衛星リモートセンシングデータ解析による海外巨大地震に関する調査・研究

平成20年度年次報告

課題番号:6030

(1)実施機関名:

 国土地理院

(2)研究課題(または観測項目)名:

 衛星リモートセンシングデータ解析による海外巨大地震に関する調査・研究

(3)最も関連の深い建議の項目:

 3.(4)宇宙技術等の利用の高度化

(4)その他関連する建議の項目:

 1.(1)ア.日本列島及び周辺域のプレート運動

(5)本課題の平成16年度からの5ヵ年の到達目標と、それに対する平成20年度実施計画の位置付け:

 現地での観測、調査が困難な海外の地震等のイベントに際し、SAR、光学センサ等の衛星リモセンデータに基づき、地殻変動や地形の変化等を抽出し、断層モデル等を作成して地震像を明らかにする。

(6)平成20年度実施計画の概要:

 現地での観測、調査が困難な海外の地震等のイベントが生じた場合に、SAR、光学センサ等の衛星リモセンデータに基づき、地殻変動や地形の変化等を抽出し、断層モデル等を作成して地震像を明らかにする。

(7)平成20年度成果の概要:

 2008年5月12日に中国四川省で発生したMw7.9のvl川地震(四川大地震)について、計画通り、SAR及び光学センサで、地殻変動と地形変化を抽出し、断層モデルを作成して、地震像の解明に貢献した。
 まず、「だいち」のPALSARデータを用いた地殻変動解析を示す。図‐1は、地震に伴う地殻変動を、衛星と地表の距離の変化として捉えたPALSARデータの干渉画像である。この干渉画像から、1)龍門山断層帯で大きな地殻変動が生じたこと、2)震源断層の長さは約285kmであること、3)断層運動は右横ずれ成分を含む逆断層型ということ、4)北西側でローブ(lobe)状の干渉縞が数箇所見られ、断層面上のすべりが不均質であったこと、等が判明した。図‐2は、SAR干渉図の視線方向変動量のインバージョンにより推定されたすべり分布である。推定されたすべりは、震源付近ではほぼ純粋な逆断層すべりであるのに対し、余震域北東側では右横ずれ成分と逆断層成分のすべりがほぼ同程度の大きさとなっている。すべりの深さは、本震震源付近でやや深く、それ以外の領域では比較的浅い。最大すべり量は北川付近で11.4mで、全体のモーメントマグニチュードは7.9と推定された。図‐3は、推定された断層モデルから計算される位相変化量分布である。SAR干渉解析結果をおおむね説明できており、北西側で見られるローブ状の干渉縞も再現されている。
 次に、「だいち」のPRISM(光学センサ)画像によるvl川地震の分析結果について述べる。地震前後のPRISM画像を比較することで、平通鎮近くの河床の段差など、地表地震断層の可能性のある地形が抽出できた。この場所は、SAR干渉画像で、地殻変動が集中する帯の南端に一致する。

(8)平成20年度の成果に関連の深いもので、平成20年度に公表された主な成果物(論文・報告書等):

 小荒井衛,飛田幹男,矢来博司,中埜貴元,小白井亮一,ALOS PRISM単画像による中国・四川省地震の地表地震断層の判読,写真測量とリモートセンシング,Vol.47, No.3, 2008.
 http://cais.gsi.go.jp/Research/geoinfo/SichuanEarthquakeALOS.pdf
 国土地理院Webページ,2007年スマトラ島南部沖地震
 http://www.gsi.go.jp/cais/topics‐topic071001‐index.html
 国土地理院Webページ,2008年スマトラ島西方沖シムルエ島の地震
 http://www.gsi.go.jp/cais/topics‐topic080224‐index.html
 国土地理院Webページ,2008年5月12日中国・四川省の地震に伴う地殻変動と震源断層
 http://www.gsi.go.jp/cais/topics‐topic080604‐index.html
 国土地理院,スマトラ島南部沖地震の地殻変動,地震予知連絡会会報,80,528‐532,2008
 国土地理院,2009,中国・四川省の地震,地震予知連絡会会報,81,578‐581,2008.
 Yarai, H, T. Nishimura, M. Tobita, T. Amagai, A. Suzuki, H. Suito, S. Ozawa, T. Imakiire, H. Masaharu, A fault model of the 2008 Wenchuan earthquake estimated from SAR measurements, 7th General Assembly of Asian Seismological Commission and Seismological Society of Japan, 2008 Fall meeting, 2008/11/25‐27.

(9)本課題の5ヵ年の成果の概要:

 この6030は、平成18年度に追加された課題である。当初の目標どおり、現地での観測、調査が困難な海外の地震等のイベントに際し、SAR、光学センサ等の衛星リモセンデータに基づき、地殻変動や地形の変化等を抽出し、断層モデル等を作成して地震像の解明に貢献することができた。以下にその巨大地震のリストのみ、列記する:

 2004年12月26日スマトラ島沖地震(Mw9.3)
 2005年3月28日ニアス島沖地震(Mw8.7)
 2005年10月8日パキスタン北部地震(Mw7.6)
 2007年9月12日スマトラ島南部地震(Mw8.4)
 2008年5月12日中国四川省の地震(Mw7.9)

(10)実施機関の参加者氏名または部署等名:

 測地部宇宙測地課、地理地殻活動研究センター 宇宙測地研究室・地殻変動研究室
 他機関との共同研究の有無:有
 JAXA(ジャクサ)

(11)公開時にホームページに掲載する問い合わせ先:

 部署等名:地理地殻活動研究センター 研究管理課
 電話:029‐864‐5954
 e‐mail:eiss@gsi.go.jp
 URL:http://www.gsi.go.jp

図‐1 四川省の地震に伴う地殻変動 SAR干渉画像集約図。

図‐1 四川省の地震に伴う地殻変動 SAR干渉画像集約図。

図‐2 四川省の地震 震源断層モデル(すべり分布)

図‐2 四川省の地震 震源断層モデル(すべり分布)

図‐3 四川省の地震 震源断層モデルから計算される干渉画像

図‐3 四川省の地震 震源断層モデルから計算される干渉画像

お問合せ先

研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)