平成20年度年次報告
課題番号:6022
国土地理院
高精度地盤変動測量(干渉SAR)
3.(4)宇宙技術等の利用の高度化
3.(2)イ.内陸地震発生域の不均質構造と歪・応力集中機構
2.(2)ア.日本列島域
2.(2)イ.東海地域
2.(2)ウ.東南海・南海地域
2.(2)エ.その他特定の地域
今後も第6次基本測量長期計画に基づき、地殻・地盤変動地域では1年周期、全国土では5年周期の割合で干渉SARを実施し、面的な変動を明らかにする。平成20年度は、一般ユーザーへの迅速な成果提供を考慮し、インターネットを介した情報提供を行うシステムへの拡張整備を行う。
陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)のPALSARデータを使用した干渉SAR解析により、地盤沈下と活火山について重要地域を優先し、定常的な高精度地盤変動測量を実施する。また、成果提供については、一般ユーザーへの利便性の向上のための機能拡張を行い、利用しやすい形式での成果提供を目指す。
平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震では、緊急解析を実施し、その地殻変動についての解析結果を迅速に報告した(図‐1)。また、SAR干渉画像等を元に断層モデルや断層面上の滑り分布を推定した(図‐2)。
緊急解析に加え、国内の特定地域について定常的な解析を実施し、十勝岳・有珠山・吾妻山・安達太良山・伊豆大島・三宅島・硫黄島等の火山性地殻変動や九十九里平野の地盤沈下を捉えた。主な火山の解析結果については、火山噴火予知連絡会に提出した。
さらに、これらの解析結果をより迅速に公表するため、成果管理・閲覧システムの拡張整備を行った。
雨貝 知美・鈴木 啓・和田 弘人・藤原 みどり・飛田 幹男・矢来 博司 (2008):
衛星合成開口レーダーを用いた平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震に伴う地殻変動の検出,
国土地理院時報, No.117.
国土地理院,その他の地域の地殻変動(硫黄島),地震予知連絡会会報,80,519‐523,2008.
国土地理院,2009,東北地方の地殻変動,地震予知連絡会会報,81,208‐263,2008.
国土地理院Webページ,平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震に伴う地殻変動と震源
http://www.gsi.go.jp/cais/topics‐topic080625‐index.html
平成19年能登半島地震(2007/03/25,M6.9)・平成19年新潟県中越沖地震(2007/07/16,M6.8)・平成20年岩手・宮城内陸地震(2008/06/01)等の地震において、地殻変動の面的分布を明らかにした(図‐3,4)。この成果は、広域的に高密度な地殻変動の様子を捉えるとともに、震源断層モデル推定のために利用された。また、解析技術の向上により、地殻変動分布の把握だけでなく、地震に伴う地すべりや液状化現象、活褶曲の成長など、様々な現象を捉えることに成功した。
さらに、国内の特定地域(火山39地域・地盤沈下16地域)(図‐5)について定常的な解析を実施し、火山活動による地殻変動や地盤沈下を捉えた。特に、火山では硫黄島・三宅島など地殻変動が活発な火山だけではなく、十勝岳・吾妻山など中期的に活動が活発化した火山の微小な変動も捉え、火山活動の評価に利用された。
これらの解析結果を迅速に公表するため、成果管理・閲覧システムの整備を行った。
測地部 宇宙測地課
地理地殻活動研究センター 地殻変動研究室
他機関との共同研究の有無:有;宇宙航空研究開発機構(若干名)
部署等名:地理地殻活動研究センター 研究管理課
電話:029‐864‐5954
e‐mail:eiss@gsi.go.jp
URL:http://www.gsi.go.jp
図‐1 平成20年(2008年)岩手・宮城内陸地震の干渉SARによる地殻変動分布図
図‐2 平成20年岩手・宮城内陸地震におけるSAR干渉画像と推定された断層面
図‐3 平成19年(2007年)能登半島地震の干渉SARによる地殻変動分布図化
図‐4 平成19年(2007年)新潟県中越沖地震の干渉SARによる地殻変動分布図
図‐5 5カ年で実施した定常解析地域(▲は火山、○は平野部)
研究開発局地震・防災研究課