において物理過程のモデリング,計算手法コードの開発をすすめる.
 平成22年度においては,開発中の数値計算手法の有効性の検証,予備的なシミュレーションを行い,それぞれの研究で取り扱うことのできる物理過程とその条件範囲を確認する.
 平成23年度においては,各研究を継続し,発展させる.
 平成24年度においては,各研究において,シミュレーションコードのプロトタイプを用いてモデルシミュレーションを行う.これより,モデル化要素のシミュレーション結果への影響について予備的な評価をまとめる.
 平成25年度においては,シミュレーションコードに更なる改良を加えて追加のシミュレーションを行い,結果の整理をおこなう.また,モデル研究で得られた知見を,予測シミュレーションモデル高度化のためにどのようにフィードバックするかについて検討を行う.

(8)実施機関の参加者氏名または部署等名:

 東京大学地震研究所 亀伸樹,加藤尚之,山下輝夫,波多野恭弘,堀宗朗
 京都大学理学研究科 平原和朗
 京都大学防災研究所 橋本学
他機関との共同研究の有無:
 有.地震研究所の共同利用にて参加研究者を公募する.

(9)公開時にホームページに掲載する問い合わせ先

部署等名:東京大学地震研究所
電話:03‐5841‐5694
e‐mail:kame@eri.u‐tokyo.ac.jp
URL:http://www.eri.u‐tokyo.ac.jp

お問合せ先

研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)

-- 登録:平成22年02月 --