GPSを用いた高速地殻変動のモニタリングに関する研究(リアルタイム地殻変動監視)

平成20年度年次報告

課題番号:6026

(1)実施機関名:

 国土地理院

(2)研究課題(または観測項目)名:

 GPSを用いた高速地殻変動のモニタリングに関する研究(リアルタイム地殻変動監視)

(3)最も関連の深い建議の項目:

 2.(2)ア.日本列島域

(4)その他関連する建議の項目:

 2.(2)イ.東海地域
 2.(2)ウ.東南海・南海地域
 2.(2)エ.その他特定の地域

(5)本課題の平成16年度からの5ヵ年の到達目標と、それに対する平成20年度実施計画の位置付け:

 平成20年度までに、海溝型巨大地震の際の地殻変動を広域のリアルタイム観測値からセンチメートルレベルで把握し、準リアルタイム(10分程度の時間内)に地殻変動の原因である断層メカニズムをモデリングするシステムを作成する。100キロメートル~300キロメートルにわたる広域における整合的なリアルタイム測位結果を出すことのできるシステムの検討を、既存のリアルタイム地殻変動監視システムの運用によって行う。
 平成20年度では、緊急地震速報を用いて、GPSリアルタイム測位結果から地震に伴う地殻変動を自動的に検出するシステム開発を行う。

(6)平成20年度実施計画の概要:

 国土地理院特別研究「緊急防災情報としての震源断層即時推定手法の開発に関する研究」(平成19年度から21年度実施予定)の2年目として、研究を行う。平成19年度までに構築した電子基準点1秒ストリーミングデータを用いたリアルタイムGPS解析システムにおいて、緊急地震速報を受信した際に、震央周辺での電子基準点の1秒毎座標時系列から地震に伴う変位を自動的に検出する機能を追加する。

(7)平成20年度成果の概要:

 試験運用を行っている最大60点の電子基準点のデータ解析が可能なリアルタイム地殻変動解析システムにおいて、解析対象観測点の設定等を簡便に行うインターフェイスの改造と解析結果のファイル出力部分について改造を行い、簡便かつ機動的な運用が行えるようにした。また、高度利用者向け緊急地震速報の受信により大地震発生時の地殻変動量をリアルタイムGPS解析結果から自動的に抽出するシステムを開発した。また、平成20年度に発生した茨城県沖の地震(2008年5月8日、M7.0)、岩手・宮城内陸地震(2008年6月14日、M7.2)、福島県沖の地震(2008年7月19日、M6.9)、岩手県沿岸北部の地震(2008年7月24日、M6.8)、十勝沖の地震の地震(2008年9月11日、M7.1)前後の1秒サンプリング電子基準点データを後処理解析し、これらの地震の震源域近傍においてリアルタイムGPS解析を行っていた場合に、地震時地殻変動が検出可能かどうかを検証した。複数の電子基準点で数cm以上の地殻変動を伴った岩手・宮城内陸地震の場合(図1)は、地殻変動検出が十分可能であったと考えられるが、それ以外の地震は、最大変動量が1cm程度と小さいため、現在のリアルタイム解析精度では、検出が難しいと考えられる。

(8)平成20年度の成果に関連の深いもので、平成20年度に公表された主な成果物(論文・報告書等):

 国土地理院,東北地方の地殻変動,地震予知連絡会報,81,208‐263,2009.

(9)本課題の5ヵ年の成果の概要:

 電子基準点の1秒サンプリングGPSデータを用いたリアルタイム地殻変動監視システムの開発・改造・試験運用を行い、最大60点までの基線解析と緊急地震速報を用いた地震時地殻変動のリアルタイム自動抽出が可能なシステムを試験的に構築した。この間、2006年4月21日に伊豆半島東方沖で発生した地震(M5.8)については、試験運用していたシステムにより地震に伴う変位を実際に検出することができた。また、平成20年岩手・宮城内陸地震(M7.2)や平成17年8月16日の宮城県沖の地震(M7.2)等の大地震については、後処理1秒データ解析により、震源断層モデルの推定に耐えうる精度の地殻変動が地震後10分以内に得られることを確認した。
 当初5箇年の目標としてあげていた、広域で整合的な測位結果の推定に関しては、現行のGEONETシステム運用やGPS解析ソフトウェアの制限から、実現が難しいことがわかった。また、断層メカニズムのモデリングに関しては、平成21年度中の実現を目指して開発中である。

(10)実施機関の参加者氏名または部署等名:

 地理地殻活動研究センター 地殻変動研究室
 他機関との共同研究の有無:無

(11)公開時にホームページに掲載する問い合わせ先:

 部署等名:地理地殻活動研究センター 研究管理課
 電話:029‐864‐5954
 e‐mail:eiss@gsi.go.jp
 URL:http://www.gsi.go.jp

図1 平成20年岩手・宮城内陸地震に伴う地殻変動の1秒GPSデータ解析結果とGEONETルーチン解の比較。Kinematic解析(赤矢印)は、1秒GPSデータの後処理解析による地震時地殻変動の水平変動を表す。R2、Q2は、それぞれGEONET速報解(1日平均値)、GEONET迅速解(6時間平均値)による結果を表す。Kinematic解析においても、GEONET迅速解に準じた精度での地殻変動検出が行えていることがわかる。

図1 平成20年岩手・宮城内陸地震に伴う地殻変動の1秒GPSデータ解析結果とGEONETルーチン解の比較。Kinematic解析(赤矢印)は、1秒GPSデータの後処理解析による地震時地殻変動の水平変動を表す。R2、Q2は、それぞれGEONET速報解(1日平均値)、GEONET迅速解(6時間平均値)による結果を表す。Kinematic解析においても、GEONET迅速解に準じた精度での地殻変動検出が行えていることがわかる。

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研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)