GPS時系列データに含まれる季節的変動誤差の補正モデル構築に関する研究

平成20年度年次報告

課題番号:6027

(1)実施機関名:

 国土地理院

(2)研究課題(または観測項目)名:

 GPS時系列データに含まれる季節的変動誤差の補正モデル構築に関する研究

(3)最も関連の深い建議の項目:

 3.(4)宇宙技術等の利用の高度化

(4)その他関連する建議の項目:

(5)本課題の平成16年度からの5ヵ年の到達目標と、それに対する平成20年度実施計画の位置付け:

 GPS時系列データに含まれるさまざまな誤差源(電離層遅延、非潮汐海洋質量による荷重変形、水蒸気遅延など)について、測位誤差の季節的変動の特性を定量的に評価し、それを補正するモデルを構築する。GEONETの全国ネットワーク解析時系列に含まれる電離層遅延、非潮汐海洋質量による荷重変形について、定量的な補正モデルの構築を行う。平成20年度は、平成19年度に明らかにした、GPS解析時の大気遅延量の誤推定に起因する顕著なみかけ上下年周変動について、その低減手法の開発および評価を行う。

(6)平成20年度実施計画の概要:

 平成19年度に明らかにした、GPS解析時の大気遅延量の誤推定に起因する顕著なみかけ上下年周変動について、GPS解析時に適用するマッピング関数の改良を通じてその低減を図るとともに、補正の効果について評価を行う。

(7)平成20年度成果の概要:

 GEONET観測点の座標時系列の上下成分に見られる大気遅延量の誤推定に起因する年周変動について、GPS解析時に大気遅延量を推定する際用いられる静水圧遅延量およびマッピング関数の影響を評価した。そのため、数値気象モデルを用いたシミュレーションにより作成したGPS擬似観測データに対し、いくつかの静水圧遅延量モデルおよびマッピング関数の組み合わせについてGPS解析を行い、上下成分について年周変動を抽出してその大きさの違いを調べた。その結果、大気遅延量の誤推定に起因する上下成分の年周変動は、数値気象モデルから直接計算される、最新の静水圧遅延量およびマッピング関数を用いることでほぼ解消できることを明らかにした(図1)。

(8)平成20年度の成果に関連の深いもので、平成20年度に公表された主な成果物(論文・報告書等):

 Munekane, H., Y. Kuroishi, Y. Hatanaka, and H. Yarai (2008) Spurious annual vertical deformations over Japan due to mismodelling of tropospheric delays, Geophys. J. Int., 176, 831‐836.

(9)本課題の5ヵ年の成果の概要:

 GPS時系列の季節的変動誤差の誤差要因のうち、電離層遅延および非潮汐海洋質量による荷重変形について補正モデルを構築した。また、大気遅延量の誤推定による誤差について数値シミュレーションによる評価を行い、 GPS解析で用いられている静水圧遅延量およびマッピング関数を、数値気象モデルから直接計算された最新のものに変更することで、ほぼ誤差を解消できることを明らかにした。

(10)実施機関の参加者氏名または部署等名:

 地理地殻活動研究センター 宇宙測地研究室
 他機関との共同研究の有無:ウィーン工科大学

(11)公開時にホームページに掲載する問い合わせ先:

 部署等名:地理地殻活動研究センター 研究管理課
 電話:029‐864‐5954
 e‐mail:eiss@gsi.go.jp
 URL:http://www.gsi.go.jp

図1 マッピング関数によるみかけ上下年周変動の違い。Case 1はマッピング関数としてNMF、静水圧遅延量モデルとしてBergモデルを用いた場合、Case 2はマッピング関数としてGMF,静水圧遅延量モデルとしてGPTモデルを用いた場合、Case 3はマッピング関数としてVMF1、静水圧遅延量モデルとしてECMWFモデルを用いた場合に得られたみかけ上下年周変動を表す。従来の標準的解析手法であるCase 1で見られた大きなみかけ上下年周変動が、数値気象モデルに基づいたマッピング関数および静水圧遅延量モデルを用いたCase 2およびCase 3では改善されていることが分かる。

図1 マッピング関数によるみかけ上下年周変動の違い。Case 1はマッピング関数としてNMF、静水圧遅延量モデルとしてBergモデルを用いた場合、Case 2はマッピング関数としてGMF,静水圧遅延量モデルとしてGPTモデルを用いた場合、Case 3はマッピング関数としてVMF1、静水圧遅延量モデルとしてECMWFモデルを用いた場合に得られたみかけ上下年周変動を表す。従来の標準的解析手法であるCase 1で見られた大きなみかけ上下年周変動が、数値気象モデルに基づいたマッピング関数および静水圧遅延量モデルを用いたCase 2およびCase 3では改善されていることが分かる。

お問合せ先

研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)