深海底ネットワーク総合観測システムの開発・整備

平成20年度年次報告

課題番号:4004

(1)実施機関名:

 独立行政法人海洋研究開発機構

(2)研究課題(または観測項目)名:

 深海底ネットワーク総合観測システムの開発・整備

(3)最も関連の深い建議の項目:

 3.(1) 海底諸観測技術の開発と高度化

(4)その他関連する建議の項目:

 2.(2)ウ.東南海・南海地域
 2.(2)エ.その他特定の地域

(5)本課題の平成16年度からの5ヵ年の到達目標と、それに対する平成20年度実施計画の位置付け:

 地震・津波等の自然災害による被害の軽減をめざし、プレート境界域における地震等の地殻変動および深層流・地下水等の深海底環境変動を海中・海底において広域にわたり観測するため、ケーブルで結んだ多数のセンサーからなるリアルタイム長期総合海底観測システムの研究開発を行う。具体的には、将来の海底ネットワーク基盤技術となりうるケーブル給電技術、データ伝送技術、同期技術等およびシステムに接続するセンサー類の開発を行う。同時に掘削孔を利用し、長期間継続して海底地殻を観測する独立型システムの開発を行い、将来のリアルタイム化を目指す。
 平成20年度には、豊橋沖ケーブルに接続した地震計、水圧計、電位差磁力計などのセンサによる長期観測とともに、時刻同期技術等を活用した観測装置の評価・実験等を行う。また、平成18年度より文部科学省からの受託研究として開始した「地震・津波観測監視システム構築」において、引き続き先端的海底観測ネットワークシステムの開発等を行う。

(6)平成20年度実施計画の概要:

 昨年度に引き続き、1号機・2号機システムによる観測およびデータ処理・解析を行うとともに、海底ネットワーク用センサおよび観測技術の開発を継続する一方、豊橋沖ケーブル先端に接続した海底観測ステーションによる長期連続観測等を通じて機器の性能評価並びに多種多様なデータの統合的な管理・運用・流通技術の検討を行う。さらに、電力/光ファイバ複合ケーブル展張方式の技術開発を継続し、今後の地震・津波観測監視システム構築に対応可能なように機能とオペレーション能力の向上を図る。
 また、平成18年度に開始した「地震・津波観測監視システム構築」において、先端的海底観測ネットワークシステムの開発を進めるとともに、陸上局の選定、ケーブル敷設予定エリアの海底調査を行い、システム展開計画をまとめる。

(7)平成20年度成果の概要:

 前年度に引き続き、1号機(高知県室戸岬沖)・2号機(北海道釧路・十勝沖)海底地震総合観測システム等による観測およびデータ処理・解析を行った。また、平成19年度に開始した豊橋沖ケーブル先端に接続した海底観測ステーションによる長期連続観測を行うとともに、9月には、東京大学を中心に開発された音響通信を用いて精密測位を行う海底地殻変動観測システムを構成し、海底ケーブルを介して受信したGPSの精密時刻信号に同期して音響信号を発信するケーブル・トランスポンダーをROV「かいこう70002.」により分岐装置に接続した。
 また、海底ネットワーク展開に必要となる重量物及びノード観測点間の接続ケーブルの設置を実現する装置として、ケーブル展張装置及び浮力調整装置の開発を実施している。ケーブル展張装置には10km長の接続ケーブルを搭載し、海底地形に沿って海底面直上から海底にケーブル敷設及び回収を可能にする。この敷設作業に伴う海底でのROVの浮力調整、海底へのノードや観測装置という重量物の設置や移動という作業を補償するために、ROVには浮力調整装置の装備を行う。
 平成18年度に開始した「地震・津波観測監視システム構築」において、給電分岐技術や拡張分岐装置等の要素技術開発を進めるとともに、ケーブル敷設予定海域の海底調査等を行いケーブルルートを決定した。

地震・津波観測監視システムの開発整備計画

地震・津波観測監視システムの開発整備計画

(8)平成20年度の成果に関連の深いもので、平成20年度に公表された主な成果物(論文・報告書等):

 M. Mochizuki, A. Asada, T. Ura, K. Asakawa, T. Yokobiki,T. Goto, R. Iwase, M. Sato, K. Nagahashi and T. Tanaka (2008), Installation of Seafloor Transponder for Geodetic Survey on the Submarine Cable System off Toyohashi, Japan, Abst. 7th General Assembly of Asian Seism. Commission and 2008 Fall meeting of Seism. Soc. Japan, 361.
 T. Yokobiki, T. Goto, E. Araki, K. Asakawa, T. Kasaya, M. Kinoshita, K. Kawaguchi, M. Harada, T. Nakajima, H. Nagao and K. Sayanagi (2008), Development of a New Cabled Observatory "Tokai SCANNER", Proc. OCEANS 2008 ‐ MTS/IEEE Kobe Techno‐Ocean, DOI: 10.1109/OCEANSKOBE.2008.4531002.
 R. Iwase and K. Mitsuzawa (2008), In situ evaluation of Acoustic Doppler Current Profiler data in deep sea ‐ Detection of a diving whale?, Proc. OCEANS 2008 ‐ MTS/IEEE Kobe Techno‐Ocean, DOI:10.1109/OCEANSKOBE.2008.4531078
 伊藤彰教,若林尚樹,吉岡英樹 (2008), 「深海の音」を題材とした展示手法の研究, 第24回NICOGRAPH論文コンテスト, II‐5.

(9)本課題の5ヵ年の成果の概要:

 最初に設置した相模湾初島沖観測ステーションをはじめ、高知県室戸岬沖及び北海道釧路・十勝沖「海底地震総合観測システム」の運用を継続し、気象庁をはじめとする各機関へのリアルタイム観測データの配信や、一般へのデータ提供を行うとともに、新たに愛知県豊橋沖観測システムの開発・設置を実施し、これら観測システムを基盤とする各種観測装置等の研究開発を進めてきた。これらの成果は平成18年度に開始した現在進行中の紀伊半島沖観測ネットワークである「地震・津波観測監視システム」DONET (Dense Oceanfloor Network System for Earthquakes and Tsunamis,)にも活用されている。
 連続観測においては、平成18年4月21日、伊豆半島東方沖を震源とするマグニチュード5クラスの地震が発生し、これに伴う泥流が観測された。観測ステーションに当初から搭載されていた各種センサとともに、これらの観測装置により地震ならびに泥流に起因すると考えられる各種の深海環境変動が検出された。また、平成18年11月15日と平成19年1月13日に千島列島東方で発生した地震では、地震に伴う津波を、海岸の験潮所より約20分早く十勝・釧路沖システムで検出しており、津波早期警報発信等に利用可能であることを確認している。

平成18年4月21日に初島沖観測ステーションにより観測された泥流

平成18年4月21日に初島沖観測ステーションにより観測された泥流

(10)実施機関の参加者氏名または部署等名:

 海洋工学センター、地球内部変動研究センター
 他機関との共同研究の有無:気象庁地震火山部(地震津波監視課精密地震観測室)
 主任研究官 本間直樹
 観測係長 小山卓三
 技術主任 赤司貴則
 観測係員 百合本岳
 観測係員 渋谷大樹

(11)公開時にホームページに掲載する問い合わせ先:

 部署等名:経営企画室企画課
 電話:046‐867‐9212
 URL:http://www.jamstec.go.jp

お問合せ先

研究開発局地震・防災研究課

(研究開発局地震・防災研究課)